松浦亜弥の10枚目のシングル曲。
2003年6月4日に発売。
作詞・作曲:つんく♂、編曲:鈴木Daichi秀行(鈴木さんについては「気がつけば あなた」の項参照)。
オリコンには2003年6月16日付で、初登場3位(5.7万枚の売上げ)。
その週の1位はHYDE「HELLO」、2位はEXILE「Together」。
翌週には14位に後退し、その翌週にはベスト20の圏外。
最終的に8万8千枚の売上げを記録。
前作「ね~え?」の売上枚数を下回ったものの
まずまずの結果を出した。
リアルタイムであややを見聞きしていた個人的な記憶を辿れば
この曲あたりが最後になる。
「うたばん」(TBS)のMC石橋貴明のお気に入りでもあったので
それにあややがよく出演していたのを覚えているが
曲そのものは、あややのイメージに合っていないように
当時は思っていた。
今にして思えば
「The 美学」以降
本来のあややのイメージよりも
つんく♂の脳裡に浮かぶ”モー娘。風の楽曲のイメージ”のほうが優先されていたのか。
この曲にしても、同じ時期のモー娘。の新曲「AS FOR ONE DAY」より
はるかに出来が良くて、モー娘。向きのように思える。
ただ、当時のモー娘。の人気の中心は
加護、辻コンビだったので
こういう大人びた歌は似合わないという計算もあっただろう。
そもそも、加護、辻程度の歌唱力で
張り上げるフレーズの多いこの曲が歌い切れるとは思えないし。
そんなわけで、イメージとは違うが
それなりに歌いこなしてしまうあややに
この曲が回ってきたと考えられる。
(こういう理詰めの考えというより、つんく♂自身の直感でそうなったのだろうけど)
なかなか珍しいコード進行の曲で
いかにもプロの作曲家が手練で仕上げたという感が強い。
駆け出しの作曲家では、こういう構成で上手にまとめるのは難しいのではないか。
まず、F#m→E→D→C#と一音ずつ下りてくるパターンを使用。
そのコード進行を反復しながら
今度は途中からF#m→G#m→A→B→C#(sus4を挟む)と
逆に一音ずつ上げていって、Aメロが終了する。
と思ったら、いきなりE♭mが登場してきて
そこからA♭→B→B♭という展開になるのが新鮮である。
そして、そのままE♭mのBメロが始まり
一通りパターンのコード進行を続けた直後
B→B♭の繰り返しから
B→B♭→A♭→G♭→Fと急降下するコードの流れ。
あれっと思うと、その直後に半音上げてF♯mとなって
最初のAメロに戻るという絶妙のつなぎとなっている。
その2回目のAメロでは
最後に半音上げて(C♯→Dへ)終わりBメロに進むのだが
AメロとBメロでは展開するコードが違うので
この2回目のBメロは、Aメロが半音上がった影響を受けず
そのままE♭mで展開される。
そして、またしても最後にFで終わり、
次の(3回目の)AメロがF♯mで始まるという仕掛け!
そのAメロも、またまた最後に半音上げてDで終了させ
今度はBメロを途中からつなげていくのだが
ちゃんとE♭mの調性を保ったままである。
つまり、調性の違う2つのコードのメロディを合体させながら
それぞれのメロディのつなぎ目で必ず半音上がったように
聴く者を錯覚させながら
音そのものは(曲の調性そのものは)全然上がっていないままという
魔法のような曲なのである。
この魔法を見事に表現しているのが
「想いあふれて」ライブの亜弥さん。
半音上がるAメロの最後を
抜群の声量で歌い切って
いかにもどんどん盛り上がっていく風に見せながら
実は最初の音域のなかに収まっているという不可思議。
上手いなあと思うし
こういうのは、声質の変化した今の亜弥さんでも
十分いけるんじゃないかという気がする。
松浦亜弥 - GOOD BYE 夏男
そんなに凝った作りの曲だったとは知りませんでした。
勉強になります。
僕も、この「想いあふれて」のテイクがベストだと思います。
皆さんも、同じ意見ではないでしょうか。
初期の頃の、ヘンな振り付けよりも、ずっと格好いいですし、
何より、松浦亜弥さん自身が、楽曲に似合ってきたのだと思います。
間奏の 菊池真義氏のギターソロも素晴らしい。
せっかくのソロプレイなのにあまり撮してもらえてなくって残念です。
そこにこの曲のコードが載っていたので
こういう利口ぶった解説(笑)を書くことができました。
http://www.ufret.jp/artist.php?data=%E6%9D%BE%E6%B5%A6%E4%BA%9C%E5%BC%A5
以前から、亜弥さんのこの歌いっぷりを聴いて
どんどんキーが上がっていくような錯覚に陥っていたので
一体どういうことなんだろうと思っていたのですが
このコードを解析して、長年の疑問が解消しました。
それにしてもプロの技ですねえ・
ずぶの素人にはこんな曲は書けないと思います。
また亜弥さん復活の際は
ぜひこの曲も歌ってほしいと思っています。
「部屋とYシャツと私」とか「love letter」とかは
もう以前のような美声が出なくなっているはずなので期待薄ですが
この曲なんかはまだまだイケると思うので。