サードウェイ(第三の道) ~白井信雄のサスティナブル・スタイル

地域の足もとから、持続可能な自立共生社会を目指して

カーボンニュートラルと地域ビジネス

2021年08月29日 | 持続可能性

 カーボンニュートラル(ゼロカーボン)は2050年までに実現するという大きな目標ですが、そのためには2030年に二酸化炭素等の温室効果ガスの排出を半分近くに減らすことになります。カーボンニュートラルは長期のあるべき目標ではなく、2020年代に今から取組むアクションになっています。このため、国や地方自治体、民間金融機関による経済的支援が活発になり、再生可能エネルギーや省エネルギー、電気自動車等に関わるビジネスは市場の追い風を受けます。この意味で、カーボンニュートラルを目指す今日の状況は、間違いなく、事業拡大や新規参入の大きなチャンスです。

 グリーンリカバリー(緑の復興)という政策があります。これは、新型コロナが災害ともいうべき状況になり、地域経済が大きなダメージを受けている今日、アフターコロナの復興策として示されているものです。カーボンニュートラルに向けた設備投資や新規事業創出を通じて、経済の再生や転換を図っていこうというものです。環境と経済の両立、好循環、統合的発展等という政策の考え方は2000年代に入り、提案されてきたことですが、それが今日では本流、あるいは復興の切り札にもなっているわけです。

カーボンニュートラルへの取組みを地域経済に活かす考え方や方法について、3点を示します。

 1つは、漏れバケツ(経済の非循環)を塞ぐことです。地域内の産業の連関や地域内の生産と消費の連関が弱いと、地域内で投資あるいは消費されたお金は地域外へと流出してしまいます。地域にお金が動いても、それが外に漏れるバケツになっているわけです。この漏れバケツを防ぐ、すなわち地域内の産業連関や地産地消を進めることが期待されます。例えば、太陽光エネルギーや木質バイオマス等は地域資源です。その地域資源を活用した再生可能エネルギー発電事業を地域の事業者が連携して進め、地域の消費者に電気を供給するという事業による地域経済循環が期待されます。

 2つめは、カーボンニュートラルの実現に向けて事業が、地域のウエルビーイング(生活の質)を損なうことがないように、さらにそれを高めることができるように、地域内での対話を進めることです。今日では、メガソーラーや風力発電が斜面地を削って設置され、地域の自然や景観を損なうばかりか、気候変動によって進行している(今後も進行せざるを得ない)豪雨による水土砂災害の被害を甚大なものとしています。だからといって、再生可能エネルギーを目の敵にするわけにはいきません。再生可能エネルギーは道具であり、道具は使い方次第です。地域の自然保全を前提とし、地域内で対話の場を設け、地域のためになり、地域の生活の質を高めるような、再生可能エネルギー事業の共創ができるはずです。

 3つめは、脱〇〇を進めることです。これまでの大量生産・大量消費・大量廃棄(大量リサイクル)、グローバル経済への依存、利益や効率を優先する経営戦略を見直し、新たな産業構造、事業モデルを創出することです。もちろん、これまでのビジネスの強みや存在基盤を活かすことが大切ですが、一定の経済水準を達成し、人口減少時代に向けた再構築を図るべき状況では、大胆な変革に向けて、何かを変える、すなわち“脱〇〇”を目指して、スタートしていかないといけません。例えば、最新のデジタル技術を活用することも含めて、モノではなく、サービスを売るという脱物質を図ることが考えられます。こうした“脱〇〇”はカーボンニュートラルを実現することにもつながります。

 カーボンニュートラルを通じて、ビジネスと地域を豊かにしていく時代になりました。地域づくりとビジネスを同時一体的によきものとしていきましょう。


コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 「気候変動のおかやま学」実... | トップ | 対話をテーマにした新聞コラム »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。

持続可能性」カテゴリの最新記事