
話題の342号線は、標高1627mの須川岳(栗駒山)
を登攀するめずらしい国道である。
九十九折りの難所を持ち、紅葉の景観は言語道断の絶景であると、
たいていのことに驚かない人々も、口をそろえて賞賛する。
須川岳を撮り続けた某写真家の作品を、
ジャズを聴きながら眺めるとき、耳と目からすばらしい。
長老写真家の脳裡には、年期の入った須川岳秘図が完成されて、
草花の群棲地を熟知し、季節と光の暦を心得ていること、
余人の及ぶところではない。
大自然への憧れが、技巧を越えて作品にある。
しかし、時代は高山植物保護の監視が厳しくなって、
カメラのリュックを背負って藪を分け入っていると、
なにかと不都合な視線に撮影を止めてしまったのであろうか。
「ハッセルブラッドが欲しい」
と話さなくなったのが惜しまれる。
オーディオも、『マランツ#7』や『是枝アンプ』と、
呪文を言わなくなったらどうか。
342号線は、道程のすべてがはじめから舗装されていたわけではなく、
祭畤の手前の一か所だけ、ブナやシラカバの森林を300Mほどぶち抜いて、
直線の滑走路状に造られたらしい。
どこに滑走するのか両側高く森林の枝の延びた森のトンネルが、
342号線のなかで一番スポットといわれている。
天気の良い日、ここまで車を飛ばしてラジオのジャズを聴きながら、
弁当を賞味するのも秋の行楽だ。
ちなみにモーツァルトのK342は、オッフェルトリウム
「声を張り上げて賛美せよ」 。
2008.9/20