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信貴山縁起絵巻-朝護孫子寺と毘沙門天王信仰の至宝-(奈良国立博物館)

2016年05月07日 19時26分20秒 | 鑑賞記録(2011・2012年中断)

恐れていた程の人出ではなく、最前列でじっくり見ることが出来て満足。
しかも2回。平成の復元品を見たら、その色彩を想像して、もう一度見ておきたいと思った。
江戸期の模本も一緒に見られたのは良かった。

踊るような線描に感動。
生き生きとした人物群像も、市井の生活の詳細が分かる背景も素晴らしかったけれど、
何度も登場する信貴山の描写に、山そのものに対する思い入れを感じた。
多くの顔料が剥落してしまっているのが、残念でならない。

ああ、しかし、この贅沢。やっと、ちゃんと絵巻物を見たって気がした。
ストーリーを追って、話の全体像を知る。こうでなくては。

冒頭でぐっとその世界に惹き込まれて、2巻では護法童子に霊験を感じ、最後は人情もの。
異時同図法の多様で、流れるように話が展開して、尼君が導かれる様に感情移入もしていく。
見応えたっぷりなのでした。

そして「辟邪絵」と「粉河寺縁起絵巻」。この二つまで見られるなんて、もう贅沢すぎ。
「粉河寺」は、雲母がこんなに多用されているとは、全く知らなかった。
美しさだけでなく、絵が立体的に見えた。こちらも流石の筆致だった。
「辟邪絵」の恐ろしさは、もう言わずもがな。こんなにも色彩が残っているとは。
神虫とか他の神々と邪鬼たち、負の面ではあるけれど、人の想像力の豊かさを感じる。
贅沢を言えば、「地獄草紙」も見たかったなあ。

しかし、絵巻を保存してきたのが、後白河天皇だったとは知らなかった。
この人の文化への貢献度は、相当なものだ。
文化の保存継承と権力者あるいは富豪層との関わりは、不可分な物なのだなあ。

同時に、リニューアルしたばかりのなら仏像館も見学。
こちらがまた、結構な見応え。流石は奈良博。
様々な如来・菩薩・明王・天・神像を、こんなにまとまって見ることは、早々なかったんじゃないだろうか。
一体一体が全部違う。
当たり前なのだけど、そのことに「人の技」らしさを感じてしまった。



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