サードウェイ(第三の道) ~白井信雄のサスティナブル・スタイル

地域の足もとから、持続可能な自立共生社会を目指して

【ご案内】「持続可能な社会のための環境論・環境政策論」の出版

2020年09月27日 | 持続可能性

 拙著「持続可能な社会のための環境論・環境政策論」が2020年9月30日に発刊となります。この本のはしがきの一部を以下に転載し、紹介とさせていただきます。

 本書は、出版社である大学教育出版のサイトはもとより、オンラインで購入できます。

 

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 本書は、環境問題や環境政策(解決方法)を学ぼうとする大学生と社会人(企業人)、そして行政で環境政策を担当する人に向けた教科書として作成している。環境問題や環境政策は一般教養として学ぶべきテーマであり、また工夫と熱意が求められる行政分野である。

 環境問題や環境政策に関心がない人には、本書を入門編として関心を高めてもらえるように、既に関心がある人は環境問題や環境政策の奥深さを知り、さらに思考を深めてもらえるように、本書を作成している。また、本書は環境政策の現場にも役立つことを意図しており、環境政策の基礎や施策の見直しや新たな施策の立案に役立つような内容としている。

 さて、環境問題や環境政策に関する書籍は既に多い。本書は、先行書籍と重なる内容を含んでいるが、本書独自の特徴を打ち出すように作成している。本書で意図した特徴は次の5点である。

【本書の特徴】

  • 環境政策の目標を、「環境問題の解決を通じた持続可能な社会」の実現においている。では、理想とする持続可能な社会とは何か。その考え方を本書に整理するとともに、持続可能な社会を目指すために必要となる、「拡張された環境政策」の基本と実践を本書で扱っている。
  • 環境問題と福祉や経済等に関連する社会経済問題は相互作用の関連にあることを解きほぐし、「環境問題と社会経済問題の統合的発展(両問題の連環的解決)あるいは同時解決(両問題の根幹的解決)」という方法を本書で扱っている。この統合的発展と同時解決が、持続可能な社会を実現する方向であり、その方法が拡張された環境政策である。
  • 環境問題を理解し、環境政策を考え、持続可能な社会を実現するためには、生物学・生態学・化学・気象学等の自然科学ととも、社会学・経済学・政治学・心理学・哲学等の人文科学の知識を動員し、それらを応用して、組み合わせて活用することが必要となる。このため、本書では、持続可能な社会の実現のために必要な理論や知見を、学問分野を問わずにとりあげる。
  • 持続可能な社会の実現においては、市民あるいは事業者の自主的な参加と協働が不可欠である。参加と協働は、理想する社会を実現する手段であり、その確保自体が社会のあるべき目標である。本書では、市民や事業者の主導を重視し、それを行政が支援するという観点から拡張された環境政策の方法を示している
  • 持続可能な社会の実現のためには、地域の市民や事業者が、理想を共有して、地域からイノベーションを起こし、その普及・波及、地域間の連鎖により、社会経済システムを転換につなげていくというボトムアップの動きが重要である。本書は、「地域からのイノベーションによる社会転換」を実現するための理念と方法を記している。

 

 次に、これから本書のページを開く方のために、本書の構成を説明する。読者の関心や学習ニーズにあわせて途中から読んでいただいて構わないが、できれば第1章から順番に、環境とは何かという基本的なことから順番にページをめくっていただくことをお勧めする。

 なお、参考までに巻末に索引を示しているが、専門用語の説明は本書独自の定義出ない限り、本文中で省略している。本書とあわせて、インターネット検索により、専門用語の定義や意味を調べていただくのがよい。

 【本書の構成】

  • 本書は、大きく「環境論」と「環境政策論」で構成される。「環境論」で問題の構造を理解し、その問題の解決の方法を「環境政策論」で学ぶという流れになっている。
  • 「環境論」は、第1章から第5章まである。環境とは何かという問いかけから始まり、環境問題の過去・現在・将来のことを学ぶ。さらに、第5章では、環境問題に対する政策や行動を考えるうえで重要な「基本的な枠組み」を整理する。この「基本的な枠組み」を知ることが、持続可能な発展の規範や方向性を理解するうえで必要である。なお、「環境論」では問題の要因を解きほぐすが、問題解決の方法は「環境政策論」で示すようにかき分けをしている。
  • 「環境政策論」は、第6章から第12章である。政策とは理想と現実とのギャップを解消することであるが、その理想となる持続可能な発展の姿を第6章に示したうえで、それを実現するための拡張された環境政策の体系、政策の基本的な考え方と手法を第7章から第9章、分野別あるいは横断的な環境政策の実践論を第10章から第12章に示している。

 

 はしがきの最後に、本書を読む方に問いかけをしておく。環境問題や環境政策をなぜ学ばなければいけないのだろうか。講義の単位や仕事のため等と言わないでいただきたい。自らが学ぶ必要性を感じていないと、学びは受動的になってしまう。

 学びにおいては、面白い、ワクワクするという知的好奇心が大事である。しかし、環境問題という人の生命や基本的人権の侵害に関わるような問題を学ぶにあたっては、それだけを学ぶ動機とするわけにはいかない。

 環境問題や環境政策を学ぶ必要性として、9つの側面を以下に説明する。あなたはどの必要性を感じるだろうか。学びとは考え方(枠組み)の変化である。本書による学びの結果、環境政策等を学ぶ必要性の捉え方が変わり、学ぶ前に思っていたことは別の側面での学びの必要性を考えるようになったり、学びの必要性をより多角的に、より深く捉えるようになっていただければと願う。

【環境問題や環境政策を学ぶ9つの必要性】

  • 今の社会や自分や家族の暮らしを維持し、守っていくことが必要であり、そのために環境問題を解決する必要があるから(慣性の維持
  • 環境問題は、人類あるいは自分にとって存続や生命・基本的人権を損なう非常事態であり、それを回避する必要があるから(非常事態の回避
  • 便利で快適な暮らしをしていることが環境問題の原因であり、私自身が環境問題の加害者であり、解決に向けた責任があるから(加害者の責任
  • 人間は、本来、自然とともにある生物であり、自然と一体的にある自分を大切にする必要があるから(内なる自然
  • 環境問題を通じて、自然や人を大切にし、自分も成長していくことができるから(より良き生き方
  • 環境問題の解決で損や負担をする人と、得をして楽をする人がおり、その利害調整をすることが必要であるから(利害の調整
  • 法制度や社会的な通念として、環境への取組みが求められており、それを知ることが必要であるから(規範の遵守
  • 環境問題は開発途上国の人々や高齢者や子ども、心身障がい者等の弱者に深刻であり、弱者を守る必要があるから(正義の実現
  • 社会経済の構造、生活様式、土地利用等といった根本を変えることが、環境問題のみならず社会経済の問題の解決につながるから(根本の解決
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