いま大村博美さんの椿姫二期会公演(東京文化会館)を観ての帰り。
昨秋トッパンホールでリサイタルを聴いてすっかり大村さんに魅了されてしまったのですが。
今夜もこんなに泣かされるとは。
幕が開き登場したヴィオレッタは娼婦とは程遠くロイヤルファミリーのように気品に溢れ輝いて目が離せず。
アルフレッドへの想いを歌いあげたあと、ジェルモンが登場するあたりから、どんどん物語に引き込まれ。
私を娘のように抱いて勇気を与えて、というヴィオレッタに目頭が熱くなり。
別離があり、夜会での再会。ジェルモンも現れての三人三様の想いを歌う重唱でドラマは最高潮に。
最終章、死の近づいたヴィオレッタのもとにアルフレッドが戻っての、パリを離れて。
涙せずにいられない。
そしてもっと生きたいと命の火を燃やした瞬間に、その命が失われてしまう不条理。
涙がしばらく溢れていました。
大村さんの悲しみをたたえた低音や、高らかにアップテンポで喜びを歌い上げるところ、歓喜の最高音、などなどは、様々な感情を声で表現している。
そして歌以上に芝居が素晴らしく。今日の様々な場面での喜怒哀楽の表現。優雅な身のこなし。豊かな表情。
なんと切なく、美しいヴィオレッタだったろう。
チケットを買った時点ではアルフレッドが誰かも確認しなかったけど、城宏憲さんは大好きなテナーの1人でリゴレット、椿姫を観ていて今回のオペラが3度目。
二期会公演で大村さんとの共演だからいっそう気合いが入っていたのでしょう。序盤から素晴らしい声が響き渡っていました。
素晴らしいテノール。もっと世界に羽ばたいてほしい!
そしてノーマークだったジェルモンの今井俊輔さんが良かった。力あります。プロバンスに帰って来い、では大きなブラボーが。ぼくもしました。
指揮者のジャコモ・サグリパンティは欧州の主要歌劇場で振っていてMETのデビューも決まったとのこと。
東京都交響楽団を率いての演奏はドラマチックで、かつ繊細で美しい部分が印象的でした。
二期会合唱団、ダンサーのみなさんもよかった。
本当に美しい、心に残る椿姫でした。