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愉しむ漢詩

漢詩をあるテーマ、例えば、”お酒”で切って読んでいく。又は作るのに挑戦する。”愉しむ漢詩”を目指します。

閑話休題 462  得此失彼、天不予两

2025-03-31 09:09:58 | 漢詩を読む

 “西行シリーズ”はちょっと一服、休憩。「得此失彼、天不予两」<此(コレ)を得らば、彼(アレ)を失う、天は両(ニブツ)を予(アタエ)ず> という趣旨の自作漢詩を紹介します。日常、経験する事柄ですが、ある事柄を充足させると、別の面で不足を来すことに繫がり、バランスをとることの難しさに直面します。

  筆者の居住する地区は、日本で高度経済成長が為された70年代、山の斜面で造成された、いわゆる新興住宅地であった。今にして思えば、鹿やイノシシ、また雉(キジ)を含む大小さまざまな野鳥の類、更に毛虫やチョウ類と、季節によって、遠くにまた近くでよく出くわしたものである。

中でも身の周りで小鳥類を見、囀(サエズ)りを聞くのも楽しみの一つであった。一方で、道路に沿った電線に一列に止まった小鳥の下を歩いていて、糞を頭上に頂戴するという実体験もあった。ムクドリであったと思う。

  以上の体験を振り返りつゝ、昨今の状況を詠んだのが掲詩である。環境は整備され、我々・人にとっては、ある面で棲みよい街になった。しかし、別の面、例えば、野鳥の類に目を向ければ、野鳥の生息にとっては、必ずしも好ましい環境変化ではなかったように思える。諸々の事象について考えるなら、ある面で“得“するなら、別の面では”失 “っていることを思い知るのである。

 

漢詩 

oooooooooooooo 

<漢詩> 

  得此失彼               此を得らば彼を失う    [下平声二蕭韻] 

春天駘蕩遠撒薬, 春天 駘蕩(タイトウ)たり 遠くに薬を撒(マ)く音する, 

秋季晴明近剪條。 秋季 晴明(ハレアガ)り 近くで條(エダ)を剪(キ)る音。 

瞭望大街樹姿整, 大街(オオドオリ)を瞭望(リョウボウ)すれば 樹姿は整い、 

樹間無鳥木蕭蕭。 樹間には鳥無く木 蕭蕭(ショウショウ)たり。 

 [註]〇駘蕩:(春の)のどかなさま; 〇薬を撒く:除虫・殺虫剤の撒布; 〇剪條:樹形を整えるための枝の剪定; 〇瞭望:見渡す; 〇蕭蕭:樹木が風にそよぐ形容、風が物寂しい音を立てて吹くさま。

<現代語訳> 

 此を得らば彼を失う 

長閑な春の日 遠くで薬を撒く音が聞こえ、

秋の好天には 樹々の枝の剪定が行われる。

大通りを眺めやると 街路樹は剪定されて美しく整っている、

樹々の間には小鳥はほとんど見えず、囀(サエズ)りがなく寂しい思いである。

<簡体字およびピンイン> 

  得此失彼                 Dé cǐ shī bǐ 

春天骀荡远撒药, Chūntiān dàidàng yuǎn sā yào,     

秋季晴明近剪条。 qiūjì qíngmíng jìn jiǎn tiáo.     

瞭望大街树姿整, Liàowàng dàjiē shù zī zhěng,    

树间无鸟木萧萧。 shù jiān wú niǎo mù xiāoxiāo.    

oooooooooooooo 

 

井中蛙の雑録】 

〇ことわざ“天は二物を与えず”という趣旨の四字成句に「佳人薄命、才子多病」がありますが、この成句は、掲詩の状況を表現するには、適格とは言えそうにない。また、身辺の蔵書中に、相応しく、的確な成句を見出すこと出来なかった。そこで“得此失彼、天不予两” <此(コレ)を得らば、彼(アレ)を失う、天は両(ニブツ)を予(アタエ)ず>と造語して、詩の表題としました。優美な表現とは言えませんが、自然の摂理を言い表しているように思う。

 

 


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