
1985年7月16日は、古代ローマ時代に建てられたヴェローナ劇場前にいた。
アレーナに通りかかったとき、スフィンクス像が組立て最中であったが、
二万五千人が入る円形劇場でトゥリオ・セラフィン氏の「ジョコンダ」を
歌ったマリアカラスは、1947年24才の時である。
タンノイ・スピーカーとマリア・カラスはセットになっているが、
いまだマリア・カラスをタンノイによって聴いていない人は幸運だ。
初めにして妙なる歌声が聴こえ、オペラ通の間では「BC」と言えばカラス以前、
「AC」と言えばカラス以後である、と言われるその歌声とは?
そういえば『タンノイ・モニター15』も、1947年に初めて工場出荷されている。
夜勤明けを、平間の公民館にまかりこしたのは、はたちのころであったが、
ピアノ発表会ワンシーンの撮影を、断れなかったためである。
当時はまだフラッシュバルブで、一発必中。
撮影も無事に済んでプログラムの終わりに、
ご近所の音大生という人の御登壇があった。
独特のソプラノであるが、傍のご婦人が「声がつぶれている」と評される。
いや、決してそんなことはない、良い個性である。
夜勤明けの耳にAC、BCは不明ながら、バッ!とフラッシュバルブを焚いた。
舞台の女性はもうワンカット必要らしく、バルブの光るのを待っておられる。
四方より 花吹き入れて 鳰の波
2016.6/20