サードウェイ(第三の道) ~白井信雄のサスティナブル・スタイル

地域の足もとから、持続可能な自立共生社会を目指して

環境と社会をつなげる環境政策

2020年01月05日 | 持続可能性

 環境と社会の統合的発展は、「環境から社会へのプラス作用」と「社会から環境へのプラス作用」の双方向の効果を高めていく発展である。「環境から社会へのプラス作用」を考える際、社会面の捉え方が曖昧になりがちである。まずは、社会面とは何かを明確にする必要がある。

 

 社会面の範囲を設定するうえで、SDGsを参考にすることもよい。貧困、飢餓、健康と福祉、教育、ジェンダー、平等、平和と公正、パートナーシィップが社会面に該当する。

 

 また、持続可能な発展の規範に基づき、社会面を設定することができる。社会面には、「社会・経済の活力」のうちの経済面によらない部分と「公正への配慮」といった2つの側面がある。「リスクへの備え」もまた、経済面とは異なるため、社会面と位置づけることができる。

 ここで、筆者は、持続可能な発展の規範を、「社会・経済の活力」「環境・資源への配慮」「公正への配慮」「リスクへの備え」の4つとして整理している。

    

 

 持続可能な発展の規範に基づき社会面を設定し、「環境から社会へのプラス作用」各側面での効果を整理したのが表11.2である。これをもとに、地域における「環境から社会へのプラス作用」について、重要な3点を示す。

 

 第1に、コミュニティあるいは市民の参加・協働によって環境対策を行なうことで、「社会的活力の向上」や「一人ひとりの成長」といった社会面での効果を得ることができる。環境政策のPDCAを行政と専門家だけで行なってしまうと、環境面での効果が発揮されたとしても、社会面の効果が十分とはならない。社会面の効果を意図した環境政策のプロセスのデザインが必要である。

 この際、コミュニティあるいは市民の参加・協働を得ることで、環境面での効果も発揮やすい。市民等が問題を自分ごととして捉え、主体的な取組みを進めることが期待できるからである。

 

 第2に、「公正への配慮」や「リスクへの備え」の効果を十分にするために、社会経済的弱者の視点をもって環境対策をデザインする必要がある。ここで、社会経済的弱者とは、女性、高齢者、身体障がい者、精神疾患、貧困、失業者、過疎地等の条件不利地域居住者等である。環境保全活動や環境ビジネスへの社会経済弱者の参加、環境対策による収益の福祉への還元、環境対策による条件不利地域の再生等は、それを意図することで効果を発揮する。

 この際、環境対策の経済面の効果の発揮を重視し、効率性やスピードを重視してしまうと、社会面の効果を発揮する工夫は導入しにくい。また、社会経済的弱者を施しの対象とするのではなく、社会経済的弱者と一緒に環境対策をデザインするという協働の視点が求められる。

 また、社会経済的弱者が自然災害や気候災害等の被害者となりやすいことから、「リスクへの備え」という面でも社会経済的弱者の視点からのデザインが必要である。

 

 第3に、地域資源や中間技術を上手く使うことで、社会面の効果を発揮しやすい。地域資源とは地域にあるものであり、その近くにいる住民の参加や地域再生を図りやすいためである。

 そもそも、中間技術は社会のための技術である。例えば、市民出資で活用する再生可能エネルギーは中間技術であり、コミュニティあるいは市民の参加・協働の道具として、社会面の効果を発揮しやすい。


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