生活保護問題対策全国会議blog

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次回「検討会」は11月8日

2007-10-31 13:44:29 | 生活保護基準見直し問題
10月30日に2回目の「生活扶助基準に関する検討会」が開催されました。
内容等の報告は後日またの機会に。
席上次の検討会の日程が発表されましたのでお知らせいたします。
次回は11月8日。
場所と時間は判り次第お知らせしますので、みなさま是非、傍聴・抗議のご準備を!


基準見直しについて福岡県弁護士会会長声明が出ました。

2007-10-29 22:52:53 | 生活保護基準見直し問題
福岡県弁護士会から「生活保護基準の引き下げについて慎重な検討を求める」旨の会長声明が発表されました。

(以下、声明本文)

生活保護基準の引き下げについて慎重な検討を求める声明

 厚生労働省は、本年10月19日、学識経験者によって構成される「生活扶助基準に関する検討会(第1回)」(以下「検討会」という。)を開催した。同省のホームページにおいて検討会の設置及び開催が発表されたのは同月16日であり、それからわずか3日後の突然の開催であった。
 「検討会」は「平成20年度予算編成を視野に入れて結論が得られるよう検討する。」という。そして、北海道新聞(本年10月18日朝刊)の報道によれば、「検討会」は年内に報告書をまとめ、生活保護の給付の基本となる最低生活費の基準額の引き下げを提言する見通しであり、地域ごとに支給額に差をつけていた「級地」制度の見直し方針と相まって、都市部では大幅な生活保護基準の引き下げが懸念されるという。
しかし、生活保護基準は、憲法25条が保障する「健康で文化的な最低限度の生活」の基準であって、国民の生存権保障に直結する重大な基準である。
日本弁護士連合会が昨年7月に実施した「日弁連全国一斉生活保護110番」においては、生活に困窮した市民の切実な訴えが多数寄せられたが、生活保護基準が引き下げられるということは、現に生活に困窮している市民のうち、生活保護を利用して困窮から脱することができなくなる人が増加することを意味する。
しかも、生活保護基準は、介護保険の保険料・利用料・障害者自立支援法による利用料の減額基準、地方税の非課税基準、公立高校の授業料免除基準、就学援助の給付対象基準、また、自治体によっては国民健康保険料の減免基準など、医療・福祉・教育・税制などの多様な施策にも連動している。
このように、生活保護基準が引き下げられれば、生活保護利用者の生活レベルが低下するだけでなく、日本で生活する低所得者全般に直接の影響が出てくる。特に年収200万円以下の労働者(いわゆるワーキングプア層)にとっては、上記諸施策への連動が及ぼす影響は重大であり、増大するワーキングプア層の生活を更に苦況に追い込むことになりかねない。
したがって、生活保護基準に関する議論は、十分に時間をかけて慎重になされるべきである。また、こうした議論は、公開の場で広く市民に意見を求めた上、生活保護利用者の声を十分に聴取してなされるべきである。
 にもかかわらず、上記の新聞報道のとおり、厚生労働省の「検討会」が、わずか2ヶ月足らずの検討期間しか設けず、あらかじめ「引き下げ」の提言をするとの結論を決めた上で検討を行うものであるとすれば、既に述べた生活保護基準の重要性に鑑み、到底容認することができない。
当会は、昨年、日本弁護士連合会において採択された「貧困の連鎖を断ち切り、すべての人の尊厳に値する生存を実現することを求める決議」を受けて、生活保護をめぐる相談・援助体制を構築及び生活保護制度全般にわたる調査・検討を行う委員会を発足させ、貧困問題の解決に向けて取り組んでいるところである。
厚生労働省及び「検討会」に対し、結論先にありきの拙速な検討を厳に慎み、公開の場で生活保護利用者の声を十分に聴取し、徹底した慎重審議を行うことを強く求める。

2007(平成19)年10月29日
福岡県弁護士会           
会 長   福  島  康  夫

(以上)

「生活扶助基準に関する検討会」委員各位に要望書を提出しました

2007-10-28 11:01:18 | 生活保護基準見直し問題
要  望  書

「生活扶助基準に関する検討会」委員
慶應大学商学部商学科 教授 樋口美雄様
首都大学東京 都市教養学部教授 岡部卓様
早稲田大学 法学学術院教授 菊池馨実様
慶應義塾大学 経済学部教授 駒村康平様
神奈川県立保健福祉大学 保健福祉学部社会福祉学科教授 根本嘉昭様

2007年(平成19年)10月28日
京都市中京区麩屋町通丸太町下ル舟屋町407
長栄ビル4階 鴨川法律事務所
生活保護問題対策全国会議代表幹事
弁護士  尾   藤   廣   喜

大阪市北区西天満3丁目14番16号
西天満パークビル3号館7階 あかり法律事務所(連絡先)
電 話  06-6363-3310
FAX  06-6363-3320
上記同事務局長
弁護士  小 久 保  哲  郎

拝啓
秋冷の候、ますます御健勝のこととお喜び申し上げます。
さて、当会は、弁護士・司法書士・研究者・市民で構成し、生活保護法をはじめとする社会保障制度の整備・充実を図ることを目的として活動している団体です。此度、厚生労働省社会・援護局長の私的研究会として「生活扶助基準に関する検討会」(以下、「検討会」と言います。)が設置され、貴殿が検討会の委員に選任されたことを知りました。当会は、現在の社会情勢のもと、検討会における議論を経て、生活保護基準の引き下げ、もしくは一部きり上げによってカモフラージュした総額抑制が強行されるのではないかと強く危惧しております。
そこで、検討会の委員に選任された貴殿に対し、検討会における今後の検討にあたって、慎重かつ多方面から検討していただきたく、本書面にて下記のとおり要望させていただく次第です。専門家として、すでに十分問題点を検討されておられるとは存じますが、論点整理の一助として、本書面をご一読いただければ幸甚です。
今後、検討会における議論が真に市民の生活実態を踏まえたものとなり、一層充実した検討がなされることを祈念しております。
敬具


1 生活扶助基準に関してなされてきた過去の検証の経緯をご理解ください。

(1)水準均衡方式は「一般国民の消費水準との均衡」を図る方式であること

ご存知のように、水準均衡方式は、1980年3月17日から1983年12月10日までの中央社会福祉審議会生活保護専門分科会における議論を踏まえ、それまでの格差縮小方式を引き継いで、1984年4月から採用された方式です。
従前の格差縮小方式は、一般国民の消費水準と比較した被保護世帯の消費水準が低かったため、生活保護基準を引き上げなければならないという目的意識のもとに採用されました。当時高い伸び率を示していた全都市勤労者世帯第1・十分位の消費水準との均衡を図る手法を取り入れることで生活扶助基準の引き上げを実現しました。これに対し、水準均衡方式は、格差縮小方式の成果を受け、当時の生活扶助基準が一般国民の消費実態との均衡上ほぼ妥当であるとの評価を踏まえ、当該年度に想定される一般国民の消費動向を踏まえると同時に、前年度までの一般国民の消費実態との調整を図る方式として採用されました。具体的には、当時において一般国民の消費水準の60%程度をもって妥当とされています。
また、生活扶助基準の過去の見直し作業において、相対的貧困論のみに固執すべきではないことも指摘されています。例えば、1983年12月10日の生活保護専門分科会において、石田忠委員は、「格差はひらかなくて縮小したとしても、例えばいろいろな理由で国民生活が一般的に厳しくなって来た場合、それに比例して扶助基準も下がっていいということにはならないと思う。そういうのは政治目標にはなり得ない。一般国民の生活水準が下がってくることがあったとしても、今まで国が保障してきた最低限のところだけは守るということ以外に政治的な態度としてはあり得ない。だとすれば、格差が仮に縮小してきても、今の60じゃなくて、それが70になっても、まだ頑張らなきゃならないということがあるかも知れないと思う。」と発言しています。
このように、水準均衡方式は、本来、「一般国民の消費水準との均衡」を図る方式であり、「低所得層の消費水準との均衡」や「第1・十分位の消費水準との均衡」によって引き下げることを予定した方式ではないと言えます。

(2)「生活保護制度の在り方に関する専門委員会」も第1・十分位の消費水準との均衡を図るために直ちに基準を引き下げることは予定していないこと

今回の検討会における配付資料では、「生活保護制度の在り方に関する専門委員会」の生活扶助基準に関する意見の概要について、「生活扶助基準は、一般国民の生活水準との関連においてとらえられるべき相対的なもの。具体的には、年間収入階級第1/10分位の世帯の消費水準に着目することが適当。」とまとめられています。しかし、これは恣意的に歪曲された要約と言わざるを得ません。「生活保護制度の在り方に関する専門委員会」は、水準均衡方式を前提としたうえで、今後の基準見直しにあたって第1・十分位の低所得層の消費水準との均衡に着目すべきことを指摘したにすぎません。むしろ、「生活保護制度の在り方に関する専門委員会」の報告書では、第2の1に「捕捉率(生活保護の受給要件を満たす世帯がどれだけ実際に生活保護を受けているか)についても検討を行う必要があるとの指摘があった。」と明示され、さらに、第4の2には、「生活保護制度は、他の社会保障制度や社会福祉サービス等を補完する位置にあり、したがって他の制度の保障水準が上昇すれば、生活保護がカバーすべき範囲が縮小し、逆の場合は拡大するという性格を持っている。このため、一般の低所得者対策が十分でない場合、被保護世帯の増加や受給の長期化につながるおそれがある。」などと指摘され、低所得者対策等他施策との連携の必要性が確認されています。「生活保護制度の在り方に関する専門委員会」は、低所得層に漏給層が含まれていることに十分留意しながら、生活保護制度以外の社会保障制度や社会福祉サービスの実情も踏まえた上で、第1・十分位の消費水準との均衡を図るということを確認したのです。第1・十分位の生活実態を無視し、形式的に消費水準のみを比較して均衡を図ることを是認したものではありません。

(3)貧富の格差が拡大した実態を踏まえて「一般国民の消費水準との均衡」が図られるべきこと

水準均衡方式は、そもそも中間層の分厚い「バルーン型」の社会を前提にしていました。生活保護基準がバルーンの下に張り付いても全体のバランスは崩れない、という前提に立っていました。しかし、その後、日本では急速に国民の間の貧富の格差が拡大しており、厚生労働省の『所得再分配調査報告書』で再分配所得のジニ係数の推移を見ても、1981年には0.314だった数値が、2005年には0.387まで上昇しています。現在は、「バルーン型」の社会から真ん中のくぼんだ「砂時計型」、「ひょうたん型」の社会に移行しつつあると言えます。このような社会では、生活保護基準を最下層に位置づけると、最下層をさらに下方に引っ張って不平等度が増すことになります。現在の格差の実態を踏まえれば、消費水準を比較するにあたって、単に「分位」で並べるだけでなく、その間のジニ係数を出して分析する必要があります。

2 生活扶助基準の引き下げによって多くの市民の生活が悪化することをご理解ください。

(1)生活扶助基準の引き下げは生活保護を利用する市民の生命を直接脅かすこと

生活保護基準は、憲法25条で保障された「健康で文化的な最低限度の生活」の基準を定めるものです。生活保護は、社会保障制度の根底にあって広く市民の生存を支えており、生活扶助基準の引き下げは、そのまま生活保護を利用している市民の生命を脅かすことになります。このことは、過去の生活扶助基準の見直しにおいて、厚生省(当時)も確認してきたことです。すなわち、格差縮小方式の見直しを行った1980年から1983年までの生活保護専門分科会における検証において、厚生省社会援護局の金田局長は、1982年11月13日の生活保護専門分科会では、「生保は他の年金等がカットされても別だと考えている。」と発言し、さらに1983年7月20日の生活保護専門分科会では、「他の予算が減ると同時におとせる性格のものではないし、私共は「防衛」といっているが、治安維持のようなもので、暴動が起きたらどうするんだといったくらいのことを大蔵省に対しては言っている。」と発言しています。生活保護が生命と直結する重要な意義を有することを厚生省の社会局長自身が認めていたと言えます。生活扶助基準が、市民の「健康で文化的な最低限度の生活」を真実保障するものになっているかどうかを、憲法25条及び生活保護法1条、3条に基づいて十分に検討していただくことを要望します。

(2)生活扶助基準の引き下げによって一般市民の生活が苦しくなること

生活保護基準は、国民生活に関わる様々な制度と連動しています。したがって、生活扶助基準が引き下げられれば、最低生活基準に連動している様々な基準額も引き下げられることになります。具体的には、地方税の非課税基準額が引き下げられ、それまで非課税であった人が課税されたり、課税額が増えたりします。課税額が増えれば、保育料など各種社会福祉サービスの利用料が引き上げられます。また、介護保険の保険料・利用料、障害者自立支援法による利用料の減額を受けられない人が増えます。国民健康保険料の減免(及び自己負担額の減免)基準を生活保護基準に連動させている自治体も存在しており、それらの自治体では減免から外れる人が発生します。さらに、生活福祉資金や就学援助制度など、低所得者向けの制度を利用できなくなる人が新たに発生します。そして、生活保護基準との整合性に配慮することを謳った最低賃金の引き上げ目標(改正法案)や年金額にも影響が及ぶでしょう。このように、生活保護基準は、各種福祉施策の利用資格、利用時の負担金等はもとより、年金、課税最低限、最低賃金の金額等にも影響し、市民生活の広汎にわたって重大な影響をもたらします。
就学援助制度から外されることによる学校給食費の未納世帯、保育料未納世帯、国民健康保険料を支払えずに「医療難民」化する世帯、介護保険を受けられない「介護難民」が増えるでしょう。また、生活そのものが成立たなくなってアパートを失ったホームレスや「ネットカフェ難民」が増え、ひいては少子高齢化を推進することとなります。これらが、本来国民の生活と命と健康を守るべき厚生労働省の行うべき仕事とは考えられません。

(3)第1・十分位との比較によって「底なし」の基準引き下げにつながること

水準均衡方式は、相対的貧困論に立脚しています。そのため、絶対的貧困論に基づく一定の担保がない状態で形式的に第1・十分位の消費水準との均衡を図れば、今後、生活扶助基準は「底なし」となる危険があります。一般市民の収入が増えなくても、前記のような負担増によって、低所得者の消費実態はさらに下がります。そうすればまた、それを根拠に生活扶助基準が引き下げられ、それがまた低所得者の消費実態を押さえ込むはずです。こうして「貧困化スパイラル」が進行し、人々の暮らしが悪化し続け、生活扶助基準も際限なく引き下げられることが予想されます。
内閣府『平成18年次経済財政白書』の「絶対的貧困」の項によれば、日本においても経済的理由によって「食料、医療、もしくは被服など」を買えなかったという人たちが9%存在していました。この人たちは全国消費実態調査における第1・十分位に相当する人たちと推測されます。生活が圧迫されれば、消費は抑え込まれます。圧迫され、抑え込まれた消費実態を元に生活扶助基準を切り下げることが、本当に「要保護者の需要を基と」している(生活保護法8条)ことになるとは思われません。生活扶助基準は「健康で文化的な生活水準を維持することができるものでなければならない」(法3条)のであり、食料を買えない、医療にかかれないような人たちの生活水準を引き上げることこそが本旨のはずです。実質的な生活保護漏給層との「均衡」は、結果的に「健康で文化的な生活水準」を切り崩すことに帰結すると思います。
 
(4)生活保護の間口が狭まること

生活扶助基準が切り下げられれば、生活保護制度の間口が狭まり、生活保護を受けられない人たちが出てきます。
日本の捕捉率が極めて低い水準にあることは、各種の先行研究によってほぼ明らかになっています(橘木俊詔・浦川邦夫『日本の貧困研究』P125)。生活扶助基準を云々する前に、全国消費実態調査で明らかになった所得と資産の状況から、政府が自らの責任において「捕捉率」を推計し、それの解消に向けた作業を行い、しかる後に水準均衡を図ることが本来の進むべき道筋であり、また「生活保護制度の在り方に関する専門委員会」を真に継承する作業だと思います。実質的漏給層を放置して、それとの「均衡」を図るとは本末転倒ではないでしょうか。
委員の皆様が、国民の生活保護を受ける権利を制限し、剥奪することがないよう、切に願います。

3 厚生労働省が生活扶助基準引き下げ・総額抑制のために検討会を利用しようとしていることを十分ご理解ください。

(1)結論が先にあること

「経済財政運営と構造改革に関する基本方針2006」(いわゆる「骨太の方針2006」)は、歳出削減に向けた見直しの一環として、2008年度までには確実に生活扶助基準の見直しを実施するとしていました。2008年度の予算編成を踏まえれば、検討会における検討内容が「骨太の方針2006」に掲げた上記見直しを実施するための根拠とされることは必至です。厚生労働省は、基準引き下げ、もしくは一部据え置き・切り上げを伴いつつも総額としては抑制するという結論を先に持っており、検討会はそのための「アリバイ作り」に利用されるのではないかと懸念しています。

(2)厚生労働省が検討会の議論を形骸化させようとしていること

これは、先生方には、あえて申し上げる必要のないことであろうかと存じますが、「結論が先にあること」の事情から見て、検討会に提出される厚生労働省の資料は、基準引き下げという結論に検討会の議論を誘導するための資料である可能性が高いことが懸念されます。とりわけ、全国消費実態調査特別集計に基づくデータは、膨大な資料に基づいて長時間かけて準備されたものであり、本来であれば、基礎資料の分析なしに短期間に検証を行うことは不可能と言えます。にもかかわらず、厚生労働省は、多忙な検討会委員の先生方に対して、敢えて十分な準備期間を用意することなく直前に資料を配付しています。検討会委員の先生方の日頃の研究活動に基づく批判的な検証を事実上回避することで、厚生労働省の用意した結論に誘導しようとしているように思われます。

(3) 厚生労働省が国民不在のまま検討会を進めようとしていること

厚生労働省は、検討会を国民不在のまま開催しようとしています。今回の検討会では、「水準」(生活扶助基準)の他、「体系」「地域差」「その他(冬期加算、勤労控除)」についても検討の俎上に上げられており、これまでの経緯からすれば、これらは審議会で議論されるべき次元の問題です。その点で、今回の検討会の開催は慣行上も異例と言ってよいでしょう。
そのうえ、厚生労働省は、検討会の開催を直前まで隠していました。2007年9月1日、北海道新聞は、厚生労働省が近く有識者らによる検討チームを設置して生活保護費の削減を検討すると報じました。この報道を受けて、民主党の山井和則衆議院議員が同年9月19日提出の質問主意書で有識者会議の設置の予定等を尋ねたところ、内閣総理大臣は、10月2日、「現時点では未定である」と回答していたのです。ところが、10月19日、第1回検討会が開催されました。第1回検討会の開催の告知は、厚生労働省のホームページ上にわずか3日前の10月16日になされ、市民の傍聴の機会が十分に確保されませんでした。このような手続きに対しては、当会会員を含む多数の市民が厚生労働省に対して抗議を行いました。しかし、第2回検討会の開催についても第1回検討会と同じ事が繰り返されました。厚生労働省の事務方は、第1回検討会の席上、第2回検討会の日程について「未定である」と説明していましたが、そのわずか6日後の10月25日、厚生労働省のホームページ上に同月30日に第2回検討会を開催すると告知されました。さらに、10月26日の段階で、厚生労働省は第3回検討会開催日は未定と答えています。先生方は、いつ厚生労働省から今回の検討会についての打診を受け、いつ第2回、第3回の検討会の日程を入れたでしょうか? なぜ、国民の知る権利を保障しようとしないのでしょうか? 確定している日程を直ちに公表するよう厚生労働省に要望してください。

4 厚生労働省から示されるデータを用いての検討の妥当性や限界、データ自体の信用性に留意した上で生活扶助基準を検討してください。

(1)生活扶助基準は本来「需要」に着目すべきものであること

生活保護法8条1項は、「保護は、厚生労働大臣の定める基準により測定した要保護者の需要を基とし、そのうち、その者の金銭又は物品で満たすことのできない不足分を補う程度において行うものとする。」と定めています。水準均衡方式においては、上記「需要」を測定するために、全国消費実態調査の特別集計に基づく「消費水準」が基礎データとされてきました。しかし、全国消費実態調査が正しく「需要」を拾い上げているか否かについては十分な検証がなされていません。とりわけ、苦しい生活を送っている低所得層は、本来の需要を抑制して消費を控えているはずです。市民の「需要」を測定するために、「消費水準」以外の要素を考慮する必要性やその方法についてきちんと検証する必要があるのではないでしょうか。また、例えば、農村地域では、近所付き合いにお米や野菜の贈答などが日常的に介在し、市場で購入する以外の物品が交際のために必要となっていることも考えられます。全国消費実態調査では出てこない「需要」の存在についても慎重な検証が必要です。

(2)全国消費実態調査のデータに基づく検討には限界があること

今回の検討会に提出された資料では、全国消費実態調査から「夫婦子1人世帯(有業者あり)」と「単身高齢」をそれぞれ取り出し、該当するデータをすべて打ち込むとともに、該当世帯の生活保護基準額をすべて出してその平均も出しています。しかし、全国消費実態調査は、2004年に実施されたものです。前回の全国消費実態調査からすでに3年が経過しており、現在の消費実態を反映しているか疑問があります。また、全国消費実態調査は、2004年9月から11月にかけて実施されたものであり、調査項目は多いものの、家計調査と異なり通年で実施していません。単身者にいたっては10月と11月のみです。そのため、季節物の出費などが反映されてしまい、「はずれ値」の出ることが避けられません。本来、集計にあたってこのような「はずれ値」を除外する必要がありますが、夫婦子1人世帯の第5・五十分位の「和服」の支出が突出してしまっている点に鑑みると、今回の集計ではそのような処理がなされていないと考えられます。このような信用性に疑いのあるデータに依拠して検討することは避けるべきです。
この間、原油価格の高騰によって各種日常生活必需品が値上がりしていることは、各種報道で伝えられている通りです。このような時期に、3年前のデータに基づいて「見直し」を強行すれば、生活の立ちいかなくなる世帯が多数生み出されてしまいます。

(3)第1回検討会で提出された資料にはデータとしての信用性に疑いがあること

今回の検討会に提出された資料のデータには、前記「和服」の支出以外にも問題があります。
まず、夫婦子1人世帯のデータにおいて、エンゲル係数が所得に比例していない点に大きな疑問があります。資料3の6頁によると、単身高齢者では分位が上がるにつれてエンゲル係数が低下しています。夫婦子1人世帯についても、本来、分位が上がるにつれて、単身高齢者のようなカーブを描くはずです。ところが、資料3の4頁に記された夫婦子1人世帯のデータでは、エンゲル係数がすべて2割程度で推移しています。
そもそも、夫婦子1人世帯と言っても年齢的には相当に幅があります。子が成人している50代世帯と、幼児を抱えている30代世帯とでは支出の内容も変ってくるはずであり、本来両者を同一に扱うべきではありません。第5・五分位でも教育費が月額8116円にとどまっているのは、成人した子と同居している高収入の世帯が相当程度入り込んでいることによると考えられます。標準世帯(33歳夫、29歳妻、4歳子)にあてはまるデータが少なかったものと推測できますがが、子が未成年の世帯で集計するなどしない限り、ばらつきが多く、到底データとして使えるものとは言えません。
また、資料3のデータを前提にしても、一般低所得世帯がかなり食費を切り詰めていることがわかります。資料4の9頁及び10頁によれば、保護世帯のエンゲル係数は3割に達していますが、単身高齢者のエンゲル係数、夫婦子1人世帯のエンゲル係数ともにこれを下回っています。このような低所得世帯と比較して生活扶助基準を引き下げるということは、食費を切りつめた生活を強いることになるのであって、生存権保障の見地からは本末転倒と言わざるを得ません。資料3の4頁には、これらの比較に基づいて「生活扶助基準額はやや高め」と表現していますが、むしろ、低所得層が生活保護水準以下に落ち込んでしまっていることを問題にすべきです。
さらに、仮にエンゲル係数3割が妥当であるとすると、単身高齢世帯で第3・五分位程度(155000円のうち35000円)は食費に使えないとおかしい、ということになるはずです。ところが、実際には、第1・十分位で22650円、第1・五分位で24500円とされています。その他、資料4の10頁で被保護単身世帯(60歳以上の場合)の交際費に着目すると月1149円となっていまが、高齢者は友人知人の葬祭も多くなっており香典代がかかります。月1000円程度によって社会生活における交際が実現できているとは考えられません。
マーケット・バスケット方式による理論生計費を算出し、真の「需要」に即した検討を行うべきと思います。

5 以上申し上げましたとおり、今回の検討会への諮問の経過と内容には、あまりにも大きな問題があることは明白です。
貴殿におかれましては、改めて、被保護世帯を含む低所得階層の人々が、真実「健康で文化的な最低限度の生活」を送ることができるものなのかどうかを、理論生計費(マーケットバスケット)に立ち返って十分に検証、計算してみることを再考していただくことも必要であると考えます。今回の基準見直しにつきましては、いたずらに結論を急ぐことなく、十分な資料の検討に基づいて議論を尽していただきたく、お願い申し上げます。
また、生活保護制度を利用している当事者の生活実態の分析を十分になさせたうえで、さらに、当事者や関係団体の意見を十分聴取し、基準見直しの是非を検討していただきたく、お願い申し上げます。
以上                   

北九州市への事務監査について厚労省に申し入れ書を出しました

2007-10-24 11:12:46 | 北九州市問題
北九州市に対する生活保護法施行事務監査についての申入書

2007年10月24日
厚生労働大臣 舛添要一 殿
厚生労働省社会・援護局長 中村秀一 殿
(関連部署:同局保護課、同局総務課指導監査室)

生活保護問題対策全国会議  
代表幹事 尾藤 廣喜
事務局長 猪股  正
(連絡先)〒530-0047 大阪市北区西天満3-14-16
西天満パークビル3号館7階あかり法律事務所
弁護士 小久保 哲郎(事務局長)
電話 06-6363-3310 FAX 06-6363-3320


本年10月29日から11月2日に予定されている標記の件については、本年8月24日付の抗議申入書兼再質問状で貴省に対し要求したところですが、記載を落としていた点やその後新たに発覚した問題点などについて、改めて以下の通り申し入れるものです。8月24日付抗議申入書兼再質問状で指摘した点と合わせて、北九州市本庁及び小倉北福祉事務所の抱える問題点について徹底的に検討し、是正を指示することを強く求めます。


第1 生活保護申請取下げについて

1 小倉北福祉事務所に対する監査において、保護申請を行ったものの決定前に取下げたケースについて、面接相談記録等の検討を相当の時間をかけて徹底的に行い、取下げに至る経緯について十分調査してください。職員が取下げを強要している事例や、保護の受給要件等について虚偽の説明をして取下げを誘導している事例については、直ちに当該申請者に連絡し、相談日を申請日として保護の要否についての調査を開始するよう指導してください。また、受給要件を満たしている可能性があるにもかかわらず取下げている場合において、職員がその旨を教示していない事例については、担当職員に対してなぜ取下げないように助言しなかったのか徹底して事情聴取を行うとともに、直ちに当該相談者に連絡して再申請を助言するよう指導してください。

2 8月24日付抗議申入書兼再質問状で指摘したように、北九州市の福祉事務所では、面接相談記録等に記載を懈怠、または虚偽の記載をしていることを疑わざるを得ないことから、表面的な記述にとらわれることなく、担当職員に対して十分な事情聴取を行ってください。

第2 生活保護申請却下決定処分について

1 小倉北福祉事務所に対する監査において、保護申請(始原的開始申請および一時扶助申請)を却下したケースの記録を徹底的に検証し、違法な却下処分が行われた事例については、直ちに当該却下処分を取消すよう指導してください。その際、特に以下の点に留意してケース検討を行ってください。
(1)稼働能力不活用を理由に却下している場合、申請者の具体的な稼働能力を前提として、申請者の具体的な生活環境の中でその稼働能力を活用できる場が実際にあるかどうか正しく検討しているか
(2)資産不活用を理由に却下している場合、現実には利用できない資産の保有を理由に却下していないか、また、保有を容認すべき資産の保有を理由に却下していないか
(3)知人宅等に一時的に居候している場合などについて、同一居住であることのみをもって機械的に同一世帯と認定していないか

2 前記の面接相談記録と同様に、ケース記録に記載の懈怠ないしは虚偽の記載が行われているおそれがあることから、地区担当員、査察指導員、保護課長、福祉事務所長等の関係職員に対して十分な事情聴取を行ってください。

第3 路上生活者・住所不定者への保護の適用について

1 北九州市では、路上生活者・住所不定者など住居を持たない要保護者に対して、住所がなければ保護の適用ができないと虚偽の説明をし、保護申請を拒否することが常態的に行われています(資料1 読売新聞9月7日朝刊)。また、路上生活者・住所不定者への保護の適用は事実上救急搬送により入院した場合に限られ、しかも退院すると保護が廃止されています。こうした対応はいうまでもなく違法なものであり、直ちに改めるように指導してください。なお、この問題については、同市でホームレス支援に取り組んでいるNPO法人北九州ホームレス支援機構が、10月4日に北橋健治市長あてに提出した提言でも言及されています(資料2)。

第4 北九州市職員の職務意識について

1 北九州市は、8月8日の行われた第7回北九州市生活保護行政検証委員会において、「相談段階で十分な聞き取りができず申請に至ったことにより、家族関係が悪化するなど、却って申請が良くなかったケース」と称する事例を資料として提出しています(資料3)。このような事例では、長男を局1-2-(7)により世帯分離することが適切であり、福祉事務所には両親だけ保護受給して長男は保護から外すことができるという説明をする義務がありますが、そうした教示が行われた形跡はありません。また、長男が出て行った後、夫妻の二人世帯で要保護状態であることは明白です。二人分の最低生活費を超えない限り要保護であるということを説明しなければならないにもかかわらず、申請取下げを受け付けています。こうした対応は極めて不適切であるにもかかわらず、申請権の行使がマイナスであるかのような印象を委員に与える意図でこのような資料を提出する北九州市の姿勢は、生活保護行政に携わる公務員としての資質に欠けるものです。なお、これについては検証委員会において委員から批判されています(資料4)。
また、北九州市の三崎利彦・保健福祉局地域福祉部保護課長は、北九州市の生活保護費が増加傾向にあることについて、「相談に来る人が増えたうえ、権利意識が高まり、窓口で初めから申請権を主張する人が増えた結果ではないか」とコメントしています(資料5 朝日新聞9月19日朝刊)。本来、生活保護制度について市民に周知徹底し、保護の受給要件を満たしている人に対しては進んで申請するように促すのが国や自治体など行政の役割であります。にもかかわらず、逆に市民の保護請求権行使を露骨に敵視するかのような発言をするということは、三崎保護課長は市民の生存権を保障することが責務である生活保護行政の責任者としての適格性を著しく欠いていると評価せざるを得ません。これまでの市の対応を批判した北九州市生活保護行政検証委員会の中間報告について、三崎保護課長は「現場は驚愕しており、私も忸怩たる思い」としており(資料6 西日本新聞10月3日朝刊)、ある担当職員は「法に基づいてやっていると信じていたことが不適切と批判されるとは」と当惑しているとコメントしています(資料7 西日本新聞10月2日朝刊)。このことは、北九州市の生活保護担当の職員の多くが、自分たちがやってきた違法行為を自覚しておらず、生活保護法についての基本的な理解を根本的に誤っていることを示唆しています。北九州市本庁および小倉北福祉事務所の職員に対して、憲法・生活保護法の理念に基づき、市民の生存権を守るという職責を果たすよう指導してください。

第5 その他

1 北九州市保健福祉局総務部監査指導課が貴省の社会・援護局総務課指導監査室に提出した「平成18年度生活保護法施行事務監査実施結果報告」において、法63条による返還が決定された遡及受給した年金を費消したことをもって法78条を適用していることが報告されています(P20)。返還の対象となった資力を費消したからといって、63条による債務自体が消えるわけではなく、このような場合は「不正受給」には当たらず、78条を適用するのは違法であります。このような78条による費用徴収額決定処分は直ちに取消すよう指導してください。


(添付資料)
1 新聞記事(読売新聞9月7日朝刊)
2 ホームレス支援の現場から見た北九州における不適正な保護行政に関する抗議と保護適正実施に向けた提言(北九州ホームレス支援機構)
3 第7回北九州市生活保護行政検証委員会に市が提出した資料
4 第7回北九州市生活保護行政検証委員会議事録(抜粋)
5 新聞記事(朝日新聞9月19日朝刊)
6 新聞記事(西日本新聞10月3日朝刊)
7 新聞記事(西日本新聞10月2日朝刊)

12月15日名古屋で集会を開催いたします

2007-10-19 17:05:14 | 集会・シンポジウムのお知らせ
市民の力で貧困を絶つ!
瀕死の「生活保護制度」を救え!
12.15名古屋集会(仮題)

北九州市では、3年連続で生活保護をめぐる餓死事件が発生しているが、福祉事務所窓口での「水際作戦」など、違法な保護行政は、北九州市に限らず全国各地で起きている。生活保護制度が機能不全に陥っている中、徹底した保護費削減策を押し進める厚生労働省は、給付の基本となる基準額そのものの引き下げに向け、学識経験者らでつくる検討会を設置し、年内にも報告書をまとめる方針だ。保護基準の切り下げは、保護利用者だけでなく、最低賃金額など日本で暮らすすべての市民の生活に重大な影響を与える。
こうした動きの一方、反?貧困運動や各地での法律家による取り組みが活発化するなど、これまでにない展開も見られる。生活保護制度そのものへの根強い偏見がある中、「不正受給」問題などをどのように位置づけ、生活保護行政の流れにどう対抗していくのか。ぜひ、報告者・パネリストの皆さんと一緒に考えましょう。

12/15(土) シンポジウム 12:30?16:00(12:00受付開始)
(前段企画)11:00?11:45  生活保護入門講座 (松崎喜良さん・神戸女子大准教授、元ケースワーカー)

場所  名古屋市中村区役所講堂
〒453-8501 名古屋市中村区竹橋町36-31  
TEL 052-451-1241
●地下鉄:桜通線「中村区役所」下車 2番出口 徒歩すぐ
資料代 一般の方 500円  弁護士・司法書士 2000円

内容  
基調講演 「今、なぜ『生活保護』なのか?」湯浅 誠さん(NPOもやい事務局長)   
オープニング演奏
開会挨拶  内河 惠一さん(弁護士、「法テラス」愛知地方事務所長)
第1部  被害体験・実態報告(「水際作戦」被害者・生活保護制度利用者による体験報告、録音テープ、DVD上映など(予定))
第2部  基調講演
第3部  リレー報告(いずれも予定です)
愛知県の生活保護行政の実情  愛知県生活と健康を守る会
名古屋におけるホームレス問題 藤井 克彦さん(笹島診療所)
多重債務と生活再建?行政内部での連携?  消費生活相談員の方
福祉事務所内での取り組み 全国公的扶助研究会
生活保護支援法律家ネットワークの取り組み
森川 清さん(首都圏ネット、弁護士)
高木 佳世子さん(九州ネット、弁護士)
吉田 雄大さん(近畿ネット、弁護士)
新里 宏二さん(東北ネット、弁護士)
「反?貧困」の旗を掲げて 宇都宮 健児さん(反?貧困ネットワーク代表、弁護士)
閉会挨拶 尾藤 廣喜(弁護士、当会議代表幹事)
※ シンポジウム終了後、パレードを行う予定です。
主催 : 生活保護問題対策全国会議  
共催 : 行政の多重債務対策の充実を求める全国会議
【問い合わせ先】 伊藤嘉邦司法書士事務所 TEL 0566?85?5830

大阪市長選立候補予定者に公開質問状提出

2007-10-19 16:53:29 | 大阪市の「水際作戦」問題
公 開 質 問 状
2007年10月19日
大阪市 市長選挙立候補予定者の皆さま

生活保護問題対策全国会議 代表幹事 尾藤 廣喜
(連絡先)〒530-0047 大阪市北区西天満3-14-16
西天満パークビル3号館7階あかり法律事務所
弁護士 小久保 哲郎(事務局長)
電話 06-6363-3310 FAX 06-6363-3320

 当会議は、弁護士・司法書士・研究者・市民約170名で構成する、生活保護行政の改善などに取り組む市民団体です(別添資料ご参照)。
 
 生活保護をめぐっては、福祉事務所窓口が相談者に対し、法的に誤った説明をし、申請させずに追い返す、いわゆる「水際作戦」が蔓延していると言われています。大阪市においても、西淀川区福祉事務所窓口における「水際作戦」の実態を録音したテープが公開され、大阪市は、当会議の公開質問状に対し、「不適切」であったと回答しています(別添資料ご参照)。

 そこで、当会議は、市長選挙立候補予定者の皆さまに添付の公開質問状に対する回答を求めて本書を送付させていただいた次第です。ご多忙の折恐縮ですが、2007年10月末日までにご回答をいただきますよう、何とぞよろしくお願い申し上げます。

なお、本公開質問状に対する回答の有無及び回答の内容については、記者発表させていただくほか、当会議のホームページなどにおいて公開させていただきますので、あらかじめご了承願います。

以 上

公開質問状に対する回答書
生活保護問題対策全国会議 御中(FAX 06?6363?3320)

1 「水際作戦」(福祉事務所窓口が相談者に対し、法的に誤った説明をし、申請させずに追い返すこと)について、どのように対応すべきとお考えですか。
a 「水際作戦」を行うこともやむを得ない。
b 「水際作戦」はなくさなければならない。
c  その他(                          )

(上記の理由:                          )

2 「水際作戦」をなくすために、次のような手段を講じることについて、どのようにお考えですか。
(1) 誰もが手に取れる福祉事務所カウンターに生活保護申請書を常置すること
a 賛成
b 反対
c その他(                            )

(上記の理由:                           )

(2) 「誰でも申請権があり、申請されると原則14日以内に決定しなければならないこと」を市の広報や福祉事務所窓口のポスターなどで市民に対して周知徹底すること
a 賛成
b 反対
c その他(                            )

(上記の理由:                           )

3 生活保護に関してお考えのところをご自由にお書きください。



回答日 2007年10月  日
回答者ご氏名〔            〕

大阪市に再質問状を提出しました

2007-10-19 16:48:27 | 大阪市の「水際作戦」問題
公 開 再 質 問 状
2007年10月19日
大阪市 市長 關  淳 一 殿
(所管:生活保護担当課)

生活保護問題対策全国会議 代表幹事 尾藤 廣喜
(連絡先)〒530-0047 大阪市北区西天満3-14-16
西天満パークビル3号館7階あかり法律事務所
弁護士 小久保 哲郎(事務局長)
電話 06-6363-3310 FAX 06-6363-3320

 当会議は、当会議に所属する弁護士が関与した貴市福祉事務所の窓口における「水際作戦」のケースについて、2007年9月7日、貴市に対し公開質問状を提出し、貴市からは、同年10月2日、担当課長名での回答書をいただきました。
 しかし、貴市の上記回答内容は、到底納得できるものではありませんので、以下のとおり、再質問をいたします。本年10月末日までにご回答をいただきますようお願い致します。

【質問・要望事項】
1 回答書の名義について
貴市が、2007年10月1日、当会議事務局長宛にFAX送信してきた回答書(案)は、「大阪市長 關 淳一 [公印]」と記載され、市長決裁が予定されているものであったのに、同月2日、貴市担当課において担当課長より手交された回答書は、担当課長の個人名によるもので何の印も押されていないものでした。なにゆえにこのような齟齬が生じたのか、その経緯を明らかにしてください。
また、本再質問状については、正当に市長が回答をしてください。

2 貴市区役所担当職員の対応の違法性について
(1) 貴市は、担当職員の対応は「不適切といわざるを得ない」と回答されましたが、「違法」と考えるのか、「適法」と考えるのか、明確に回答してください。
(2) 当会議は、録音テープに公開されている貴市の対応が、
(ア)申請者が再三申請意思を明確にし、申請用紙の交付を求めたにもかかわらず、なかなか申請用紙を交付しなかった点、
(イ)のみならず、「申請しても却下されると思う」、「無駄」、「無意味なことに近い」と申請の断念を働きかけた点、
(ウ)さらに、申請を断念させようとする際に、

a (住宅扶助の上限額が決まっているだけで、本来、保護を適用してから、基準内家賃の住居への転居指導をし、引越し代・新住居の敷金等も生活保護費から支給すべきであるのに、)家賃が高いと保護できないので保護基準内の家賃のところに引っ越してから来るようにと説明し、
b (居住地への住民登録は保護申請の要件ではないのに、)申請にあたり他市においている住民登録を居住地に異動させ、住民票を添付しなければならないと説明し、
c (家賃や預貯金等に関する資料は、本来、申請を受け付けた後の調査の段階において徴求すべきであるのに、)いろんな書類を添付する必要があるので申請には手間がかかると説明するなど、明らかに謝った説明をして、申請者の申請行為を妨害した点
 
の5点において違法であることを指摘し、それぞれの違法事由についてどのように考えるかを前回の公開質問状で問いました。
  しかし、貴市は、上記5点の違法事由のうち?の点についてのみ「不適切」と回答するのみで、残りの4点については回答を回避しておられます。したがって、残り4点について、どのように考えるのか(「違法」と認めるのか否か)明確に回答してください。

3 再発防止策について
(1) 貴市は、支援運営課長会と査察指導員会議にて周知徹底を図る旨回答し、口頭による補足説明ではその際文書による通知も行ったとのことですが、具体的にどのような「周知徹底」を行ったのか、明らかにしてください。また、当該通知文書を開示してください。
(2) 「申請権侵害と疑われる行為を慎むように」との趣旨の通知は、これまでも繰り返し厚生労働省も貴市も行ってきたにもかかわらず、一向に「水際作戦」がなくなっていません。したがって、当会議は、口頭と文書による「周知徹底」だけで「水際作戦」が根絶されることはあり得ず、今でも各地の窓口で同様の事態が繰り返されており、近い将来、同様の事件が発覚すると確信しています。
(ア)当会議は、真の再発防止のためには次のような具体的措置を採ることが必要不可欠と考えますが、次のような措置を講じる予定はありますか。
a 誰もが手に取れるカウンターに生活保護申請書を常置すること
b 「誰でも申請権があり、申請すれば原則14以内に決定されること」を市の広報誌に掲載したり、福祉事務所窓口にポスターを貼付するなどの方法で市民に周知徹底すること
(イ)仮に(ア)のような措置を講じる予定がないとすれば、その理由を回答してください。
(ウ)仮に(ア)のような措置を講じることなく、同種の事件が発覚した場合、誰がどのような形で責任をとられるおつもりか、明らかにしてください。

以 上

寝耳に水の生活保護基準検討会開催に対し抗議文を提出しました

2007-10-19 11:22:56 | 生活保護基準見直し問題
抗 議 文
厚生労働大臣 舛添要一 殿
厚生労働省社会・援護局長 中村秀一 殿
(関連部署:社会・援護局保護課企画法令係)
2007年10月19日

生活保護問題対策全国会議 代表幹事 弁護士 尾藤廣喜
(事務局)〒530-0047
大阪市北区西天満3-14-16西天満パークビル3号館7階
あかり法律事務所
弁護士 小久保 哲郎(事務局長)
電話 06-6363-3310 FAX 06-6363-3320

私たちは、福祉事務所の窓口規制などの生活保護制度の違法な運用を是正するとともに生活保護費の削減を至上命題とした制度の改悪を許さず、生活保護をはじめとする社会保障制度の整備・充実を図ることを目的として、今年6月に結成された、弁護士・司法書士・研究者・市民約170名で構成する市民団体です。
今般、貴省において「生活扶助基準に関する検討会(第1回)」(以下「本検討会」という)が開催されるということを知り、これが生活保護基準切り下げに向けた動きではないかとの疑念を持たざるをえない点、そしてとりわけ本検討会開催の発表と傍聴希望者募集があまりにも開催日と近接しており市民に対する周知が極めて不十分である点につき、強く抗議します。

生活保護利用者だけでなく国民生活全般に影響を及ぼす重大問題

もし生活扶助水準に対する「検討」が、既に一部報道されているとおりこれを引き下げる方向で行われようとしているならば、それは格差と貧困が絶望的なまでに拡大し生活保護基準以下で生活することを余儀なくされている市民が多数存在する中で、より問題を深刻化するものであり、到底容認することはできません。
生活保護基準はわが国において事実上貧困線としての機能を果たしており、生活保護基準額が下がれば、それに連動している各種基準額が下がります。事は生活保護利用者だけの問題ではない、日本で暮らすすべての人の生活に直結する重大問題です。
○ 労働:最低賃金引き上げの目標額が下がります。
○ 医療:国民健康保険料の減免基準等が下がります。
○ 福祉:介護保険の保険料・利用料、障害者自立支援法による利用料の減額を受けられない人が増えます。
○ 地方税:非課税基準が下がります。
○ 教育:公立高校の授業料免除基準、就学援助の給付対象基準が下がります。

手続上の問題:気づかれないうちに決めてしまおうという姑息な魂胆

このように生活保護基準の切り下げは、日本で暮らすすべての市民の生活に多大な影響を与えるものですから、充分に時間をかけて検討しなければならないことはもとより、その検討は、広く市民に意見を求めたうえで、保護制度利用者の声を十分に聴取し、公開された場でなされなければなりません。
ところが、本検討会は2007年10月19日19時から開催予定でありながら、これが発表されたのは貴省ホームページによれば2007年10月16日のことです。またその掲載を知らせるメール(「厚生労働省 新着情報配信サービス 2007年10月18日」)が配信されたのは10月18日0時23分となっております。にも関わらず、本検討会の傍聴申し込みについては10月18日12時をもって申し込み〆切とされております。これでは、周知期間はないに等しいと言わざるを得ません。
しかも、2007年9月19日提出に係る民主党・山井和則衆院議員の質問主意書(質問第27号)に対して、内閣総理大臣は、同年10月2日、「厚生労働省においては、『経済財政運営と構造改革に関する基本方針二〇〇六』(平成十八年七月七日閣議決定)に基づき、級地の見直しを含む生活扶助基準の見直しを検討しているところであるが、あらかじめ基準額の引上げ又は引下げといった方向性をもって検討しているものではない。また、御指摘の有識者会議の設置を含め、今後の具体的な検討の進め方については、現時点では未定である」と答弁しました。しかし、10月2日の時点で未定であったものが、開催を決定し、委員を選定して承諾を得、日程調整をして同月19日には検討会を開催するというのは常識的には不可能です。この首相答弁自体虚偽の答弁であったという疑念を抱かざるを得ません。
このような貴省の対応には、今般の「検討会」は、あらかじめ基準切り下げという結論を決め、形式を整えるためのおざなりな審議を予定しているため、この問題に関心を持つ市民の眼になるだけ触れないようにして、気づかれないうちに決めてしまおうという姑息な魂胆が透けて見えるといわざるをえません。

衆人監視の中での徹底した慎重審議を求める

格差と貧困の拡大の中で多くの市民が苦しんでいる最中、生活保護基準を切り下げることは、到底容認できません。検討会の審議内容が市民やマスコミに公開されるべきことは当然のこと、広く市民の意見を求めたうえで、生活保護制度利用者の声を十分に聴取し、「最初に結論ありき」ではなく、低所得にあえぐ市民の実態を踏まえた徹底した慎重審議がなされなければなりません。
この「検討会」を契機として貴省が保護基準の切り下げに踏み込むのであれば、私たちは、考えられるあらゆる手段をもってこれに立ち向かう所存であることをここに表明します。                             
以 上

突然の生活扶助基準検討会開催に抗議行動をよびかけました

2007-10-18 11:19:12 | 生活保護基準見直し問題
【転送歓迎】
まだイジメ足りないのか!?
生活保護受給者だけじゃない!低所得者全体に影響
「難民」化・少子高齢化を推進してどうする?
ふざけるな!最低生活費基準切下げを阻止する、怒りの緊急行動
のおしらせ

【とき】10月19日(金)18:30~21:00
【ところ】厚生労働省前
【やること】リレートーク。その時間、5F第12会議室で「検討会」が開かれます。会議室に届くよう、一人一人が訴えましょう。ずっといられない方でも、ちょっと立ち寄って、ひとこと言ってやりませんか! 
【持参してください!】横断幕他アピールに使える物なんでも。特に拡声器をお持ちの方、どなたか!!
【問合せ連絡先】080-3022-4422(湯浅。NPOもやい/反貧困ネットワーク事務局長)

【呼びかけ文】
<検討会の目的>
厚生労働省は、10月19日19:00~20:30の予定で、「生活扶助基準に関する検討会(第一回)」を開くことを、急遽決定しました(座長:樋口美雄慶応大学教授。委員:岡部卓(首都大学)、駒村康平(慶応大学)、菊池ヨシミ(早稲田大学)、根本嘉昭(神奈川県立保健福祉大学))。年内には結論を出すと厚生労働省担当者は言っています。
 「骨太の方針2006」を受けた今回の検討会で、厚生労働省は「一般低所得世帯の消費実態との均衡」を理由に最低生活基準の切り下げを狙っています。

<貧困化スパイラルが進む――生活保護受給者だけの問題じゃない!>
本当に必要なことは「一般低所得世帯の消費実態」が上がるようにすることのはずですが、最低生活基準が切り下がれば、まったく逆の効果を生みます。それに連動している各種基準額が切り下がり、収入が増えなくても、今まで減免されたものを支払わなければならなくなり、負担増につながります。
○ 医療:国民健康保険料の減免基準等が下がります。
○ 福祉:介護保険の保険料・利用料、障害者自立支援法による利用料の減額を受けられない人が増えます。
○ 地方税:非課税基準が下がります。
○ 教育:公立高校の授業料免除基準、就学援助の給付対象基準が下がります。
 収入が増えなくても負担が増えれば、低所得者の消費実態はさらに下がります。そうすればまた、それを根拠に最低生活費が切り下げられ、それがまた低所得者の消費実態を押さえ込むでしょう。こうしてエンドレスの貧困化スパイラルが進行し、人々の暮らしは苦しくなりつづけます。

<「難民」化推進・少子高齢化推進策>
 当然、国民健康保険を払えずに医療を受けられない「医療難民」、介護保険を利用できない「介護難民」、暮らしそのものが成立たなくなって「ネットカフェ難民」、その他の各種「難民」が増えます。
 生活保護受給者と低所得者の「均衡」「格差是正」などと言われることがありますが、ただ単に貧困化が推し進められるだけで、政策による国内難民が増やされていきます。
 当然ながら、子どもを生み育てるどころではない人たちも増え、少子高齢化はますます進行していくでしょう。
 厚生労働省はいつから、「国民の暮らしと健康を損ない、国内難民化と少子高齢化を推進する省」になったのでしょうか?

<コソコソすんな!――やり方が姑息>
今回の検討委員会は、10月16日にHP上で初めて告知され、傍聴希望の締切りは18日正午に設定されていました(しかも電話受付は認めず)。厚生労働省は、10月2日に民主党・山井議員の質問主意書に対して「やるかやらないか決まってない」と回答したばかりでした。わずか2週間の間に、開催を決定し、人選し、承諾を得て、期日を入れたとでも言うのでしょうか? なるべく知らせないまま、人々の生活に重大な影響を及ぼす決定をやってしまおうとは、国民不在、あまりにもやり方が姑息です。

【呼びかけ人(五十音順)】
生活保護問題対策全国会議(代表・尾藤廣喜)
NPO法人ほっとポット
NPO法人神戸の冬を支える会
カトリック社会活動神戸センター
赤石千衣子(NPO法人しんぐるまざあず・ふぉーらむ、反貧困ネットワーク副代表)
雨宮 処凛(作家、反貧困ネットワーク副代表)
猪股  正(首都圏生活保護支援法律家ネットワーク共同代表、反貧困ネットワーク)
内山 智絵(東京都精神医療人権センター、反貧困ネットワーク)
加藤真規子(NPO法人こらーるたいとう代表、NPO障害者権利擁護センターくれよんらいふ、全国ピアサポートネットワーク、反貧困ネットワーク)
河添  誠(首都圏青年ユニオン書記長、反貧困ネットワーク)
後閑 一博(ホームレス総合相談ネットワーク)
志磨村和可(ホームレス総合相談ネットワーク、反貧困ネットワーク)
杉村  宏(法政大学教授、反貧困ネットワーク)
辻  清二(全国生活と健康を守る会連合会事務局長、反貧困ネットワーク)
舟木  浩(生活保護裁判連絡会、反貧困ネットワーク)
三浦 仁士(フリーター全般労組、反貧困ネットワーク)
森川  清(首都圏生活保護支援法律家ネットワーク事務局長、反貧困ネットワーク)
山本  創(DPI日本会議、反貧困ネットワーク)
湯浅  誠(NPO法人自立生活サポートセンター・もやい事務局長、反貧困ネットワーク事務局長)
吉永  純(生活保護裁判全国連絡会、花園大学准教授)