＜特集ワイド＞未曽有の人気！？麻生川柳 ボンボン・漢字・口への字、胸元へ直球勝負
2009年1月15日（木）18:00（毎日ｊｐ）
ラジオは川柳ばやりだが、とりわけ人気なのが麻生太郎首相をネタにした時事川柳だ。政治と川柳。もともと相性はいいのだが、これほど詠まれる首相も珍しい。一体どういうことなのか。選者を務めているＴＢＳとＭＢＳのラジオの時事川柳コーナーに寄せられた句をもとに、「麻生ネタ川柳」（以下、麻生川柳）の人気ぶりを探ってみた。【専門編集委員・近藤勝重】
時事川柳を楽しんでいる人は政治への関心が高い。川柳は「おかしみ」「軽み」とともに「うがち」といって物事の本質を突く文芸だから、ここという政治の局面ではしっかりひねる。その点では首相はみな「うがち」の対象となるわけだが、麻生首相の詠まれ方は１０年以上東西のラジオ番組で時事川柳にかかわってきた者としてもびっくりの現象だ。
ＭＢＳラジオの「ニュースレーダー 金曜は水野です」では、この人気に昨年末「麻生川柳特集」を組み、昨年９月の首相就任以来の麻生川柳約５０句を一挙紹介した。
ＴＢＳラジオの「荒川強啓デイ・キャッチ！」でもやはり昨年末に「勝ち抜き時事川柳」の秀句を集め「総まとめ！」をやったが、ディレクターも「毎回２００句は寄せられるその半分が麻生ネタです」と驚いている。
なぜ麻生首相なのか。大ざっぱに言って時事川柳は「時の人」と「時の言葉」を皮肉っぽくつなげば格好がつく。麻生首相は与党の「総選挙の顔」として登場したばかりか、「キャラ（キャラクター）が立つ」と定評のある「時の人」の代表である。さらにそのキャラと相まってホテルのバー通いから始まった日々の言動はいろいろな席での失言や放言、妄言も含め、そのつど「時の言葉」を生み出してきた。
ちなみに麻生川柳をキーワードでくくるとこんなぐあいだ。
ボンボン／失言・バカヤロー／イチロー・タロー／ホテルのバー／給付金・消費税／漢字・マンガ／口への字……
その麻生川柳で注目すべきは、かなり直接的な表現だろう。時事川柳はそれとなく皮肉る風刺表現の巧拙が問われるのだが、首相の祖父、吉田茂氏の「バカヤロー解散」の「バカヤロー」が首相の漢字の読み違いと反応して表現のストレート性を強めた印象だ。ネタによっては今や「うがつ」どころか、胸元を「えぐる」直球の紙つぶてと化しつつある。
ところで首相と時事川柳と言えば、小泉純一郎氏や亡くなった小渕恵三氏を思い出す。
小泉氏は首相当時、自民党代議士の奥さんを集めての席で「家事育児冠婚葬祭寝る間なし」の句を披露したことがある。ＴＢＳラジオの時事川柳もご一緒したが、「ほー、そう来るか」などと川柳への反応もよく、本紙の「万能川柳」もよく読んでいた。首相当時の高い人気も川柳に込められた人々の心を読み取っていた結果でもあろうか。
小渕氏は「新聞の川柳欄には庶民の心情が出ている」と遊説でも川柳をしばしば使っていた。「不人気に慣れ切っている新総理」などと自虐ネタを披露しつつ、「川柳欄見ている総理に望みあり」などとやり、最後は「やるじゃないまだまだやってよ小渕さん」と締めくくるのだった。
時事川柳は世相の変化に伴い消えていくはかない文芸である。しかし、麻生政権は民意の信任を問わないままだから、ネタの持続性は抜群である。解散を願う川柳人なら、句づくりにもより一層のパワーを込めてくるだろう。
一方で麻生川柳は、民主党の小沢一郎代表との対比でも投句数を激増させていて、今後、対立が深まれば深まるほど表現も先鋭化しそうだ。ＴＢＳラジオの荒川強啓キャスターも「チクリと皮肉るというレベルを超えた作品がもっと多くなるでしょうね」と話している。
時事川柳本来のアイロニーのきいた、かつ作柄もいい句であってほしいと願うのはやまやまだが、ただこれも麻生首相のありようとかかわる。ここはまず首相にちゃんとしてくださいよ、とお願いするほかはない。
新年の書き初めの披露など、風流で好ましく思えた。しかしこれもまた「書き初めで今年も恥のカキ初（はじ）め」（ＴＢＳ）「書き初めで間違い初めの麻生さん」（ＭＢＳ）などとしっかりネタになっていた。
渡辺喜美元行革担当相の離党も尾を引くのは必至だし、麻生首相、まだまだ時事川柳の世界を席巻しそうである。
【ボンボン】
ボンボンがバトンを繋ぐ総理の座（９・５＝ＭＢＳ）
大臣は？あぁあの人の息子さん？（９・２６＝ＭＢＳ）
気になるな浮世離れの感覚が（１０・３１＝ＭＢＳ）
【失言・バカヤロー】
失言が政策よりも期待され（９・２４＝ＴＢＳ）
ばかやろーすぐには解散するものか（１０・８＝ＴＢＳ）
バカヤロー祖父は言ったが孫言われ（１２・１０＝ＴＢＳ）
【イチロー・タロー】
イチローとタローの難局物語（１０・３＝ＭＢＳ）
策を練るベッド一郎バー太郎（１０・２４＝ＭＢＳ）
【ホテルのバー】
はしご酒多忙で解散どころじゃない（１０・２２＝ＴＢＳ）
ホテルのバー時はゆっくり過ぎて行く（１１・２１＝ＭＢＳ）
【給付金・消費税】
くれるならもらってやるけど入れないよ（１１・５＝ＴＢＳ）
三年後あんたやってるつもりかい（１２・１７＝ＴＢＳ）
【漢字・マンガ】
読み違い漢字だけかな麻生さん（１１・１４＝ＭＢＳ）
解散をすれば読めるよジャンプまで（１０・２９＝ＴＢＳ）
読み違い漢字だけかな麻生さん（１１・１４＝ＭＢＳ
支持率は前の二人を踏襲（ふしゅう）する（１１・１９＝ＴＢＳ）
ふり仮名が無くても読めよこの空気（１２・１９＝ＭＢＳ）
【口ヘの字】
口曲げて日程曲げてへそ曲げて（１０・２２＝ＴＢＳ）
国民の方もなってる口への字（１２・５＝ＭＢＳ）
【ハローワーク視察】
職くれず総理の説教聴く不運（１２・２４＝ＴＢＳ）
あなたこそ何をしたいかわからない（１２・２４
※掲出句はＴＢＳ「荒川強啓デイ・キャッチ！」、ＭＢＳ「ニュースレーダー 金曜は水野です」で放送された作品から選出しました。日付は昨年の放送日。作者名は省略させていただきました。（毎日JP）
宜しくお願いします。
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2009年1月15日（木）18:00（毎日ｊｐ）
ラジオは川柳ばやりだが、とりわけ人気なのが麻生太郎首相をネタにした時事川柳だ。政治と川柳。もともと相性はいいのだが、これほど詠まれる首相も珍しい。一体どういうことなのか。選者を務めているＴＢＳとＭＢＳのラジオの時事川柳コーナーに寄せられた句をもとに、「麻生ネタ川柳」（以下、麻生川柳）の人気ぶりを探ってみた。【専門編集委員・近藤勝重】
時事川柳を楽しんでいる人は政治への関心が高い。川柳は「おかしみ」「軽み」とともに「うがち」といって物事の本質を突く文芸だから、ここという政治の局面ではしっかりひねる。その点では首相はみな「うがち」の対象となるわけだが、麻生首相の詠まれ方は１０年以上東西のラジオ番組で時事川柳にかかわってきた者としてもびっくりの現象だ。
ＭＢＳラジオの「ニュースレーダー 金曜は水野です」では、この人気に昨年末「麻生川柳特集」を組み、昨年９月の首相就任以来の麻生川柳約５０句を一挙紹介した。
ＴＢＳラジオの「荒川強啓デイ・キャッチ！」でもやはり昨年末に「勝ち抜き時事川柳」の秀句を集め「総まとめ！」をやったが、ディレクターも「毎回２００句は寄せられるその半分が麻生ネタです」と驚いている。
なぜ麻生首相なのか。大ざっぱに言って時事川柳は「時の人」と「時の言葉」を皮肉っぽくつなげば格好がつく。麻生首相は与党の「総選挙の顔」として登場したばかりか、「キャラ（キャラクター）が立つ」と定評のある「時の人」の代表である。さらにそのキャラと相まってホテルのバー通いから始まった日々の言動はいろいろな席での失言や放言、妄言も含め、そのつど「時の言葉」を生み出してきた。
ちなみに麻生川柳をキーワードでくくるとこんなぐあいだ。
ボンボン／失言・バカヤロー／イチロー・タロー／ホテルのバー／給付金・消費税／漢字・マンガ／口への字……
その麻生川柳で注目すべきは、かなり直接的な表現だろう。時事川柳はそれとなく皮肉る風刺表現の巧拙が問われるのだが、首相の祖父、吉田茂氏の「バカヤロー解散」の「バカヤロー」が首相の漢字の読み違いと反応して表現のストレート性を強めた印象だ。ネタによっては今や「うがつ」どころか、胸元を「えぐる」直球の紙つぶてと化しつつある。
ところで首相と時事川柳と言えば、小泉純一郎氏や亡くなった小渕恵三氏を思い出す。
小泉氏は首相当時、自民党代議士の奥さんを集めての席で「家事育児冠婚葬祭寝る間なし」の句を披露したことがある。ＴＢＳラジオの時事川柳もご一緒したが、「ほー、そう来るか」などと川柳への反応もよく、本紙の「万能川柳」もよく読んでいた。首相当時の高い人気も川柳に込められた人々の心を読み取っていた結果でもあろうか。
小渕氏は「新聞の川柳欄には庶民の心情が出ている」と遊説でも川柳をしばしば使っていた。「不人気に慣れ切っている新総理」などと自虐ネタを披露しつつ、「川柳欄見ている総理に望みあり」などとやり、最後は「やるじゃないまだまだやってよ小渕さん」と締めくくるのだった。
時事川柳は世相の変化に伴い消えていくはかない文芸である。しかし、麻生政権は民意の信任を問わないままだから、ネタの持続性は抜群である。解散を願う川柳人なら、句づくりにもより一層のパワーを込めてくるだろう。
一方で麻生川柳は、民主党の小沢一郎代表との対比でも投句数を激増させていて、今後、対立が深まれば深まるほど表現も先鋭化しそうだ。ＴＢＳラジオの荒川強啓キャスターも「チクリと皮肉るというレベルを超えた作品がもっと多くなるでしょうね」と話している。
時事川柳本来のアイロニーのきいた、かつ作柄もいい句であってほしいと願うのはやまやまだが、ただこれも麻生首相のありようとかかわる。ここはまず首相にちゃんとしてくださいよ、とお願いするほかはない。
新年の書き初めの披露など、風流で好ましく思えた。しかしこれもまた「書き初めで今年も恥のカキ初（はじ）め」（ＴＢＳ）「書き初めで間違い初めの麻生さん」（ＭＢＳ）などとしっかりネタになっていた。
渡辺喜美元行革担当相の離党も尾を引くのは必至だし、麻生首相、まだまだ時事川柳の世界を席巻しそうである。
【ボンボン】
ボンボンがバトンを繋ぐ総理の座（９・５＝ＭＢＳ）
大臣は？あぁあの人の息子さん？（９・２６＝ＭＢＳ）
気になるな浮世離れの感覚が（１０・３１＝ＭＢＳ）
【失言・バカヤロー】
失言が政策よりも期待され（９・２４＝ＴＢＳ）
ばかやろーすぐには解散するものか（１０・８＝ＴＢＳ）
バカヤロー祖父は言ったが孫言われ（１２・１０＝ＴＢＳ）
【イチロー・タロー】
イチローとタローの難局物語（１０・３＝ＭＢＳ）
策を練るベッド一郎バー太郎（１０・２４＝ＭＢＳ）
【ホテルのバー】
はしご酒多忙で解散どころじゃない（１０・２２＝ＴＢＳ）
ホテルのバー時はゆっくり過ぎて行く（１１・２１＝ＭＢＳ）
【給付金・消費税】
くれるならもらってやるけど入れないよ（１１・５＝ＴＢＳ）
三年後あんたやってるつもりかい（１２・１７＝ＴＢＳ）
【漢字・マンガ】
読み違い漢字だけかな麻生さん（１１・１４＝ＭＢＳ）
解散をすれば読めるよジャンプまで（１０・２９＝ＴＢＳ）
読み違い漢字だけかな麻生さん（１１・１４＝ＭＢＳ
支持率は前の二人を踏襲（ふしゅう）する（１１・１９＝ＴＢＳ）
ふり仮名が無くても読めよこの空気（１２・１９＝ＭＢＳ）
【口ヘの字】
口曲げて日程曲げてへそ曲げて（１０・２２＝ＴＢＳ）
国民の方もなってる口への字（１２・５＝ＭＢＳ）
【ハローワーク視察】
職くれず総理の説教聴く不運（１２・２４＝ＴＢＳ）
あなたこそ何をしたいかわからない（１２・２４
※掲出句はＴＢＳ「荒川強啓デイ・キャッチ！」、ＭＢＳ「ニュースレーダー 金曜は水野です」で放送された作品から選出しました。日付は昨年の放送日。作者名は省略させていただきました。（毎日JP）
宜しくお願いします。
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