サードウェイ(第三の道) ~白井信雄のサスティナブル・スタイル

地域の足もとから、持続可能な自立共生社会を目指して

環境問題を解決する力、持続可能な社会を築く力

2020年04月18日 | 持続可能性

(1)持続可能な社会のためのリテラシー

 環境問題を解決し、持続可能な社会を実現するためには、一人ひとりが知識や姿勢を改善するだけでは不十分である。環境問題は複雑であり、問題の全体像を捉え、深く考えて、取組みを選択し、実行していくことが必要となる。

 このため、一人ひとりが「環境問題を解決し、持続可能な社会を築いていくためのリテラシー」を高めなければならない。リテラシーとは、目的に対して必要とされる知識、姿勢、能力、行動のことである1)

 必要とされる知識は、環境問題の状況や構造、対策、行動に関する幅広いものであり、生態学、生物学、化学、気象学、工学、経済学、社会学、政治学、心理学、哲学、倫理学等の多様な学問にまたがる横断的なものである。

 必要とされる姿勢とは、問題の重さや関係者の気持ちを受けとめる感性、問題への関心、加害者としての責任帰属の認知、対処行動の有効性の認知、行動をしようする意図を持つことである。

 必要とされる能力はコンピテンシーといわれ、次に詳細を示す。必要とされる行動は、生活行動と社会行動に分けられる。

 

(2)持続可能な社会のためのコンピテンシー

 コンピテンシーとは、目的を達成するために必要とされる能力のことである。

 持続可能な社会のためのコンピテンシーを高めるべきは、行政や企業、NPO等の担当者として専門的に行う人だけではない。専門家を目指さない一般であっても、それ相応にコンピテンシーを高めることが必要である。

 私(たち)は、誰もが社会の構成員であり、地球に存在する人類の一員であり、複雑化する今日の状況において、誰もが環境問題や将来の持続可能な発展にかかる加害者であり、被害者であり、解決者でなければならないからである。

 「持続可能な社会のためのコンピテンシー」は、「システム思考」、「予測」、「規範」、「戦略」、「協働」、「批判的思考」、「自己認識(内省)」の7つにわけられる。7つのコンピテンシーを説明する。

  • 「システム思考コンピテンシー」とは、多様で複雑な環境問題を理解したうえで、自分と環境問題のつながりを考える能力である。
  • 「予測コンピテンシー」とは、環境問題が将来どのようになるかという予測を理解し、そのことが自分や自分の子孫にどのような影響を及ぼすかを考える能力である。
  • 「規範コンピテンシー」とは、環境倫理や環境正義の考え方を理解し、環境倫理や環境正義の視点から、自分の行動を評価し、考える能力である。
  • 「戦略コンピテンシー」とは、自分の環境配慮行動を設計し、実行する能力である。自宅でのカーボンゼロを実現するための設備の更新や建て替え等にも戦略が必要である。
  • 「協働コンピテンシー」とは、環境配慮の必要性を人に伝え、協力を得ていくための能力である。
  • 「批判的思考コンピテンシー」とは、他者の考えや提案について、他者の背景や特徴を理解したうえで、自分の同意あるいは批判を表明する能力である。ここで、批判とは他者の間違いを指摘することばかりではない。批判とは、他者を理解を深めるため好意的な対話のプロセスでもある。
  • 「自己内省(内省)コンピテンシー」とは、自分自身について、俯瞰的に捉え、自分の役割を整理したり、内面を見つめ直して深める能力である。

 

(3)自分と異なる他者への理解と共感

 環境問題や持続可能性を損なう問題の本質は、他者に対する配慮がないことにある。このため、他者に配慮する社会制度の設定や規範の共有が必要となるが、一人ひとりにおいては他者をよく「理解」し、他者に「共感」することが大切である。

 外部からの期待に対応する他者への配慮は自分の負担となり、継続しない。他者の痛みを理解し、感じることで、その解消による人の喜びは自分の喜びとなり、配慮の継続や次の配慮への導きとなる。

 しかし、自分とよく似た人、経験を共有して来た人、近くにいてよく会う人への理解や共感はできても、「異質な他者」への理解や共感は難しい。富裕層は庶民的な人、先進国の人は未開の国の人に、環境問題の被害を感じない人は被害を感じている人を理解し、共感することができない。特に、強者が弱者を理解し、共感できないことは、環境問題における強者・弱者問題を解消できない点で致命的である。

 異質な他者への理解や共感を高めるために、2つのことが大切である。

 第1に、他者が自分とどこが違うのか、他者はなぜそうなのか、それ背景は何か等と、他者を理解しようとする深い思考を、日頃から行なうことである。深い思考による他者の理解は、他者との関係性を高めながら行なう対話によって得られる。

 第2に、多くの体験を人と共有し、様々な立場の人と交流し、自分を内省する機会を常に持ち続けることである。これにより、自分の外的拡張や内的深化が図られ、「共感」できる他者が広がる。体験が多くなり、ある程度の視野の広がりができれば、想像力が「共感」できる他者を増やしてくれる。

 

参考文献

1)the North American Association for Environmental Education,Developing a Framework for Assessing Environmental Literacy,2001

2)UNESCO, Education for Sustainable Development Goals: Learning Objectives, the United Nations Educational, Scientific and Cultural Organization, 2017

 

 


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