生活保護問題対策全国会議blog

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えっ! 新政権はコンクリートだけでなく人も切り捨てるの? 母子加算復活の維持を求める緊急声明

2009-12-17 00:00:00 | 生活保護基準見直し問題
えっ! 新政権はコンクリートだけでなく人も切り捨てるの?
母子加算復活の維持を求める緊急声明

民主党政権は、本年12月1日、総選挙前の同党マニフェストに記載していた生活保護の母子加算制度の復活を実行しました。この復活にあたり、財務省は、高校就学費や学習支援費の廃止を強硬に要求しましたが、最終的には、鳩山首相の決断により、これらが存続した状態で母子加算が復活しました。私たちは、この母子加算の復活を歓迎するものです。

ところが、読売新聞12月11日朝刊の報道によれば、財務省の野田副大臣は、厚生労働省が事項要求として予算措置を求めていた生活保護母子加算制度を含む6項目について、財務省として新たな予算措置はしないことを明言し、母子加算復活を維持する場合には厚生労働省内で他の事業を削減する等して予算措置を講ずるよう厚生労働省に求めたとされています。また、子ども手当の創設との関係でも予算圧縮の圧力は強まっています。財務省は、結局のところ、前政権と同様、社会保障費の抑制を前提にして従前の主張を繰り返しているのです。

しかし、そもそも高校就学費は、受験料、入学準備金、授業料、教材費、通学定期代等の実費を支給するもので、子どもの学習・教育権の保障のために不可欠のものです。本年7月に創設された学習支援費も、小・中学生の子どもの学習・教育権の保障のために不可欠です。いずれも、ひとり親世帯に限らず、それぞれの支給対象となる子どもがいる生活保護世帯に支給され、母子加算とは支給趣旨、対象範囲、創設経過が異なり、母子加算と代替関係にはありません。これらが廃止されたら「貧困の世代間連鎖」が強まることになります。

民主党政権は、マニフェストに盛り込んだ他のどの政策よりも早い本年10月の時点で母子加算復活を実行に移し、本年12月1日付で母子加算を復活させました。これは、「コンクリートから人へ」の政策転換を掲げた民主党にとって、母子加算の復活が政府として最優先に取り組むべき政策課題であったからです。そして、母子加算の復活は、ひとり親世帯だけの問題ではなく、マニフェストの中心政策であった子ども手当の創設とともに、新政権の目指す国のあり方の象徴であり、国民にそのメッセージを伝える意味合いを持っていました。

このような母子加算復活の意義に照らせば、母子加算維持に向けた来年度からの予算措置は、厚生労働省内で予算措置を講じなければならないとされるべきものではありません。母子加算の復活を歪める切り崩しは、マニフェストにおいて最優先事項であったはずの母子加算復活を政権奪取後わずか半年程度で放棄することであり、「コンクリートから人へ」の政策転換の放棄を意味します。また、子ども手当の支給と引き替えに高校就学費や学習支援費が削減されるとすれば、子ども手当が全額支給される一般世帯と比較して不平等であるのみならず、生活保護基準を切り下げることになります。このような施策は政権交代を実現させた国民に対する裏切り行為です。

私たちは、改めて、政府に対し、その責任において母子加算の維持と新たに創設される子ども手当の生活保護世帯への全額支給のための予算措置をとり、高校就学費や学習支援費が存続した状態で、母子加算を4月以降も維持するとともに、子ども手当を生活保護世帯に対しても全額支給することを強く要求します。
以上

2009年12月17日

愛知派遣村実行委員会 代    表  藤 井 克 彦
一般社団法人自立生活サポートセンターこんぱす 代 表  國 師 洋 典
NPO法人自立生活サポートセンター・もやい  代 表 理 事  稲 葉   剛
関西非正規等労働組合・ユニオンぼちぼち 執行委員長   橋 口 昌 治
近畿生活保護支援法律家ネットワーク 代 表 辰 巳 裕 規
笹島診療所 所    長  佐 藤   光
しんぐるまざあず・ふぉーらむ     理    事  赤 石 千衣子
しんぐるまざあず・ふぉーらむ・関西 事 務 局 長  中 野 冬 美
しんぐずまざあず・ふぉーらむ・福岡 理事長  大 戸 晴 美
しんぐずまざあず・ふぉーらむ・福島  理事長  遠 野  馨
すぺーすアライズ/アライズ総合法律事務所 所    長  鈴 木 隆 文
生活保護支援九州ネットワーク 代 表  永 尾 廣 久
生活保護問題対策全国会議     代 表 幹 事  尾 藤 廣 喜
生存権裁判全国弁護団     弁 護 団 長  竹 下 義 樹
生存権裁判を支援する全国連絡会 会    長  小 川 政 亮
全国生活と健康を守る会連合会       会    長  松 岡 恒 雄
全国生活保護裁判連絡会      共 同 代 表  藤 原 精 吾
特定非営利活動法人移動支援フォーラム 代 表  長 谷 川  清
名古屋生活保障支援実行委員会 代    表  藤 井 克 彦
日本自立生活センター  ピアカウンセラー 矢 吹 文 敏
働く女性の全国センター  共 同 代 表  伊 藤 みどり
ホームレス法的支援者交流会     共 同 代 表  後 閑 一 博

母子加算の完全復活と老齢加算の復活などの生活底上げを求める共同声明

2009-12-01 00:00:00 | 生活保護基準見直し問題
母子加算の完全復活と老齢加算の復活などの
生活底上げを求める共同声明

母子加算の今年度復活を歓迎する
本日、生活保護を受けているひとり親家庭に対して母子加算が支給されました。全国各地で母子加算を実際に受け取った方々から母子加算復活に対する安堵と喜びの声があがっています。私たちは、新政権が「コンクリートから人へ」の政策転換に向けて第一歩を踏み出したことを歓迎します。

母子加算の本格的復活を!~高校就学費・学習支援費の廃止は許されない
しかし、ひとり親世帯の生活を底支えする児童扶養手当の拡充も実現しておらず、母子加算復活さえ、来年3月までの分しか決まっておらず、4月以降については予断を許しません。朝日新聞大阪本社版11月25日朝刊によると、ひとり親世帯に限らず支給されている高校就学費や学習支援費を廃止する財務省案が再び浮上する可能性があるとされています。高校就学費は受験料、入学準備金、授業料、教材費、通学定期代等の実費を支給するもので、子どもの学習・教育権の保障のために不可欠のものです。これらが廃止されたら「貧困の世代間連鎖」がより強まることになります。一人で子育てをすることに伴う特別需要に対応し一般生活費に充てられる母子加算と、高校教育のための実費に充てられる高校就学費は趣旨目的が異なり、どちらか一方があればいいというものではありません。
そもそも、今年度の母子加算復活については、10月21日夜、鳩山首相が「(復活という以上)半額であるはずはなく、全額復活をさせなければいけない。そのように指導していきたい」と述べ、財務省に対して満額復活を指示したことにより、厚労省案に沿って両省が合意したという経緯がある以上、来年度以降についても同様の扱いがなされなければ真の意味での復活とは言えず、鳩山首相の指導力に疑問符がつくことは必至です。
母子加算復活のバーターで、高校就学費や学習支援費を廃止するという選択は子ども手当の創設を予定し、子育て支援を掲げている新政権の立場に矛盾するものであり、断じて許されません。

老齢加算の復活を!
新政権には、貧困を削減して市民生活を底上げしていく全面的な政策の転換が期待されています。ところが、新政権は、母子加算と同じ理屈で廃止された老齢加算については、長妻厚労相が11月17日の参議院厚生労働委員会で「高齢者の生活実態を把握し、長期的なナショナルミニマムの水準と平仄を検討する」と述べているものの、直ちに復活させようとしていません。
先般、新政権のもとで貧困率が測定され公表されました。全体の貧困率は15.7%、ひとり親世帯の貧困率にいたっては54.3%に達しています。また、今回は測定されていませんが、高齢者単身世帯の貧困率は、研究者の推計では43.0%に及びます。
長妻大臣は野党時代、「ミスター年金」と呼ばれ、高齢者の生活保障の問題に熱心に取り組む高齢者の権利の擁護者でした。政権政党の責任ある立場に就いた今こそ、母子加算を復活させた立場からして老齢加算を復活させないことは、高齢者をないがしろにするものであり、高齢者の貧困の解消の第一歩として老齢加算復活も決断することを強く求めます。

母子加算の復活を転換点として市民生活の底上げを
 高齢者とひとり親世帯については、それぞれの高い貧困率や老齢加算と母子加算が廃止された根拠から、すでに貧困が広がっていることが明らかとなっています。老齢加算の廃止によって、高齢者は日々生命をすり減らしています。ひとり親世帯の子どもたちは、将来の希望を奪われています。私たちは、今回の母子加算の復活を受け、さらなる一歩として、老齢加算の早期復活を求めるとともに、児童扶養手当の拡充と来年度以降の母子加算の継続を強く求めます。老齢加算を復活させないままでの「長期的なナショナルミニマムの水準と平仄を検討する」ことは、いわば最低基準を切り下げた状態を基礎とすることにつながるおそれがあります。
母子加算の復活を政策の転換点とする市民生活の底上げを強く求めます。
以上

2009年12月1日

NPO法人しんぐるまざあず・ふぉーらむ 理   事   赤 石 千衣子
近畿生活保護支援法律家ネットワーク 共 同 代 表  辰 巳 裕 規
しんぐるまざあず・ふぉーらむ沖縄 代   表  秋 吉 晴 子
生活保護支援九州ネットワーク      代    表  永 尾 廣 久
生活保護支援ネットワーク静岡 代    表  布 川 日佐史
生活保護問題対策全国会議     代 表 幹 事  尾 藤 廣 喜
生存権裁判全国弁護団     弁 護 団 長  竹 下 義 樹
全国生活と健康を守る会連合会      会    長  松 岡 恒 雄
全国クレジット・サラ金問題対策協議会 代 表 幹 事  木 村 達 也
全国生活保護裁判連絡会      共 同 代 表  藤 原 精 吾
反貧困ネットワーク 代    表  宇都宮 健 児 
反貧困ネットワークふくしま       呼びかけ人代表  丹 波 史 紀
ホームレス法的支援者交流会    共 同 代 表  後 閑 一 博

12月から来年3月までの母子加算の「完全復活」の鳩山首相裁定を歓迎する声明を発表しました

2009-10-22 17:09:46 | Weblog
母子加算「完全復活」の鳩山首相裁定を歓迎する声明

2009年10月22日

生活保護問題対策全国会議 代表幹事 尾藤 廣喜

生活保護・母子加算の12月からの復活をめぐり、「高校修学費、学習支援費等の事実上の廃止」によって約30億円の財源をねん出しようとする財務省と、「両者は二人親家庭に対しても支給されるもので母子加算廃止の代償ではない」として、60億円の財源が必要とする厚生労働省が対立していた。

これに対し、私たちは、財務省案は「暮らしのための政治」を掲げた民主党の公約違反であるとして、鳩山首相の政治決断を求めていた。

この問題について、昨夜、鳩山首相が、「(復活という以上)半額であるはずはなく、全額復活をさせなければいけない。そのように指導していきたい」と述べ、財務省に対し満額復活を指示したことにより、厚労省案に沿って両省が合意したと報道されている。

公約を守る見地からは当然とはいえ、鳩山首相の今般の裁定を私たちは高く評価し、新政権の最初の成果として母子加算の「完全復活」がとりあえず今年度末まで実現したことを心から歓迎する。

しかし、母子加算の完全復活は、旧政権下の社会保障費削減方針のもとで切り縮められてきた社会保障を復権させるための最初の突破口に過ぎない。新政権は、今回の財務省案のように、社会的経済的弱者に対する予算を右から左に動かして財源をねん出しようとする旧来型の姑息な姿勢から決別しなければならない。

来年度以降の母子加算等の取扱については、「高校授業料無償化との整合性を今後厚労省と財務省で検討する」と報道されているが、生活保護の高校就学費は入学準備金、授業料、通学定期代等の実費を支給するものであり、高校授業料の無償化が実現されたらその分だけ高校就学費の予算は圧縮できるのだから、高校就学費の制度自体を変える必要は全くない。ましてや趣旨の異なる母子加算を縮減する理由にはなりえない。

私たちは、今後予想される同種の動きに対して、粘り強く運動を進める決意を述べるとともに、鳩山首相をはじめとする新政権の皆さんが、今回同様、「暮らしのための政治」「コンクリートより人間を大事にする政治」の実現に力を尽くされることを心より期待する。

(連絡先)〒530-0047 大阪市北区西天満3-14-16

西天満パークビル3号館7階℡06-6363-3310 FAX 06-6363-3320

生活保護問題対策全国会議 事務局長 弁護士 小久保 哲郎

母子加算復活の裏で高校就学費等廃止なら公約違反!鳩山首相の決断を求める緊急声明

2009-10-21 15:00:00 | Weblog
2009年10月21日

母子加算復活の裏で高校就学費等廃止なら公約違反!

鳩山首相の決断を求める緊急声明

   生活保護問題対策全国会議、しんぐるまざあず・ふぉーらむ、多重債務による自死をなくす会、神戸公務員ボランティア、特定非営利活動法人ほっとポット、生活保護支援九州ネットワーク、近畿生活保護支援法律家ネットワーク、東海生活保護利用支援ネットワーク、一般社団法人自立生活サポートセンターこんぱす、全国公的扶助研究会、笹島診療所、愛知派遣村実行委員会、生存権裁判を支援する全国連絡会、全国生活と健康を守る会連合会

鳩山首相が長妻厚生労働大臣に対して、生活保護・母子加算の年内復活を指示されたとの報道がされた一方、その引き替えで生活保護受給世帯に対する高等学校等就学費や学習支援費を廃止する財務省の意見が根強いとの報道がされています(2009年10月12日読売新聞等)。

仮にこれが事実なら、何のための母子加算復活なのか、母子加算の早期復活を求めてきた私たちとしては到底容認できません。「コンクリートではなく、人間を大事にする政治」「子育て・教育に税金を集中的に使う」という「マニフェスト」にも真っ向から反するものであり、新政権発足間もない今、最初の公約違反と言わざるを得ません。

高校等就学費や学習支援費は母子加算廃止の代償ではない

母子加算(削減前の加算月額は1級地で2万3260円)は、ひとり親ゆえのハンディ、特別需要(例えば、一人で親二人分の育児、家事等をしなくてはならない。食事の準備ができずできあいのものを買ったり外食もあるだろうし、精神的、肉体的な疲れを癒すために休息も必要となるなど)に対応するものとして、1949年に創設された加算であり、政府においても、同様の趣旨が確認されていました(昭和55年11月17日中央社会福祉審議会生活保護専門分科会・中間的とりまとめ)。

これに対して、高校等就学費(平均15,441円/月)は、2004年3月16日の中嶋訴訟(高校就学費目的での保護費等を原資とする学資保険への加入の可否が13年間にわたって争われた事件)最高裁判決での原告勝訴を受けて、2005年度から創設されたものです。その支給対象は、高校生のいる保護利用世帯であって、母子世帯に限りません。高校等就学費の創設は、たまたま母子加算廃止と時期が重なっただけで、趣旨も支給対象も異なり、母子加算の廃止とは全く関係がないのです。

また、2009年7月に創設された学習支援費(参考書代など。小学生2,560円~高校生5,010円)も、生活保護世帯の貧困の再生産を防ぐ趣旨で導入されたもので、支給対象は母子世帯に限らず、これも母子加算廃止とは関係がありません。

したがって、母子加算復活に伴い、高校等就学費や学習支援費を廃止する理論的整合性は全く存在しません。

「高校授業料無償化」では救われない

 民主党は、マニフェストで、「公立高校の授業料を無償化し、私立高校生には年12~24万円を助成」するとし、「高校授業料の実質無償化」を唱っています。しかし、この公約はまだ実現しておらず、先行して生活保護受給世帯に対する高校等就学費や学習支援費を廃止することに合理性はありません。

 しかも、高校では授業料以外の学習費用の方が多いことに留意が必要です。すなわち、公立高校において学校に支払う平均学習費は年間約35万円ですが、うち①授業料は約11万円に過ぎず、②残りの約24万円は教科書代、制服代、修学旅行費等の費用です。また、③学校外の教育費(参考書や塾等)に平均約17万円かかることからすると、仮に授業料が無償となっても、②③の計41万円の負担は残ることとなります。

将来高校授業料無償化が実現したとしても、その暁には、むしろ生活保護受給世帯に対する「高校等就学費」の予算を現在月額数千円と手薄な「学習支援費」に振り替えることこそが、「貧困の世代間連鎖」を断ち切るためには求められています。

総選挙前の民主党の公約

 総選挙前、当時の野党4党が「母子加算復活法案」を上程した際、当時の自公政権や厚生労働省が「高校就学費や学習支援費が代償としてある」と主張したのに対し、野党4党は私たちとともに「それは代償ではない」と反論していました。

 総選挙前、鳩山首相は、当時の麻生首相との党首討論の締めくくりで、「小学校に入りたてのお嬢ちゃん、お母さんが生活保護、母子家庭、2万円切られてしまった。そこで『もう私は高校に行けないのね』。その話、聞いたら涙が出ましたよ。修学旅行に行きたくても行けない、高校行きたくても行けない。そういう人がたくさん今いるんです。これが日本の現実なんです。」「こういう方を救おうじゃないですか。居場所を見いだされる国にしようじゃないですか。アニメの殿堂のお金があれば、なんで生活保護の母子加算に戻してあげないんですか。そういう政治をやりたいんです。やろうじゃないですか。」と訴えました。

 総選挙前、民主党は、そのマニフェストで「国民の生活が第一」「暮らしのための政治」を掲げ、「母子家庭で、修学旅行にも高校にも行けない子どもたちがいる。」「民主党は、すべての子どもたちに教育のチャンスをつくります。社会全体で子育てする国にします。」「すべての予算を組み替え、子育て・教育…に税金を集中的に使います。」と訴えました。

公約実現のために鳩山総理の決断を!

 母子加算を復活させる引き替えに、その財源を同じ生活保護受給者の高校等就学費や学習支援費の廃止によって捻出するというのであれば、これまでの政権のやり方とどこが違うのでしょうか。それでは、「コンクリートも削り、人間に対する予算も削る政治」になってしまいます。

私たちは、新政権が「暮らしのための政治」という公約を実現することを心から期待し、固唾をのんで見守っています。私たちは、公約実現のために鳩山総理が、そのリーダーシップを発揮した決断をすることを強く求めます。

以 上

緊急院内集会「えっ?母子加算復活で高校就学費は廃止?」21日(水)1時~3時

2009-10-21 13:00:00 | 集会・シンポジウムのお知らせ
国会議員 各位               2009年(平成21年)10月20日
要 請 書

「えっ?!母子加算復活で高校就学費は廃止?」
~このままでは公約違反。鳩山総理の決断を~

2009年4月、生活保護を受けるひとり親世帯に支給されてきた母子加算が完全廃止されました。母子加算の完全廃止を受け、鳩山総理は、総選挙前、当時の麻生首相との党首討論の締めくくりで、「小学校に入りたてのお嬢ちゃん、お母さんが生活保護、母子家庭、2万円切られてしまった。そこで『もう私は高校に行けないのね』。その話、聞いたら涙が出ましたよ。…修学旅行に行きたくても行けない、高校行きたくても行けない。そういう人がたくさん今いるんです。」「こういう方を救おうじゃないですか。居場所を見いだされる国にしようじゃないですか。」と訴えました。その後、民主党はマニフェストに母子加算復活を掲げ、政権交代が実現し、長妻厚生労働大臣が母子加算を年内に復活させるという発言を繰り返してきました。ところが、最近の新聞報道によれば、母子加算の年内復活が微妙となり、さらに、高校等就学費や学習支援費の廃止との引き換えを主張する財務省の意見が根強いとされています(2009年10月12日読売新聞)。しかし、高校就学費や学習支援費は母子加算とは異なる経過と理由に基づいて導入されたものであり、それらの廃止もまた母子加算と同様に子どもたちの将来にかかわる重大な問題です。報道が事実ならば、ひとり親世帯の窮状や子どもの貧困の実態を無視し、創設経過、支給趣旨、対象範囲が異なる給付を混同して子どもたちに対する教育を妨げようとするものであり、民主党の公約違反と言わざるを得ません。
先生方におかれましては、ひとり親世帯の窮状や子どもの貧困の実態ときちんと向き合い、1日も早く、高校等就学費と学習支援費を存続させたうえで、母子加算を復活させてくださいますようお願いいたします。

先生方に実態をご理解頂くため、10月21日(水)午後1時~午後3時、衆議院第1議員会館第1会議室において緊急の院内集会を開催し、当事者の声をお届けします。ご多忙とは存じますが、是非、ご参加ください。

1 貧困の再生産を防ぐために教育機会の保障が必要不可欠です。

等価可処分所得の中央値の50%を貧困と定義したとき、全世帯の子ども貧困率が15%であるのに対し、母子世帯の子どもの貧困率は66%となっています(阿部彩『子どもの貧困』岩波新書52頁、56頁)。また、大阪府堺市で行われた実態調査によれば、生活保護を受ける母子世帯の4割は、世帯主が育った家庭も生活保護を受けていました。いったん貧困に陥ってしまうと抜け出すことがとても難しく、世代を超えて貧困が再生産されてしまう実態が明らかとなっています。母子加算の廃止は、ひとり親世帯の子どもたちに更なる負担を強いて貧困の再生産を加速させるものであり、加算の復活は再生産の速度を緩めて元に戻すにすぎません。貧困の再生産を防ぐためには、母子加算の復活にとどまらず、高校就学費や学習支援費を維持して、子どもたちに教育の機会を保障することが必要不可欠です。 

2 高校等就学費や学習支援費は母子加算と代替関係にはありません。

母子加算(削減前の加算月額は都市部で2万3260円)は、ひとり親ゆえのハンディや子どもの健全育成などから必要となる需要に対応するものとして1949年に創設されました。これに対し、高校等就学費(月額平均1万5441円)は、子どもの高校の就学費用として、2005年度に創設されたものであり、支給対象はひとり親世帯に限りません。たまたま母子加算廃止と時期が重なりましたが、実際は、2004年3月16日の中嶋訴訟最高裁判決(高校就学費目的での保護費等を原資とする学資保険への加入の可否が争われ原告が勝訴したもの)での原告勝訴を受けて国が具体化せざるを得なかったにすぎません。また、2009年7月の創設された学習支援費(参考書代など。月額で小学生2560円~高校生5010円)も、生活保護世帯の貧困の再生産を防ぐ趣旨で導入されたものであり、支給対象はひとり親に限りません。いずれも支給趣旨、対象範囲、創設経過が異なり、母子加算と代替関係にはありません。

3 高校等就学費や学習支援費が廃止されれば母子加算が復活しても公約違反です。

民主党は、総選挙前、そのマニフェストで、「国民の生活が第一」「暮らしのための政治」を掲げ、「母子家庭で、修学旅行にも高校にも行けない子どもたちがいる。」「民主党は、すべての子どもたちに教育のチャンスをつくります。社会全体で子育てする国にします。」「すべての予算を組み替え、子育て・教育…に税金を集中的に使います。」と訴えていました。しかし、母子加算が復活しても、高校等就学費や学習支援費が廃止されれば、復活した母子加算額で高校就学費等を賄わなければなりません。これでは母子加算復活は名ばかりとなってしまいます。ひとり親家庭以外の保護世帯については、高校等就学費等の減額だけが行われ、子どもの高校就学等が困難となります。全体としてみれば、公約違反といわざるを得ず、“子どもいじめ”とさえ言われかねません。

4 高校授業料の無償化も公約違反の言い訳にはなりません。

民主党はまた、マニフェストで、「公立高校の授業料を無償化し、私立高校生には年12~24万円を助成」するとして、「高校授業料の実質無償化」を謳っています。しかし、この公約はまだ実現しておらず、先行して生活保護世帯に対する高校等就学費や学習支援費を廃止することに合理性はありません。しかも、高校では、授業料以外の学習費用の方が授業料よりも多くかかることに留意が必要です。公立高校において学校に支払う平均学習費は年間約35万円、うち授業料は約11万円で、残りの約24万円は教科書代や制服代や修学旅行費等の費用です。また、学校外の教育費(参考書や塾等)にも平均約17万円かかります。仮に授業料が無償となっても、授業料以外の年間計41万円の教育費の負担は残ってしまうのです。貧困の再生産を防ぐためには、高校授業料の無償化だけでは足りず、授業料以外の教育費を賄うための給付が必要となります。


いま、新政権が本気で子どもの貧困に取り組む気があるのか、その真意が問われています。子どもたちに手を差し伸べるために、そして、公約違反で国民の信頼を裏切らないために、鳩山総理の決断を求めます。

生活保護問題対策全国会議 代表幹事 尾 藤 廣 喜(弁護士)
(連絡先)〒530-0047 大阪市北区西天満3-14-16
西天満パークビル3号館7階 あかり法律事務所
  電話:06-6363-3310  FAX:06-6363-3320
      上記全国会議 事務局長 小久保 哲 郎(弁護士)

「カウンター越しの対立を超えて~生活保護費国庫負担増・ケースワーカー増員を求めてつながろう!~」

2009-07-18 13:30:00 | 集会・シンポジウムのお知らせ
私たち、生活保護問題対策全国会議の設立2周年記念集会を下記のテーマで行います。


今まででは、なかなかあり得ない登壇者の顔ぶれ。

時代が動きつつある今だからこそ実現した渾身の企画です。

是非多数ご参集ください!!

チラシ(PDF)


「カウンター越しの対立を超えて

 ~生活保護費国庫負担増・ケースワーカー増員を求めてつながろう!~」

「水際作戦」と呼ばれる窓口規制のため、生活保護から排斥されて餓死する人が未だに後を絶ちません。私たちは、「カウンターのこちら側」から、そうした実態を告発してきました。

一方、未曾有の経済危機と「派遣切り」の嵐の中、「最初で最後のセーフティネット」となっている生活保護の利用者が急激に増えつつあります。「カウンターの向こう側」の窓口職員や地方自治体からは「持ち件数が増えケースワークどころではない」、「4分の1の保護費負担が地方財政を圧迫する」といった悲鳴が聞こえます。

 私たちの国でこれ以上の餓死者を出さないためには、生活保護を必要とする人たちが漏れなく制度を利用できるようにしていかなければなりません。そして、そのためには、生活保護費の国庫負担割合を増やすこと、ケースワーカーを増やしその専門性を高めることを求め、関係当事者が手をつないで声をあげていくことが、今、切実に求められています。

 カウンター越しの対立を超えて。

日時:2009年7月18日(土)

   13時受付開始 13時30分開会

場所:東京・渋谷 東京ウィメンズプラザ・ホール

資料代:弁護士・司法書士2000円、一般の方500円、生活保護利用者等無料

主催:生活保護問題対策全国会議

共催:労働者福祉中央協議会、全国公的扶助研究会、生活底上げ会議

<司会>徳武聡子(司法書士)

13:30 開会挨拶  尾藤廣喜(生活保護問題対策全国会議代表幹事、弁護士)

13:35 当事者の発言など

14:05 基調講演「生活保護制度を活かすために」

      岡部卓さん(首都大学東京教授、生活保護制度のあり方に関する専門委員会委員)

14:55 休憩

15:10 基調報告(15分)「生活保護予算と人員の基礎知識」 秋野純一さん
     
15:25 パネルディスカッション「カウンター越しの対立を超えて」

  コーディネーター:吉永純(花園大学教授・元ケースワーカー)

   代表討論:ケースワーカー代表(渡辺潤・全国公的扶助研究会)vs 支援者代表(國師洋典さん・社会福祉士・精神保健福祉士、ライフパートナーおおいた代表)

パネリスト

       藤井克彦さん(名古屋・笹島診療所)

       津田康裕さん(名古屋市職員・前中村区生活保護ケースワーカー)

       岩渕正洋さん(札幌市職員・中央区生活保護ケースワーカー)

       阪田健夫さん(弁護士、日弁連貧困と人権に関する委員会委員)

16:55 閉会挨拶  高橋均さん(中央労福協事務局長)

北九州市門司区における孤独死事件の徹底検証を求める緊急声明

2009-06-17 00:00:00 | 北九州市問題
北九州市門司区における孤独死事件の徹底検証を求める緊急声明

2009年6月17日
北九州市長 北橋健治 殿

生活保護問題対策全国会議(代表幹事 尾藤廣喜)
(連絡先)〒530-0047 大阪市北区西天満3-14-16 
西天満パークビル3号館7階 あかり法律事務所
弁護士 小久保 哲 郎(事務局長) 

第1 声明の趣旨

   今年1月8日に北九州市門司福祉事務所に生活保護の「相談」に訪れていたが申請に至らなかったとされる39歳の男性が、自宅で孤独死していた事件に関し、事実を全て明らかにした上、

1 助言・教示義務違反による保護申請権侵害、ひいては保護受給権侵害はなかったのか

2 男性を要保護者として発見・把握し適切な保護を実施するため、関係諸機関及び民生委員・児童委員との連絡・連携を図る義務を懈怠したのではないか

について徹底的に検証し、責任を明確化して再発防止策をとることを強く求めます。

第2 理由

1 報道等により明らかにされた本件の経緯

北九州市門司区において、今年1月8日に門司福祉事務所に生活保護の「相談」に訪れていたが申請に至らなかったとされる39歳の男性が、自宅で財布の中身が9円、電気は停止、冷蔵庫が空の状態で、親族宛て「助けて」と書いた未投函の手紙を残して孤独死していたことが、6月5日に判明しました。

   2005年から3年間連続で生活保護利用から排除された市民が餓死・孤独死するという事件が起きた後、貴市が生活保護行政検証委員会を設けるなどして検証を行い、事務手引書を改訂するなどされていたにもかかわらず、このような事件が起きたことは残念でなりません。

報道によれば、男性は2008年11月末に失職し、最後の給料6万円を同年年末に受領したものの、雇用保険も受けられず、同年12月からの家賃(1ヶ月2万5000円)は滞納した状態で、2009年1月8日に門司福祉事務所を訪れましたが、病気、けがはなく求職中であることを告げると、同所の面接担当者は幅広く仕事を探すよう助言し、相談は30分ほどで終わり、申請に至らなかったとのことです。

2 貴市の態度

この事件に関し、貴殿は6月定例議会において「市の対応に問題はなかった」と答弁し、貴市担当者も、「年齢的に若く、病気もない、仕事も探しているということで相談のみで終わった」「申請意思のないことを確認しており、対応に問題はなかったと考えている。」「経緯の検証などは考えていない。」という見解を示しています。

しかし、そのような態度は根本的に誤っているといわざるをえません。

 3 本件の問題点

(1)男性が要保護状態であった可能性は極めて高いこと

本件では、男性の最低生活基準は生活扶助と住宅扶助だけを考慮しても10万7890円であったところ、報道によれば2008年末の約6万円の収入を最後に、雇用保険も受け取れない状態で無収入となっており、しかも12月分の家賃2万5000円を支払えていない状態だったこと、借金に追われていた様子であったということから、手持金は最低生活費をはるかに下回っていたことがうかがわれます。

男性は両親と死別し、兄とも疎遠であったということですから、具体的に扶養が行われていたことをうかがわせる事情もありません。

また、男性は求職中だったということですが、たとえすぐに職がみつかったとしても、通常、収入が得られる時期は後になること、ましてや2008年秋からの世界的な経済不況の影響で非正規雇用の労働者が大量に失職する中、求職状況は厳しさを増していたことを考慮すれば、すぐに収入が得られることを期待できる状態ではなかったはずです。

 (2)申請権侵害の疑い

    上記(1)のような状態の男性が福祉事務所を訪れたのは、生活保護の申請意思を有していたからであるとしか考えられません。

    にもかかわらず、30分で「相談」として終了したということは、面接担当者が初めから男性を保護の対象外として正しい説明を行わず、男性の保護申請権及び保護受給権を侵害した疑いが否定できません。

すなわち、上記1の経緯が事実であるとしても、「相談はあったが、申請がなかったので違法・不当ではない」と即断することは誤っています。

適切な教示助言がなかったために男性が誤信によって保護申請を思い止まったのであれば、保護申請権の行使自体が職員の誤った説明により妨げられ、それによって保護受給権が侵害されたことになるからです。

(3)稼働能力活用の要件も充たす可能性が高かったこと

男性は39歳と若く、病気・けがはなく求職中だと言っていたとのことですが、①稼働能力があるか否かの判断については、年齢や医学的な面からの評価だけではなく、有している資格、生活歴・職歴等を総合的に判断することとされています(昭和38年4月1日社発第246号厚生省社会局長通知「生活保護法による保護の実施要領について」第4-3)。よって、男性の職歴等いかんによっては、現実には稼働能力を活用する場が限られていた可能性があります。

また、②稼働能力を活用する意思も問題となりますが、男性は、「幅広く仕事を探してみる」とも述べたとのことですから、能力活用の意思を示していたといえます。

したがって、男性は稼働能力活用の要件を充たしていたとみるべきです。

(4)助言・教示義務について

生活保護法は、憲法25条の理念に基づき、生活に困窮した人に漏れなく最低限度の生活を保障することを目的としています。そのため、生活保護法7条により、原則として申請がなければ保護は開始されませんが、その前提としては、生活に困窮した人が生活保護制度や自らの保護受給の可能性、申請の方法等について正しい情報を得ていることが必要です。すなわち、生活に困窮している人が福祉事務所に保護申請の相談に訪れた場合は、その困窮した人が複雑な内容をもつ生活保護制度について詳しく知らないことも多く、その場合は生活保護制度について実施機関が適切な説明を行い、相談者がそれを理解した上で申請するか否かを判断することになります。

この点、現行生活保護法制定当時の厚生省社会局保護課長小山進次郎氏は次のように述べています。「申請保護の原則は、保護の実施機関をいささかでも受働的消極的な立場に置くものではない。換言すれば、この原則が採られる事になったからといって要保護者の発見に対する保護の実施機関の責任がいささかでも軽減されたと考えてはならないのである。」「申請保護の原則を生かす為には一般の国民からみて申請がし易いように保護の実施機関側でも工夫すべきである。」(小山進次郎『改訂増補生活保護法の解釈と運用』165頁)。

また、「生活保護行政を適正に運営するための手引きについて」(平成18年3月30日社援発0330001号厚生労働省社会・援護局保護課長通知)においても、このことが具体化されています(「保護の相談の段階から『保護のしおり』等を用いて制度の仕組みを十分に説明するとともに、他法他施策や地域の社会資源の活用等についての助言を適切に実施することが必要である。要保護者に対してはきめ細かな面接相談、申請の意思のある方への申請手続への助言指導を行うこととともに、(以下略)」)。

したがって、生活保護の受給要件を充たす可能性の高い人が相談に訪れた場合、当該行政の職員は、生活保護制度の内容や受給の可能性、申請手続等について、とりわけ丁寧に教示・説明すべき法的義務があると解すべきです。

 (5)本件では助言・教示義務が果たされていない可能性が極めて高いこと

    男性が生活保護の受給要件を充たす可能性は高かったのですから、面接担当者としては、まず男性の要保護状態を示す生活状況について十分な聴き取りを行った上、男性の最低生活費の概算を示し、稼働能力があるからといって保護を受給できないということはないこと、生活保護を申請し、保護を受給しながら求職活動を続ければよいこと、また、仕事が見つかったとしても最低生活を営むのに十分な収入が得られない場合は、不足分につき引き続き保護を受給しながら増収をはかる努力をすればよいことなどについて十分に説明する義務があり、申請意思の確認はその上でなされるべきでした。

    しかし、前述のように、本件「相談」はわずか30分で終了したとのことであり、このような助言・教示が行われたとは到底考えられません。

(6)仮に真の意味で申請がなかったとしても、関係諸機関及び民生委員・児童委員との連絡・連携を図る義務を懈怠していること

    前記局長通知第9-2によれば、「要保護者を発見し適切な保護を実施するため、生活困窮者に関する情報が保護の実施機関の窓口につながるよう、住民に対する生活保護制度の周知に努めるとともに、保健福祉関係部局や社会保険・水道・住宅担当部局等の関係機関及び民生委員・児童委員との連絡・連携を図ること。」とされています。

本件では、仮に相談が十分にして適切なものであって、その上で申請意思がないことを確認したのだとしても、男性が保護を要する状態である可能性が高かったことには違いありません。

ですから、もし求職活動がうまくいかない場合や、仕事が見つかっても最低生活費が得られない場合は生活保護申請を再検討したほうがよいことを男性に教示した上、例えば申請書を手渡しておいて、いつでも提出できること、原則として提出した日以降で要保護状態と確認された日が受給開始日となること等を説明すべきでした。

その上で、貴市の「いのちをつなぐネットワーク」を活用するなどして民生委員等に情報提供し、男性を適切に保護できるよう連携を図るべきでした。

4 検証の必要性

このように、申請権・受給権侵害の疑いが濃厚な本件を検証することなく「対応は適切だった」というのでは、市民の尊い人命を奪った少なくとも3件の前例が全く活かされず、経済不況が深刻化する中で餓死事件が続発することが強く危惧されます。

再発防止のためにも、本件の徹底的な検証は不可欠です。

また、そもそも、生活保護行政フォローアップ委員会は生活保護行政が検証委員会の提言に従って改善されたかどうかを確認するために設けられたはずですが、その委員会がきちんと機能していたのか否かも、あわせて問われなければならないと考えます。

5 最後に

「助けて」という手紙も投函できないまま、39歳の若さで孤独死を余儀なくされた男性の無念を思うと言葉もありません。

今回の事態について、安易に「問題なし」として事態の幕引きをはかることは許されません。貴市は今後決してこのような痛ましい事件が発生する事のないよう、このような事態に至った原因をつぶさに検証し、責任を明確化し、再発防止に向けた改善策をはかるべきです。

以上

厚労省通知「職や住まいを失った方々への支援の徹底について」

2009-03-18 00:00:00 | Weblog
3月18日、厚生労働省社会・援護局保護課長が各自治体に対して新たな通知を出しました。
 ポイントは以下の点にあります。

・生活困窮者の増加に対応するため、ケースワーカーなどの人員増加を図ること
・都道府県等によるシェルター等の整備を求めたこと。
・「住まい」のない者については、現在地での保護を徹底すること。
・社会保険・水道などの部局と連携して、生活困窮者の早期発見に努めること。
・住居を確保するまでの間にカプセルホテル等で宿泊した場合、宿泊料を住宅扶助費として支給してもよいとしたこと。
・不動産関係団体と連携してアパートの情報を提供するなどして住居の確保を支援すること

特に、この間各地で問題になっている生活保護開始申請後の待機場所と
住居確保の支援については、以下のように述べています。

「1 今後の生活困窮者の増加に対応するために実施すべき事項
(3)都道府県等によるホームレス自立支援センターやホームレス緊急一時宿泊事業(シェルター)の実施の強化
 ホームレスに対して地域の実情に応じ、ホームレス自立支援センターやホームレス緊急一時宿泊事業(シェルター)の実施などの対策がとられており、直ちに借家等で自活する事が困難であるが就労意欲と能力のある者については、ホームレス自立支援センター等において支援を行う必要がある。
 これらの施設は既存建築物等を活用し、又は借り上げて設置することについてもセーフティネット支援対策事業費補助金の補助対象としたところである。各自治体においては、今後の生活困窮者の増加に備えて、早急にこれらの施設の整備に取り組まれたい。」

「2 保護の申請から保護の適用までの対応
(2)住居の確保等についての情報提供及び関係機関との連携
 居宅生活が可能と認められる者による住居の確保を支援するため、各自治体においては、例えば、不動産関係団体と連携し、住居を喪失した者や保証人が得られない者に対してアパート等をあっせんする不動産業者の情報を収集するなど、必要に応じて、住居に関する情報を提供できるよう、その仕組みづくりに努められたい。
 また、「直ちに居宅生活を送ることが困難である」と判断された者や、居宅生活が可能か否かの判断ができない者については、施設等における支援が、一定の期間、必要である。このため、各自治体においては、ホームレス自立支援センターやホームレス緊急一時宿泊事業(シェルター)等の必要な施設の確保を図るとともに、関係部局と連携を図られたい。」

PDFファイル

「北九州から日本の生活保護行政の未来を展望する」

2009-03-07 11:30:00 | 集会・シンポジウムのお知らせ
北九州市での生活保護行政改善の取り組みは、
申請率・保護率に一定の改善はみられるものの、
まだ母子家庭の保護率の低さ、不当な「就労指導」など多くの課題を抱えています。
北九州市で発生した小倉北区での餓死事件以降も、
全国各地で生活保護利用から違法に排除された市民が亡くなるという痛ましい事件が起きています。
各地では生存権裁判などの生活保護関係の裁判が闘われており、雇用不安や派遣切りなど
生活が立ち行かない人たちが、最後のセーフティネットである生活保護をよりどころにしています。
このような社会状況下で、日本の生活保護行政の未来を展望する集会を開催します。

皆さん、是非とも北九州にお集まり下さい。

尚、今回は集会後のデモではなく
集会前に、小倉駅前にて街頭演説&チラシ配布を行います。

こちらの方も、是非ともご参加下さい。

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生活保護問題対策全国会議 北九州集会 2009.3.7

「北九州から日本の生活保護行政の未来を展望する」

日時 2009年3月7日(土)

場所 街頭活動 小倉駅前  11時30分~12時

   集会   小倉興産KMMビル 大会議室  13時~16時

主催:生活保護問題対策全国会議
共催:福岡・北九州生存権裁判を支える会 
    北九州市社会保障推進協議会
連絡先:093-871-1621

【内容】

・「北九州から日本の生活保護行政の未来を展望する」
尾藤廣喜 さん(弁護士、生活保護問題対策全国会議代表幹事)

・「小倉北餓死事件の責任を明確にさせることの意義」
 (パネルディスカッション)
  パネラー  吉永純 さん(花園大学教授)
         舟木浩 さん(弁護士)
         國師洋典 さん(社会福祉士、自立生活サポートセンターこんぱす代表)

  コディネーター 濱田なぎさ さん(司法書士)

・検証委員会後の北九州  
・当事者報告 
・全国各地の餓死事件報告
・裁判報告(違法指導指示事件、自動車処分指導事件、生存権裁判、ケース記録開示など)

福井県・坂井市に連名で要望書を提出しました

2009-02-02 11:52:24 | Weblog
貴県・貴市の生活保護行政に関する要望書
2009(平成21)年2月2日
福井県知事 西川一誠 殿
坂井市長  坂本憲男 殿
生活保護問題対策全国会議  
代 表  尾 藤 廣 喜  
生活保護支援ネットワーク静岡
代 表  布 川 日 佐 史

 「生活保護問題対策全国会議」は、すべての人の健康で文化的な生活を保障するため、貧困の実態を明らかにし、福祉事務所の窓口規制を始めとする生活保護制度の違法な運用を是正するとともに、生活保護費の削減を至上命題とした制度の改悪を許さず、生活保護法をはじめとする社会保障制度の整備・充実を図ることを目的として活動している任意団体です。
 「生活保護支援ネットワーク静岡」は、学者、弁護士、司法書士、ボランティア活動家等により構成され、生活困窮者が尊厳ある生活を確保するために、生活保護の申請や受給に関する支援活動をするボランティア団体です。

 平成21年1月19日午後、生活保護支援ネットワーク静岡(以下、静岡ネット)に福井県坂井市在住のWさん(男性・45才)から相談電話がありました。
以下、経過は下記のとおりです。
(1) Wさんは派遣会社に登録して、フォークリフトの作業などしていたが、体調を崩し(下痢、頭痛など。本人は精神的なものだと思うとおっしゃっている )、
運転などに集中できないため、事故や迷惑をかけるのが怖く、体力的にもとても仕事ができる状態ではなかった。
軽トラックと貨物トラックを保有しているが、ともに車検が切れている。他に見るべき資産はなく、所持金もほとんどない。
(2) 19日時点では、仕事をしていなかったが派遣会社の寮で生活しており、住居は確保できていた。静岡ネットから、居住地の生活保護申請窓口である、坂井市丸岡総合支所に申請するよう伝え、本人が出向いたが「住まいがあるから申請できない」、「車があるから申請できない」、「派遣で仕事をもらえばよい」などを理由に申請させてもらえなかった。
(3) 翌日、静岡ネットから丸岡総合支所に電話して、Wさんの困窮状態を説明し、適正な対応をするよう抗議し、Wさんに再度申請をするように伝えたが、その後数日、前回申請を断られたことから申請にも行かなかった。
(4) Wさんは寮を出て行けなどと言ってくる派遣会社の社員を恐れて携帯電話の電源を切っていたが 、結局、22日までにその寮も追い出され、その後は車検が切れた車で寝起きしなければならなくなった。
(5) 23日夜、Wさんから静岡ネットに電話があったため、月曜日に再度申請するよう伝えた。
(6) 26日、Wさんは、再度丸岡総合支所に申請したが、今度は窓口で、「住所がないから申請できない」と申請を受け付けられなかった。すぐに静岡ネットから、丸岡総合支所に対し、住所がないという理由で申請をさせないのは違法である旨を強く抗議したところ、担当者も住所がないという理由で申請を受け付けないことは違法であることは認めたため、本人にはとにかく申請書を提出するようアドバイスし、同日中に再々度申請をした。
 (7)しかし、丸岡総合支所の職員(N氏)は、またもや「住所がないと申請できない。 これは福井県内どこでも同じだから、どこへ行っても無理。」と発言し、
「静岡の司法書士に相談しているのなら、静岡に行ったらどうだ」とWさんに告げ、申請を拒否した。
 (8)27日静岡ネットから、貴庁に電話し、地域福祉課のF氏に問い合わせしたところ、F氏は、「住所がなければ申請できないのは福井に限らず、全国どこでもそうです」 と答えた。野宿者の方はどうするのかと尋ねると、「急迫状態なら保護します」とのことであった。そこで、福井県の急迫保護件数はどのぐらいかと尋ねると、「私にはわからない」との回答であったため、それでは統計の担当者と電話を替わってくれと言うと、担当はF氏本人であると述べた。
更に急迫保護につき、「職権で保護するのか」と尋ねたところ、「それでも本人の申請意思を確認してからだ」とのことであった。

生活保護法第2条は、「すべて国民は、この法律の定める要件を満たす限り、この法律による保護を無差別平等に受けることができる」と規定しています。
また、行政手続法第7条は「行政庁は、申請がその事務所に到達したときは遅滞なく当該申請の審査を開始しなければなら」ないとしています。
静岡ネットは、Wさんが相談の当初から要保護状態であると判断し、生活保護申請につき助言をしてきました。生活保護は、すべての国民に無差別平等に保障された権利であり、その申請を行政庁が恣意的に拒否することは絶対に認められません。
生活保護法第19条1項では、居住地のない者が保護の対象者として想定されています。近年の厚生労働省の通知「ホームレスに対する生活保護の適用について」(2003(平成15)年7月31日社援保発第0731001号)においても、「ホームレスに対する生活保護の適用に当たっては、居住地がないことや稼働能力があることのみをもって保護の要件に欠けるものではないことに留意し、生活保護を適性に実施する」とされています。
さらに、生活保護法第30条1項では、保護は原則的に被保護者の居宅において行うものとされています。したがって、居宅のない要保護者に対しては、保護を決定したうえで、その者が居宅生活を送るために必要な支援を行うべきです。例えば、入居に要する敷金等の支給は、その一つであり、昭和38年4月1日社発第246号厚生省社会局長通知「生活保護法による保護の実施要領について」第7-4-(1)-キには、「保護開始時において、安定した住居のない要保護者」に対する敷金等支給について記されています(『生活保護手帳 2008年度版』217-218頁)。
なお、厚生労働省は2008(平成20)年3月4日の「生活保護関係全国係長会議資料」において、先述の通知「ホームレスに対する生活保護の適用について」の上記箇所に言及しつつ、「実際の運用において、これらの留意事項が徹底されていない事例も見られるところである」との認識を示したうえで、あらためてホームレスに対する居宅保護や敷金等支給についての方針を強調しています(12-13頁)。
次に、国のホームレス対策に関連させていえば、「ホームレスの自立の支援等に関する特別措置法」(2002(平成14)年8月7日)においては、第3条3項で、生活保護法による保護の実施等によってホームレスに関する問題の解決を図ることが施策の目標として規定されているとともに、第6条では地方公共団体の責務について定められています。
また、「ホームレスの自立の支援に関する基本方針(2003(平成15)年7月31日厚生労働省・国土交通省告示第1号、2008(平成20)年7月31日改正)」第3-2(7)イ「生活保護法による保護の実施に関する事項について」では、「ホームレスに対する生活保護の適用については、一般の者と同様であり、単にホームレスであることをもって当然に保護の対象となるものではなく、また、居住の場所がないことや稼働能力があることのみをもって保護の要件に欠けるということはない。こうした点を踏まえ、資産、稼働能力や他の諸施策等あらゆるものを活用してもなお最低限度の生活が維持できない者について、最低限度の生活を保障するとともに、自立に向けて必要な保護を実施する」とされています。
舛添要一厚生労働相も1月26日の参議院予算委員会の締めくくり総括質疑における仁比聡平参議院議員の質疑の中で、昨年12月22日付の「当然のことながら、福祉事務所は、路上生活者からの相談に対し、社会資源の不足(施設のキャパシティ不足)、福祉事務所の実施体制の不備等を理由とした相談拒否や援助を必要とする者への援助拒否は行い得ない」、「保護開始時に安定した居宅がない要保護者に対しては、居宅生活が可能な場合は敷金等の支給の対象となることを示」す、「経過的居所の確保」のために「必要とされた臨時の宿泊料等については、その後に移った一般居宅や民間宿泊所の住宅扶助費とは別に…住宅扶助の計上が可能」などとする東京都福祉保健局生活福祉部保護課長通知について、「厚労省の基本的な方針に基づいて東京都もそういう決定をした」と答弁した上で、「都の通知に書いてあることを国としても行っていく」と答えています。
更に舛添厚生労働相は、「生活保護というのは国庫が四分の三を負担すると、基本的に国の責任において、そういう憲法二十五条で定められたこの国民の文化的で最低の生活を守っていくということでありますから、それは周知徹底したい」と表明しています。
貴県の生活保護行政は、かかる政府の方針に真っ向から反するものであり、生活保護問題対策全国会議および静岡ネットは、かかる事態を到底看過することはできず、強く抗議するとともに、その改善を求めるものです。

 ついては、上記の点についての貴県・貴市のご見解を本書面到達後2週間以内に下記事務局までご連絡くださいますようお願いいたします。
以上、宜しくお願い申し上げます。

〒426-0061
静岡県藤枝市田沼1丁目14番23号
生活保護支援ネットワーク静岡 事務局
司法書士 羽根田龍彦
電話 054-634-1507
FAX  054-634-1508