父の行動スイッチ

歩行器を車に乗せて産直市に行った翌日
朝起きてぼんやりしている父になんとなく
散歩に行ったら と声をかけた

しばらくしておもむろにヨロヨロと玄関に移動する父
聞くと
散歩に行く という

そこで靴を履いてもらい
歩行器の登場
玄関先から歩行器に手をかけ一歩一歩歩き出した

以前は随分と遠くまで歩いていたが
今回の脳梗塞発症後は、隣の通りをぐるりと回ることも
難しくなり
最近では、外に出たものの
お向かいの家まで数メートル道を横断するのが精一杯となっていた

幸い団地内はいつも居住者の車しか入ってこない
静かで交通量がとっても少ない場所
歩行器を押して歩く父の後ろ姿を見送った

しばらくして最短距離の道のりだけど
無事散歩を終えて帰ってきた父
良いパートナーを得て、歩けた

その日の夕方、父にお風呂に入ってもらった
デイサービスでも訪問看護師さんも
ここのところシャワーばかりで湯船に入っていないと聞いていたので
風呂に入ろうか と聞くと 入りたいという

石鹸をつけたタオルを両手で持ち
背中に回して擦っている
動かしにくい右手も上手に仕事をしていた

風呂は気持ちいい
と言いながら身体を洗う父

自分の意思が働くことが何よりも行動を変え
予期せぬリハビリとなっている

気持ち汲むこと
その人の持っている力を引き出すこと
それが行動のスイッチになる