サードウェイ(第三の道) ~白井信雄のサスティナブル・スタイル

地域の足もとから、持続可能な自立共生社会を目指して

石炭とバイオマス

2008年02月20日 | 環境と森林・林業
 月曜日、火曜日と愛媛県に森林関連の取組の視察に行って来た。

 その中で、内子町のバイオマス利用、四国電力の石炭火力発電所を視察したが、両者の対照が面白かった。

 内子町は、内子座や歴史的町並みで有名なところ。その町並みの近くに、木造平屋の中学校が建設されたが、木質ペレットによるボイラーの床暖房が導入されている。日本中で数少ない事例であろう。木質ペレットの年間使用量は20t程度という。

 太陽光パネルや風力発電は町並みに合わないために導入されていない。景観と環境配慮のトレードオフの結果、景観が優先された。また、ペレットストーブも検討されたが、なかなか暖まらないという理由で、灯油ストーブが利用されている。

 内子町には、もう1つのペレットがある。竹のペレットだ。人工林に繁茂している竹を材料に、おからや醤油の絞り滓とまぜて固めて、ペレットにしたもの。牛の餌にしている。結構、臭いがよい。牛が竹の粉砕したものを食べている様子を見て、思いついたという。日本初の試みだ。

 内子町はバイオマスタウン構想を作成し、バイオマスの地産地消を目指している。現在、使用されているペレットは、岡山から瀬戸内海を橋で渡って調達している。一方、地域内のペレット製造も始められている。ペレットボイラーを導入する温泉整備も進められている。

 さて、内子町を皮切りにスタートした調査の最後に、四国電力の石炭火力発電所を訪問した。ここでは、石炭に、木質バイオマスを3%程度まぜて、燃やしている。

 木質バイオマスの燃焼により発生した二酸化炭素は、もともと光合成により木材として固定した二酸化炭素を大気中に返すだけ、カーボンニュートラルとなる。つまり、木質バイオマスを利用した分だけ、石炭燃焼による二酸化炭素排出量を減らしたことになる。

 この発電所では、年間1万トンの木質バイオマスを利用している。製材くず等が調達されているが、このバイオマス量は、東京の多摩地域で生産されている建材の量に匹敵する。木材供給の側からみれば、すごい量である。四国地域からすべて調達されているという。

 かたや、内子町では地産地消にこだわって、バイオマスをこつこつと利用し、かたや四国圏内からの調達にこだわってはいるが、大量のバイオマスを一気に燃やしている。

 いろいろなスケールでの試みが平行して実施されているのは、バイオマス利用の離陸段階にある現状において、悪いことではない。

 ただし、木質ペレットの需要が増大し、同時に四国電力でもさらに木質利用を増やそうとしたとき、製材くず等の発生元ではどちらに優先的に木くずを提供すべきか。私なら答えは決まっているが、どうだろうか。

 石油の価格の高等が進むなか、木質バイオマス利用は間違いなく進展する。その時、ペレットとチップなど、どのような形態で利用すべきか。また石炭との混焼等の大口需要と地域内の熱需要等のどちらを優先すべきか。各市町村毎の独自の判断に任せるだけでなく、また市場の原理にまかせるだけでなく、目標像やシナリオを共有していくべきと感じた。

 大量に木くずが発生する場所では、地場需要より供給が上まわるため、他地域に輸送することを考えてペレット化を行い、発生量が少ない場所ではチップ形態で地場利用をすることが考えられる。

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