『東慶寺花だより』井上 ひさし著
前回読み終えた『東京セブンローズ』も「別冊文芸春秋」に1982年から1997年まで、中断をふくんだ15年にわたって連載されていたのが、大幅な加筆訂正が行われて単行本になったように『東慶寺花だより』も「オール読物」に1998年から2008年まで折に触れて連載されたものを、2010年11月に単行本化されたようです。 著者である井上ひさしは2010年4月に亡くなっています。
医者の見習いから転じて今は滑稽本の作者、といってもまだ小品を一作出しただけという新米の若い戯作者、中村信次郎が語り手となり江戸時代に女たちが不幸な結婚から逃れるための「駆け込み寺」であった鎌倉の東慶寺に駆け込む強き?女たちが描かれています。 語り手信次郎は、東慶寺の門前に建つ御用宿「柏屋」の居候で、救いを求めて寺に身を寄せる女たちの言い分を聴き取り書き残す仕事を手伝っていて、時には医者の役目も果たしています。 物語の中の女たちは、ただ虐げられるばかりではなく怒り、抵抗し、許し、受け入れる姿も見せます。 話は逸れますが、今NHKの朝ドラ「虎に翼」で見る女性の扱いの方が最悪😠と感じます。 明治維新以降こんな状況になった気がしていて、今も決して恵まれた状況とは言い難い気もしますが・・・ 色々がんじがらめに締め付けられて、生きにくく、不自由で、コミュニケーションが取りにくい時代になって来ている気がします。 本を読む限り、人々の知恵としたたかさで女たちは守られていたと受け取れます。