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ロイス・タンノイ

タンノイによるホイジンガ的ジャズの考察でございます。

タンノイのエヴァンス

2020年10月01日 | タンノイのお話


夕刻、シャンプーの香りとともに登場した客人は、
これから静岡まで車で帰ると申される♂♀の人。
「以前、お会いしたことがありますか?」
「2年前に来ましたが、その時スピーカーは横壁の位置にありました。
だいぶ音が違って聞こえます」
「自宅でタンノイを、此処の低音に負けないよう調整し、だいたい同じ感じに
なったと思いますが、高音がまだまだと解りました。
『エバンス』がこんなにはっきり演奏しているとは思いませんでした」
タンノイの好きな人は、高音の調整に奮闘されている。
喧しい高音は歪みだが、押さえるとエバンスは沈黙する。
ほれぼれする強い高音は『RCAの845』かな。
夜七時にROYCEを出発されたが、一路静岡まで、
駿河の国の茶の香り。
2006.9/8
人体にも賊侵入警備システムが備わっているが、
風が吹いて桶屋さん、儲かりましたね。
1年ぶりに盛岡藩に行ってみると、活況である。



タンノイの音 5

2020年09月25日 | タンノイのお話


初めてコカコーラを飲んだとき、とても不味くて笑った。
初めてビールを飲んだとき、ウッ、金返せ...と思った。
はじめて赤ワインを飲んだとき、これはひどい、と思った。
ところがタンノイだけは、最初から「これだ!」と思った。
まだこれだと思い続けているのが情けなくも嬉しい。
ところで、あるときラジオを聴いていたら、
「英米人は雨の音を、数字を数える部位の脳みそで聴いておられ、
日本人は言語をつかさどる脳みそで聴いているとわかりました」
とんでもないことを学者が言っている。
「蛙が古池に飛び込んだ音を、だから情緒で認識することは彼等にはどうなんでございましょうか」
「ワビ、サビに該当する英語はありません」
ROYCEに登場するお客に此の話をすると、たいていの人は
「うーん、そこから攻めてきましたか」
と山賊の待ち伏せに驚いて笑うが、笑いごとではない。
KG氏から『リービ英雄氏』のお話をうかがったことがあったが、
そのハイクの英訳を読んで、バイリンガルの日本人はどちらの脳をはたらかせるのか、
またひとつ疑問が。
タンノイの音の好きな人と遭っていると、そこに一つの不思議がみえる。
タンノイの音を好まれる嗜好回路が煩悩のなかに開発されていて、
前ふりのネゴシェーションがいらないことである。
縁ある人も無き人も、『ただ聴く澄明、水の滴るを』と、KG氏は壁に揮毫してくださった。
2006.4/11

タンノイの音 4

2020年09月25日 | タンノイのお話


タンノイ社がいまだに2ウエイ同軸ユニットを改良し続け、
他社が造らなくなったいまでも、次々と新製品をリリースしているのはおもしろい。
低音と高音の二つのユニットを一つに複合させた同軸構造のメリットは、
音源が一点から発してステレオ音像の定位が自然だといわれるが、
人がタンノイの音を好むのは、まさか定位が良いからだけではない。
基本設計を担ったガイ・R・ファウンテン氏がいなくなったいま、
いつ、同軸ユニットが中止されてもおかしくはないが、
次なる責任者が同軸構造を止めたときに、こちらの気分がタンノイから離れていく
危惧があるのは、デュアル・コンセントリック(同軸構造)がなんらかの
音色の約束の証になっているのかもしれない。
これまでも同軸ではないタンノイの大型装置がいくつもリリースされたが、
なぜか名前すら思い出せないのが申し訳ないくらい、忘却の彼方に
去っていったような気がする。
伝説の『タンノイの音』は、同軸ユニットに依然としてこだわるフアンを悩ませ、
あるいは嬉しがらせて人をとりこにしているが、
そもそも『タンノイの音』とはメーカーが保障したものでもなく、
誰もそれをなんとなく知ってはいるが口にすることができない奇妙な空気の振動なので、
いわば色即是空、空即是色、さもなければヒマラヤの雪男や宇宙人のように不確かなもの。
幸いにして聴いた人だけが知っている。
聴いたことの無い人は笑っている。
騙されたと思った人は怒っている。
失った人は泪している。
ある意味、幸福と不幸が手を繋いでいる怪しいスピーカーかもしれない。
2006.4/10


タンノイの音 2

2020年09月25日 | タンノイのお話


作曲家と作詞家で、どちらが偉いのだろうか。
これを断言した人にまだあったことがない。
『タンノイ』のことを考えたときに、ユニットとエンクロージャー(箱)で、どちらが偉いのか?
というより、重要なのかを考えたが、箱よりユニットのほうが先に誕生したのかもしれない。
タンノイの同軸ユニットに対し、幾つかのエンクロージャーの設計デザインがあるが、
性能を追求した複雑な構造は高価になってあまり数が売れない。
一説によれば、タンノイ社は第二次大戦の末期に、
始めにアルテック社の開発した同軸ユニットを密かに買い求めて
『モニター15』のプロトタイプを造り、それが『モニター・ブラック』であるという。
見ると、黒く塗られた38センチ・ユニットは、アルテック・ユニットそっくりだ。
それを改良されたのが『モニター・シルバー』で、このときにほぼ姿形は完成された。
五味康佑さんが堪能したタンノイはさらにこの改良型の『モニター・レッド』である。
真空管アンプ時代のこれらの製品は、
インピーダンスやダンピングファクターなど管球の性能を最大限考慮して設計されたが
『モニター15』の名前のとうり、主だった販売のお得意さんは、一般のほか、
「EMI」などレコーデイングスタジオや各国の放送局であった。
タンノイは一時的に、アメリカのスタジオの6割を制覇したと物の本に書いてあるのが、
タンノイフアンにとっては、すばらしい。
スタジオの要請で、許容入力やインピーダンスの要望を取り入れた『モニター・ゴールド』
が造られて、ここまでがタンノイ・フアンにとって第一期黄金時代である。
このあとタンノイ社は工場の火事で自前の紙漉工場を失い、
コーン紙を西独逸クルトミューラー製にしたり、マグネットをフェライトにしたり、
アメリカ資本が入ってスタンスが変わったり、CDやトランジスタ・アンプを意識した
設計になった事情で、大いに変貌していかねば時代に乗れなかったのか。
五味康佑さんのとりこになった『モニター・レッド』をオートグラフかGRFの箱に入れて、
管球アンプでしみじみと聴けば、そこにタンノイの音の故郷が聴こえるのだろうか。
2006.4/7


タンノイの音 1

2020年09月25日 | タンノイのお話


『タンノイ』の音はこうだ。といっても、それがどうもおかしい。
何一つ実態が無い。
寒くても暑くても、晴れても雨でも音が変わる。
何層にも積み重なった音の記憶から四つの隅を決めて、きょうの音はこのへんか
と、あきれてタンノイを見る。
富士の山にも、裏富士、赤富士、逆さ富士とあるように、
タンノイにも四つ姿を認めるのはたやすい。
弦を濡れたように甘美に鳴らす、高域はそよそよと、中域はしっとり、
低域はホール感たっぷりで、これを高松塚古墳の座標でいうと『玄武』。
中域から高域にかけてすぱっと切れ味のよい正宗の名刀のような音、
低域も小股の切れ上がった粋の良さ、「マークレビンソン」で鳴らしたような音は『青龍』。
中高域はくっきりと力強く、低域はドシンバシン、タンノイなのに音が前に出てくる
こいつは何者、『白虎』。
夢に聴いた、生を越えたなまなましさ、
低音はこもらず、グランカッサは壁をゆらし、ベースの音はくっきりと温かく、
サラの声は生きているよう、シンバルは青く光り、
全ての音が前後左右に実在して鳴るのは『朱雀』。
きょうは4月1日エイプリルフール。
2006.4/1



ウエストミンスターの客 4

2020年09月21日 | タンノイのお話


タンノイ・コーネッタの話題が出て楽しみにしていたところ、
ついに完成され、写真を見せてくださった。
これがコーネッタか。
オートグラフは音道三メートルのバックロード・ホーンが内部に工作されてあり、
コーネッタはバスレフタイプであるとはいうものの、
普通の部屋でオートグラフを聴きたいという熱望をあっさり叶えた、
ⅢLZの10インチユニットを使用したオートグラフ、コーネッタである。
タンノイに、ぜひともフロント・ホーンがほしいと、望みのかなったコーネッタ。
思ったより大きくて奥行きも深い、堂々たるものであった。
良く見えるように、ちょっと向きを変えてもらいました。
☆ガスメーターの外装を塗る。
ヨーロッパのメータ器は派手でしゃれているのでブルーに塗ったのだが、
気が付いた職員が飛んできたっけ。「いけません」
しかし次に見ると、格段に良い色に仕様が変更されていた。
2006.6/5

ウエストミンスターの客 3

2020年09月10日 | タンノイのお話


幾つも部屋が有るとはお聞きしていたが、
天上の高い部屋で鳴らす音はどのようなものか。
五セットのスピーカーはどの装置で聴こうかと、一瞬考えねばならない贅沢。
「2A3のアンプが、これがなかなか良いですね。球はRCAです」
これまでの遍歴に、マイスターの称号を奉る。
―― 写真の端に写っている衝立は、コンデンサースピーカーではありませんか。
「ああ、それ、鳴らしたことないですね、そういえば」
こんど八王子の某アンプメーカーの音を聴きに訪れたいと申されながら、
ラジオ深夜便の佐久間さんの出演のことを思い出しておられた。
ところで、シロネ・システムというWE-300Bで調整された、
JBLの特注セットが世に存在するらしいが、どのような音であろうか。
まえにタンノイ・コーネッタの話題が出て楽しみにしていたところ、
ついに完成され、写真を見せてくださった。
これがコーネッタか。
オート・グラフは音道三メートルのバックロード・ホーンが内部に工作されてあり、
コーネッタはバスレフタイプであるとはいうものの、普通の部屋でオートグラフを聴きたい
という熱望をあっさり叶えたのがⅢLZのオートグラフ、コーネッタである。
ⅢLZの10インチユニットをコーネッタに収めるとこうなるのか、
タンノイにはぜひともフロント・ホーンがほしいと、望みのかなったコーネッタ。
思ったより大きくて奥行きも深い、堂々たるものであった。
☆ガス屋さんがメーターの交換に来た。ヨーロッパのメータ器は派手でしゃれている。
そこで当方はブルーに塗ったが、職員が飛んできたっけ。
2006.6/4


KO氏、オートグラフを造る

2020年09月07日 | タンノイのお話


好日、一関に戻る途中で、
KO氏の装置をぜひ拝聴しましょうということになった。
KO氏のメイン装置のことは以前紹介しているが、
なんでもこのたびは『タンノイ・オートグラフ』のエンクロージャーの自作に取り組まれ、
ついに完成したと噂の聞こえたKO氏。
先日Royceにおみえになったときはまだ二分の一の試作モデルの段階で、
とりあえず完成しましたと写真を見せてくださった。
ミニモデルは塗装も立派、十分期待のできる玄人はだしの出来栄えである。
そのときのこと車の荷台に,市内で調達されたオートグラフのための
畳サイズの板が積まれていたのをシートの下に見て、
失礼ながらはじめてKO氏が本気で取り組まれていることを感じた。
KO氏のあるときポッと浮かんだアイデアは、
お持ちになっていた『タンノイ・ヨーク』からそのユニットをはずし、
オートグラフの箱を造ってそこに入れてみたらどんなものか、
マニアなら一度は期待を込めて思う夢である。
だが実行される人はほとんどいない。
ノコギリを手に持ってハタと行き詰まるネックは、
複雑な折り曲げホーンの構造にある。
まずミニモデルを造って難関をあっさり抜けられたKO氏の、
その情熱に驚いて兜を脱ぐ。
しばらく腕や肩が痺れて,おこったように「もうこりごり」と申されたそうだが、
技芸の発露、その収穫は何物にも変え難い。
K氏も早速駆けつけてすでにお聴きになったそうで、ぜひ探訪せねば。
ところが、お宅に立ち寄ってみるも期待のKO氏は不在、拝聴できなかった。
写真を手にとって、美音をあれこれ想像するばかりである。
2006.4/13


オートグラフ・レッド 2

2020年08月28日 | タンノイのお話


ところで、T氏から或る日電話があった。
「・・・ どうも、世田谷のTですが ・・・」
会話をするのはこの日が初めて。
「やあどうも、こんにちは。東京のお天気はいかがですか ・・・」
定休日で、こちらはノーテンキだった。
「じつはいま、店の前に来ているのですが、通りかかったもので、一言ご挨拶をと ・・・」
世田谷からベンツを駆ってご家族と温泉旅行の途中、
来訪してくださった。
御年齢、御職業ぞんじあげず、なれどタンノイが取り持って良く知る方である。
先方もきっと笑ってやってこられたのだ。
店前に出てみると、T氏は上品な奥方と令嬢を従えて,
長身をベンツから堂々と現した。
ROYCEのタンノイも、格好をつけるいとまもあらばこそ、
休日の昼寝にあわてて最後まで調子が戻らなかったのが悔やまれる。
「わたしの音は、やや乾いた音で、演奏家の息使いが聴こえるような調整です。
アンプもいろいろ造りましたが、タンノイにはトランスドライブが良いと思っています」
積年のご経験を申されていたT氏。
ご家族のあたたかいまなざしを、時折思い出す。
2006.2/12

オートグラフ・レッド 1

2020年08月27日 | タンノイのお話


世田谷のT氏は、タンノイオートグラフ・モニターレッドを所有され、
クラシックレコード・コレクションの底知れない遍歴が他を寄せつけない。
そしてジャズである。
あまりの多彩なコレクションに、評論をなりわいとされているのか、
最初はちょっと引いてしまった。
ご職業も年齢もつまびらかでないT氏の最近ひとつわかったことは、
お酒が、オーディオと同じくらい好きとのことで慶祝。
桜も七分のうちから上野の御山に遠駆け、
多少の寒さはやせ我慢し、
花見の宴を決行したお話には、季節の節目を楽しまれる
いなせな江戸っ子を彷彿とさせるものがあった。
そこに人柄をちらっとのぞかせたのである。
あるとき、写真で拝見したT氏の自作管球アンプは、
希少な管球のコレクションをあしらった大変見事な作品であった。
なにぶんモニターレッドの所有者である。
届いた写真から、いつか我が迫町の大先生の解説を得て
その音色を想像してみたい名人の手すさび、
不思議な管球の逸品であった。
オートグラフなど大型タンノイについて、
真の音を究めた人は少ないと言われるが、
ウーハーコーン紙が大きいコアキシャルタンノイは、
温度湿度で音が定まらず、メフェストフェレスの見返り微笑という難物である。
憑きモノと人には言われて、手をかえ品を替え
攻略のためアンプを繰り出し、いつか聴こえる音を待つ。
ちょっとやそっとの微熱では振り落とされて身が持たない。
ところが妙なる音を聴いて掴まったら一巻の終わりという、
ジョンブルのスピーカーだ。
T氏から届けられたLPの1枚に目を留めたのは秋田から登場されるTK氏。
ガレスピーとパーカーの並び立つステージの端で、
緊張してサクスを握る当時まだ少年のコルトレーンが写っている
ジャケットである。
「CHARLIE PARKERE IN LIVE PERFORMANCE の現物を見たのは初めてです」
と申されたのでさっそく鳴らしてみた。
「当時にして、すでにここまで演奏されていたのですね」
感想にキメをつけた秋田TK氏にも教わることが多かった。
続く2006.2/12


ロンドンストリート

2019年06月12日 | タンノイのお話


タンノイ・オートグラフと、ウエストミンスター・ロイヤル
構造図面を暗記して、箱の中に入ったように想像し、
音波になったかのように、
箱の中を流れてシミュレーションする。
ロイヤルの箱は、黄金比がロンドンの街である。
これにモニター・ゴールド15をビルトインすると、
ベートーヴェンや、モーツァルトや、
エヴァンスやマイルスが、
フッフ
先日、栗原に遠征して、ネジとナットを選んで来た。
以前は、すぐさま夜を徹してやってみたが、
利口になったか、馬鹿になったのか、
趣味レーションだけで、気が済んでしまうことも多い。
さて、廊下のウサギに餌の時間だ。
寒菊や 甘酒つくる 窓の前
2016.12/8

タンノイ百景

2019年05月22日 | タンノイのお話


スピーカーをながめて、
未知の音を考えているのも楽しい。
手を下さないが、さまざまアイデアを持っている。
思うところは、まだ聴いたことのないタンノイの世界である。
あるときなぜか、からだが勝手に動いて、
ヨークのエンクロージャーのうえに、ぽんと
スペンドールBC2を、乗せてみた。
それでヨークは、どう鳴ったか。
これは、凄い。
上からの重量でコンクリの床とサンドイッチになったスピーカーは、
低音も高音も、ブルンブルン、ギラギラのカチッとした音になる。
どこかで聴いた音であるが、
ふと、JBL4350を思い出した?
箱を、押しても引いてもビクともしないので、
ユニットの動作点が強く固定されているのだろう。
いろいろ聴いて、非常に楽しめたが、
翌日、ますます音が硬くなって、
タンノイでは無くなっていた。
木材の遊びが、ぎゅっと長時間圧縮され、
細胞の反発力がついに失われたらしい。
元に戻すと、いつものヨークである。
いきおい余ってトスカニーニのカーネギーライブを聴いてみたが、
テンパニーの連打がダダダダーンと、
マレットに皮でも巻いたかの素晴らしさ。
雲霧の 暫時百景を 尽しけり
2016.7/2
宮城から帰って市内に住んでいる客人の耳によれば、
真空管のこの音は柔らかく聴こえるそうである。



16 TONS

2019年03月24日 | タンノイのお話


タンノイの38センチ・ウーハーを壁にセットして、
いよいよプラターズの'16 TONS'を聴く。
エンクロージャ奥に長く畳まれたバックロード・ホーンの、
はたして効果やいかに。
むかしラジオで聴いた、'16 TONS'という唄は、
アパラチア盆地の第9鉱区で16トンの石炭を掘る過酷労働の独り言で、
唄の内容が読めると、はてなと思うのは『魔笛』も同じである。
しかし、さいわい英語がよくわからないのは都合がよい。
低音の魅力を、しばし楽しむ。
オンリー・ユーとか、サマータイムとか、夕日に赤い帆など、
これを楽しんでいたのは当方に少年の日のあったころ。
過酷労働というフレーズは、成人してますますなお一層体験している。
2014.2 /14
出版社勤務と申される独身の客人が、
ご母堂と、タンノイを聴きに。

五味セレクションの空欄

2019年03月23日 | タンノイのお話


五味康祐さんが厳選の20曲を手帳にメモしていた、
写真をときどき思い返す。
貴重な万年筆の筆跡が映っている。
音楽の核心とは何か、当方がいまだわかりかねていることを、
五味さんの筆跡は黙示している。
Schwanのカタログに目を釘付けて、ためつすがめつ選び、
期待と興奮でタンノイと対峙された一刀斎の心の結晶だろうか。
カラヤンの振った『魔笛』が、ご自分の一番とは、
意外であるが、とてもおもしろい。
この手帳(電話番号メモ帳)を見ていると、
上から七行目だけが空欄になっており、
ここに入れる曲をなぜかご本人は決めかねていたか、
ほかのもう一つの演奏を聴いてからにしようとされて
そのままになったか、知っているであろうか。
当方は、それが気になって、いくつかの曲を
手前かってに想像している。
『西方の音』の目次を見ると、まずはじめにシュワンのカタログについて
解説しているが、次から具体的な曲や作曲家の項目を立てて、
ご自分の心の鏡に映しはじめる。
したがって、欠番の曲は必ずこのページのなかの
いずれかに潜んでいるに違いない。
二冊にわたる音楽の詳細は、特異な表現を駆使して
古今の名曲を筆で演奏するようにタンノイで紐解いていくが、
次第に当方には別の考えが浮かんで来た。
あえて曲題を書かなかったことが、意味をもっている
のではないか、という、漠然とした読後感である。
ほかにひとつ、第一に選ばれた『カラヤンの魔笛』について
思ったことであるが、映画館で『アマデウス』を観ると、
予想外に骨太のサウンドが、これまでのモーツァルトイメージと違って、
圧倒的に骨太のオーディオが鳴り響いて感心する。
タンノイで音楽を聴くとき『オルトフォンSPU』をアームに
取り付けているのは、骨太の響きが聴こえるからであるが、
それにしても映画館のモーツァルトの剛腕秀逸オーケストラに感じ入った。
『アマデウス』では、期待の、魔笛の夜の女王のコロラトゥーラが鳴らなかったが、
あの最高音Fをいったいどのように、映画館は鳴らすのであろうか。
タンノイでドイテコムのFを聴きながら、シュトライヒやグルベローヴァや
サザーランドや、そして五味さん推薦のリップなどが『浄』の書の
さがった部屋で歌うところを想像して、
冬の夜は静かに過ぎていった。
=目次は以下=
1 ピアノソナタ109
ペレアスとメリザンド
バルトーク
少年モーツアルト
ハンガリー舞曲
セレナード ハフナー
カラヤン
ワグナー
シベリウス
ラベルとドビュッシー
ドンジョバンニ
ペンデレッキのルカ受難曲
日本のベートーヴェン
モーツアルトの顔
マタイ受難曲
メサイア
ベートーヴェン弦楽四重奏曲
ラモー ガボット
マーラーとフォーレ
トリスタン
2014.1/20
ストーブをしまったら、雪が降った。
シマッタ


今日のロイス

2019年03月06日 | タンノイのお話


あるとき、装置を右の壁に移して音の模様替えをした。
すると、何をおもったか無理矢理と喫茶に侵入したものがいた。
入り口から、スピーカーが見えなかったので心配したらしい。
そこで念の為、きょう現在の室内はこうなっているという写真なので、
侵入しないように!
タンノイの音に絶大な変化があったが、聴いた人は賛否両論
同じスピーカーであるのに、不思議だ。
2013.9/8