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ニッポンのゆる~い日常

韓国宗教家の国政介入事件 今も尾を引く「古代性」

2016-11-09 13:18:46 | 正論より
11月9日付     産経新聞【正論】より



韓国宗教家の国政介入事件 今も尾を引く「古代性」   筑波大学大学院教授・古田博司氏


http://www.sankei.com/column/news/161109/clm1611090005-n1.html



 韓国が女性実業家にして宗教家、崔順実容疑者の国政介入疑惑で揺れている。これは簡単に言えば、李氏朝鮮が朱子学を国教とする儒教国家だったにも関わらず、宮中に巫術師が出入りしていた伝統の回帰である。口寄せや占いを専業とする巫女(ふじょ)は王朝としては禁令だったが、宮中がこの密儀の誘惑に勝てたことはなかった。

 また、朴槿恵大統領と一宗教人との関係がこれほどずぶずぶになってしまうのは、コリアという不信社会で「チョン・トゥルダ(情が入る)」の間柄になると、このような結末に終わることが多いということで、これは後述しよう。




 ≪不信社会が生んだ強権政治≫


 不信社会なのは南のみならず北も同様である。朝鮮半島は東部には山地があるが、西側は平坦(へいたん)で、17世紀に侵攻した満洲軍は、奉天(瀋陽)を出発してソウルを陥落させるまで2週間しかかからなかった。地政学的に「行き止まりの廊下」なので国を守ることができない。契丹族、モンゴル、豊臣秀吉、満洲族いずれの侵攻のときも王は真っ先に逃げた。朝鮮戦争では南も北も為政者が遁走(とんそう)した。

 致命的な地形であり、日本の隣にあるのは、イタリア半島やバルカン半島ではなく、少しましなパレスチナと思ったほうが良いだろう。ましというのは、南北からしか侵攻できず、すそが海で切れて行き止まりになっているからである。そこに溜(た)まった民衆は伝統的に為政者に不信感を持っているので言うことを聞かない。支配するには強権政治しかないのである。


 李朝時代では刑政の官以外にも各役所に牢獄(ろうごく)があり、不服従だとみなされるとその場で獄に繋(つな)がれた。これを「濫囚の弊」という。みだりに捕らえる伝統があり、産経新聞ソウル支局長の名誉毀損(きそん)起訴事件でも、私はこの伝統を指摘しておいたのだ。




 ≪伝統だった告げ口と威嚇≫


 朴槿恵大統領の告げ口外交は、コリアの宮廷のイガンヂル(離間策)が起源である。王は朝から晩まで臣下たち相互のイガンヂルを聞かなければならない。史料を読むと、役人の嫁の不倫まで王の裁定を仰ぐ形で言いつけている。王と臣下同士もすべて不信の関係である。ゆえに朝鮮政治は王権と官僚群のシーソーゲームとしてあらわれ、後者は武人と組んで、王を廃することもあった。



 今の北朝鮮で一番これを恐れているのが金正恩氏であり、家臣団に排除される恐怖からの威嚇と、国威発揚による人気獲得のため、すでに父を超える2倍のミサイルを日本海に発射したのである。

 このイガンヂルは東洋の国際関係にも有用だった。明の時代を例にとれば、朝鮮も満洲族もモンゴル族も互いに相手の悪口を明に言いつけるのだ。内容は突然、李朝が攻めてきて大量虐殺されたとか、満洲族が国境を越えて民を奴隷として拉致したとか、そういう文書による告げ口なのである。


 明の裁定で埒(らち)があかないと、満洲族は李朝に朝貢して臣下になってしまうこともする。そうすると、明が礼の違反だとして李朝を叱責する。汝は明の東藩(東の王侯)ではないか、満洲族はあくまで「外の人」だと牽制(けんせい)する。つまり華夷秩序とは、王国内の日々の君臣関係を国同士の関係にまで拡大したものなのである。

 忠貞の厚い臣下と薄い臣下、臣下同士の告げ口と引きずり落とし、王の牽制と威嚇。伝統的にこのような関係しかなかったので、中国は今も威嚇と牽制の国際政治しか知らないのである。





 ≪進歩史観では歴史を被えない≫


 コリアに戻れば、前述の不信社会なので、韓国ではひとたび「情が入る」関係になると、すべてを許し合う魅惑の信頼関係へと変ずるのである。朴槿恵氏と崔容疑者の関係がこれであり、こうなると底がない関係になることはすべての韓国人が知っている。この関係を築くために、崔容疑者の父の宗教団体の創設者、崔太敏氏が朴槿恵氏の家族関係を故意に破壊したというのはあり得る話である。



 要するに、日本以外の東洋諸国は、ほんの100年前は古代王朝だったのであり、その古代性がいまも尾を引いている。その伝統の桎梏(しっこく)はあまりに強力で、中国や北朝鮮は過去を反芻(はんすう)し、韓国まで先祖返りを起こしているということなのである。


 われわれは明治以来、ドイツ渡来の進歩史観に支えられ、古代・中世・近代へ直線的に発展する自己像を描いてきた。それでうまくゆけたのは、ヨーロッパと同じ中世があったからだ。全土が王土で所有権などなく、商業活動も自由でなく、貧しく非衛生な古代が近代まで続いた国があったことは歴史の「例外」ではないのである。

 のみならず、古代がいつ始まるかもわからない。古代エジプトは前40世紀、古代ギリシアの都市国家ができてくるのは前9世紀、古代インカ帝国の前身のクスコ王国ができるのは後13世紀である。歴史には遅速がありジグザグしている。まずは、進歩史観では歴史を被(おお)いきれないという認識と反省から始めないと、これからの世界はますます分からなくなるだろう。(ふるた ひろし)











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反日歴史認識に実証的反論を

2016-11-09 13:06:40 | 歴史
【解答乱麻】


反日歴史認識に実証的反論を  明星大特別教授・高橋史朗氏


http://www.sankei.com/life/news/161109/lif1611090015-n1.html


 慰安婦問題の資料展示施設「女たちの戦争と平和資料館」(wam)は先月末、同館の爆破を予告するはがきが届いたと明らかにした。wamは「言論を暴力に結びつけない社会を」と題するメディア向けの呼びかけ文を発表し、産経新聞に「櫻井よしこ氏の連載や高橋史朗氏の記事(6月15日付「解答乱麻」)にwamの名前だけでなく個人名も挙げた批判記事が掲載」されたことを問題にした。


 11月1日付韓国紙「ハンギョレ」は「高橋史朗氏、櫻井よしこ氏など日本の右翼が主に産経新聞の紙面でwamと局長を名指しで批判するコラムを相次いで寄稿した」「日本政府と言論右翼が一丸となって阻み、一部の右翼が『爆破脅迫』に乗り出したわけだ」と解説した。

 私は同コラムで、ユネスコ「世界の記憶」に共同登録申請された慰安婦資料をwamが主導しているという事実を申請文書の分析に基づいて客観的に指摘したにすぎず、個人名を名指しで批判などしていない。


 呼びかけ文は「産経新聞は歴史認識の違いを『歴史戦』と名付け、歴史をめぐる言論を『戦争』という暴力に結び付け語っています。同調者への影響力は計りしれない」と批判している。しかし脅迫状を産経批判に利用して、「歴史をめぐる言論を『戦争』という暴力に結びつけ語っている」というのは不当な言いがかりだ。単なる「歴史認識の違い」では済まされない「歴史認識」問題があるのだ。



 そもそも「南京大虐殺・慰安婦」問題が外交問題に発展し「歴史戦」となった原因は昭和57年(教科書誤報事件)と平成4年(朝日の慰安婦報道)にあった。それを日本の学者、市民運動団体、弁護士等が中韓や国連にご注進してマッチポンプ式に騒ぎ立て、外交問題化させたために「歴史戦」が激化した。



 首相の靖国神社参拝を中韓が外交カードとして利用し始めたのも全く同じ構図で、不当に日本を非難する反日歴史認識が外交を阻害し、日本の名誉を傷つけ国益を損ねてきたのである。



 「慰安婦」共同登録申請書には、「申請が日本の名誉を傷つけるものであると誤解して申請に反対する者」もいるが、「我々の意図は、日本を非難することではなく、歴史、人権、平和について人道意識のために人々を啓発することにある」と書かれている。


 しかし「慰安婦とは1931年から1945年にかけて日本軍によって性奴隷を強制された婦女子を指す婉曲(えんきょく)表現である」という申請書の定義や、日本軍「慰安婦」制度は「ホロコーストに匹敵する」などと申請書で決めつけること自体が「日本の名誉を傷つけるもの」である。


 ユネスコ憲章の前文には、「戦争は人の心の中で生まれるものであるから、人の心の中に平和の砦(とりで)を築かなければならない」と書かれている。


 加盟国間の友好、協力、相互理解の促進がユネスコ設立の目的である。慰安婦像の世界的意義を申請書は強調しているが、友好、協力、相互理解を阻害する「紛争のシンボル」と化し、「人の心の中に平和」ではなく、「紛争の砦」を築いている事実を直視する必要がある。

 「言論を暴力に結びつけない社会を」という呼びかけの趣旨には全面的に賛同するが、中韓などに働きかけて外交問題化させ「歴史戦」を激化させてきた当事者が責任を転嫁し、産経新聞や櫻井・高橋個人を批判するのは本末転倒である。今月30日に都内文京区民センターで開催する「歴史認識問題研究会」設立記念シンポで、この点を明確にし、実証的研究を積み重ねて国際発信していきたい。

2016.11.9


                   
                        ◇



【プロフィル】高橋史朗

 たかはし・しろう 元埼玉県教育委員長。明星大特別教授のほか、麗澤大道徳科学教育センター客員教授。親学推進協会会長。男女共同参画会議議員。




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