翔殿の胡椒&故障少々blog

群馬大学医学部4年生:翔殿の、ゆるい、しょっぱい、スパイス生活が満載だゼ

華氏451度

2005-10-06 01:52:06 | 文化人
 レイ・ブラッドベリの華氏451度Messageを読みました。

 タイトルの華氏451度とは、摂氏で233度くらい。紙の発火する温度です。舞台は、近未来のある国(たぶんアメリカ)。この国では、本の出版はおろか所有も禁止されているんです。公的機関も個人も関係なく。俺は、間違いなく発狂します

 主人公ガイは、ファイアマン。この世界では、建造物は完全に防火構造になっています。だからファイアマンは消防士ではないんです。やる仕事は、まったく逆。つまり、国民の密告によって、本の所有者がこの機関に伝えられると、ファイアマン達はそこに急行し、本を探しだし家もろとも火をつけて全て燃やし尽くすのです。時には、その所有者も一緒に

 この世界では本の変わりにテレビがメジャーな娯楽として成立しています。壁にうめこむ巨大なテレビのために人々は大金を注ぎ込み、海の貝とよばれる音声装置を耳にはめずーっとテレビを見続けています

 ある日、ガイはクラリスという少女に出会い、『世界』について疑問を抱き始めます。与えられたテレビ番組、問答無用に火をつける仕事、現実感のない人々…。ガイも、振り返ってみれば妻と何処であったかを思い出せない人間でした。ガイは、自分が忘れてしまったこと、世界が忘れてしまったことを知りたくなります。

 そんな知識欲に勝てず、ガイはついに1冊本を自分の家に持ち帰ってしまうのでした。そして…。

 ここからは、俺の感想。これが書かれたのは1950年代。約50年前です。上を読めば、現代日本と近いものがないですか。引きこもりでネットばかりしている人。携帯ウォークマンで完全に自分の世界にはまり込んでいる人。戦争を行うのに2日で終わると思っているひと(アメリカ人?)…。ごろごろいるような気がします

 この本は当時アメリカを覆っていたマッカーシズム;いわゆる赤狩りというやつに反抗するために書かれたものです。だから近未来SFというよりも、政治について、そして人間の特性について批判を加えることに重きが置かれていると思います。また、テロは悪いという情報しか与えず、それ以外の思想を裁判所判決という形で禁止したブッシュを批判するために、マイケル・ムーアは華氏911というパロディ映画を作りました

 文明が成熟化し、極度に自由化された世界。だけど、そこは実は政府のコントロールの下にある。そして、世界がそうなってしまったのは、易きに流れるヒト本来の人間性によるっていう警告はいかにもそうなりそうでこわい。自由が進むと、道路沿いの看板が長くなるっていう表現にはどきりとしました。これは、自由が発達すれば、まわりが見えなくなるっていう風刺のことじゃないかな。自由なのに、前しか見れない、よそを見るとおいてかれる…

 それに、自由な世界だからみんながテレビを見ていて、夜道には誰もいない、という表現があります。うぅ、ありそうです。趣味の多様化が叫ばれて久しいですが、実際にサッカー日本代表戦(W杯関係とか)が異常な高視聴率で街からヒトが消えるってありましたね

 オチは、独特なファンタジーです。しかし、こうやって、ヒトは乗り越えていくんだろうなぁと期待しつつ、自分にはできるのだろうか、でもやんなきゃなって思いました

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