Dark matter, Hawking radiation, black holes,

Approaching the Identity of Dark Matter

その5・素粒子物理学の展望:日本の2

2024-05-09 | 日記

『Dark Matter in the Universe¶
宇宙のエネルギー密度の約25%を占める暗黒物質の正体は未だ不明である。Weakly Interacting Massive Particle(WIMP)と呼ばれる粒子が長年有力と目されてきたが、加速器実験直接探査実験・間接探査実験のいずれでもその証拠となる事象はまだ得られていない

WIMPに許されるパラメータ領域が確実に狭められていく中で、WIMP以外の暗黒物質探査の動きも活発化しつつあるが、そのモデル空間は広大である。

本講演では宇宙での暗黒物質の姿とその位置付けに焦点を当て、特に今後包括的な描像を確立していくための鍵となりうる暗黒物質ハローの物理とその周辺について説明する。関連研究の動向についても紹介予定である。

Speaker: 広島 渚 (富山大): https://conference-indico.kek.jp/event/236/contributions/4342/attachments/3260/4454/IPNS-WS_20231221-nhirosima.pdf :』

『Candidates
- Weakly Interacting Massive Particle (WIMP)
- Strongly/self- interacting massive particle (SIMP)
- sterile neutrinos
- axion and/or axion-like particle (ALP)
- primordial black hole (PBH)…
mass range: 10−22 eV ≲ m ≲ 105M⊙』

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『暗黒物質直接探索の現状と展望¶
暗黒物質の存在は、宇宙の進化や天体の観測により疑いがなく、宇宙背景放射の観測結果によると宇宙の物質の80%以上を占めることが判明しているが、その性質は現在も未知のままである。

暗黒物質の有力な候補としてこれまで精力的に探索されてきたのが、WIMPと呼ばれる質量が重く、非常に弱い相互作用を持つ素粒子である。このWIMPの有力な探索手法として、WIMPが検出器中の原子核を跳ね飛ばす現象を探索する直接探索と呼ばれる方法があり、2021年より液体キセノンを約10トン用いたXENONnT/LZの二つの実験が稼働を始め、太陽・大気ニュ ートリノのコヒーレント散乱の観測に遂に手が届く感度に迫ろうとしている。

本講演では暗黒物質直接探索の今と未来について紹介するとともに、液体キセノン検出器が今後開拓する様々な物理について議論を行う。

Speaker: 風間 慎吾 (名古屋大): https://conference-indico.kek.jp/event/236/contributions/4345/attachments/3263/4460/Direct_DM_Detection_Kazama.pdf :』

『候補: 10-55 gから1040 gと100桁近くの幅広い領域が許されている
• 個人的な興味: Thermal Dark Matter with Weak Charge (Weak-Charged WIMP)

・暗黒物質の”直接探索”と言った場合は、GeV - TeV質量のWIMPをターゲットにしている場合がほとんど (今回も)

• 弾性散乱により反跳された原子核の痕跡を捉える: ただし反応は極稀
• 反跳エネルギー: < O(10) keV
• ガンマ線・ベータ線・中性子などの放射線が背景事象
→ “低閾値” + ”大質量” + “低BG” が重要

液体キセノン検出器ー-> 電離 光

•重いWIMP探索( > 5 GeV)で独壇場
•現在三つのG2実験(XENONnT, LZ, PandaX-4T)が観測中
•XENONnT/LZ共に1トン・年の初期データを用いた解析結果を最近報告
•軽いWIMP (0.1 - 5 GeV)もミグダル効果を用いることで世界最高感度を達成
•大型化・低BG化が感度向上の伴

極低温検出器ー->熱(フォノン)

•低質量(0.1 - 10 GeV)で強い
•ターゲット質量は少ない(O(1-100)g)が、閾値が低い (< O(1) eV)
•CRESST(CaWO4), (Super)CDMS(Ge, Si), CDEX(Ge)など
•量子センサー開発と相性が良い

2020年代後半には

• XENONnT・LZ共に統計20倍近く貯め、感度を10倍弱向上
• Minimal DMモデルは完全に棄却できる
• ウィーノDMは1 TeVまで棄却可能

将来計画: DARWIN & XLZD 

• XLZD: XENONnT, LZ & DARWIN実験からなる新たなコンソーシアム
• 検出器: 二相式液体キセノンTPC (直径・高さ: 3m)
• 検出器サイズ: キセノンガスの入手状況に応じて段階的にスケールアップ
(例: 40→60 or 80トン)
• 統計量: まず200トン・年 → 究極的には1000トン・年
• 実験開始: 2030年前半
• 場所の候補: 未定
• 既存の穴が使える: Kamioka(日), LNGS(伊), SNOLAB(加)
• 新しく穴を掘る必要あり: Boulby(英), SURF(米)

XLZD実験の目標感度(WIMP)

• 3 TeV ウィーノは完全に棄却可能
•電弱相互作用を行う暗黒物質に対して、ほとんどのパターンでカバーできる
•ヒグシーノに対する感度は低い (次のページ)
• O(0.1 - 1) TeVスケールの重い暗黒物質の場合、断面積と質量の決定精度は悪い。最終的にはコライダーが必要(反跳エネルギースペクトルの形が高質量ではほとんど変わらないことに起因)

•TeVスケール暗黒物質の発見感度は最終的には大気ニュートリノのフラックスの精度で決まる(現在20%程度)
•20 → 2%程度に低減できれば、いわゆるNeutrino Floorはおよそ10倍弱変わる(SK/HKなどでの測定に期待)
•感度は打ち止めではなく、統計が貯まればまた緩やかに改善していく (Neutrino Floor → “Neutrino Fog”)
•それでもヒグシーノは厳しい

まとめ:現在

•10トン級の液体キセノンを用いたG2実験(XENONnT, LZ, PandaX-4T)が稼働開始
•今後4-5年程度で統計量を10倍以上向上
•Minimal DMモデルは完全に棄却可能。ウィーノDMモデルは1TeVまで棄却可能

未来:

•G3実験の成功には、より低放射な能検出器の開発と同時に”安定"な電極の実現が伴
•P5は少なくとも1つのG3実験をサポート(2030年前半開始目標)。キセノン実験は最終的に80トン級の検出器の実現を目指す。
•ウィーノDMモデルは3TeVまで棄却可能。その他の電弱相互作用を行う暗黒物質も多くをカバー
•ニュートリノを伴わない二重ベータ崩壊においても世界最高感度を狙う
•発見後はその性質の詳細解明に向けて新たなコライダーが必要。密度分布や速度分布の精度向上も不可欠』

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『波動的な性質を持つ軽いダークマターの探索実験の現状と展望¶
今まで、素粒子実験におけるダークマターといえば、粒子的な描像を持つ Weakly Interacting Massive Particle (WIMP) が活発に探索されてきたが、まだその証拠が得られていないことから、様々なモデルのダークマター候補が探索されるようになってきている。

その中でも、特に活発に探索されているのが、アクシオンやダークフォトンといった波動的な性質を持つ eV 以下の軽いダークマターである。本講演では、わたしが行なっている DOSUE-RR (Dark-photon dark-matter Observing System for Un-Explored Radio-Range) の話をベースに、昨今行われているアンテナを利用したダークマター探索の現状と展望を話す。

Speaker: 安達 俊介 (京都大): https://conference-indico.kek.jp/event/236/contributions/4356/attachments/3275/4473/2023.12.23_%E7%B4%A0%E7%B2%92%E5%AD%90%E7%89%A9%E7%90%86%E5%AD%A6%E3%81%AE%E4%BB%8A%E3%81%A8%E6%9C%AA%E6%9D%A5_%E5%AE%89%E9%81%94.pdf :』

『波動的な性質を持つ軽いダークマターの探索実験の現状と展望

1.波動的ダークマター
2. ダークマターの光への転換方法
3. Dish antenna 探索方法
4. 実験の紹介
5. DOSUE-RR の展望

我々はダークマターの中を通過している

• エネルギー密度 ρDM ∼ 0.4 GeV/cm3
• 速さ vDM ∼ 220 km/s

どうにか検出してその性質を知りたい
• 質量
• 標準理論粒子との結合定数

超軽量ダークマター (DM)

WIMP“粒子的“ DM
~30年探索されてきた最有力候補
現在もこれといった兆候なし
→ より広い範囲に目をむける風潮 !?

“超軽量” DM  ドブロイ波長 λ ≳ 1 m λ  (“粒子的“ DM WIMP  λ de Broglie≲ 10−12m
 • 長いコヒーレンス性
• 波としての特徴を持つ
“波動的“ DM   対応周波数 で0.24—240 GHz

• 素粒子実験的には馴染みのないミリ波の領域
• 回折する
• 機器の入手性

もし光に転換できれば分光 (FFT) して周波数スペクトルとして測定すれば
広い周波数領域[=質量領域] を一気に探索可能

超軽量ダークマター候補
ダークフォトン
: SMの電磁場
: ダークフォトン場
•新しい U(1) 対称性の導入
•光との kinematic mixing:
• High-scale inflation model や超弦理論のモデルで予言

アクシオン or Axion-like particle (ALP)
• 電場と磁場との3点結合:
• アクシオン: 強いCP問題を解決 →
• ALP: 超弦理論のモデルで予言

光との相互作用項: gaγγ

ダークフォトンの光への転換

アクシオンの場合』

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PS:速報:1兆分の1ミリの世界を観察、米国の大型加速器「EIC」建設に日本参加へ

『最新鋭の加速器「EIC」は円形(全周約3・8キロ・メートル)の実験装置で、ニューヨーク州にある米エネルギー省傘下のブルックヘブン国立研究所(BNL)が新設する。研究所地下にある既存の加速器を入れ替え、26年の着工、32年の稼働を目指す。

 EICは、電子と原子核を高速で衝突させる。それにより、原子核内部の陽子が複数の粒子に分解する様子を観察。1兆分の1ミリしかない極微の世界の挙動を超高精度な顕微鏡のように分析できる。粒子の振る舞いから物質とエネルギーの関係性も把握できる。

 EICがあれば、いかに宇宙で物質が誕生したのかの解明など、基礎科学の飛躍的な発展につながる可能性がある。極微の世界を支配する物理法則「量子力学」の研究が深まれば、量子コンピューターの開発や、核融合エネルギーを生む仕組みの解明なども進み、先端技術の実用化に貢献できる。

 理化学研究所は1997年からBNLに研究拠点を設けるなど、長年の協力関係にある。

米エネルギー省は今年2月、日本側に協力を要請した。

文科省は、15日の有識者会議で、計画に参加する方針を表明する見通しだ。


 EICの建設費は推定17億~28億ドル(約2700億~約4400億円)で、日本は実験データの測定に使う検出器などの開発を担当。

関係者によると、開発費は少なくとも45億円程度かかる見込みだ。

文科省はまず、来年度当初予算の概算要求に数億円を計上する。』5/15(水) 

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現代物理学の展望 記事一覧

https://archive.md/xj9ds

 

 


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