
中国古村落保護及発展専業委員会が選出した「15の中国景観村落」の最後は、
浙江省温州市楽清(県級)市城北郷にある「黄檀ドウ*村」(*ドウは石ヘンに同)です。
15の村に順番はありません。
“ドウ”の字が出なかったので最後になってしまいました。
意味は“洞”とほぼ同じです。
温州市の雁蕩山風景名勝区の八大景観の1つ、霊峰の麓にこの村はあります。
宋代に造られた村で、800年余りの歴史があり、海抜は400数メートル、
歴史の上、濃い青の藍を豊富に産出したことで知られているようです。
林茂、水美、石奇、洞怪、古屋、古廟、古堂、古彫の村と形容されています。
この“怪しい洞穴”が村の名前の語源です。
玉石を敷いた小道に沿って村に入ってみると、まず、北から南へ村を貫いて流れる
2本の渓流が目に入ります。渓流の水は澄みきっており、
高い所から見下ろしても魚が泳ぐ様子がわかります。
村の南側は広い田畑で、もみと農作物の香りに満ちています。
水稲、サツマイモ、ショウガ、茶などの農作物の栽培を主としています。
村人の大部分は未だに「日が登ったら働き、日が沈めば休む」という
伝統的な生活習慣を守って暮らしています。
村の北には、くねくねと続く狭くて長い坂があり、
そこには、まちまちですが秩序をもって分布している数多くの古民居が点在します。
大部分が山の形状に従って建てられ、すべて石の壁で、古風で質朴で、
一面では粗放で、壁は近くの山の石を使って築かれています。
石段が民家に沿って綴れ織りのように続いています。
村の西の入口には2本の高くて大きい古木が聳えたっていて
観光客の目を引きつけます。
この古木は500年余りの歴史があり、村の一大の奇観になっています。
村には、明清代の古い建築が12棟を残されていて、
軒の瓦の模様はそれぞれ異なり、精巧で美しい彫刻で飾られています。
門の上のアーチは、原木と山の石がそのまま天然の姿で使用され、
古風で質朴でさっぱりしていて、しかも上品で気前が良いイメージを醸し出します。
多彩な石の文化、原始的で古風で質朴な古民居、
そこに高度に備えられた明清代の特色。
これが村のすばらしい所ですが、そこに自然との調和と融合が成され、
古代中国で求められた完璧な自然観が反映されました。
素朴で奥深い民俗風情も忘れられません。
伝統的な演劇の伝説を祭り、ローカル色豊かな食の文化があります。
そして特に価値が認められるのが、伝統の手工芸で、濃い青のインディゴの生産です。
村の渓流の澄んだ水に長時間浸して、インディゴを得ています。
鹿の子模様の絹織物の中国おける最も古い染物が、
村の遺構から発掘されています。
日が沈む頃に、村の入口に立ってみれば、
細長く立ち上る炊事の煙、さらさらと流れる水の音、
巣に帰っていたガチョウやアヒルの鳴き声、女性たちの洗濯物を叩く音、
パイプをくわえた老人が口をぱくつかせる様子、などなど・・・
浮世離れしていて、まさに陶淵明が詠う桃源郷のように感じられます。
(佐々木 優嘉)
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