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絵のおはなし⑤(「黒部峡谷日本画展 ―悠久の大地 黒部より―」からの便り

2018年02月23日 | セレネ美術館

「絵のおはなし」では、画家がどのように制作しているかをお伝えしています。

「取材」の話しから始めようと思い、今回で5回目を迎えています。

 

「感動」や「構想」を整理し、作品として形にするため、画家は「取材」を行います。

「取材」で最も多く行われるのは、「クロッキー」。

他にも、質感や明暗がどのようになっているのか研究するために「デッサン」を行い、

構図や作品の完成イメージを見定めるために「エスキース」を行います。

このように取材は行っていきますが、どのような画材道具を使うのでしょう?

前回は、画材道具の中でも、特に「鉛筆」に注目しておはなしをしてきました。

今回はその続きで、「鉛筆の使い方」について、おはなしをしたいと思います。

 

 

画家の鉛筆の使い方には、何種類かあることをご存知ですか?

 

 

こんなことをいうと、何の事?と思う人がほとんどでしょう。

文字を書く、書き方が頭に浮かび、「それ以外何があるのだろう?」と疑問になったかと思います。

画家も文字を書くように、鉛筆で絵を描きますが、実は他にも持ち方や描き方があるのです。

鉛筆の削り方まで違うのですよ。

まずは、持ち方から話をしていきましょう。

 

        

左写真:文字や絵をかくときの持ち方 右写真:絵を描くときの持ち方のひとつ

右写真のような持ち方をすることがあります。

ではどんな風に鉛筆を使うのか。

描き方は、3パターンほどあります。

 

一つ目は、「手首」をスナップさせて使う方法。

これは、普段みなさんが通常の鉛筆を持つ際にも、自然と行っているかと思います。

鉛筆を持って実際描いてみるとわかるかと思います。

普段の持ち方でいいので、鉛筆を持ってみて下さい。

そして、たくさんの線を出来るだけ早く描いてみて下さい。

自然と「手首」をスナップさせていることがわかるかと思います。

文字を書く際は、「指」を様々に動かしますね。

線をたくさん描く場合は、

「手首」を使い鉛筆を持った手全体をふって描いていることがわかるかと思います。

この方法は、手のひらサイズほどの面積に明暗をのせる際に使います。

慣れている方は、高速でスナップさせ一瞬で明暗を出すことができます。

横でみていると、おもわず「わぉっ」というぐらい早いです。

 

2つ目は、肘を支点に「上腕」を左右に動かして描く方法です。

広い面積に明暗を一気にのせる際に使います。

これもなれてくると、高速で動かします。雨の日の車のワイパーみたいな感じです。

 

3つ目は、「肩」を支点に腕を動かして描きます。

主に大作の画面、広範囲に一気に明暗をおく際に使います。

こうなると、スポーツ選手みたいです。

スラッシュ音もすごくて迫力があり、みているとカッコいいです。

 

他にも、とんでもなく大きい作品を作る際に、「腰や足」を使うこともあります。

腰や足を支点に体全体を動かして描きます。

もう、なんかすごいです。。。

 

続いて、鉛筆の描き方と削り方について。

 

実は鉛筆を寝かして描きます。わざわざ寝かして描くのは、何のためかというと、

明暗の調子を素早く、幅広くつけるためと、

紙の目を活かした質感を出すために、鉛筆を寝かして描きます。

鉛筆の芯の腹で描くので、鉛筆の芯を削って伸ばします。

紙に接するように鉛筆を寝かすので、芯を支える木の部分も紙に擦れないように削ります。

写真のようになります。

 

 

デッサンなどでは、構図のためのあたりや形をとらえる作業が終わると、

明暗をおおよそ三段階程(明部、暗部、中間色)にわけて描き始めます。

 

      

左写真:りんごを三段階ほどにわけてみました。

右写真:鉛筆で描いた後、手や布などでふいてぼかすこともできます。

 

その際、暗部を「線」の繰り返しで描く方法と、鉛筆を寝かして描く方法のどちらかを選びます。

線で描く方法は、面に則して線を走らせて描くことで、立体的な形態の表現が可能になったり、

線で出せるような質感表現をしたい場合に行います。

鉛筆で寝かして描く方法は、鉛筆を寝かせることで、幅広く鉛筆の調子をのせることができることと、

手を繰り返し振る動作が出来ることで、効率よく素早く明暗をのせることができます。

また、4Bや6Bの硬度が柔らかい鉛筆を使い、紙の目を活かして、ぼこぼことした質感表現が可能です。

基本的には、どちらの手法も使います。

 

デッサンの手法も様々ですが、まず初めに、寝かして描き、

中盤から仕上げ段階に移行する中で、併用を行い、

仕上げは、線描でという形になります。

理由は、段取りよく早く描くことができるからです。

素早く修正がきく手法を先に持ってくるわけです。

 

   

左写真:特徴をみつけて描きます。消しゴムでひっかくように描き、白い線を作り出すことも出来ます。

右写真:明るい部分を意識しながら、仕上げをします。

 

 

 

線だけで描ききるというように、あえて線だけで表す場合もあります。

この場合は、形態の把握というよりも、線による表現をもっと知ろうという試みであったりします。

その場合は、個性的な作品が出来上がります。

 

 

 

写真:宮正明「愛本刎橋(素描)」部分

 

 

写真:宮正明「三希月廻」部分

 

 

 今回は、ここまで。

 

美術館に飾られている素描作品には、

制作過程と画材を駆使した表現の痕跡がみられます。

じっと眺め、タッチに表れる画材の変化をみつめるなかで、

画家の工夫や、創作意図を想像したり、読み解くことができたりするのです。

 

 

 

常設展示

「黒部峡谷日本画展 -悠久の大地 黒部より―」

開館時間・休館日

9時~17時半(入館時間は、閉館の30分前までとなります)

火曜休館

入館料

大人 : 610円    高校・大学生 : 510円    中学生以下 : 無料

 

2月、3月は、第2日曜日、第4日曜日、学芸員による作品解説を行っています!

①10:00~ ②13:00~  約20分程度です。

 

黒部市宇奈月国際会館・セレネ美術館

富山県黒部市宇奈月温泉6-3

TEL0765-62-2000 セレネHP