ma vie quotidienne

フランス語で「私の日常生活」。
ささやかながらも大切な日常の記録です。

仏検二次試験体験記 本番編

2011-08-11 13:48:42 | フランス語
(前の記事「準備時間編」の続きです)


試験官は男性ふたりでした。ネイティブの試験官と日本人(らしき)試験官。質問をしてきたのは終始ネイティブの試験官でした。

最初に「自己紹介をしてください」と言われたので、名前以外のことも言わないといけないのかと思いきや、名前に続けて自己紹介しようとしたら止められました。名前だけでよかったみたい。

その後A・Bどちらのテーマを選んだのか確認され、「では3分間であなたの考えを述べてください。Je vous écoute !」と言われ、試験スタート。

以下、「 」内の発言内容は、だいたいこのような感じのことを言ったということです。再現の忠実性は怪しいです。


「3月11日に起きた未曽有の大地震と津波、そしてそれが原因で発生した原発事故は、日本のみならず世界中で大きな議論、特に原発についての議論を巻き起こしました。初めに日本の原発に関する地震以前の状況を、それから地震以後の状況をお話ししようと思います」

「1960年以降、日本では原発の建設が推進されました。原子力エネルギーが他のエネルギーに比べてコストの面で優れていること、またCo2を排出しないために地球温暖化対策として有用であることがその理由です。原子力エネルギーは安心・安全なエネルギーだと言われてきました」

「しかし3月11日の地震によってその状況は一変しました。原発事故が発生し、福島の人々は居住地からの避難を強いられました。原発が安心・安全だというのは神話でしかないことを私たちは知ったのです」

ここまでは前日の対策講座で模擬発表した内容から転用できたので、比較的スムーズに話すことができました。この後結論部へ。ほとんどアドリブ状態だったのでどのように話を展開したのか記憶があまりないのですが、時間はかかっても原発への依存から抜けだすよう努力しなければいけない、というようなことを言って締めくくりました。


発表が終わって最初に言われたのが「Bien ! あなたはちゃんと3分間で発表してくれましたね」。対策講座の先生も発表時間が3分を超えないようにとかなり強調しておられました。発表時間を長めにして質疑応答の時間を減らそう!というのは誰しも考える(私だけか?)作戦だと思うのですが、発表時間を守ることは私が考えていたよりも重要なことなのかもしれません。

そして質疑応答へ。私が話した内容についていくつか質問がありました。まずは「あなたが話してくれた脱原発のことは、ちょうど菅直人が言っていましたね。できると思いますか?」というもの。私は「はい、できると思います。ただし、先日の首相の発言は、どのように実現するかまで考慮されたものではないと思います。どうやって実現するのか、これから私たちは懸命に考えていかなければいけません」のような返答をしました。あとの質問はよく憶えていないのですが、節電のためにどのようなことに気を付けているか聞かれて、テレビをあまり長時間見ないようにしていると答えたような気がします。


問題はここから。試験官に「本来のテーマからだいぶ離れてしまいましたね。話を元に戻しましょう」と言われてしまいました。本来のテーマから離れたつもりのない私がぽかんとしていると、質問用紙を見せるよう言われ、私の選んだテーマを確認されました。ああ私は余程とんちんかんな発表をしたんだな、と思いましたが、この時点でも自分が選んだ質問文の本来の意味がわかっていなかった私には、そのまま突っ走ることしかできません。

その後「あなたの言いたいことはわかったが、《sagesse》についてはどう思うんだ」と何度も聞かれ、私は「原発の危険性を認識したのが《sagesse》だ」で貫きました。さらに試験官は聞き方を変えて「あなたは日本人はsageだと思いますか?あるいはtrop sageと言うべきかもしれませんが」とたずねてきました。この質問で私は「《sagesse》というのは、地震直後に食糧などを必要以上に買い溜めたり、政府が安全だと言っているにも関わらず原発近辺の県で採れた野菜を敬遠したりする日本人の行動を皮肉った言葉なのかな」と思いました。それでも私は「確かに今の日本人はun peu trop sageかもしれません。しかし数年後どうなっているかはわかりません。私たちは常にこの問題に対して注意深くいなければいけないと思います」というなんとも意味不明な返答しかできませんでした。

そんな私の返答に対し「わかりました。それがあなたの結論ですね」と試験官に気のせいか諦めムードを漂わせながら言われたところで、ドアをノックする音がして試験終了。ちぐはぐとしか言いようがない9分間でした。

無理やりよかったことを探すと、まずは沈黙はしなかったこと。そして最初の発表は直前の対策講座で教わったとおり構成立ててでできたこと。頭が真っ白になって何も話せなくなることがいちばん怖かったので、これだけでも収穫と言えば収穫です。


会場を後にする前に、同じテーマを選んだという受験者の方からこの質問の意味を教えてもらうことができました。「3月11日の災害によって日本人の『賢明さ』が明らかになったと外国人は言っているが、あなたもそう思うか」。私以外の大多数の人にとってはもしかしたら書くまでもないことなのかもしれませんが、あのような大災害の直後でも礼儀を失わなかった日本人の国民性が海外で話題になったことを言っていたのだそうです。

日本人の国民性が海外で大きく評価されたという報道、何度も読みました。帰宅困難者が溢れる駅かどこかの階段で、それでも皆、通行人が通るスペースを空けて腰かけている写真も見ました。それなのに質問を読んだときにまったく思いつくことができませんでした。

知っているのに必要な時にその知識が引き出せない。これはフランス語以前の問題だと思うのですがどう対処すればよいのでしょうね。もっと問題意識をもって報道に接していれば思いつくことができたのでしょうか。あるいは、この報道をフランス語の記事で読んでいれば、そこでも《sagesse》がカッコつきで使われていたのかもしれません。


とにかく、私の二次試験はこのような感じで終わりました。こんな変な体験記ですが、これから二次試験を受ける方の参考になれば幸いです。

それにしても、今後sagesseという語を目にするたびに私は今回の試験のことを思い出すのかな。

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