原題: Pa negre
監督: アグスティ・ビリャロンガ
出演: フランセスク・クルメ、マリナ・コマス、ノラ・ナバス
ラテンビート映画祭 2011 公式サイトはこちら。
映画『ブラック・ブレッド』公式サイトはこちら。
2011年ゴヤ賞作品賞・監督賞・主演女優賞ほか(全9部門)
サン・セバスティアン国際映画祭主演女優賞
(2012年6月23日 銀座テアトルシネマ他にてロードショー)
今年も行きたかったけど、なかなか予定が決まらず、直前になるまでいつ行けるかわからなかったLBFF2011。
この日は大丈夫そうかなと踏んで行って来ました。 ですが9月はこれだけ。
残りは横浜で鑑賞します。
バルト9の壁が可愛くて撮っちゃいました。
上映前と後に、主演のフランセスク・コロメールくんの舞台挨拶がありました。
最初「みなさん、さようなら」と言ってしまって大笑いを誘った、お茶目な子でした。
上映後のQ&Aはちょっと時間がなくて失礼してしまったんですけどね。
LBFF公式で読んで、話は暗いかなと思ったんですが、
ゴヤ賞9部門受賞作ということでかなり期待はして行きました。 その期待を裏切らなかったですね。
舞台はスペイン内戦後のカタロニア地方。
フランコ政権による厳しい弾圧がおこなわれていた時代が背景です。
スペイン内戦 wiki
内戦においてカタロニア地方は人民戦線側に就き、フランコ政権とは敵対する地方だったため、
左派に加担したと思われる人々に対しては厳しい弾圧がおこなわれました。
このことについての背景は一切語られませんので自習が必要。
地域的に政権とは相対していたがためにただでさえ弾圧が厳しく、
その上に過去のしがらみから追い詰められていくアンドレウ一家のやるせない境遇。
そこに正体不明の殺人事件が絡んで来る。
冒頭の場面の馬車ですが、横光利一の「蠅」を思わせる描写で、ここで観客を一気に引き込んでいきます。
異常なまでの残酷な場面、そして全編に流れる不穏な空気がこの話の核心を既に表していて、
そこには当時でも社会ではタブーとされていた同性愛だとか、
地方に伝わる迷信、風習、村社会の掟といったしがらみが合わさり、どうしようもない結末へと進む。
時代に、社会に翻弄される大人たちを見ながら育たなければいけない子どもたち。
大人の綺麗事は全く彼らには響かないし、またそんなことを大人の側も言っている余裕はない。
明日は自分たちが路頭に迷うかもしれないのに。
困難な生活の中でも子どもを想って自分たちの信念を曲げ、決断を下すけど、その心がまだ子どもたちには通じない。
逆に子どもゆえの潔癖さと残酷さで、自分たちを欺いたとしか思えなくなってしまった以上、
最早大人たちに向ける視線は昔の無邪気な時代とは全く違うものになってしまった。
そしたタイトルの "BLACK BREAD"。
どこまでいっても黒パンとしてしか扱われない世界が日常としてそこにあり、そこから抜け出すには
今まで好きだった物、慈しんだもの、愛しい世界を捨て去らないといけない。
本当は惹かれる気持ちもあるけど真実を知った今、それはもうできないこと。
自分の人生を取り戻すかのように未来へと進んでいくアンドレウにとっては、
自分をだました大人たちへ仕返しするかのように過去を断ち、後戻りできない階段を上っていくしかなかったのかもしれない。
それが彼らにとっての「大人への通過儀礼」だったとしたら、これほど不幸なものもないのかもしれない。
このあたりは『白いリボン』を思わせますね。
全編を通じて流れる辛気臭さ、貧困が故の悪の道、サスペンスの醍醐味みたいなのは、
『永遠のこどもたち』や『題名のない子守唄』にも通じたかな。
あのテがお好きな方にはこれは響くと思います。 ゴヤ賞9部門受賞の名に値する奥深さ。
★★★★☆ 4.5/5点
子どもたちの心が云々…
という映画は、
これまでにも結構あった気がしますが、
この事件の真相にはかなり驚きました。
また、少年が引っ越しした2階に実は…
というのも、
大人の社会が子どもの社会から
乖離されていることを描いた
衝撃のシーンでした。
>大人の社会が子どもの社会から乖離されている
その大人の世界をのぞいた子どもは、あまりの惨たらしさにどこか傷ついたり自分を曲げながら大きくなっていくんだろうと思いますね。
そっか~去年のLBFFだったんだ~
わたしはあまり衝撃とか驚きって感じうけなかったんだけど、見応えある作品だったよね、、
ブラックブレッドだったかブラッドだったか観る前はごっちゃだったけど観たらもう忘れないですね
衝撃というよりも、事実の方が重たい作品で、なので脚色としては前に挙げた2作品の方が面白みはあると思う。。
アンドレウはその構造を身を持ってあんな若い時に知ってしまって、早くに大人にならなくてはいけなかったんだと思います。
それにしても映画が重苦しいのは、少年の肖像が現在のカタロニア人の肖像に重なってきてしまうからでしょうか。
そういった内容で映画が作れるようになったということでしょうね。歴史を反省する視点があるからでしょうか。翻って日本は情けない限りですが。
>映画が重苦しいのは、少年の肖像が現在のカタロニア人の肖像に重なってきてしまうから
誇り高い民族ですからね。
映画が救われなかっただけに、コロメールくんのお茶目なあいさつには救われます。彼も共演の女の子も大変だったと思いますが、役者さんを目指すのならがんばってほしいものです
今はいろいろ美味しいものが出てるし私も好きだけどね。
この映画の中の人の時代だから。
コロメールくん、今はもっと大きくなってると思いますよ。どんどん成長するしね。またいい映画に出てほしいです。