Green Mind

音楽の感想や日記なんかをね

Beth Orton / Comfort Of Strangers

2006年02月27日 | 1980年以降ロック (英)
ライアン・アダムスと共演経験もあるイギリス人シンガーソングライターの新作。彼女の作品を聞くのは今回が初めてだけど、ライアンと共演経験ありってことから想像出来る音から大きく外れることは無く、聞くと気分が落ち着くようなフォーキーなアルバムです。声も特別特徴があるわけでもないので、さらっと聞いても良しだけど、じっくり聞くと色々な所でジム・オルークの魔法というべきものが隠れているのにも気付くはずです。ただこれも前情報としてジム・オルークが絡んでるぞ、と言われなければ分からない程度のものなので、大胆な音響操作やエレクトロニカの要素もありません。これは表面上とても静謐でシンプルに聞こえたけど、ライヴ盤を聞いてあれはとても作り込まれていた作品だったんだなぁと実感したWilcoの「A Ghost Is Born」のようでもあります。レコーディングはほとんど3人で行われ、ほぼ一発録りみたいです。そしてこのアルバムでキーマンとなっているのはドラムスのティム・バーンズという人。この人は渚にてやハウリング・ヘックス、ジム・オルークのユリイカ、ウィルコのゴースト・イズ・ボーンでもパーカッションを担当しており、フォーキーな曲中心の中、一発録りという状況もあったんだろうけど、アルバムにしっかりとした流れを作っています。ジム・オルークの弾くベースもかなり貢献しており、かなり強固なリズムが飛び出す「Shopping Trolley」がそういう面でハイライトです。ここまで主役に触れてなかったけど、もちろんベス・オートンも素晴らしい。ライアン・アダムスとの共演曲は聞いたことがないけど、その曲からはきっと「Cold Roses」の匂いはしないはず。資質的には「Love Is Hell」のような暗さや憂いを持っている人で、同時に結構洗練された人だとも感じます。ここら辺がイギリス人ならではのフォークなんだろうな。なんにしてもこのアルバムは彼女としてもターニングポイントにもなりそうな傑作で、僕も何回も何回も聞いてます。あと、思っていたよりも遥かに良かったというのも最後に付け加えておきます。

Mo'some Tonebender / Rockin' Luuula

2006年02月25日 | ポップ日本
当たり前のことなんだけど、ロックから快楽を得るにはやっぱり歌とメロディの力は必須なんだなぁと思いましたよ。去年のシングル3枚の充実ぶりからすると、アルバムが傑作であるのは分かりきったようなものだったけど、これは過去最高の出来なんじゃないかと思います。なにしろ過去最高だけあってソングライティングにもとても力を入れ、どの曲も合唱出来るくらいポップな曲が揃ってます。そしてギターサウンドも以前と比べるとちょっと変化があり、クリアというとちょっと違うかもしれないけどシャープな轟音で、これはエレクトリックギターで得られる快楽をほとんど内包していると言っても大げさじゃないくらい。前作「The Story Of Adventure」はフリーキーな実験作「Trigger Happy」後だけあって、3人でやれる色々なことに挑戦した結果、まとまりという点でイマイチだなぁという感じがしました。けれど「ロッキンルーラ」ではとことん歌とエレクトリックギターにスポットがあてられているので、このまとまりは当然。ライヴバンドである持ち前の爆発力、推進力、テンションが自然に生きてます。そして曲の良さもさることながら、並びや流れも抜群で、徐々に徐々に高揚していく「奇跡の歌」からリプレイスメンツの「Alex Chilton」を真似たようなブリッジがかっこ良すぎる「マッシュポテト・ブギー」までの流れは完璧。「ペチカ」系の心身に温かく広がる「2時間前」と「in the air」の後の、短めの轟音チューン「トカゲ」~「ボルケーノラブ」~「happy icecream」の流れも圧巻で、ダレそうな流れを断ち切り一気に持っていって最後は7分9秒の「ペチカ」ロングバージョンで締めます。最初から最後までエレクトリックギターが大活躍の傑作ですが、なによりタイトルがカッコ良いよねぇ。「Rockin' Luuula」。

Holly Throsby / On Night

2006年02月24日 | 1980年以降ロック (英)
シドニーのシンガーソングライターさんです。Devendra BanhartやJoanna Newsomeと共演したり、Bonnie"Prince"BilleやMark Kozelekともツアー経験ありということでご想像の通りフォークシンガーですが、先に書いたような強烈な歌い手というよりはとてもオーソドックスなタイプで、強烈な個性の代わりに歌に対して非常に誠実な人です。オフィシャルサイトにはレコーディングは共同プロデューサーであるTony Dupeのキッチンで、窓を開け放した状態でされたとあります。屋外録音フォークときいてまず思い浮かぶのはもちろんHeronなわけですが、このアルバムの場合は室内と屋外の中間なのです。確かによく聞いていると鳥の声や風の音が聞こえ、完全な室内録音では得られないような開放感が声の調子などによく現れています。ほの暗いメロディも昼間の日差しや風を浴びて歌えば、少し明るく聞こえるから不思議なものです。そしてこのアルバムはHolly Throsby自身が弾くアコースティックギターと声がメインで、味付け程度にピアノやダブルベースやリズム、曲によってはチェロとトランペットが配置されるといったようにとてもシンプルなアルバムです。曲は薄暗いものが多いのですが、声や歌い方が暗さを助長させるようなものでなく、むしろそれらは曲に薄く光を当てているような印象があります。悲しげではあるけれど痛々しさはなく「On Night」というアルバムタイトルに象徴されるような詩情に富んだ良いフォークアルバムです。ちょっとしたことで売れたり、知られたりしそうな気配がするのはきっとインディー臭さやカルト臭さがないのが一番大きい気がする。

Wilco / Being There

2006年02月22日 | 1980年以降ロック (米)
ウィルコ入魂の2枚組。いつだったかカナダへ旅行へ行ったとき新品1500円という破格の値段で売られていたのを購入。この頃のウィルコはいわゆるオルタナ・カントリーという括りから出ようと必死だった時期で、これは初っぱな6分に及ぶ「Misunderstood」やDisc 2の一曲目「Sunken Treasure」などに象徴的です。「Misunderstood」はPere Ubuの「Amphetamine」の一節を借用しながら、ピアノ主体のバラードの途中途中に爆音ノイズが挟み込まれる、現在の(ネルス・クライン加入後の)ウィルコに繋がるヘヴィーな大作で、最近出たライヴ盤でも一曲目を飾っています。ただウィルコの魅力といえばジェフ・トゥイーディの書くカントリー、ルーツ・ロック、パンク経由の芳醇で芯のブレないソングライティングであって、それは「Yankee Hotel Foxtrot」のような実験的なアルバムを経ても変わっていません。というかジェフがソングライティングに一番重きを置いたのはこの作品じゃないかな。そしてこのアルバムの音作りは前作「A.M.」と「A Ghost Is Born」のいわば中間のような作品で、カントリーロックも、ホーンを導入してゴキゲンなロックンロールチューンあり、激渋のフォークあり、「Summerteeth」で聞けるような可愛らしいポップソングもあり、先に書いたような「Misunderstood」のような曲もあり雑然としたアルバムですが、こんくらいやっていた方が2枚組として出した意義があるってもんです。このアルバムではポストロック系ドラマーであるグレン・コッツェが加入前ということもあって、ラフなロックンロールはひたすらラフといったように、あまりクールというような形容が付き難いドタバタしたドラムスがこのアルバムを味のあるものにしてるのも見逃せません。この良い意味で素人臭いドラムスはコッツェには叩けないでしょ。というわけで今はルーツロック臭があまりしないウィルコですが、ラストを飾る「Dreamer In My Dreams」のようなドシャメシャな衝動もたまには思い出して活動していってほしいものです。

The Strokes / First Impression Of Earth

2006年02月19日 | 1980年以降ロック (米)
まさか、ギター、ベース、ドラム、ヴォーカルというオーソドックスすぎるこの編成でこんなに聞くごとにびっくりさせられるとは思わなかった。これまでファースト、セカンドと気にも留めなかったストロークスをLazy Daysさんで絶賛されているのを見て買ってみたわけですが、これは確かに凄い。滅茶滅茶凝っている。2本のギターの絡みを中心として、ちょっとしたことがちょっとしたことになっておらず、Lazy Daysさんで書いてあることと大分被りますが、「ズレ」まくっている。それでこのアルバムの凄い所は、じっくり聞けば聞くほどここでこのフレーズかよ!と驚きに溢れたツッコミを入れたくなるのにも関わらず、それらが勢いやポップさを殺す仇となっておらずしっかりとポップで聞きやすいって所。なにも複雑な編曲、リズム、曲構成をしなくたって、画期的な音響操作なんかなくなって、アイディア1つでこんなにもロックは刺激的な音になるということで、今書いたような複雑な~ものに耳がいってしまいがちな僕はちょっと反省。そしてそのアイディアを具体化するために主役を買って出たのが、2本のギターです。キーボードで代用してもいいような所もとにかく2本のギターで弾き倒すので、ちょっとしんどそうな部分もあるんですが、フレーズやカッティングがいちいち面白い面白い。この生きたギターの絡みの気持ち良さはリチャード・ロイドとロバート・クワインが共演したマシュー・スウィートの「Girlfriend」でのギターワークにも匹敵すると思ったくらいです。僕としてはThe White Stripesの「Get Me Behind Satan」やWilcoの「A Ghost Is Born」なんかと一緒に5~10年くらい先の評価が楽しみな作品でもあったりするんですが、もちろんこのブログを見てくれている人は何かの縁なのでそんな先の事を気にするより、今すぐ聞いてみて下さい。

Rainmaker

2006年02月17日 | 雑記
大学受かった! ので、一気に気の抜けきった炭酸飲料状態。そして何となく我慢していたDVD鑑賞。向井秀徳のあれも、くるりの「くるくる節」もロス・ロボスやらリチャード・トンプソンなんか色々観たい。


Bun To Shine Chicago IL 09.13.2004

シェラックというバンドのベーシストとフガジのドラマーが中心になって制作されたBurn To Shineの第二弾。古い空家の狭い部屋を利用して、撮影とレコーディングがされており、バンドとの距離がもの凄く近くてカメラワークも生々しい。出演はWilco, Tortoise, Shellac, Pit Er Pat, The Ponys, Tight Phantomz, Lonsome Organist, Red Eyed Legends, Freakwatarとそんなバンドが好きな人にはたまらない内容だと思います。個人的にはネルス・クライン加入後のWilcoの「Muzzle Of Bees」がハイライトで、ネルスの終盤の電気ギターの演奏はぶるぶる震えながら見てました。アコースティックとエレクトリック、静と動の混じり合いはどちらにも偏ることなくかといって中途半端になることもなくギリギリの線で揺れていました。Tortoiseのマッケンタイアのドラムスも、ハードコアバンドで活動していた頃の雰囲気が出ていた様に思います。結局僕は、Wilco, Tortoise, Shellacが飛び抜けていた様に思いますが、Tight Phantomzはギュルッと締まったギター、ドラム、ベースが終盤予測不能な動きを聴かせてくれ好みでした。

Steve Winwood / Soundstage

これはオススメ! メンバーはあの超傑作「About Time」制作メンバーであるJose Netoがギター、キース・ムーンに激似な(顔が)Walfredo Reyesがドラムスを務めており、あとマルチリード奏者Andall Bramlett、にパーカッションでEdson A. DaSilvaという5人編成で「About TIme」でファンになった人も、トラフィックのファンもスティーヴ・ウィンウッド好きなら必見です。「About TIme」の演奏が良いのは当然として、どの時代の曲も緩さと熱の入れ方が上手い。トラフィック時代の「Rainmaker」は昨今のウィンウッドの志向からかオリジナルより随分とワールドミュージック的な匂いが濃厚で、更にいうなら秘境を覗き込んでしまったような感覚。おっさんおばはんが多い会場の緩やかな雰囲気とは対照的にステージだけ異世界。これが本当のロックンロールシチューですよ!と言わんばかりにレスリーは回り、ウィンウッドは相変わらずのヴォーカルを聴かせ、ちょっぴりサイケなギタリストウィンウッドも降臨してと大満足の1枚。

Ryan Adams / 29

2006年02月11日 | 1980年以降ロック (米)
「Cold Roses」と「Jacksonville City Nights」の日本盤、特に「Cold Roses」にはアルバムの余韻をぶったぎるようなボートラが収録されてましたが(曲そのものはとても良い)、「29」ではボートラ一切無し。このアルバムがタイトル通り20代から30代へ進んだデヴィッド・ライアン・アダムスの悲哀に満ちた一種のコンセプトアルバムである、こんなことをユニバーサルの洋楽部門の人が感じてボートラを付けないと決めたのならそれはエラい。それはとにかく滅茶滅茶しみったれている作品なので、じっくり聞くことを要するし、じっくり聞けば聞くほど48分が実りのあるものになる時間になるので、最終曲「Voices」の後は1分くらいはあぁと余韻に浸るのも必要だと思うからです。実際はどうか知らないけど、そんなしょうもないことを想像してしまうほど色が統一されてるってことです。

Grateful Deadの「Truckin'」をまんま頂いたブルーズロック以外は、暗いけど暖いギターに一音一音に主張を込めたような静かで重いピアノにあのライアンの「声」がメイン。そしてそれぞれの曲の長さは3分強から最長で8分近いので、「Love Is Hell」のファンとしてはこういうじっくり聞いているうちに沈むことのできる作品は嬉しいのです。ピアノの弾き語りは当然良いし、さらっと暗いカントリーワルツも良いけどちょっと驚いたのは「The Sadness」で聞けるラテンの音。ただこれも「The sadness is mine」や「Please have mercy let me go」といった一節のイメージからは全く離れずばっちり合っていて「やさぐれライアン」を代表するような曲なので問題なしです。実際は「29」が一番最初に制作されてたらしいけど、2005年3部作の締めには相応しい静かな傑作だと思います。今、流行りというフリーフォーク勢には真っ向から対抗するようなリアルな一人のシンガーソングライターの音楽。

ところでところで、ライアンはノルウェーのピアノジャズバンドIn The Countryに「Heartbreaker」収録の「In My Time Of Need」をカバーされているらしいです。しかもピアノソロで。うーん面白そうだなぁ。

2月10日

2006年02月10日 | 雑記
エルトン・ディーンが死去
もう言葉が出ないです。
まだ60歳なのに。残念。
Soft Mountain(ホッピー神山と吉田達也とヒュー・ホッパーとのコラボ)とかSoft Machine Legacyだとか色々元気に活動してると思ってたんだけどなぁ。
今度出るらしいSoft Mountainは絶対聞きます。どうもありがとう。そしてこれからもずっと聞き続けます。