2017年も、気候変動適応策の研究として、地域における気候変動適応策のアクションリサーチを実施しました。以下に報告します。
- 気候変動の将来影響の予測に不確実性があるなかでの管理手法として「順応型管理」の方法を気候変動適応分野に当てはめて、理論化・具体化する研究の成果を論文(日本計画行政学会)にまとめ、農村計画学会や環境情報科学の機関誌でも順応型管理を紹介する寄稿をさせていただきました。
- 地域住民等が気候変動の地域への影響を調べ、結果を共有し、適応策を具体的に話し合うという一連の学習プログラムを「気候変動の地元学」と名付け、全国各地で実施してきていますが、2017年度は浜松で実施することができました。
- これまで実施してきた全国8地域での「気候変動の地元学」による参加者の学習効果を分析し、計画策定への接続について考察した論文をまとめ、環境教育学会で論文掲載を得ました。12月発行が遅れているようですが、1月には発行になると思います。
- 神奈川県相模原市の藤野地区では、「気候変動の地元学」(第1ステージ)を入り口にして、住民主導で適応策を検討するワークショップ(第2ステージ)を行い、その成果をもとにしたシンポジウムを2017年11月に開催したところです。第3ステージはいよいよ、住民主導での適応アクションの立ち上げになります。
- 「気候変動の地元学」を最初に試行したのは長野県飯田市なのですが、その結果、干柿(市田柿)への気候変動の影響が深刻であることがわかり、飯田市の隣町で、市田柿発祥の地である高森町で、気候変動の市田柿への影響と適応策に関する農家等へのインタビュー調査とアンケート調査を実施しました。2017年は、調査結果を農家に報告し、農家に適応策を話し合ってもらうワークショップを開催しました。高森町と法政大学は2017年度から3年間の事業協定を結んでおり、今後も市田柿の価値と競争力を高める方向での適応策の実践支援を行っていく予定です。
【気候変動適応関連の査読付論文(2017年)】
「気候変動適応における順応型管理~計画枠組の設定、及び水稲の計画試論」白井信雄・田中充・嶋田知英・石郷岡康史、日本計画行政学会、2017年2月
「「気候変動の地元学」の実証と気候変動適応コミュニティの形成プロセスの考察」白井信雄・田中充・中村洋、環境教育学会67号、2018年1月(予定)
【気候変動適応関連の論文・原稿(2017年)】
「農村計画における気候変動適応-順応型管理、感受性の改善、コミュニティ主導」農村計画学会誌Vol. 36 No. 3、2017年9月
「不確実な将来への順応型管理:気候変動適応策としての具体化」環境情報科学46巻4号、2017年12月
【気候変動適応関連の学会発表(2017年)】
「地球温暖化はどのように地域の問題なのか:長野県高森町の市田柿の事例研究」白井信雄、地域活性学会第8回研究大会 年会、2017年9月
【気候変動適応関連の講演(2017年)】
関東気候変動適応策セミナー「地域から気候変動の影響に適応していくためには」にて講演「気候変動の地域づくりへの影響と適応策の共創」2017年3月15日、大宮ソニックシティホール4階 国際会議室(埼玉県さいたま市)
「気候変動の浜松学」研修会講師「地球温暖化・気候変動への適応」2017年7月5日・9月11日、浜松市役所本庁舎(静岡県浜松市)
大学コンソーシアム岡山コーディネート科目「地球温暖化論」にて「気候変動が及ぼす影響と適応策」の講義、2017年8月29日、岡山大学 一般教育棟A棟2階 A21講義室(岡山県岡山市)
静岡市適応策勉強会の講師「気候変動適応策とは」2017年10月25日、静岡市庁舎新館18階(静岡県静岡市)
JICA課題別研修「気候変動の適応」コースの講師「気候変動の地域への影響と地域の適応策事例」、2017年11月2日、JICA筑波(茨城県つくば市)
「気候変動の藤野学」シンポジウムでの講演「気候変動の地域づくりへの影響と適応策の共創」とパネルディスカッションのコーディネイター、2017年11月、藤野商工会館3階大会議室(神奈川県相模原市)
環境経営学会シンポジウム「気候変動適応における地域と企業の連携について」にて基調講演「コミュニティ主導の気候変動適応策の実践:「気候変動の地元学」を入口にして」、2017年12月8日、東京都ビッグサイト会議102会議室(東京都江東区)