『Trafficking in Persons Report』とは、米国務省が2001年から毎年発表している、世界の人身売買の実態に関するレポートです。
人身売買、というとなんだか遠い世界のことのようですが、今日の先進諸国でも、不法就労や偽装結婚など、様々な形による人身売買問題は存在しています。
同レポートでは、世界各国・地域の人身売買に関する状況を4つのランクに分類しています。最低ランクとなった国・地域に対しては、支援打ち切りなどの制裁を課すことも可能とされています。
今年のレポートで、中華民国台湾は昨年に引き続き、最高レベルとなるランク1と評価されました。
台湾は、海外からの出稼ぎ労働者を積極的に受け入れており、また仲介業者を通して中国大陸や東南アジアなどのどちらかというと貧しい地域出身の女性が嫁いでくるケースも非常に多いため、ランク1という評価の意義は大変大きいと受け止められています。
レポートでは、まだ問題は残されているものの、被害者保護や法的訴追、人身売買防止策など各種の取り組みが高評価の要因となったと説明されています。
ちなみに、日本は同報告では例年、ランク2に分類されています。偽装結婚や、法定賃金以下で雇用される外国人研修生への問題に対する取り組みがあまり積極的ではないとみなされているようです。
そうした問題が社会一般の表面にはあまり見えてこない日本と異なり、台湾の場合はそうした問題がより見えやすい状況にある事が、台湾の問題意識を高めているのかも知れません。
台湾は、以前はランク1に分類されていた時期もありましたが、2005年にランク2に悪化、2006年には、下から二番目にまで評価を落としていました。
馬英九政権は現在、あらゆる側面からの人権保護に力を入れており、今年1月には、総統府直属となる人権諮問委員会が発足しています。
台湾がこれからも、アジアにおける人権保護の模範であり続けるよう、期待したいところです。(華)