生活保護問題対策全国会議blog

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浜松市高齢野宿女性路上死事件で浜松市長に質問状を提出しました

2008-01-28 16:14:21 | 浜松市問題
昨年11月、浜松市で、高齢の野宿者の女性が、
救急車で市役所に運ばれ、そのまま市役所の敷地内の路上で
亡くなるという事件
がありました。

この事件について、浜松市長に対して質問状を提出しました。

また、生活保護支援静岡ネットワークが署名を集めています。
こちらにもご協力をお願いします(2月6日必着です)。

質 問 状

浜松市長 鈴 木 康 友  様
2008年(平成20年)1月25日

      京都市中京区麩屋町通丸太町下ル舟屋町407
長栄ビル4階 鴨川法律事務所
              生活保護問題対策全国会議代表幹事
                弁護士  尾   藤   廣   喜
大阪市北区西天満3丁目14番16号
西天満パークビル3号館7階 あかり法律事務所
              上記同事務局長
                    弁護士  小 久 保  哲  郎
            京都市中京区御幸町通夷川上る松本町568
京歯協ビル3階 つくし法律事務所(連絡先)
                   電 話  075-241-2244
          FAX  075-241-1661
              上記同調査担当
                弁護士  舟   木      浩

拝啓

厳寒の候、御健勝のこととお喜び申し上げます。
さて、当会は、弁護士・司法書士・研究者・市民で構成し、生活保護法をはじめとする社会保障制度の整備・充実を図ることを目的として活動している団体です。

此度、マスコミによる報道等を通じて、貴市において野宿生活を送られていた70歳の女性が、昨年11月22日、救急車で市庁舎まで搬送され、その後、死去された事件(以下、「本件事件」と言います。)を知りました。この女性は、1時間ほど市庁舎玄関前の寒空の下に置かれ、その後、再度市役所の玄関前から救急搬送されて病院で死去されたとされています。また、この女性に知的障害があった可能性も指摘されています。

すでに貴市におかれては、昨年12月20日までに、本件事件に関与した貴市職員に対する聞き取り調査等を行い、その結果を書面にまとめられておられます。しかし、当該調査の内容は、貴市職員の視点から本件事件の表面的な経過を確認するにとどまり、本件事件の背景を掘り下げるものとはなっていません。遺憾ながら、野宿生活の過酷さに対する理解に欠けるものであり、一人の尊い生命が失われてしまったことを教訓として再発を予防しようとする姿勢に欠けていると言わざるを得ません。

本件のような悲劇が二度と繰り返されないためには、徹底した原因の究明とその分析を踏まえた対応策を講じることが不可欠です。そこで、当会といたしましては、貴市において、医療・福祉・法律の各分野の有識者、民生委員、野宿生活支援者などからなる第三者委員会によって多角的な検証が実施されることを要望するとともに、当会として、誰もが安心して暮らせる行政の実現に向けて、本件事件の背景にある課題や改善策を検討したいと考えております。本件に関する疑問点につき、本書を送付させて頂きます。当会会員が本年2月29日に貴市に赴いて本件の調査活動を行う予定ですので、同日、貴市庁舎を訪問させて頂き、本質問書に対するご回答を書面で頂くとともに、各関係部署の担当者から口頭でご説明頂ければ幸甚です。ご多忙のところ大変恐縮ではございますが、ご協力の程、よろしくお願い申し上げます。

敬具

第1 事実経過
1 2007年11月22日昼頃、女性がバスターミナル地下で動けなくなっていたところを警察官が発見し、12時30分頃、駅前交番から区役所に対して「ホームレスで具合の悪い女性がいる」と電話連絡がなされました。このとき、警察官は、電話を受けた中区社会福祉課グループ長から救急車を呼ぶように言われ、「衰弱して動けないようです」と消防に通報しました。救急隊は、その出動途上でも「女性が衰弱している」との無線も受信しています。

2 救急隊は、女性のもとに到着した後、女性自身から「お腹がへった、四日間食事をしていない」という訴えを聞きました。冬の寒さが増す中での路上生活で体調を崩し、食事もとれない状態にまで衰弱していたと考えられます。
ところが、救急隊は、女性の容態を確認した後も病院に対して受け入れの要請をまったくしませんでした。困窮して衰弱した高齢の女性を野宿状態から救い出す機会を得たにもかかわらず、その機会を捉えて女性を過酷な野宿生活から救い出そうとすることはありませんでした。

3 救急隊は、病院ではなく中区社会福祉課に電話連絡し、役所において食事の提供ができることを確認すると、中区社会福祉課のある浜松市庁舎正面玄関先に女性を搬送し、同日13時26分頃に正面玄関先に到着しました。
しかし、救急隊は、女性が花壇のふちに腰掛けたのを確認すると、食事の提供がなされるところを確認することもなく、そのまま引き上げてしまいました。社会福祉課の職員に対する施設や居宅につなげる方向での働きかけなどによって女性を救おうとする姿勢もありませんでした。

4 搬送されてきた女性を救急隊から引き継いだ社会福祉課では、空腹で衰弱した女性に対して、アルファ米を渡したものの、女性がすぐに口にすることができる食料を渡すことはせず、女性に手渡したアルファ米を開封してお湯を注ぐなどの介助すらしませんでした。また、女性を屋内に入れることもなく、女性に毛布を渡すこともありませんでした。

5 女性が救急車で搬送された後、市役所管財課の職員複数名が女性に紙コップで水や白湯を渡すなどしながら女性の様子を見守っていました。管財課の職員が同日13時50分頃に女性を見たとき、女性は体を横たえて市役所の駐車場のアスファルト上に寝転がる状態になっていました。しかし、市役所・区役所の職員は、女性がこの状態になっても誰一人として救急車を呼ぶことはありませんでした。そして、女性は、その後も14時20分頃までの30分くらい、駐車場に横たわった状態で寒風にさらされました。女性の着衣は決して十分な防寒ではありませんでした。しかし、市役所や区役所の職員が女性に毛布をかけたり、屋内に誘導したりすることはありませんでした。

6 その後、女性の野宿生活の支援に関わっていたボランティアがたまたま浜松市庁舎にやってきて、玄関先の駐車場で役所の職員数名に囲まれた女性が横たわっているのを発見しました。この発見がきっかけとなり、ようやく市役所の職員によって救急車が呼ばれました。しかし、このときも組織内部における連携が行き届かず、すぐには119番通報には至りませんでした。救急車が到着して女性の容態を確認したときには、女性はすでに心肺停止状態でした。また、救急搬送に役所の職員が同行することはなく、ボランティアが同行しました。そして、女性は、搬送先の病院で急性心不全によって死亡しました。

第2 質問事項
 1 生活保護行政の運用について
   本件女性は、野宿生活で衰弱していたほか、「四日間食事をしていない」と訴えていました。市庁舎に搬送された時点で、野宿状態で「要保護」の状態にあった女性が「急迫した状況」にあったことは明らかです。しかし、社会福祉課の職員は、女性に対して生活保護法25条1項に基づく急迫保護を行おうとはせず、何ら防寒対策を講じることもなく、1時間ほど市役所の玄関先に置いたままにしました。貴市における生活保護の運用に疑問を抱かざるを得ません。

(1)貴市において生活保護の申請から決定までに要する期間について、直近3年間のそれぞれの平均日数をご教示下さい。また、貴市における福祉事務所全体の職員の人数・男女比・社会福祉主事ないし社会福祉士の有資格率、生活保護の面接相談員の人数・男女比・異動サイクル、生活保護の地区担当ケースワーカーの人数・男女比・異動サイクル・1人あたりの平均担当ケース数のそれぞれについて、直近3年間のデータをご教示下さい。さらに、貴市が福祉事務所の職員に対して如何なる研修を実施していたのか、直近3年間に実施された各研修の内容と研修対象者をご教示下さい。そのうえで、貴市における面接担当者の選任基準を、資料とともにご教示下さい。

(2)貴市の生活保護の各担当課における相談ケース数、そのうち申請に至ったケース数及び生活保護が開始されるに至ったケース数について、直近3年間のデータをご教示下さい。

(3)生活保護の開始ケースのうち急迫保護で開始されたケース数について、直近3年間のデータをご教示下さい。また、急迫保護の運用基準があればその基準もご教示下さい。

(4)貴市の生活保護法上の施設としてどのような施設があるか、各施設の種別・数・名称・所在場所・利用状況をご教示下さい。また、各施設の定員と本件当時の入所状況もご教示下さい。

2 高齢者・知的障害者に対する施策について
  本件女性は70歳と高齢であったうえに、知的障害があった可能性もあります。地域社会において自力で生きていくことに困難を抱えていたと考えられます。このような女性が野宿状態で生きてこられたこと自体、極めて遺憾です。

(1)貴市における高齢者の入所施設にはどのような施設がありますか、各施設の種別・数・名称・所在場所・利用状況をご教示下さい。また、各施設の定員と本件当時の入所状況もご教示下さい。

(2)貴市における知的障害者のコミュニケーション支援、権利擁護、ピアサポート、相談支援体制、ホームヘルパーによる居宅生活支援等はどのようになっていますか。貴市における上記各事業の概要に関する資料とともにご教示下さい。

(3)貴市における知的障害者の入所施設にはどのような施設がありますか、各施設の種別・数・名称・所在場所・利用状況をご教示下さい。また、各施設の定員と本件当時の入所状況もご教示下さい。

3 救急医療について
  本件では、救急隊が医師に連絡をすることなく自らの判断で医療の必要性がないと判断しています。しかし、女性は高齢で、自ら四日間食べていないと述べていました。その後、市庁舎に搬送されてから1時間ほどで心肺停止状態となり、急性心不全で亡くなられた経緯に鑑みても、救急隊の判断が適切なものであったか疑問が残ります。

(1)貴市において救急隊が医療機関に搬送する必要があるか否かを判断する指針や基準がありますか。その指針や基準を記した資料とともにご教示下さい。

(2)貴市において救急隊が医療機関に搬送する必要があると判断した場合、救急隊はどのような指針や基準に従って搬送先の病院を決めていますか。その指針や基準を記した資料とともにご教示下さい。

(3)貴市において救急搬送される者が野宿者である場合、救急隊が自ら搬送先の病院を決定しているのか、社会福祉課に相談して決定しているのか、ご教示下さい。社会福祉課に相談して決定しているのであれば、その法的な根拠と理由についてもご教示下さい。仮に、通常は救急隊が自ら搬送先病院を決定しているのであれば、なぜ、本件においては、搬送先を探すことなく、社会福祉課に相談したのか、その理由をご説明下さい。

4 野宿者に対する施策について
貴市職員の対応には、野宿生活が過酷であって健康が損なわれるという当たり前の事実に対する基本的な認識が欠けているように思われます。貴市における生活保護行政、とりわけ野宿者に対する居宅保護が適切になされてきたのか、疑問を抱かざるを得ません。本件女性の予備軍とも言うべき野宿者は他にもおられ、十分な食事をとれずに衰弱しているのではないかと危惧します。

(1)2007年に実施された厚生労働省の全国調査では、貴市の野宿者数は115名(男性78名、女性3名、不明34名)とされています。貴市においてどのように野宿者の数を数えましたか。性別不明者の数が34名にも及ぶ理由は何ですか。厚生労働省が実施した2003年の全国調査と2007年の全国調査では野宿者の平均年齢はどのような変化がありましたか。浜松市における野宿者の健康状態について、2003年の全国調査と2007年の全国調査のそれぞれの結果はどのようなものでしたか。それぞれご教示下さい。

(2)厚生労働省に提出されている貴市のデータによれば、2003年2月1日現在で、野宿者であった者に係る保護適用世帯数の合計は203世帯であり、そのうち151世帯が「保護を受給する目的で起居の場を確保した上で保護の申請を行った場合」であるとされています。「公営住宅以外の住宅」の区分については154世帯あり、そのうち138世帯が「保護を受給する目的で起居の場を確保した上で保護の申請を行った場合」であるとされています。2003年2月中の保護開始世帯では、「公営住宅以外の住宅」の区分が6世帯あり、そのすべてが「保護を受給する目的で起居の場を確保した上で保護の申請を行った場合」であるとされています。貴市において野宿者が居宅の場を確保せずに生活保護を申請した場合、申請として受け付けていましたか、野宿者であった者に係る保護適用世帯数の合計とその区分毎の世帯数に関する直近のデータとともにご教示下さい。また、貴市における直近3年間のデータでは、生活保護の申請を行った野宿者に対して、入院や入所を経ることなく直接敷金・家具什器費等を支給して居宅保護を実施したのは何世帯でしたか。野宿者に対して急迫保護で居宅保護を実施したのは何世帯でしたか。それぞれご教示下さい。

(3)厚生労働省に提出されている貴市のデータによれば、2003年2月1日現在で、野宿者であった者に係る保護適用世帯数の合計は203世帯であり、そのうち「廃止」の世帯数が5世帯、「継続」の世帯が198世帯であるとされています。貴市における直近のデータでは、生活保護を利用した野宿者の世帯数、そのうち「廃止」の世帯数、「継続」の世帯数はそれぞれ何世帯でしたか。また、「廃止」の世帯数には、生活保護を利用した後に本人と連絡が取れなくなって保護が打ち切られたケース、本人から辞退届が提出されて保護が打ち切られたケースも含まれていますか。含まれている場合には、「廃止」世帯それぞれの廃止理由もご教示下さい。含まれていない場合には、生活保護を利用し始めた後に本人と連絡が取れなくなって保護が打ち切られたケース数、本人から辞退届が提出されて保護が打ち切られたケース数について、直近のデータをご教示下さい。

(4)貴市において、野宿者から相談を受けて生活支援を行う巡回相談員を配置していますか。それ以外に、行政職員が野宿者のもとに出向いて何らかの支援を行うことはありますか。ある場合には、その具体的な内容をご教示下さい。

(5)貴市において、野宿生活の支援を行うボランティアなど民間団体等との連携をどのように実践してきましたか。行政と民間団体等との役割分担について、それぞれがどのような課題をどこまで担うのか、協議に基づく合意がありましたか。それぞれの取り組みの成果や課題を共有して運用を改善していく定期的な話し合いは行われていましたか。貴市において、ボランティアなど民間団体等による活動内容をどのように把握し、どのように評価していましたか。それぞれご教示下さい。

(6)貴市が実施している野宿者に対する食事提供事業について、食事の提供を受けることができる頻度、提供を受ける際の手続き、食事の内容を事業の運営指針や申請書類等の資料を添付してご教示下さい。また、市庁舎には防寒のための毛布やカイロなどが常備されているのか、常備されているとすれば何がどのくらいの数量常備されているのか、ご教示下さい。

(7)野宿者が救急搬送された際に生活保護法と行旅病人及行旅死亡人取扱法のいずれによって処理されるか、その運用基準と手続きなどを資料とともにご教示下さい。仮に、直ちに医療扶助によって処理されない取り扱いとなっている場合、その根拠と、どのような場合に医療扶助によって処理されるのかの基準をご教示下さい。また、直近3年間の野宿者の救急搬送の件数をご教示下さい。さらに、直近3年間の野宿者に対する医療費の負担について、生活保護法の医療扶助によって処理された件数と金額、行旅病人及行旅死亡人取扱法によって処理された件数と金額、医療扶助から行旅病人及行旅死亡人取扱法に切り替えられた件数、行旅病人及行旅死亡人取扱法から医療扶助に切り替えられた件数を、通院と入院に分けて、それぞれご教示下さい。

(8)貴市において路上で亡くなられた方の数について、貴市が把握しておられる直近3年間の件数をご教示下さい。そのうち野宿者の数がわかれば、その数もご教示下さい。

5 本件女性と行政との関わりの経緯について
(1)前記4(1)のように、2007年に実施された厚生労働省の全国調査では、貴市の野宿者115名のうち3名が女性であることが確認されています。本件女性がこの3名に含まれるのか、ご教示ください。含まれる場合、調査時点で女性についてどのような情報を得ていたのか、ご教示ください。

(2)当会は、2007年11月7日に中区社会福祉課の職員2名が遠鉄デパートにおいて本件女性に直接会って話をしていた、話をしている途中にもかかわらず女性は荷物を置いたままトイレに入ってしまった、社会福祉課の職員はしばらく待機した後に女性が出てくるのを待たずデパートを出た、との情報を得ています。そのような事実があるのか否かをご教示下さい。また、そのような事実があるのであれば、以下の点についてご教示下さい。
・11月7日までに中区社会福祉課が本件女性と直接会って話を聞いたことがあるか。あるとすればその年月日(わかるかぎりで結構です)。
・社会福祉課の職員がデパートまで出向くことになった経緯。
・デパートに出向いた社会福祉課の職員の氏名及びその役職。
・社会福祉課の職員がデパートで女性を見つけて声をかけた時刻及びデパートを出た時刻。
・社会福祉課の職員が女性との間で交わした会話及びデパート職員との間で交わした女性に関する会話。
・女性がデパートのトイレに向かった経緯及び社会福祉課の職員がトイレから戻るまで待たずにデパートを出た経緯。
・11月7日のやり取りを経た後で社会福祉課の職員が女性を医療や福祉施策につなげなかった理由。
・11月22日に女性が浜松市庁舎玄関先に救急車で搬送されてきた時点で、社会福祉課グループ長は同月7日のやり取りを把握していたか。その情報は社会福祉課職員において共有されていたか。共有されていなかったとすればその理由。
・昨年11月7日のやり取りのときと、11月22日に救急車で搬送されてきたときとの比較における、女性の顔色、表情、発する言葉の数、声の大きさ、服装、におい、その他の変化の有無及びその内容。

 (3)中区社会福祉課は本件において女性にアルファ米を手渡していますが、これまで本件女性はどれくらいの頻度で食事提供事業を利用していましたか。女性が事業を利用し始めた時期、それ以降の利用頻度、本件の直近の利用日をご教示下さい。また、女性はそれまで自ら食事提供事業の手続きを踏んで利用することができていたのか、本件のときはどうだったのか、についてもご教示下さい。

以上