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三角形の垂心の「重心座標表現の公式の証明

2008年11月07日 | 考察


三角形の「垂心H」の「ベクトルによる重心座標表現」の公式の「証明」2008.11.07(金)

以下「ベクトル AB」などを (→AB)で表すことにする。すでに、
三角形ABCの「垂心H」の「ベクトルによる重心座標表現」の公式を与え、その
なかで、『内積』による表示が基本である」と述べた。公式は以下に述べる[命題1.2]のようである。

三角形ABCに対して、BC=a,CA=b ,AB=c,
x=((→AB),(→AC)),y=((→BA),(→BC)),z=((→CA),(→CB)) ・・・(1.1.1)
 とおく。
そのとき、
 x+y=AB^2=c^2  ,x+z=AC^2=b^2 ,y+z=a^2 ・・・(1.1.2)
 が成り立ち、したがって x+y+z=(a^2+b^2+c^2)/2 ・・・(1.1.3) でもあった。
また、三角形ABCの面積を S ,2次の正方行列 J(2)を
J(2)=
( ((→AB),(→AB)) ((→AB),(→AC)) )
( ((→AC),(→AB)) ((→AC),(→AC)) )
=  
( c^2  x  ) 
( x   b^2 )  とおくと、

 detJ(2)>0 で detJ(2)=(b^2)(c^2)ーx^2=(2S)^2=4(S^2)であった。
  そして(1.1.2)から
 yz+xz+xy=z(x+y)+xy=(b^2-x)(c^2)+x(c^2-x)=(b^2)(c^2)ーx^2=detJ(2)
 すなわち
 yz+xz+xy=detJ(2)=4(S^2) ・・・(1.1.4)であった。

三角形ABCの「垂心H」の「ベクトルによる重心座標表現」は次のようである。

「命題1.2」
 mは、m≧2を満たす自然数とし、△ABC⊂E^m (E^mはm次元ユークリッド空間)とする。

△ABCの「垂心」をHで表わすことにする。そのとき、E^mの任意の点Pにたいして、
 
  (→PH)={1/(4・S^2)}×[yz(→PA)+xz(→PB)+xy(→PC)] ・・・(1.2.1)
      となる。
 ここで 
  yz+xz+xy=4(S^2) ・・・(1.2.2) が

 成立するので、(1.2.1)は「ベクトルによる重心座標表現」である。

☆ この[命題1.2]を証明するため、次の[補題1.3]を用意する。
[補題1.3]
   (→h)=(→AH),(→AB)=(→b) ,(→AC)=(→c)とおくとき、
   点Hが△ABCの「垂心」になる
 ⇔ ((→h),(→b))=((→b),(→c)) かつ ((→h),(→c))=((→b),(→c)) ・・・(1.3.1)
「証明」
 点Hが△ABCの「垂心」になる ⇔((→BH),(→AC))=0 かつ((→CH),(→AB))=0 
 ⇔((→AH)-(→AB),(→AC))=0 かつ((→AH)-(→AC),(→AB))=0 
 ⇔((→AH),(→AC))=((→AB),(→AC)) かつ ((→AH),(→AB))=((→AB),(→AC))
 ⇔((→h),(→b))=((→b),(→c)) かつ ((→h),(→c))=((→b),(→c))
 (証明終わり)

それでは、
「命題1.2」の証明に移ろう

「「命題1.2」の証明」

 (→AB)=(→b),(→AC)=(→c)は一次独立であるから、
 (→h)=β(→b)+γ(→c) ・・・(1.2.3)と一意的に書ける。また 
 (→PH)=λ(→PA)+μ(→PB)+ν(→PC) ・・・(1.2.4) ただし、λ+μ+ν=1 ・・・(1.2.5)
 とする。「ベクトルによる重心座標表現」の意味から β=μ ,γ=ν となる。
 (1.2.3)を[補題1.3]の(1.3.1)式に代入して、
 (β(→b)+γ(→c),(→b))=((→b),(→c)) かつ 
 (β(→b)+γ(→c),(→c))=((→b),(→c))    よって
 ((→b),(→b))β+((→b),(→c))γ=((→b),(→c)) かつ
 ((→b),(→c))β+((→c),(→c))γ=((→b),(→c))
 
すなわち
( ((→b),(→b)),((→b),(→c)) )(β)
( ((→c),(→b)),((→c),(→c)) )(γ)

=( ((→b),(→c)) )
 ( ((→b),(→c)) ) ・・・(1.2.6)

J(2)=
( ((→b),(→b)),((→b),(→c)) )
( ((→c),(→b)),((→c),(→c)) )・・・(1.2.7) だから、(1.2.6)は

J(2)( β  γ )^t =( ((→b),(→c))  ((→b),(→c)) )^t ・・・(1.2.8)

となる。 ここに ( β  γ )^t は ( β  γ )の「転置行列」を表すものとする。
(→b),(→c)は一次独立であるから、detJ(2)>0 よって Cramer(クラメール)の公式から

β ,γは一意的に求まり。
detJ(2)β=
|((→b),(→c)) ((→b),(→c))|
|((→b),(→c)) ((→c),(→c))|


|((→b),(→c))      0     |
|((→b),(→c)) ((→c)-(→b),(→c))|

=((→b),(→c))・((→c)-(→b),(→c))
=((→AB),(→AC))・((→BC),(→AC))
=((→AB),(→AC))・((→CA),(→CB))
=xz  ( 何故なら(1.1.1) ) 
同様に
detJ(2)γ=

|((→b),(→b)) ((→b),(→c))|
|((→b),(→c)) ((→b),(→c))| 


|((→b),(→b)-(→c)) ((→b),(→c))|
|     0      ((→b),(→c))|

=((→b),(→c))・((→b),(→b)-(→c))
=((→AB),(→AC))・((→AB),(→CB))
=((→AB),(→AC))・((→BA),(→BC))
=xy  ( 何故なら(1.1.1) )

よって β=(xz)/{detJ(2)} ,γ=(xy)/{detJ(2)} ・・・(1.2.9)
これを(1.2.3)に代入して
(→h)=β(→b)+γ(→c)=[xz(→b)+xy(→c)]/{detJ(2)}

すなわち、
(→AH)=[xz(→AB)+xy(→AC)]/{detJ(2)} ・・・(1.2.10)

ゆえに 
(→PH)=[1-(xz+xy)/{detJ(2)}](→PA)+1/{detJ(2)}[xz(→PB)+xy(→PC)]
   =1/{detJ(2)}[detJ(2)-(xz+xy)](→PA)+1/{detJ(2)}[xz(→PB)+xy(→PC)] 
   =1/{detJ(2)}(yz)(→PA)+1/{detJ(2)}[xz(→PB)+xy(→PC)]
   =1/{detJ(2)}[yz(→PA)+xz(→PB)+xy(→PC)]
すなわち 、
  (→PH)=1/{detJ(2)}[yz(→PA)+xz(→PB)+xy(→PC)]
     =1/{4(S^2)}[yz(→PA)+xz(→PB)+xy(→PC)]
 よって 証明された。
 (証明終わり)
なお、この前回に記した
「九点円」の中心を「N」とすると、Nは「外心O」と「垂心H」の「中点」で、
「外心O」、「垂心H」の「ベクトルによる重心座標表現」はそれぞれ、
(→PO)=1/{2detJ(2)}[(y+z)x(→PA)+(x+z)y(→PB)+(x+y)z(→PC)] ・・・(2.1.1)
   
(→PH)=1/{detJ(2)}[yz(→PA)+xz(→PB)+xy(→PC)]          ・・・(2.1.2)

だから
 (→PN)=1/{4detJ(2)}[{(y+z)x+2yz}(→PA)+{(x+z)y+2xz}(→PB)+{(x+y)z+2xy}(→PC)]

(→PN)=1/{4detJ(2)}[(2yz+xz+xy)(→PA)+(yz+2xz+xy)(→PA)+(yz+xz+2xy)(→PC)]
      ・・・(2.1.3)

(→PN)=1/{4detJ(2)}[(detJ(2)+yz)(→PA)+((detJ(2)+xz)(→PA)+((detJ(2)+xy)(→PC)]
   =1/4[(→PA)+(→PB)+(→PC)]+1/4[yz(→PA)+xz(→PA)+xy(→PC)] ・・・(2.1.4)
   =(3/4)(→PG)+(1/4)(→PH)
   =1/4[3(→PG)+(→PH)]  ・・・(2.1.5)  ここに 点Gは△ABCの「重心」としている。

☆ すなわち「九点円の中心N」は、「重心G」,「垂心H」としたとき、
 「線分GHを1:3に内分する点」になる。
 
 このことは、「オイラー線の関係・・・OG:GH=1:2」と「九点円の中心N」が
「外心O」と「垂心H」の中点であることから当然のことである。
「九点円」についてはまたいつか話をしたい。