
テレビで、フィレンツェのニュースを見た。
そういえば、フィレンツェというところに、行ったことがある。
ヨーロッパ中世の石畳の街、日本の安土桃山時代には、
ダビンチやミケランジェロがここに暮らしていた。
「モナリザ」が、あるときルーブル美術館から忽然と消え震撼させられたが、
2年後にフィレンツェで発見された。
絵は里帰りしていたのである。
歴史の街を究めようとすれば、
何年住むと気がすむのか。
ホテルでの夕食後、散歩に出て、
気が付いたときには迷子になった。
通りかかった痩せた男に道をたずねると、
笑わない大学生は黙って広場に連れていった。
腕に刺青をした不気味な男女の革ジャン集団が、
オートバイに跨り、ブルンブルン円卓会議の最中で、
ぎょっとした当方 「かんべんしてよ」。
男は、ホテルの道順を聞き出そうと、ていねいに何かを喋っている。
ウタマロか、空手か?
「ジローッ」 という視線の男女が、一斉に上から下まで
レントゲン光線のように、爆音を吹かして照射してきた。
見る旅人が、見られる旅人になった
瞬間のことは、忘れられない。
大学生はホテル前まで付いて来てくれたが、
最後まで一言も喋らなかった北イタリアである。
2007.7/21