サードウェイ(第三の道) ~白井信雄のサスティナブル・スタイル

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地方自治体における気候変動適応策の阻害要因の解消

2014年07月06日 | 気候変動適応

 気候変動の適応策について、2013年7月に中央環境審議会に小委員会が設置され、国レベルの適応計画の検討が開始され、2015年に同計画が策定される予定である。緩和策(低炭素施策)のように法的根拠が整備される見通しはないが、国レベルの適応計画において、国の施策が示されるとともに、地方自治体の役割が示されることにより、地方自治体における適応策の検討を加速する可能性がある。

 

 これにより地方自治体における適応策の普及を阻害する要因の一部は、国の適応計画の策定とそれに連動する国の施策により、解消される可能性がある。適応策が新しい施策であること、適応策の研究あるいは政策としての未成熟さがあることといった適応策の性質も阻害要因となっているが、IPCCの第5次評価報告書の公表や今後の普及活動により、解消される面がある。

 

 しかし、将来影響予測の不確実性が適応策普及を阻害している側面については、さらに踏み込んだ検討を行わないと、阻害要因が解消されない可能性がある。将来影響への対策よりも現在に顕在化している問題への政策が優先されるだろうし、将来影響の発生が不確実であればなおさら、対策の正当性を確保することができない。この課題については、3つの側面での取組みが必要である。

 

 第1に、気候変動のみならず、人口減少、行財政制約、エネルギー価格の高騰、自然災害等のように2050年あるいは2100年に向けて進行が懸念される課題に対して、長期的な視野でのリスクマネジメントを行う行政計画制度を検討,創出することである。

 

 第2に、不確実な気候被害に対して、最大被害想定を行い、最大限の対策をとるという自然を制御する思想での対策ではなく、不確実性を前提とした計画・設計手法を開発・導入することである。自然現象をすべて解明し、制御することは不可能であり、科学には不確実性が伴うことを謙虚に受け止めた思想にたち、気候被害の状況を常に監視し、被害発生を未然に防止する対策を状況に応じて柔軟に選択するという方法論の確立が必要である。

 

 第3に、気候変動の地域影響の解明と予測、適応策に関する科学的知見と地域のステークホルダーが持つ現場の知見を統合・調整するための主体の確保である。現在の先行地域における適応策の推進においては、地域の公設研究機関が重要な役割を果たしている。将来影響予測の不確実性による普及阻害を解消するためには、気候シナリオによる影響の幅の持つ意味や前述の不確実性を前提とした対策のとり方について、地域内での調整を行うため、これらの公設研究機関の役割がさらに重要である。

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