生活保護問題対策全国会議blog

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愛知派遣切り抗議大集会のご案内

2009-01-30 10:16:31 | 集会・シンポジウムのお知らせ
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集会名 愛知派遣切り抗議大集会
日 時 2009年2月22日 午後1時から午後4時まで
場 所 東海テレビ・テレピアホール(名古屋市東区東桜1-14-27)
会場収用人数 504名まで 電話:052-954-1165

入場無料 

主 催 愛知派遣切り抗議大集会
実行委員長:弁護士・宇都宮健児(反貧困ネットワーク代表)

終了後、名古屋駅前までデモ(2・8キロ)を行います。

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内容(案)

2009年3月に大量に解雇される派遣労働者、期間工は40万
人と予想されているが、中でもトヨタ、マツダ、日産、キャノンな
どの大企業およびその下請企業で多く発生することが判明している。

労働者派遣法はいかにあるべきか。派遣会社の責任、さらには派
遣従業員を使用する大企業には責任はないのか?製造業派遣法禁止
など、今後の派遣法のあるべき姿は?。
 
また、労働者の生活、雇用をどのように守っていくのか、派遣切
りされた労働者に対する、セーフティネットはどうなっているのか。
雇用相談、生活保護、住居相談、多重債務相談のワンストップサー
ビスは?

一、集会内容

1、派遣切り、雇用止め当事者の報告
2、派遣法についての緊急特別立法対策について
3、緊急融資制度の紹介、議員からの報告、意見表明等
4、日弁連、年越派遣村実行委員会等からの報告
5、全国の派遣村の状況、ワンストップ相談会について

二、集会後、東海テレビから名駅ミッドランドまでデモ(2.8キロ)

などなど、中身の濃い内容を予定しています。なお、内容につい
ては、一部変更する場合もありますので、あらかじめご了承くださ
い。

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(現地実行委員会連絡先)

〒462-0810
 愛知県名古屋市北区山田1-1-40
すずやマンション大曽根2階 水谷司法書士事務所

司法書士 水谷英二

電 話  052-916-5080
FAX  052-911-3129
メールアドレス gfh03002あっとnifty.com
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定額給付金に関する公開質問状

2009-01-28 08:54:35 | Weblog
定額給付金に関する公開質問状
(住民登録地に居住しない者に対する支給方法の確立を求める!)

2009年1月28日

内閣総理大臣 麻生 太郎 殿
総務 大 臣  鳩山 邦夫 殿


生活保護問題対策全国会議     
代表幹事 尾藤 廣喜
(連絡先)〒530-0047 大阪市北区西天満3-14-16 西天満パークビル3号館7階あかり法律事務所
弁護士 小久保 哲郎(事務局長)
電話 06-6363-3310 FAX 06-6363-3320

ホームレス法的支援者交流会    
共同代表 後閑 一博
同上   木原万樹子


昨日、総額2兆円規模の「定額給付金」の予算を含む、平成20年度第二次補正予算が成立しました。

 私たちは、この「定額給付金」は、真に生活に困窮している者は受け取ることができないのではないかと懸念から、2008年11月17日、内閣総理大臣麻生太郎殿に対して公開質問状を提出しましたが、未だに回答をいただけていません。


問題の本質を理解しない法務省「要綱案」

報道によると、総務省が20日まとめた「要綱案」は、2月1日を基準日として、住民基本台帳か外国人登録原票に記された人を支給対象としているとのことです。

しかし、これでは、「派遣切り」によって寮を追い出された労働者、いわゆる「ネットカフェ難民」、路上や公園などで生活するホームレスの人々、DVにあって加害者から逃げているDV被害者、サラ金等の取り立てを恐れて住民登録を異動させていない人々など、最も生活に困っている人々が「定額給付金」を受給できないという私たちの懸念は何ら解決されていません。


要綱案は、「路上生活者などで本来の住所地での不在期間が長く、住基台帳から消されている場合は、知人宅などに身を寄せるなどして住基台帳に記載してもらう。ドメスティックバイオレンス(DV)被害者などで本来の住所地から離れて暮らす人は、世帯主にならないと申請書が送られてこないため、加害者が住民票を見られないようにする措置を受けた上で、転居の届け出を済ませるよう呼びかける」など「暮らしている市町村の台帳に記載のない人に記載を促す方策」を明らかにしたということです。

しかし、かかる要綱案は、現場の実態や問題の本質を全く理解しない「机上の空論」をもって、あたかも真に困窮する者が定額給付金を受給できるかに「偽装」するものであって無責任極まりないというほかありません。

仮に、登録の基準時期を若干遅らせたとしても、こうした人々が住民登録地に居住できない原因を解消しない限り、何の問題解決にもならないのです。


路上生活者と住民登録

まず、ホームレスの人々は、「身を寄せる知人宅」がないからこそ、やむを得ず路上等で生活しているのであり、頼んですぐに住ませてくれる友人がいればホームレス状態になっていません。

また、法は「生活の本拠」の住民登録を認めているのであり(民法22条、住民基本台帳法4条、地方自治法10条1項)、「居住実態がないのに知人の了承を得て形式上住民登録だけをする」ということはもちろん許されませんし、「一時的寄宿」であっても住民登録することはできません。

それでは、現に生活している公園等での住民登録が許されるのかというと、公園でのテント生活には「健全な社会通念」に照らして「生活の本拠としての実質がない」とした最高裁の08年10月3日付不当判決が確定しているため、それもできません。

結局、ホームレスの人々に対して、生活保護を適正に適用して居宅を確保するなどの支援を行うことなく、ただ「住民登録せよ」と迫ることは不可能を強いることに他ならないのです。


DV被害者と住民登録

次に、DV被害者からの申し出があり「被害者」に該当すると認められれば、「加害者本人」に対する住民票の写しの交付は制限されますが、親族や弁護士等の「第三者」に対する交付は制限されません。その意味で住民票写しの交付制限は万全ではありません。

過去に受けた暴力や虐待の再来を恐れて生活しているDV被害者に対する「心のケア」を含めた相談支援体制を構築することなく、安易に住民登録の異動のみを奨励することは、新たな被害を惹起するリスクさえあるのです。


真の生活困窮者に定額給付金を行き渡らせるためには、住民登録の阻害要因を解消するための相談窓口とセットになった簡易な受給手続きが必要

私たちは、2兆円もの予算があれば、貧困に苦しむ市民のために、より有効な施策があるはずであり、「定額給付金」そのものが「天下の愚策」であると考えています。しかし、施策が現に実施されるのであれば、その本来の趣旨どおり、ホームレス状態にあるなどのため、本当に生活に困っている人々に漏れなく支給が行き渡るように制度が構築されなければなりません。


 そこで、私たちは、たとえば、

1.各地方自治体に住民登録を妨げている個々の要因を解消するための適切な支援(ホームレスであれば生活保護の適用による居宅の確保、多重債務であれば法的整理等)につなげるための相談窓口を設置し、
2.最寄りの役所に本籍地、住所(住民登録地のない場合には居所)、氏名、生年月日、住民登録によっては定額給付金を受給できない旨を届け出て「登録」するなどの簡易な方法を採用することによって

住民登録地に居住していない上記のような人々が現実に定額給付金を受給できる制度を構築するよう、改めて求めます。


ついては、本書面到達後10日以内に、住民登録地に居住していない上記のような人々がもれなく定額給付金を受給できる制度を構築する予定があるのか、また、そのために具体的にどのような制度を構築するのかについて、回答をいただきますよう、お願いいたします。


以  上

「派遣村」での生活保護活用こそ、法律本来の姿

2009-01-15 11:43:32 | Weblog
2009年1月15日

「派遣村」での生活保護活用こそ、法律本来の姿

生活保護問題対策全国会議        代表幹事 尾藤 廣喜
ホームレス法的支援者交流会       共同代表 後閑 一博
                    同 上  木原万樹子
首都圏生活保護支援法律家ネットワーク  共同代表 釜井 英法
                    同 上  猪股  正
生活保護支援ネットワーク静岡      代 表  布川日佐史
東海生活保護利用支援ネットワーク    代 表  内河 恵一
近畿生活保護支援法律家ネットワーク   共同代表 辰巳 裕規
生活保護支援九州ネットワーク      代 表  永尾 廣久
東北生活保護利用支援ネットワーク    代 表  新里 宏二
全大阪労働組合総連合(大阪労連)    議 長  川辺 和宏
しんぐるまざあず・ふぉーらむ・関西   理事長  神原 文子
派遣労働ネットワーク・関西       代 表  脇田  滋
自立生活サポートセンターこんぱす    代 表  國師 洋典

「派遣切り」などで住まいや仕事を失った人たちを支援するため、昨年末から東京・日比谷公園において「年越し派遣村」が取り組まれた。派遣村の「入村」者約500名のうち250名を超える人々が生活保護の申請をし、数日のうちにアパートでの生活保護開始決定を得たことについて、「超法規的な特別扱い」であるとの誤解が一部にあるようである。
しかし、以下述べるとおり、派遣村村民に対してなされた生活保護の運用は、生活保護法が本来予定する当然の内容であって「特別扱い」などではない。現に全国の多くの自治体では同様の運用がなされている。
私たちは、労働者派遣法の抜本改正によって「派遣切り」そのものを規制し、脆弱な失業保険などのセーフティネットを充実させるべきと考えている。しかし、今、現に住まいを失った人々の生存を守る制度は現行法上、生活保護法しかない以上、同法の適正かつ積極的な活用によって生存を確保することが切実に求められている。今こそ、生活保護の出番なのである。

「住所」がなくても生活保護は利用できる

「住所」がないと生活保護が利用できないという誤解があるが、そのようなことはない。
生活保護法19条1項は、居住地のない者については、その「現在地」を所管する福祉事務所が生活保護の実施責任を負うことを定めている。
したがって、住居を失い、やむを得ず日比谷公園で寝泊まりしていた村民らについて、同公園がある千代田区の福祉事務所が生活保護を実施したのは法律上当然のことである。

生活保護費でアパートや家財道具を確保することができる

 住居のない者は、自らアパートを用意しなければ「居宅保護」(アパートでの生活保護)を受けることはできないという誤解があるが、そのようなことはない。
生活保護法30条1項は「生活扶助は、被保護者の居宅において行うものとする」と「居宅保護の原則」を宣明し、施設などでの保護適用は例外であると規定している。そして、住居のない者に対しても、生活保護費からアパート等の敷金(保証金)、家具什器費、布団代、被服費などを支給して新住居を確保することができる。

即日でも保護決定はできる

 生活保護法24条3項は、申請から原則として14日以内に決定しなければならないとし、同法25条1項は、急迫状況にあるときは、すみやかに職権で保護を決定しなければならないとしている。
この点については、厚生労働省も2008年3月4日の生活保護関係全国係長会議において、「原則14日以内に保護の決定を行う必要があり速やかに審査を行う必要があるが、その中でも、申請者の手持ち金が限られているなど急迫している状況にあるときは、迅速な保護の決定が求められることに留意願いたい」と注意喚起している。
したがって、派遣村村民のように住居も収入もなく所持金もないか僅少な者から保護申請があった場合には、迅速に保護決定をすることが法の求める本来の姿である。

失業者やワーキングプアも生活保護が利用できる

 「働く能力がある者は生活保護が受けられない」という誤解があるが、そのようなことはない。
働く能力があり、それを活用しようとしても働く場が得られない者は生活保護を利用することができる。したがって、派遣切りなどで職を失った失業者や低収入しか得られないワーキングプアも当然に生活保護を利用することができる。

厚生労働省は、生活保護制度の本来の運用に関し、通知を行うべきである

 以上のとおり、派遣村村民に対する生活保護の運用は「特別扱い」ではなく、法が本来予定する「あるべき姿」である。
しかし、トヨタ関連の「派遣切り」被害者が多数生じている名古屋市では、住居のない者に対しては施設入所を前提とし直接の居宅保護を行っていない。しかも、同市は、一昨日からその施設も満床であるとして、救いを求めて集まっている多くの住居のない者を寒空に放逐しようとしている。また、キャノン関連の「派遣切り」被害者が生じている大分市は、「まずは安定した住居を確保しない限り保護開始しない」と述べており、滋賀県大津市も、入所枠の限られた施設入所を居宅保護開始の前提としている。
3月までに8万5000人もの非正規労働者が職を失うと言われている現下の緊急事態の下、とりわけ大規模な「派遣切り」が行われている上記自治体が生活保護の窓口を閉ざせば、自殺や餓死などの悲劇が生じかねない。
そうした悲劇を生まないために、厚生労働省は、派遣村村民に対して実施された生活保護の運用こそ法が予定するスタンダードであることを全国の福祉事務所に通知して周知徹底すべきである。また、各地の福祉事務所は、厚労省の通知を待つことなく、適正かつ積極的な生活保護行政を実施すべきである。
そのためにも、報道関係や市民の皆さまが生活保護制度に対する誤解や偏見を解き制度を正しく理解していただくよう、心からお願いしたい。

12・21アメリカ「福祉改革」の悲劇をエレン・リース氏が語る!

2008-12-21 13:00:00 | 集会・シンポジウムのお知らせ
生活保護問題対策全国会議・東京集会

えっ!? 日本でも生活保護が5年で打ち切りに?
~アメリカ・「福祉改革」の悲劇に学べ!~

チラシ(PDF)

  生活保護は、長くても5年で十分だ。

そんな提言が全国知事会・市長会より国になされています。
アメリカでは「福祉から就労へ」をスローガンに、公的扶助の利用を生涯で5年間とする
福祉"改革"が実行されました。しかしそれは本当に「改革」だったのか、利用者の減少=貧困
の減少であるのか。先進国の中でもっとも貧困率の高い貧困大国アメリカの現実が、その答え
と言えるでしょう。
日本では、水際作戦・硫黄島作戦により生活保護を利用できず、餓死・孤独死する事例が
後を絶ちません。しかも国は、このような違法運用を放置するだけでなく、昨年、あの手この
手で生活保護基準を切り下げようとしました。この上、自国民の生活を最長5年で切り捨て
る、そんな制度を日本に持ち込むのはゴメンです。
この有期保護制度導入に反対の声を上げるとともに、今の日本は果たして誰もが5年で自
立を図ることができる社会なのか、生活保護利用者を取りまく環境がどういうものか、生活保
護はどうあるべきかを、アメリカよりエレン・リース氏を迎え、当事者・支援者からの報告を
交えて、皆さんと一緒に考えていきたいと思います。


●日 時 12月21日(日)午後1時~5時

●場 所 法政大学市ヶ谷キャンパス外濠校舎3階 S306教室
       (〒102-8160 東京都千代田区富士見2-17-1 TEL 03-3264-9240)
        JR総武線「市ケ谷駅」「飯田橋駅」、都営新宿線「市ケ谷駅」
        東京メトロ有楽町線「市ケ谷駅」「飯田橋駅」いずれも徒歩10分
                 (富士見校舎の一角、逓信病院の隣が外濠校舎です)

●内 容
   ☆当事者報告
   ☆基調講演 エレン・リース氏 Dr. Ellen R. Reese
カリフォルニア大学リバーサイド校 人文科学・芸術・社会科学部 准教授
専門は社会学で、福祉国家、都市政策、社会運動、特に低所得者や労働者の社会権を
改善するための取組みについて研究し、「福祉から就労へ」の名の下に実施された
「福祉改革」政策を厳しく批判している。
主著として、『福祉の母への逆風:過去と現在
     (BacklashAgainst Welfare Mothers: Past and Present)』
     (2005年:University ofCaliforniaPress)がある。

   ☆パネルディスカッション等
    吉永純氏(花園大学社会福祉学部教授)
    木下武徳氏(北星学園大学社会福祉学部准教授)
     赤石千衣子氏(しんぐるまざあず・ふぉーらむ理事)
     岩田柳一氏(精神科医、医療法人社団東迅会理事長)
     奥森祥陽氏(京都府・生活保護ケースワーカー)
     河添誠氏(首都圏青年ユニオン書記長)       他

●資料代 弁護士・司法書士 2,000円
       一般 500円(生活保護受給者等は無料)

●主 催 生活保護問題対策全国会議

●後 援 労働者福祉中央協議会(中央労福協)
      人間らしい労働と生活を求める連絡会議(生活底上げ会議)

【問い合わせ先】
  〒530-0047 大阪市北区西天満3-14-16
  西天満パークビル3号館7階あかり法律事務所
   弁護士 小久保 哲 郎(事務局長)
   TEL 06(6363)3310 FAX 06(6363)3320

末吉興一・前北九州市長の内閣官房参与登用について首相に公開質問状

2008-11-17 13:00:00 | 北九州市問題
麻生首相が末吉興一・前北九州市長を内閣官房参与に任命した問題について、
公開質問状を提出しました。


公 開 質 問 状
2008年11月17日
内閣総理大臣 麻生太郎 殿

生活保護問題対策全国会議      代表幹事 尾藤廣喜
             (連絡先)〒530-0047 大阪市北区西天満3-14-16
                    西天満パークビル3号館7階あかり法律事務所
                    弁護士 小久保 哲郎(事務局長)
                    電話 06-6363-3310 FAX 06-6363-3320
全国クレジット・サラ金被害者連絡協議会 会長 澤口宣男
全国生活保護裁判連絡会       代表委員 小川政亮
自立生活サポートセンターもやい    理事長 稲葉 剛
東京都地域精神医療業務研究会      代表 飯田文子
北九州市社会保障推進協議会       会長 高木健康
生活保護支援九州ネットワーク      代表 永尾廣久

謹啓 日ごろから、日本国の発展と市民生活の向上のため力を尽くしておられる貴職に対し、心から敬意を表します。
さて、貴職は、本年10月10日、「まちづくり、地域経営担当」の内閣官房参与をわざわざ新設し、前北九州市長である末吉興一氏をこの職に任命されました。
 貴職と末吉氏との関係は深く、末吉氏が国土庁(現国土交通省)を退官して初当選した1987年の北九州市長選において、貴職は末吉氏の選対本部長を務め、貴職が外務大臣を務めておられた2007年6月には、末吉氏は外務省参与に任命されたということであり、末吉氏は、今後、史上最年長の「総理の知恵袋」として、「まちづくりと地域経営」について貴職に提言していくということです(毎日新聞2008年10月24日)。
 しかし、私たちは、以下の理由から、この人事に極めて強い疑問を抱いております。
 その理由の第1は、末吉氏が、「闇の北九州方式」で悪名高い北九州市の違法な生活保護行政を先頭に立って推進・擁護してきた人物であり、同市においては生活保護をめぐり末吉氏在任中に限っても2年連続で餓死・孤独死事件が発生し、しかも末吉氏は、これらの事件について生活保護行政の責任を棚に上げ、反対に地域住民の協力体制を問題視する発言を行うなどした人物であることにあります。
 さらに、第2には、末吉氏が推進した「表の北九州方式」といわれる「地域福祉の北九州方式」についても、「地域の課題を地域で考え地域で解決する」というスローガンのもと、福祉における行政責任を大きく後退させ、市民を「安上がりのボランティア」に仕立て上げ代替させるものだとの強い批判がなされていたところにあります。
 また、第3には、「まちづくりと地域経営」にあたって、上記のような福祉における行政責任の後退とは全く対照的に、末吉氏が採った過剰な「箱ものへの投資」が、北九州市の財政を圧迫し続け、このまま推移すれば、2013年度には、財政破たんしかねない状況に陥っています(2007年10月5日北九州市「経営方針」素案、2008年10月6日北九州市「平成21年度予算編成方針)。
これらの経過からすると、貴職の今回の人事が、「闇の北九州方式」に象徴される末吉氏の棄民政策を全国の「地域経営」に取り入れ、全国を北九州化しようとしているのではないかとの懸念すら抱かざるを得ないところであります。
 ついては、ご多忙中とは存じますが、末記の質問事項について、本書面到達後2週間以内にご回答をいただきますよう、お願い申し上げます。

1 北九州市で相次いだ餓死・孤独死事件
末吉氏は、1987年から2007年2月まで20年間にわたって北九州市長を務めておられましたが、市長在任中、生活に困窮して市役所で生活保護を担当する福祉事務所の窓口を訪れた人々を生活保護の申請をさせずに追い返す、「水際作戦」と呼ばれる違法行為を推進してきました。こうした窓口の違法な対応によって、北九州市では、生活保護の利用から排除された市民が餓死・孤独死するという事件が、3年連続で発覚しました。
2005年1月7日に、北九州市八幡東区において、68歳の要介護状態の男性が生活保護の申請を違法に受け付けられずに自宅で孤独死していたのが発見され、2006年5月23日には、北九州市門司区において56歳の男性がやはり生活保護の申請を違法に受け付けられずに市営住宅の一室で餓死(孤独死)していたのが、発見されました。さらに、北九州市小倉北区において52歳の男性が、末吉氏の退任直後の2007年4月に、収入の目途が全くないまま違法に生活保護の辞退を強要された後、自宅で餓死(孤独死)していたのが2007年7月10日に発見されています。

2 面接室での弁護士の同席を拒否し、密室で市民を追いつめる
「水際作戦」を行うにあたって、北九州市がとっていた手法が、面接室に第三者を同席させないということでした。市長が代わった後の2008年現在では、要保護者が希望しているのに弁護士等が同席できないということはなくなっていますが、末吉氏の在任中は、要保護者が弁護士の同席を希望しているにもかかわらず同席を拒むということが横行していました(添付資料・新聞記事)。
生活保護の申請は口頭であっても申請意思を明確にしてなされれば有効に成立し、申請が到達しさえすれば、福祉事務所は調査を開始して原則として14日以内に開始決定ないし却下決定を行う義務を負います(行政手続法7条・生活保護法24条1項・3項)。にもかかわらず、ほとんどの北九州市民はそのことを知らされておらず、市の定める様式の申請書を提出しなければ有効な申請ができないなどと思いこまされています。
そのような市民の認識につけこんで、不当な圧力をかけ、あるいは市民の言い分をのらりくらりとかわすなどして、申請を申請として扱わずに福祉事務所から帰してしまうというのが水際作戦です。ところが、面接時に要保護者以外の第三者が同席すれば、要保護者が力づけられ、不当な圧力に屈することなく申請意思を明確に示すことができるようになり、福祉事務所は申請扱いせざるを得なくなります。それを防ぐために、北九州市は、面接室を密室化して、第三者の同席を頑なに拒んでいました。

3 市民の証言で浮かび上がった末吉市政時代の生活保護行政の実態
末吉市政時代の北九州市の生活保護行政の実態について、市の福祉事務所で生活保護ケースワーカーを勤めた北九州市立大学講師の藤藪貴治氏は、「生きるか死ぬか困っている人たちからの相談であっても、課長や上司からは申請書を渡すなと言われている」「もう福祉事務所には怖くて来たくないと思わせることが求められている。ありとあらゆる嫌がらせをして、もう相談に来たくないと思わせる。それが面接室のテクニック」「保護受給者が亡くなると、『一件減ってよかったね』と祝福されたり、課長が『よかった。これで今月はマイナス報告できる』と喜ぶ」「とにかく切ること、保護受給者を減らすことばかり指導される。本当にここは『福祉事務所』なんだろうかずっと思っていた」と証言しています。
このような許しがたい北九州市の生活保護行政の実態調査と是正のために、全国各地から集った弁護士・学者・福祉関係者や地元住民ら約三百人で結成された「北九州市生活保護問題全国調査団」(団長:井上英夫・金沢大学法学部教授)が、2006年10月23日から25日まで市内各地で相談や生活保護申請の同行を行ったところ、組織をあげて憲法・生活保護法を踏みにじる違法行為・人権侵害を常態的に行っていた当時の北九州市の生活保護行政の凄惨な実態が浮き彫りになりました。
●1歳と3歳の幼い子どもを抱える28歳の女性が、米さえ買えないほどの急迫状態に陥り、一家心中まで考えた末、わらをもすがる想いで保護課に生活保護申請に訪れたところ、年齢の若さをたてに執拗に「働け」と迫られ、30回以上保護課を訪れ申請を求めても、 申請書の交付を拒絶された。女性が面接主査に「このままでは死んでしまう」と必死に訴えたところ、面接主査はただ一言、「まだ生きてるだろう」。その後、市議が同行したところ面接主査の態度が一変し申請受理され保護開始(北九州医療・福祉総合研究所年報第15号)
●「俺は1カ月に2枚しか申請書を渡さなかった」と武勇伝を語る面接主査(北九州医療・福祉総合研究所年報第15号)
●「あんたの娘は児童扶養手当をもらっている。親子して税金で食べて近所に恥ずかしくないのか。娘から冷や飯の一杯ぐらい食べさせてもらえ」と78歳の女性を追い返す面接主査(北九州医療・福祉総合研究所年報第15号)
●DVで離婚し、子どもを8人抱えた女性を「子どもを施設に入れて働け」と追い返し続けた面接主査(北九州医療・福祉総合研究所年報第15号)
●不当な処分に対し県知事に審査請求したところ、保護課の係長がやってきて処分を取り消す通知書を持ってきた。謝罪の言葉は全くなく、「事務所まで保護費を取りに来い」「患者さんは具合が悪いので行けない」と病院職員が言うと「誰に言いよるんか?」とすごんだ。(北九州医療・福祉総合研究所年報第15号)
●病気で仕事に就けないのに、区役所で「働け!」とどなられ、職員に取り囲まれて追い出された(2006年10月18日毎日新聞朝刊)
●利用者が何度行ってもきつい応対で追い返され、もう行きたくないと言っている(障害者施設の職員)(障害者施設の職員 2006年10月18日毎日新聞朝刊)
●相談窓口で「何しにきた」「さっさと帰れ」と言われることが常態化している(2006年10月24日毎日新聞朝刊)
●保護費予算の数値目標を守るため、受給希望者はあたかもハエを追い払うような扱いを受けている(2006年10月24日毎日新聞朝刊)
●保護課の職員はパソコンに向き合ってる際の顔つきが保護申請を希望する人が窓口に現われた際にがらっと変わる(大阪社保協FAX通信2006年10月25日号)
●「福祉は怖い。できれば行きたくない」と涙ながらに訴える住民(2006年10月25日毎日新聞朝刊)

4 違法行為を正当化し、地域住民に責任転嫁した末吉氏
末吉氏は、こうした市の違法行為によって人命が失われたことを反省するどころか、以下のとおり、北九州市の責任を否定し、違法な保護行政の現状を擁護する発言を繰り返して来ました。
① 門司区の餓死事件について、2006年6月9日の北九州市議会での質問に対し、「男性には扶養家族がいたので(生活保護の申請を受け付けない)対応は適正だった」「市の対応に何も問題はない。孤独死を防ぐために重要なのは、地域住民の協力体制だ」と答弁し、地域住民に責任を転嫁した(2006年6月10日読売新聞朝刊、同年10月8日読売新聞大阪本社版朝刊)
② 市議会において「あらかじめ生活保護の支給総額を定め、その枠内に収まるように管理しているのでは」と質問されたのに対し、「目標を設定しているが、目標に向けた管理はしていない」と明らかに事実に反して「闇の北九州方式」の存在を否定した(同年9月7日読売新聞朝刊)
③ 同年10月17日の会見で市の生活保護窓口の対応を問われ、「(申請書類は)必要な方には渡している。それほど問題が生じているとは思わない」と強調する一方、「生活保護は制度疲労を起こしており、変えてほしいと国に要望している」と法制度の問題にすり替えた(同年10月18日毎日新聞朝刊)
また、北九州市が地域福祉計画の中核を担わせているのが、地域住民で構成される「まちづくり協議会」ですが、同協議会が行っている「見守り」等の「地域の支え合い」の実績には、たぶんに水増しの可能性があり、公的責任を地域住民に補完させることの限界を示唆しています。重要なのは、公的責任をきちんと果たした上で、地域住民の相互扶助を上乗せ的に活用することであり、公的責任を放棄する言い訳に使ってはなりませんし、使うこともできません。しかし、末吉氏の推進した北九州市の地域福祉計画は、後者の色彩が色濃いところであります。そしてその発想は、同時に厚生労働省の「地域の支え合い」の強調へとつながっています。末吉氏の参与就任がこのような発想を国レベルで強化することにつながるとしたら、盛んに顕彰される地域福祉の裏で、公的責任はますます形骸化していくことになるでしょう。
  しかしながら、世論やマスコミにおいても、市民の生存権を守れないどころか、積極的に生存権を侵害しているこのような北九州市の保護行政のあり方が繰り返し批判されたことから、2007年2月に実施された北九州市長選においても生活保護行政の改革が大きな争点となり、「孤独死事件を踏まえ、生活保護行政を検証し、人権を尊重した的確なセーフティネットの整備をすすめる」と訴えた北橋健治氏が末吉氏の後継候補を破って初当選し、20年間続いた末吉市政にピリオドが打たれました。

5 北九州市の生活保護行政は厳しく批判されている
北橋新市長は、市長就任の翌日である2007年2月21日、門司区の餓死事件が起こった市営団地を訪れて献花し、「行政にとって重く受け止めるべき死。このような事態に至った経緯を反省して総括する」と述べて、有識者による生活保護行政検証委員会の設置の意向を表明しました(同年2月22日朝日新聞朝刊)。
そして、同検証委員会は、同年10月に発表した中間報告書、同年12月に発表した最終報告書において、特に末吉氏が「適正だった」と擁護した門司区の餓死事件について、男性が「申請したい」と申し出たのに申請書を渡しておらず、「『水際作戦』と呼ばれても仕方がない」と厳しく批判しました。また、末吉氏が「数値管理はしていない」と存在を否定していた「闇の北九州方式」についても、各区の福祉事務所が設定する生活保護の給付や廃止に関する見込み数値に言及し、「これらの『(数値)目標』が実態として職員を縛っているのでは、との強い疑念をもたれる」と論じました。そして、それまでの市の生活保護行政は間違っていたと厳しく断罪し、抜本的な改善要求を行ったのです。
  さらに、厚生労働省も重い腰を上げ、同年10月に実施した監査において、「相談段階で過度に稼働能力の活用や扶養義務者による援助の確認を求めた事例」など「不適切な事例が認められた」と厳しく指摘をしています(新聞記事および厚生労働省からの通知)。
  このように、末吉氏が北九州市長時代に擁護し続けた同市の生活保護行政は、明らかに誤っていたことが公的にも明確にされているのです。

【質問事項】
1 「闇の北九州方式」と言われる、末吉氏が市長を務めていた時代の北九州市の保護行政のあり方を、貴職は適正であったと評価しておられるのですか、あるいは不適正であったと評価しておられるのですか。

2(1で適正と評価された場合)
(1) その理由を詳しくご回答ください。
(2) 貴職は、末吉氏が育てた「闇の北九州方式」を日本全国の「まちづくり、地域経営」に拡大することを期待して同氏を内閣官房参与に任命されたものと理解してよいですか。

3(1で不適正と評価された場合)
(1) 不適正かつ違法な北九州市の生活保護行政を20年間に渡って推進し擁護してきた末吉氏の政治家としての責任・資質に関する貴職の認識・見解を明らかにしてください。
(2) このような人物が「総理の知恵袋」として不適格であることは明らかであり、直ちに解任すべきと考えますが、もしその考えがないとすれば何故ですか。

敬具

生活保護の通院移送費削減の撤回を求めて、6・19共同行動への参加を呼びかけます

2008-06-17 17:22:21 | 通院移送費問題
生活保護の通院移送費削減の撤回を求めて、6・19共同行動への参加を呼びかけます

2008年6月16日

報道機関 各位

生活保護問題対策全国会議 代表幹事 尾藤廣喜
中央社会保障推進協議会 代表委員 住江憲勇
全国公的扶助研究会 会長 杉村宏
全日本民主医療機関連合会 会長 鈴木篤
NPO法人自立生活サポートセンター・もやい 理事長 稲葉剛
特定非営利活動法人DPI日本会議 議長 三澤 了
全国生活と健康を守る会連合会 会長 鈴木正和

日頃より、国民の暮らしと医療を守るために奮闘されていることに敬意を表します。

国・厚労省は、4月1日から生活保護の通院移送費の削減を強行しました。すでに、多くの自治体で打ち切りが始まっています。この削減は、実質的な基準引き下げになり、生活保護世帯の生存権を著しく侵害するものです。通院移送費の削減は、受診抑制をひきおこし、命と医療を受ける権利を奪うものでもあります。同時に、3月3日に発表して、4月1日実施はあまりにも乱暴なもので、手続き的にも大問題です。また、6月10日に出された課長通知は、舛添大臣が「実質上撤回」と発言したものの、その内容は通院移送費削減撤回とは大きくかけ離れたものであります。

私たち7団体は、通院費削減撤回を求めて、5月14日、国会議員要請、厚労省前での宣伝・抗議行動を行い、同月21日に院内集会を行い、自民・共産・社民の国会議員にも参加いただき、国会内外での行動が広がっています。

次回、次のように、院内集会と記者会見を6月19日(木)におこないますので、ぜひとも多数ご参加のうえ、取材をいただきますよう、お願いいたします。



(1)日時 6月19日(木)

□ 院内集会 午後1:00~2:00
□ 記者会見 午後2:00~2:30

(2)場所 第2衆議院会館第3会議室

*12:30より会館ロビーで通行証をお渡しします。

*現在折衝中ですが、厚労省が院内集会に来ない場合は午後2時~3時まで、記者会見に参加しないメンバーで厚労省交渉をおこないます。

通院移送費問題局長通知の完全撤回を強く求める声明を出しました

2008-06-16 15:12:53 | 通院移送費問題
通院移送費問題局長通知の完全撤回を強く求める声明

「羊頭狗肉」「面従腹背」の新通知に騙されるな

 厚生労働省社会・援護局保護課長は、2008年6月10日、「医療扶助における移送の給付決定に関する留意点(周知徹底依頼)」と題する通知(以下「本件課長通知」という)を全国自治体の生活保護担当部署宛てに発出した。本件課長通知は、同年4月1日付の「生活保護法による医療扶助運営要領の一部改正について」と題する同省社会・援護局長通知(以下「局長通知」という)について説明を加えたものである。
 舛添大臣は、自民党有志議員からの局長通知撤回要請を受け、10日の記者会見で「事実上撤回と同じような効果を持つ。必要な医療が受けられなくなるのではないかという受給者の不安を解消したい」と述べ、政治的判断においては局長通知の撤回が必要であることが明確にされた。これを受けて、マスコミでも「不支給通知撤回」「従来通り支給へ」といった報道がされている。舛添大臣が、「事実上撤回」を表明せざるをえなかったのは、生活保護利用者や多くの団体が反対を表明し、自治体や国会議員の厚労省への働きかけが強まった成果ではある。

 しかし、厚生労働省から示された、本件課長通知の内容を精査すれば、局長通知を撤回する内容とはなっていない。本件課長通知は、私たち市民団体や与野党の国会議員らによる追及に対して、厚労省が繰り返してきた苦し紛れの「弁解」を書き連ねたものに過ぎないと評価する。舛添大臣の「事実上撤回」という会見での発言によって世論や与野党議員の批判を沈静化させながら、局長通知の骨格は維持するという「羊頭狗肉」「面従腹背」の姑息な対応と言わざるを得ない。
 また、今回の通知を出した理由を「自治体への徹底」としているが、生活保護利用者の権利を侵害し、福祉事務所に混乱を招いた元凶である4月1日付け通知を出した厚生労働省自身の責任を棚上げしている。
 以下、本件課長通知の問題点を列挙し、撤回を強く要求するものである。

本件課長通知は、「局長通知の撤回」ではない
 
第1に、本件課長通知には、「局長通知の撤回」という表現は一言も出てこない。「本件局長通知は、これまでの基準を変更するものではなく、給付範囲や審査等の基準を明確化しただけ」という矛盾に満ちた説明を、反省することなく繰り返している。
第2に、本件課長通知は、局長通知の「原則不支給。例外的に支給」という枠組みに何ら変更を加えていない。局長通知があるかぎり、福祉現場、実施機関では「原則不支給」がいずれ定着するのは目にみえている。
なお、本件課長通知は、「『例外的給付』とは、原則支給しないという意味ではなく、国民健康保険の例によらない生活保護制度における独自の基準であるという意味です」という意味不明の説明を加えている。しかし、局長通知は、明確に「原則として(災害現場からの緊急搬送等の)国民健康保険の例による」と記載している。そして、国民健康保険の被保険者4026万9526人中、移送費の支給実績は549件で0.0000136%に過ぎないのであるから(平成17年度国民健康保険事業年報)、局長通知が、「原則不支給」を定めたものであることは明らかである。


「基準の明確化」にはほど遠く、「局長通知の完全撤回」こそが必要である

⑴ 「原則として福祉事務所管内の医療機関に限る」
  本件課長通知は、医療扶助における医療機関の選定に関する「居住地等に比較的近距離に所在する医療機関であること」という要領を引用し、このような場合と「やむを得ない」場合には、管外であっても「受診が認められます」と記載している。これは、明らかに限定列挙であり、受診の抑制につながるとともに、移送費の支給が認められるか否かについても明示しておらず、「基準を明確化」したものとは到底評価できない。
  また、仮に、移送費支給の余地を認めたというのであれば、上記要領と矛盾し、誤解・混乱を招く余地がある。「原則管内に限る」という局長通知の定めそのものを撤回・廃止することこそ必要である。

⑵ 「身体障害等により、電車・バス等の利用が著しく困難な者であって当該者が最寄りの医療機関に受診する際の交通費が必要な場合」について
身体障害者等について、知的障害、精神障害、難病等を列記してあるが、生活保護受給者の4割をしめる傷病者、過半数をこえる高齢者などの加齢からくる移動困難等が含まれるのかどうか不明であり、障害者手帳所持者、特定疾患等に限定されない必要がある。また、恒常的に通院を必要とするとは決まっていない受給者の通院を排除するかに見える。例外的な扱いにしたうえで、列記したものだけを対象とするとした制限列挙方式による弊害であり、原則と例外を分けた通知を廃止しなければ解決しない問題である。
また、本件課長通知では傷病による場合を、「夜間の突発な傷病により電車・バス等の利用が困難な場合」と例示しており、夜間に限定される誤解を生む表現となっており、症状急変時や悪化時における受診抑制につながる恐れもある内容である。

⑶ 「へき地等により、最寄りの医療機関に電車・バス等により受診する場合であっても当該受診に係る交通費の負担が高額になる場合」について
  この要件は、「高額の場合」のみ移送費を支給するとするもので、「移送に必要な最小限度の額」であれば、例え少額でも移送費支給を認めていた従来の取り扱いをもっとも大きく変更する可能性がある要件である。しかも、厚労省が「高額」の基準を明確に示さないため、福祉事務所によってまちまちな基準で運用され混乱や不公平が生じることや、「高額」を2000円、3000円、5000円と高く設定すればするほど、不支給となる者が増えることが危惧されていたのである。
  しかるに、本件課長通知は、「高額」の要件を撤回することはもちろん、基準さえ明示していない。これは、「従来の取り扱いを明確化した」という局長通知や課長通知の説明がまやかしであることを如実に示している。
  むしろ、本件課長通知は、「慢性疾患等により医療上の必要から継続的に受診するため交通費の負担が高額になる場合も検討の対象になります」という例を書き加えることによって、高額は500円や1000円ではない、といったニュアンスを伝え、福祉事務所の現場での抑止的効果を期待しているようにも読める。また、慢性でない疾患や初めて受診する場合を除外する効果も与えるように読める。
  厚生労働省が、「高額の基準」を示すことができないのは、理論上、合理的基準を設定することができないからにほかならない。厚生労働省は、私たちとの交渉の場においては、「500円や100円でも必要なら支給できる」と繰り返し明言している。もはや「高額」という文言にも意味がないことを「自白」しているのである。そうであればなおさら、誤解を与えて支給抑制を誘発する以外に何の意味もない「高額」という文言は削除すべきである。
また、「へき地等」の解釈について、本件課長通知では、「電車代・バス代が支給されるのは『へき地』に限られるものではなく、都市部であっても一律に排除されるものではありません。」と説明している。しかし、都市部であってもへき地と解釈するのであれば、「へき地等」という例示に意味はなく、むしろ誤解を招くおそれが大であるから、この言葉そのものを削除すべである。

以上、局長通知の撤回こそが求められるゆえんである。


まとめ

  以上のとおり、本件課長通知の発出によって局長通知の問題点が解消されたものとは到底評価できない。
  私たちは、「事実上撤回と同じ効果を持つ」と言えるためには、以下のポイントが必要と考える。
  1)「4月1日局長通知を廃止し」の文言をいれる
  2)移送費が必要な場合の列挙だと、福祉事務所によっては限定列挙と解釈されるおそれがあるので、列挙はしない
  3)「高額」という言葉が一度出てしまっているので、「必要な通院において、電車・バス等の公共交通機関を利用し、適正なルートで通院している場合、金額の高下にかかわらず、今までどおり通院移送費を支給するように留意すること」など、その限定要件を払拭する文言を意識的にいれる。
  4)「タクシーの利用などで、移送費が高額になる場合には、交通手段の適正さや他の代替医療機関の受診可能性について精査すること」といった文言をいれ、適正な交通手段の精査の具体的方法については、別途問答(Q&A)で指示する。

私たちは、引き続き、関係諸団体、保護利用者、マスコミ各位、良心ある与野党議員とともに、局長通知の撤回を求めて取り組みを強化する所存であるので、ご協力をお願いしたい。


2008年6月15日

生活保護問題対策全国会議 代表幹事 尾藤廣喜
中央社会保障推進協議会 代表委員 住江憲勇
全国公的扶助研究会 会長 杉村宏
全日本民主医療機関連合会 会長 鈴木篤
NPO法人自立生活サポートセンター・もやい 理事長 稲葉剛
特定非営利活動法人DPI日本会議 議長 三澤了
全国生活と健康を守る会連合会 会長 鈴木正和
全国クレジット・サラ金問題対策協議会 代表幹事 木村達也


08年度の実施要領等改正

2008-04-01 00:00:00 | Weblog
生活保護法による保護の実施要領(厚労大臣が定める処理基準)や
別冊問答集(厚労大臣から自治体への技術的助言)
が4月から一部改正されます。

改正点の主なポイント

・過疎地の通勤用や保育所送迎用の自動車の保有要件が緩和されます。

・これまで住宅扶助の対象外だった火災保険料と保証料が支給されるようになります。

・保険の解約返戻金の収入認定されない部分が拡大されます。

・相談時に申請権を侵害しないことや、
稼働能力の判定について、年齢や検診結果のみで機械的に判断することなく
申請者の生活歴等を踏まえて総合的に判断すべきこと
(つまり、検診の結果が「就労可」であってもそれのみをもって却下することはできない)
などが明記されました。明らかにこの間の運動の成果です。
(逆にいえば、こんな当たり前のことをわざわざ明文化しなければいけないほど
現場は酷いということの現れでもあります。)

詳しくは以下を参照してください。

実施要領等改正の概要(P29から)

実施要領等改正案(改正部分は下線が引かれています)
その1
その2
その3
その4
その5

滝川市事件を口実とした通院移送費全般の削減案撤回を求める要望書

2008-03-20 13:15:02 | 通院移送費問題
2008年3月19日

滝川市事件を口実とした通院移送費全般の削減案撤回を求める要望書

厚生労働大臣 舛添 要一 殿

生活保護問題対策全国会議  代表幹事 尾藤 廣喜
                    (連絡先)〒530-0047 大阪市北区西天満3-14-16
                         西天満パークビル3号館7階あかり法律事務所
                              弁護士 小久保 哲郎(事務局長)
                            電話 06-6363-3310 FAX 06-6363-3320
 貴省は、2008年3月3日、社会・援護局関係主管課長会議において、同年4月から生活保護医療扶助の移送費の取り扱いを変更する運営要領案(以下「改定案」という)を提示した。改定案によれば、これまで生活保護利用者に対し支給されてきた通常の通院にかかる移送費が原則支給対象外となる。
 今般の貴省の突然の提示に対しては、生活保護利用者だけでなく、地方自治体における生活保護行政の現場からも強い批判の声が上がっている。当会議としても、今回の改定案については、以下の諸点から到底容認できるものではなく、貴省に対し、厳重に抗議するとともに、直ちに改定案を撤回するよう強く求めるものである。

1 保護基準の実質的切り下げ、医療を受ける権利の侵害による「棄民政策」
  改定案によれば、これまで生活保護利用者に対して支給されてきた通常の通院にかかる移送費が原則支給対象外となる。例外的に支給を認める場合も「原則として福祉事務所管内の医療機関とする」としており、一般的な通院実態に照らせば、例外が認められる余地は事実上極めて限定的となることが明らかである。
  通院移送費の支給がなくなれば、保護利用者としては、生活扶助費等の中から通院費を捻出せざるを得ない。これは実質的には「保護基準の切り下げ」である。
  また、頻回に通院を要する病状重篤な者ほど、通院を抑制あるいは断念しなければならないことは容易に想像できる。これは、保護利用者の「適切な医療を受ける権利(国際人権規約社会権規約12条2項(d))」を侵害し、その生命や健康を直接危険にさらすことを意味する。
  生活保護費の削減を至上命題として追求している昨今の貴省の姿勢からすれば、貴省は、通院移送費の不支給を手段として保護利用者の医療へのアクセスを阻害し、医療扶助費を削減することを究極の目的としていると考えざるを得ない。
私たちは、保護利用者の生命や健康を犠牲にすることによって医療扶助費の削減を図ろうとする、意図的な「棄民政策」を決して許さない。

2 放置した「巨悪(滝川市事件)」の責任を保護利用者全般に転嫁
上記のとおり、今般の改定案は、保護基準の実質的な切り下げであり、保護利用者の適切な医療を受ける権利を侵害するものであって、保護利用者にとっては重大な不利益変更である。こうした不利益変更を行うには、「正当な理由」(生活保護法56条)が必要であるが、貴省があげる理由は到底正当なものとはいえない。
すなわち、通院移送費を原則不支給とする理由として、貴省は、「濫給防止」を掲げ、「1世帯に対して、約2年間で総額2億3千万円を超える額が給付されていた事例」、すなわち滝川市における不正受給事案を持ち出している(重点事項4頁)。
  しかし、滝川市事件のような異常な少数事例があるからといって、通院移送費全般が不正受給の温床となっているわけではない。貴省の主張には、明らかに論理の飛躍、すり替えがある。貴省は、先般行った通院移送費に関する全国調査については、「内容について集計等を行っているところ」としている(同前5頁)。わざわざ行った全国調査の結果発表を待たずに敢えてこうした改定を行うのは、滝川市事件に対する世論の強い批判が冷めないうちにこれを利用して、通院移送費(ひいては医療扶助費)の削減を図ろうとしているからではないかとの疑いを抱かざるを得ない。
  いずれにせよ、濫給防止のために通院移送費全般を削減しなければならないことを裏付ける調査結果も統計資料もまったく存在せず、今般の改定案にはまったく正当性がないことは明らかである。
  生活保護世帯の43.5%は高齢世帯であり、37.5%は障害・傷病世帯である。こうした世帯の多くが、何らかの疾病を抱え、日常的に通院をしていることは容易に想像できる。「滝川事件」を「口実」にした改定案によって不利益を受けるのは、多くの一般の保護利用者である。もっとも弱い立場にあり声を出せない人々から、広く薄くその権利をむしりとっていくやり方を、私たちは決して許さない。

3 例によって利用者・民意不在の「奇襲攻撃」
  既に述べたとおり、今般の改定案のような、保護利用者にとって重大な不利益変更を行うには、「正当な理由」(生活保護法56条)が必要である。「正当な理由」があるといえるためには、実質的に正当な理由があるだけでなく、手続的にも、正確な実態調査をしたうえで、利用者や市民の声を聞き、慎重な検討をしなければならない。
  しかるに、今回の改定案は、3月3日に突然発表し、4月からの実施を求めるもので余りに拙速過ぎる。厚生労働省は、2007年末にも拙速な審議で生活扶助基準の切り下げを図ろうとし、市民各層からの強い批判を受けて見送りを余儀なくされたばかりである。今回の改定案は、こりもせず、利用者・民意不在のままの「奇襲攻撃」によって正当性のない政策を達成しようとするものである。
私たちは、その姑息なやり方を決して許さない。

滝川市の移送費詐取事件で市・道・厚労省に質問状を出しました

2008-03-20 13:12:53 | 通院移送費問題
公 開 質 問 状
2008年3月19日
滝川市
 市長 田村 弘 殿

生活保護問題対策全国会議  代表幹事 尾藤 廣喜
           (連絡先)〒530-0047 大阪市北区西天満3-14-16
              西天満パークビル3号館7階 あかり法律事務所
                       弁護士 小久保 哲郎(事務局長)
                     電話 06-6363-3310 FAX 06-6363-3320
 
当会は、弁護士・司法書士・学者・市民など約200人余りで構成する、生活保護行政の改善などに取り組む民間団体です(別添資料をご参照ください)。当会は、貴市で発生した医療移送費の不正受給事件について、生活保護制度のあり方、運用全体についての市民の信頼を根本から損ないかねず、生活保護制度利用者全体に対するする根拠のない偏見を助長しかねない重大な問題である認識しており、あってはならない事件であると考えています。同時に、生活保護の運用を法令や通知に従って適切に行えば、十分に防ぎ得た事件であると考えるものです。
しかも、当会としては、この事件を契機に、生活保護制度利用者、「水際作戦」と言われる申請の窓口規制や保護決定後も続く「保護辞退届」強要、根拠のない「就労指導」などが合理化され、最低基準の切り下げに口実として利用されかねない動きとなることを懸念しております。
以上述べた観点からすれば、貴市が2008年1月に「生活保護費詐詐欺事件に関する検証委員会報告書」(以下「報告書」といいます。)で明らかにされた事件の概要と対応には、多くの疑問があります。
よって、当会としては、何故このような事件が発生したのか、また、その再発防止のためにどのような対策がとられなければならないかにつき、市民の立場、生活保護制度利用者の立場に立って検討、提言したく、以下のとおり、質問状を提出する次第です。
 本質問状について、2008年3月末日までに書面にて回答していただきたく、お願いします。


第1 不正受給ケースへの滝川市の対応について
 そもそも、当該世帯がなぜ滝川市へ転入したのか、理由が不明確です。また、重い病気
の人間が、わざわざ滝川市に転入した上で、ストレッチャー式のタクシーで長時間、体へ
負担をかけて遠距離(50キロ)の札幌にわざわざ通院するというのも常識的には考えられ
ない選択です。滝川市としては、転入時点で、「基本的に札幌市への通院については認め
られず」(報告書18p。以下、ぺージ数のみの場合は、報告書のページを示す)というま
っとうな判断をいったんは下しておきながら、結果として札幌への通院を追認しています。
保護開始時、移送費の支給経過、手続き、判断根拠、その後の指導等ついて以下の点を明
らかにして下さい。

1 保護開始時の問題について
本件は「暴力団関係ケース」とされていますが、保護開始時にどのような調査を行ったのでしょうか。また、その結果は、どういう判断だったのでしょうか?
(理由)本件世帯は、「平成18年度まで暴力団関係ケース」であったとされている(報告書17p)ところから、滝川市での保護開始後の約1年間は、そうであったことになります。こうしたケースの場合、「手引」(2006.3.30保護課長通知)では、「暴力団を離脱しない限り、申請を行っても却下する」という扱いが示されているところです(通知Ⅰ5(3)③)。そして、警察庁も暴力団情報についての情報提供を通知しており(2000.9.14警察庁暴暴発14号)、本件において、滝川市がどの程度の情報を把握し、どのような対処を取っていたかが問題となります。報告書では、保護開始時「警察からは十分な情報提供が得られない」(41p)としていますが、なぜ警察は非協力だったのかその理由を明確にする必要がります。また、きちんと協力していれば、保護開始時点でこの詐欺事件の発生は、防止できた可能性があります。また滝川市もどのような情報を把握していたのかを明確にすべきです。「暴力団関係ケースであるにもかかわらず、査察指導員や管理職の同行訪問が十分に行われていないこと」(31p)だけが問題ではありません。訪問の形式ではなく、保護開始時に、どのような対処方針に基づいて、いかなる具体的な対処を行ったかが問題です。
2 移送費給付に至る経過について
(1) 最初に、本件の移送費の申請がなされた時期は何時のことでしたか。
(2) その際の添付資料としては、どのような資料が添付されておりましたか。できれば、申請書の写しとともに添付資料の写しをご送付下さい。
(3) 上記の申請に関して、主治医の意見書はどのような内容になっておりましたか。できれば、当該意見書の写しをご送付下さい。
(4) また、どのような理由で、本件の移送費の給付の必要があり、最小限度の実費の額として、給付した額が必要と判断したのかについて、お教え下さい。
(理由)生活保護の運用では、病院通院のためのタクシー代(移送費)の支給は、主治医の意見書等を元にして保護の実施機関が判断することになっています。また、支給の金額については、最小限度の実費の額となっています(医療扶助運営要領第三-九)。 したがって、本件の移送費給付決定の妥当性を判断するためには、その際の添付資料としてどのような資料が添付されていたのか、また、主治医の意見書が具体的にどうなっていたのかを知る必要があります。また、どのような理由で、本件の移送費の給付が最低生活の維持上必要であると判断され、給付した移送費の額が必要と判断したのかについて、明らかにされる必要があります。
3 移送費支給についての判断及び保護実施上の滝川市の対応について
(1)なぜ、検診命令を発しなかったのでしょうか。
(理由)生活保護法28条の検診命令の要件は「保護の決定または実施のため必要があるとき」であり、具体的には、局長通知第9-4-(1)-ウにあるように「医療扶助の決定をしようとする場合に、要保護者の病状に疑いがある場合」とされています。そして、福祉事務所においては、主治医からの病状把握に客観性をもたせるために、利用者に対して、公立病院等他の医療機関で検診を受けさせる扱いが行われています。報告書は、法27条2項3項を根拠に「法27条の指導及び指示を経て行われる検診命令については、当然にそのことが考慮されるべきであるとの考え方があった」から実施していない(23p)と説明していますが、上記の通り、検診命令についての理解を誤っており(検診命令は、法27条に基づく指導指示を必ず経なければならないわけではない)、かつ、移送費金額の異常さからは、第三者的な病院等複数の病院での検診を受けさせて客観性を担保すべきであったと思われます。また、報告書の別のところでは「検診命令については、嘱託医が要否意見書等の検討に際し、不審な点が見られ、指定医療機関に照会しても判然としない場合に行われる」( 37p)としていますが、上記の通り検診命令はこのような場合に限定されません。
(2)医療機関の選定は妥当であったでしょうか。滝川市もしくはその近辺の医療機関への転院を勧めるべきではなかったでしょうか。
(理由)報告書は「医療機関の選定に際しては保護の実施に支障のない限り、患者の医師に対する信頼、その他心理的作用の及ぼす諸効果をあわせ考慮すべきこととされている」(18p)ことを札幌市への病院の通院を認めた理由にあげています。しかし、報告書も引用しているように、医療機関の選定は「あくまで保護の実施機関の権限」(6p)とされており、それも「保護の実施に支障のない限り」利用者の選定を尊重することとされています。本件は、異常に高額の金額が支給されていることからいって、保護の実施に支障があったことは明らかだと考えますが、なぜ札幌市の医療機関での治療を認めたのか、明らかにされるべきです。
(3)なぜ、病状聴取が10ヶ月も行われなかったのでしょうか。
(理由)本件世帯主の病状については、主治医から「状態は非常に重く、いつ急変してもおかしくない状態」(21p)と診断され、この病状を前提に移送費が支給されています。ところが、その後10ヶ月にもわたって病状が主治医から直接把握されていなません(C病院については、2006年9月に聴取されて以降2007年8月まで聴取されていない)。報告書はこの点を問題点として挙げながら(39p)、なぜそのような結果となったか明らかにしていません。
(4)本件について、なぜ、札幌市への転居指導を行わなかったのでしょうか。
(理由)上記のように、そもそも2006年3月における札幌市から滝川市への転入理由が不明確です。仮に転入自体はやむを得ないとしても、転入後すぐに札幌への通院を開始しており、それ以降問題のストレッチャー付きの介護タクシーを利用しています。診断書上重篤な病気であれば、札幌まで何時間もかけて通院すること自体が身体上のダメージとなり療養のためによくないことは明らかです。通常であれば、札幌にとどまり通院することが療養上も妥当でしょう。また、移送費も札幌市内からの通院なら当然軽減されます。この点、報告書は、「通院に伴う体の負担を考え札幌市への転居も検討するように話しているが、主及び妻は、環境の変化に伴い世帯員が大きな影響を受ける可能性があり、それを考えると怖くて行けないと主張し、転居には至っていない」(23p)、「世帯員の環境変化に伴う悪影響への懸念から、主、妻ともに消極的であり、福祉事務所も被保護者の意に反して指導や指示を強制はできない」から実施に至っていないと説明しています(23p)。しかし、療養上の観点、経済的観点からしても、札幌市への転居指導を行うべきであったと考えます。
(5)札幌の通院先病院への通院実績の確認はされていたのでしょうか。
(理由)医療移送費の支給については、通院の事実を確認するため、医療機関から通院実績を確認します(「通院証明書」)。本件では、月によっては毎日通院に近い通院頻度となっている。このような頻回の医療機関に対する通院実績の確認はなされていたのでしょうか。

第2 医療移送費支給実績について
  (1)当該不正受給ケース以外の、滝川市における医療移送費の支給実績(2003年~2007年度の過去5年分)を明らかにして下さい。

第3 実施体制について
(1)当該不正受給ケースが滝川市に転入した直後の2006年4月の人事異動で、貴市生活保護担当職員9人のうち6人が異動しています。このうち生活保護ケースワーカーの異動は何人なのでしょうか。なぜこのように3分の2が入れ替わる人事異動を行ったのかを明らかにされたい。
(理由)業務の継続性が保障されなくなる危惧があるこのような異常な人事異動を行った理由が理解できないため。
(2)貴市における生活保護ケースワーカーの資格取得状況及び経験年数、異動の場合の在職年数の目安等について明らかにされたい。
(理由)生活保護ケースワーカーの経験年数が少なければ、生活保護ケースワーカーが「素人」化し、本件ケースのように、制度をよく知っている者が悪用するような場合に、悪用を見抜きにくくなるなど、適切な業務運営に支障を来たすことになり、その具体的状況を知る必要があるため。

第4 その他
(1)「保護の種類、程度、方法等について被保護者の希望がある程度考慮されるべき」ことが不正受給の要因となるかのような認識の根拠を示されたい。
(理由)報告書は「被保護者の権利ともいうべきこれらのこと(保護の種類、程度、方法等について被保護者の希望がある程度考慮されるべきこと)は、仮に悪意をもって利用しようとすれば、犯罪に利用され得る可能性を持ち、また、場合によっては、福祉事務所の前に「法律の壁」として立ちはだかるものともなりうるものである。昨今の生活保護費の不正受給の増加についても、これらのことに起因する部分が多分にあるのではないかと推察する」(39p)と記していますが、本件に関連して、「被保護者の権利」を重視することが、不正受給の防止にどのような「法律の壁」となるというのか、全く不明です。そのような判断に至った具体的根拠を明らかにされたい。
 (2)警察への相談の根拠は不適切ではないでしょうか。
(理由)本件について、報告書では、警察へ依頼した理由について「所としての調査では限界を感じ、打ち切る方法や理屈に思い至らず、警察に相談した」「犯罪性がなくても、法への違反事実等があればそれを一つのきっかとして支給打ち切りにつなげたい」という理由を書いています(43p以下の囲み)。しかし、このような処理は法的根拠無き警察への依頼ではないでしょうか?犯罪性がなくても保護を打ち切る理由ほしさに被保護者の情報等を警察と共有することを認めると、保護打ち切りのためには根拠がなくても警察へ依頼してもいいことになります。「生活保護法による保護を廃止する必要があれば、法に基づく廃止手続きを取ればよい」のであって、「生活保護を切りたくて困ったら警察に協議する」というようなことは、法の予定している内容とは全く背反しており、決して許されません。
(3)再発防止策について「町内会の協力」をあげていますが、このような指摘は、不適切ではないでしょうか。
(理由)本件のような事態の再発防止策について「町内会の協力を得て、被保護世帯の生活状況のいっそうの把握に努める」(46p)とありますが、民生委員の協力を求めることは当然としても、町内会にそのようなことを依頼する根拠はありません。このような方針は、被保護世帯の個人情報を民間人に漏洩することになり、保護利用者への偏見を助長し、地域での「監視体制」を敷くことによる保護利用者の孤立化という深刻な違法状態を招くことにもなりかねません。
                                    以 上



公 開 質 問 状
2008年3月19日
北海道
 知事 高橋はるみ 殿

生活保護問題対策全国会議  代表幹事 尾藤 廣喜
              

当会は、弁護士・司法書士・学者・市民など約200人余りで構成する、生活保護行政の改善などに取り組む民間団体です(別添資料をご参照ください)。当会は、滝川市で発生した医療移送費の不正受給事件について、生活保護制度のあり方、運用全体についての市民の信頼を根本から損ないかねず、生活保護制度利用者全体に対するする根拠のない偏見を助長しかねない重大な問題である認識しており、あってはならない事件であると考えています。同時に、生活保護の運用を法令や通知に従って適切に行えば、十分に防ぎ得た事件であると考えるものです。
しかも、当会としては、この事件を契機に、生活保護制度利用者、「水際作戦」と言われる申請の窓口規制や保護決定後も続く「保護辞退届」強要、根拠のない「就労指導」などが合理化され、最低基準の切り下げに口実として利用されかねない動きとなることを懸念しております。
以上述べた観点からすれば、この事件について、滝川市を指導監督する責任がある北海道庁の対応には疑問があります。
よって、当会としては、何故このような事件が発生したのか、また、その再発防止のためにどのような対策がとられなければならないかにつき、市民の立場、生活保護制度利用者の立場に立って検討、提言したく、以下のとおり、質問状を提出する次第です。
本質問状について、2008年3月末日までに書面にて回答していただきたく、お願いします。



1 本件についての滝川市への指導と監査について
 滝川市は本件について北海道の監査でも問題なしとされたことを再三にわたり適正執行の理由に挙げており〔2008年1月「生活保護費詐詐欺事件に関する検証委員会報告書」(以下「報告書」といいます。以下、ぺージ数のみを表示した場合は、報告書のページを示す。p18、p27、p37〕、本件不正受給発生の要因として、「医師の診断や北海道の監査結果が非常に重く」(p39)とまで述べています。しかし、貴庁はそれに真っ向から反する見解を示しておられます(p 44)。そこで、滝川市への事務監査について以下の点を明らかにしていただきたい。

(1)2006年度の滝川市への生活保護法施行事務監査(2007年1月15日~16日実施)において本件ケースを監査したのでしょうか。監査したならば、どのような指摘を行ったのでしょうか。監査していないならばその理由はどういう理由によるものでしょうか。
 (参考 2006年度生活保護法施行事務監査着眼点)
 「3 移送給付等の状況 
(1)移送給付 
ア 移送給付は申請に基づき行われているか。また、通院証明書、レセプト等により事実確認は行われているか。
イ 移送手段は、最も経済的な方法で行われているか、なお、タクシーを利用する場合は、医師の診断に基づき、歩行困難と認められた者等、真に止むを得ない者に限って行われているか。
ウ 移送給付は、現物給付を原則として行われているか。」

2 別紙、当会から滝川市への質問状の各項目について、貴庁の見解を示していただきたい。
                                 以 上

公 開 質 問 状
2008年3月19日
厚生労働大臣
 舛添要一 殿

生活保護問題対策全国会議  代表幹事 尾藤 廣喜
                
当会は、弁護士・司法書士・学者・市民など約200人余りで構成する、生活保護行政の改善などに取り組む民間団体です(別添資料をご参照ください)。当会は、北海道滝川市で発生した医療移送費の不正受給事件について、生活保護制度のあり方、運用全体についての市民の信頼を根本から損ないかねず、生活保護制度利用者全体に対するする根拠のない偏見を助長しかねない重大な問題である認識しており、あってはならない事件であると考えています。同時に、生活保護の運用を法令や通知に従って適切に行えば、十分に防ぎ得た事件であると考えるものです。
しかも、当会としては、この事件を契機に、生活保護制度利用者、「水際作戦」と言われる申請の窓口規制や保護決定後も続く「保護辞退届」強要、根拠のない「就労指導」などが合理化され、最低基準の切り下げに口実として利用されかねない動きとなることを懸念しております。
以上述べた観点からすれば、この事件について、滝川市を指導監督する責任がある北海道庁及び貴省の対応には疑問があります。
よって、当会としては、何故このような事件が発生したのか、また、その再発防止のためにどのような対策がとられなければならないかにつき、市民の立場、生活保護制度利用者の立場に立って検討、提言したく、以下のとおり、質問状を提出する次第です。
本質問状について、2008年3月末日までに書面にて回答していただきたく、お願いします。



1 本件について
(1)2007年1月の北海道庁による滝川市への施行事務監査によって、北海道庁は本件について把握しており、本件の異常さから、北海道庁は貴省へその内容と問題点を報告していたと考えますが、貴省は何時の時点で本件を把握していたのでしょうか。
この事件を従来から把握していた場合、どのような指導を行ったのでしょうか。また、2007年1月直後に把握していなかったとすれば、なぜ把握できなかったのでしょうか。

(2)本件が発生した原因についてどう考えておられますか。

(3)別紙、当会議からの滝川市への質問状の各項目についての貴省の見解を示されたい。

2 医療移送費の制限について
 貴省は、本年3月3日に開催された社会・援護局関係主管課長会議において、本件の発生を口実に「通院移送費等の適正化対策」を打ち出されました。その内容は、移送費の給付範囲については、原則として、国民健康保険の例により、災害現場等からの救急搬送、離島等で対応できる最寄の医療機関に搬送する場合、移動困難な患者であって、医師の指示により転院する場合、移植手術を行うための臓器等の搬出を行う医師等の派遣、臓器等の搬送を行う場合とする。この範囲で対応困難な場合については、①身体障害等により電車・バス等の利用が著しく困難な場合と認められる場合、②へき地等で最寄の医療機関であっても交通費が高額になる場合、③検診命令による検診、④往診による交通費の場合に支給を限定するとともに、受診する医療機関は原則として福祉事務所管内の医療機関に限るとするものです。
 しかし、このような対策は以下の点において、重大な問題と疑問があるので、下記質問にお答えいただきたい。

(1)医療移送費を制限する理由はないのではないか。
本件については、現在滝川市において設置された第3者委員会において、原因究明および再発防止策等についての作業が行われているところであります。また移送費について貴省の全国調査結果も未だ示されていません。本件の発生原因を究明することなく、移送費支給自体を制限することは、バス、電車代等の通院移送費の支給により通院している多くの善良な保護利用者の権利を、理由なく奪うものであります。この点についての貴省の見解を示されたい。

(2)医療移送費を制限は、傷病保護利用者の医療を受ける権利を侵害し、自立から遠ざけるものではないか。
傷病を理由に貧困に陥る人は多く(保護開始理由中、「世帯主の傷病」「世帯員の傷
病」を合わせると42.8%[平成17年度])、したがって生活保護利用者には療養を要する人が多いのが現状です(医療扶助受給者[通院]は、1,076,710人(73%)[平成17年度])。こうした実績から、「医療扶助運営方針」では、「疾病が貧困の主たる原因の一つとなっている現状」という認識を示しています。通院移送費は、そのような傷病者の医療を受ける権利を保障し、病気を治して、一日でも早く自立する為には不可欠の制度であります。この制度の制限は、生活保護利用者の医療を受ける権利を侵害することになると考えますが、貴省の見解を示されたい。

(3)医療移送費を制限は、最低生活を侵害するものではないか。
本来、生活扶助には通院移送費は含まれていません。生活扶助における移送関係の
費用は、断酒会交通費などが限定列挙されているに過ぎません。医療扶助に於ける通院移送費が制限されると、通院しようとすれば、生活扶助から出さざるをえず、最低生活費の切り下げとなると考えます。この点の貴省の見解を示されたい。

(4)あまりに拙速な実施ではないか。
3月3日の全国課長会議で提起され、4月から実施というのは、移送費を利用して通院
している保護利用者の生活を無視した、余りに拙速な実施ではないでしょうか。この点について、貴省の見解を示されたい。

(5)以上の点からして、移送費支給自体を制限するという今回の方針を撤回する考えはありませんか。
 
                                     以 上