8月7日に台湾に上陸し、僅か一週間足らずの間に、台風災害としては戦後最悪と言える極めて大きな被害をもたらした「88水災」から、3ヶ月が経過した(降水量が最も多く、被害が激しかったのが8月8日である事から、「8月8日の水災害」という意味で「88水災」と呼ばれている) 。
台湾の中ではもちろん、国際報道で88水災についての話題が出る事はほとんどなくなった。だが、台湾に残された爪あとはあまりにも大きく、今も被災した各地では、物理的・心理的、様々な傷を抱えながら復興に向けた地道な取り組みが続けられている。
被災地の様子や、復興への取り組みなどはこれまで番組でも取り上げてきたが、今回は写真を使って、二回に渡って88水災の実態を紹介する。
一回目の今回は、被災直後の被災現場の実態を取り上げる。舞台は、東部の台東県。
ホテル倒壊映像の流れた卑南郷と、県内で最も被害の大きかった太麻里郷(撮影は全て8月中旬)。
上の写真は、台東県卑南郷・知本渓沿い、知本温泉として知られる一角。崩れているのは、創業30年の「金帥飯店」。例の、世界に流れた衝撃映像の現場だ。
その後ろに見えるホテルは全く被害を受けていないが、これ以来客足がぱったりと遠のいている。まだ開業間もなく、今後の経営が心配されている。
その金帥飯店の隣にある店舗もパタンと倒壊してしまっている
台風が過ぎ、穏やかだった知本渓には、山から流れ出した大量の土砂と流木、そしてわずかな泥水だけが残った
中央に虹色に見えるのは、パイプの破裂により漏れ出したガスと思われる気体
河川の氾濫によりごっそりとえぐり取られた道路
台東県太麻里郷・太麻里渓の河口付近。
周辺の全ては汚泥の広がる荒地に変わり、元々の河川がどこにあったのかも分からない
激しい洪水により寸断された在来線・台湾鉄道の高架線路。
ひしゃげたレールが生々しい(9月15日に復旧)
太麻里渓の中流部分。山中から押し流されてきた流木と巨石が広がる
太麻里渓中流。河川沿いの住宅は無残に倒壊している
太麻里郷山中、土石流が発生した跡。
中央にゆがんで見えるのは寸断された道路(復旧済み)
この地方の名物だった牛肉麺店。
看板はかろうじて残っているが、店舗はいずこに…
馬英九・総統は被害発生から10日後の8月18日、「対応に遅れがあり、順序にも混乱があった」と謝罪。想定を遥かに超える自然災害であり、初めの数日は救出活動が困難な天候だった事も事実だ。
しかし、総統府を含めた政府機関同士での、責任の押し付け合いとも取れる言動や各種の失言は、多くの人々を失望させた。政府は今、失敗を謙虚に認め、復興に全力で取り組んでいる。
今日10日には立法院で、復興のための特別予算が成立した。これから、復興に向けた長い取り組みが始まる。
失われた命は戻らないが、今後もこの教訓を風化させず、台湾が再び力強く立ち上がる事を心から期待すると共に、出来る限りの力を貸して行きたい。(華)
8月18日、総統府で国民に謝罪する馬英九・総統