サードウェイ(第三の道) ~白井信雄のサスティナブル・スタイル

地域の足もとから、持続可能な自立共生社会を目指して

交流のアセスメント

2008年02月23日 | レポート
人口減少が進むなか、地域間交流の促すことが重要な地域戦略となっている。しかし、交流による地域影響は必ずしもプラス面だけではない。

過去の研究では、交流の活発化に伴うマイナス面も指摘されている。交流の成果を実りあるものとするための地域戦略を考えていく必要がある。


●交流の影響の両面性

例)交流により全般的に生活環境がよくなったという評価が多いが、一方でごみや汚水の問題、人や車による山林や水辺が荒れる問題など、自然環境的側面の環境悪化が顕著である。

●交流の影響の地域差
例)人口規模が5千人という小さい市町村ほど好変化・悪変化ともに多い。山間部などの僻地の市町村ほどに生活環境整備に対する交流効果が大きい。

●交流の影響の時間差

例)交流の初期段階では、経済効果と外への宣伝効果が中心となる。交流経験を重ねると、精神的あるいは情報的効果にシフトする。住民の能動的姿勢も形成され、行政のサポートを必要としない。

●交流の影響側面

例)特に顕著な効果は、生きがいづくり、意識改革、意欲の創出などの精神面である。高齢化対策や過疎化対策は期待しているが、実際にはあまり解決に貢献していない。

例)デメリットは、環境の悪化とともに、財政的負担、経済効果の見えにくさ等の経済面にある。時間的負担、受け入れ側の負担、持続的な交流の困難などの課題もある。

●事業規模による影響の違い

例)観光客が30万人を超える交流施設を整備した集落では、交通量の増加、空き缶やごみの投げ捨て、庭先や農地等への無断侵入などの、住民の不利益が発生している。

●事業形態による影響の違い

例)不特定多数を対象とする営利活動は大きな経済効果を期待できる半面、周辺地域との施設拡大戦争を迫られ、財政負担を増大させる危険がつきまとう。営利を追求する過程で地域から遊離してしまう。

例)非営利活動は、小規模分散型であり、雇用創出や所得確保の面で大きな効果は期待できない半面、都市民との直接的、双方向的な交流を通じた、地域のもつ価値を再発見する取組であり、新たな交流を生み出す役割も果たす。

例)重要なことは、性格の異なる活動を地域内で相補的かつ複合的に連携しつつ、バランスよく展開していくこと。

●事業プロセスと影響

・事業計画及び施設運営の段階における行政から住民への情報伝達が、現在の活動への参加状況、今後の活動への参加意志、活動に対する総合評価に影響を与えている。


【参考文献】

山下仁ら「中山間市町村における都市・農山村交流の生活環境への影響」2001.6、日本建築学会論文集

山藤直子ら「農村地域における住民の「集落外への外向きの姿勢」と「都市住民との交流効果」との連関」2001.12、農村計画論文集

真鍋奈津子ら「自由回答文の分析による都市農村交流の活動評価」2005.11、農村計画論文集

黒岩麗子ら「都市農村交流の拡大を伴う生活環境の変化と課題~群馬県新治村「たくみの里」の事例」1997.9、日本建築学会論文集 

前田真子ら「都市住民の農村移住に関する研究」2002、日本建築学会論文集

本庄宏行ら「都市農村交流活動の展開と住民意識:新潟県小国町を事例として」2000.12、農村計画論文集

小林昭裕「農村公園の協働事例を通じた行政と住民との連携」2001、環境情報科学論文集

前田真子ら「棚田オーナー制度参加者の事業に対する意識と今後の課題」2002.6、日本建築学会 等

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