korou's Column

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松浦亜弥ディスコグラフィー 27 「Click you Link me」

2015-10-03 | 松浦亜弥

 

2010年11月24日に発売された企画アルバム「Click you Link me」に収録された

アルバムタイトルと同名のオリジナル曲。

作詞:2℃、作曲:隆勇人、編曲:高橋諭一、ホーンアレンジ:竹上良成。

 

作詞の2℃という人については、Web上でもほとんど情報がない。

アニメ”きらりん☆レボリューション”関係のサウンドに関係しているようだが

それ以外で名前を見ることはない。

作曲の隆勇人という人も

ジャズ系のミュージシャンで

ピアノ、ギターの演奏、ジャズ関係の講座の講師もするという程度の情報しかない。

一方で、編曲の高橋諭一

松浦亜弥の楽曲を多く手がけている名アレンジャーで、

ホーンアレンジとしてクレジットされている竹上良成は

松田聖子や水樹奈々のコンサートにも参加している有名なプレイヤー、アレンジャー。

つまり、かなり珍しいメンバーに楽曲をお願いして

出来上がった楽曲をシティミュージック風に聴かせる部分では

一流のアレンジャーに依頼したというところだろうか。

 

歌詞をあらためて見てみると

随分と素人っぽいフレーズが続く。

深い物語も、劇的な構成も皆無だ。

この当時の亜弥さんの歌唱力、表現力を思えば随分な出来ばえだが

軽快でオシャレなイメージが先行するこの曲のようなケースでは

歌詞にあまり意味をもたせても曲調に埋もれてしまうとも言えるので

そのへんはあまり追求しても仕方ない。

とはいえ、もっと気の利いたフレーズで

特別なシーン、感情を切り取ってほしかったとも思ったりする。

 ”流れ星が 願いをかなえますように そっと見上げた 空の下で”

なんて、女子高校生が感傷的に書いた歌詞のようだ。

24歳の女性が歌うフレーズとしては幼稚すぎるだろう。

 

曲そのものについては、予定調和で破綻がない出来栄えだ。

メロディラインが流れに乗ってぐんぐんと伸びていって

その勢いのまま最後まで音符が違和感なく貼り付けられたという感じ。

そういうのが好きな人には結構ハマり

そういうのがイマイチな人にはもどかしい曲調になっている(ちなみに、私の嗜好は後者)。

 

となれば、後者の嗜好をもつ人のために

アレンジで変化を与えてほしかったのだが

(個人的感想を述べれば)この曲のアレンジはいただけない。

Aメロを何度も繰り返した後

やっと途中から、主旋律に反応する形のフレーズが出てくるのだが

これはもう少し早い段階で

ホーンセクションのそういったフレーズを出して

一気に愉しい雰囲気を醸し出してほしかったところ。

何回聴いても、出だしのところが物足りない。

逆に、Bメロに展開する際に

亜弥さんの歌声とバックバンドが

綺麗に揃ってクレッシェンドしていくあたりは見事で

その後の流れも悪くない。

ところが、間奏になると何の工夫もなくて退屈で

イントロをあれだけうまく聴かせたのにどうしたことか、といった具合で

不満な点がいくつも出てくるのである。

 

 (そういった「物足りなさ」と「美しさ」について

 以前から漠然とは感じていたのだが

 今回何度も何度も聴いて

 やっと言葉として表現することができた。

 こういうシティ系、ライト・ジャズ系の音楽は

 全体としての印象は早くつかめるのだが

 それなら、どのポイントがその印象を作るのか

 ということを書こうとすると結構難しい)

 

最後の数年で声質が変化して

しっとりとした曲を美しい中高音で聴かせる歌唱が難しくなった時点で

歌手活動を停止している今の亜弥さんなので

こういうオシャレ系の曲を巧みに歌いこなすところに新境地を見出してほしいと

個人的には願っているのだが

じゃあ、どんな曲をどんなアレンジでどんな風に歌えばいいのかということになると

なかなか難しい。

そういう点も含めて、この曲については

いろいろと考えるポイントが多かった。

今後亜弥さんが歌手活動を再開したとしたら

この曲などは

今後の歌唱スタイルを考える上で

大いに参考になるのではないかと思ったりする。

(とはいえ、まだ、あの奇跡の中高音が出せるのなら、そんな作業は不要だが)

 

本当は、ライブのほうで真価を発揮する亜弥さんなので

この曲についても、最近magoさんが「発掘」された映像から

この曲の唯一のライブ映像を貼り付けたいところだが

残念ながら、その映像では

亜弥さんとホーンセクションの演奏者との呼吸が合っていない感が強い。

予定調和でもOKの人なら、そのへんはあまり重要でないだろうが

私のような予定調和+αがツボの人間には、そのあたりが不満である。

綺麗なメロディが裸のまま提示されているようで

それを補うフレーズがうまく絡めていない残念な演奏に聴こえる。

 

その点、アルバム収録のスタジオ録音のほうは

Aメロの繰り返しの途中から副旋律として現れるフレーズが

主旋律に絡んでくるあたりがたまらなくいいし

録音作業の過程で、亜弥さんとバンドとの一体感も出ているようだ。

ライブよりアルバムのほうが良いなんてことは

今までの亜弥さんだとあり得なかったことだが

こういう曲調の場合、あり得るわけだ。

 

亜弥さんが復活したとしても

普通に考えて本格的なツアー活動などは考えにくく

そうなると、バックバンドとの阿吽の呼吸などは望みにくいだろう。

さらに声質の関係、本人の音楽の嗜好の変化などから

シティ系、軽いジャズ系の曲が増えるとなると

今までとは逆に

ライブよりスタジオ録音のほうが優れているということは増えてくるかもしれない。

ライブについては、ライブならではの醍醐味は残るだろうが

それは参加した人のみが知る愉しみとなり

ライブ映像だけでその才能、奇跡を堪能する愉しみは減っていくのではないかと

思うのである。

すでに「クリスマスナイト2013」などで

その徴候は見えてきていると思うのだが。

 

そんな風に思えてきたので

今回の動画はアルバムからの音源です。

 

Click you Link me 松浦亜弥

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4 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
アルバム音源がいいです。 (大sansan)
2015-10-03 17:01:29
僕もこの曲については、CD音源の方が好きです。
僕の場合、
ライブ音源は、何というか、ホーン(キーボード?)の音が、頭に響いてツラくなるんですよ。

それから、
「Click you Link me」は、わりと最近まで、洋楽のカバーだと思っていました。
アルバムジャケットのせいかもしれませんw
返信する
私も同じ錯覚をしていました (korou)
2015-10-03 21:23:35
私も、なぜか
この曲は洋楽のカバーだと思っていた時期がありました。
洋楽のAORサンドと、今の日本のシティ派音楽とでは
ちょっと聴いただけでは区別がつきにくいかもしれませんね。

ライブ音源のホーンの音量については
ライブ録音なんで
ある意味仕方ないところもありますが
たしかに耳につく感じもしますね。
演奏自体は全然悪くないと思うのですが
やはり亜弥さんとの呼吸がイマイチに感じます。
返信する
私も (おいちゃん)
2015-10-05 22:59:05
http://youtu.be/1BqKJeN2q7M
結構頑張って歌ってますよね。

大sansanさんの仰る通り、ブラスがキツイ録音になっていますよね。
しかしながら楽曲としては小編成の生演奏むきではないような気もします。
また即興的な掛け合いは期待しようがなく、きっかり予定通り演奏して聴かせる曲といったところなのでしょうか。

私もこの曲に関しては、アルバムバージョンが良いと思います。
返信する
コットンクラブ (korou)
2015-10-06 21:17:48
>おいちゃんさん

亜弥さん、頑張って歌っているんですが
何か声に潤いと余裕がないように思います。

ブラスの部分の録音は何とかならなかったのでしょうかねえ。
コットンクラブでの録音はいつもこんな感じで
音質的にはいつも不満が残ります。
「コットンクラブは音響が優れている」というのは後で知ったことで
私はずっと最悪の会場だと勘違いしていました。
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