Nice One!! @goo

観たい映画だけしか観てません。今忙しいんでいろいろ放置

『ミッドナイト・イン・パリ』 (2010) / アメリカ・スペイン

2012-05-28 | 洋画(ま行)


原題: MIDNIGHT IN PARIS
監督: ウディ・アレン
出演: キャシー・ベイツ 、エイドリアン・ブロディ 、カーラ・ブルーニ 、マリオン・コティヤール 、オーウェン・ウィルソン 、 レイチェル・マクアダムス 、マイケル・シーン

公式サイトはこちら。


苦手なアレン作品なんだけど、これは予告で相当面白いかもしれないと勝手に予測して前売り券ゲットして待ってました。
だって、パリなんだもん。 舞台が。 しかも何かいろいろ出てきそうじゃない? もうたったそれだけなんです。
たったそれだけなのにものすごい幸福感に包まれてしまった。 まるで魔法にかけられてしまったかのように。


婚約期間って実はいろいろと起こりがちなんですよね。 しかも婚約期間が長ければ長いほど。 俗に「マリッジ・ブルー」とも言いますが。
結婚の準備に夢中になっている間はそのことしか眼中にないけど、少しその気違いじみて多忙な日常を離れ、外側から自分たちを眺めた時に、果たして今自分がしようとしていることは正しいのだろうか、と疑問が湧き上がることは少なくはない。
一応は成功を収め結婚を控えているギルは、婚約者イネズとその両親とでパリにやってくるが、そこで彼が出会ったことの数々は確実に彼を変えてしまう。 そして自分たちの生活設計プランには何の疑いもないと信じ切っていたイネズも、ギルが変わるのと恐らく同じくらいのスピードで変化していく。
結婚準備という「ハレ」のために隠れていた自分たちの本質や、「ケ」としての日常をどう生きるか。 それまで見えてこなかったものが明らかになってきた時、彼らの進む方向は決まっていく。


それにしても配役が本当に絶妙で、「いかにもアメリカ人らしい」オーウェン・ウィルソンとレイチェル・マクアダムスの様子には笑っちゃうくらい全くお見事としか言いようがない。 どこか上滑りっぽい感じなんですよね。 目に見えるものしか信じないようなキャラクターのイネズなどはぴったり。 パリで昔のイネズの知人に会ってしまう先の展開などはもう見えすぎるくらい見えてるんですが(笑)、「自分たちが理解できることしか信じたくない」主義ならではというか。 マイケル・シーンの、何とも言えないスノビッシュな役も、そこらじゅうで「あーあるある」って笑えるし。
そして、一見その主義なのかなと思わせられるギルなんだけど、実は心の中ではパリに対しての憧憬がある、ということが本作の伏線となってます。


「自分たちが理解できることしか信じたくない」主義の反対は当然ですが、「想像の世界を信じられる」主義で、何故かフィアンセである自分を差し置いてはしゃぎだすイネズから距離を置いた時点で始まる物語の導入も見事。その時間、そこだけがくっきりと切り取られていてタイムマシンの入口のように、そこにいれば自分のあこがれの世界に連れて行ってくれるという仕掛けがいい。
そして行った先での夢のような出来事・・・。 1920年代のパリ、華やかなりし時代の偉人達と直接会えるなんて誰が想像するだろう。 当時は当人たちも夢を追いかけていたにすぎず、パリで自己研鑽していた訳だけど、歳月を経て、または没後偉人となっていたことをもし伝えることができたなら、彼らにとっても感無量だったに違いないけど。 もちろん彼らを目標としているギルを始め、現代のクリエイターにとってもまさに理想の夢なのだ。
そしてアドリアナが憧れの人物と対面した瞬間の空間もまた、ベル・エポック好きにはたまらないシーン。 ムーラン・ルージュなら万難排しても行きたいような気がする。
フィッツジェラルド夫妻、ヘミングウェイの雰囲気も非常に特徴をよくつかんでいた。 そして何と言っても大笑いだったのはダリ! オファーが来たご本人も恐らく笑っただろうし、彼以外にはありえないキャスティング。 ユニークな配役も大いに楽しませてもらえる。 
もちろんビッグネームが演じてない役の人たちも年齢を考慮してキャスティングされていたり(アンリ・マティスなどはそうでしたね)、細かい配慮がなされている。 欲を言えばウィリアム・フォークナーはセリフだけじゃなくて誰かが扮したところを見たかったかな。 微妙に活躍した年代がズレている所もありましたが、20年代にパリにいた文化人ということで登場させたのでしょう。 見ているこちらも非常に知識欲を刺激される。


旧き良き憧れの時代に生きた人にも、さらに憧れがあった。 それはいつの時代もそうなのかもしれない。 そこに舞い戻って生きたくなるのも、現実に帰るのも選択の自由ではある。
アドリアナにとっては、現実世界ではやりつくした上での選択だったのだろうし、ギルにとっては懐古に生きるのは主義ではなかった。 そうして戻った彼を待っている微笑みそのものが、彼の生きていく原動力となっていく。 必要なのは昔も今も、自分にフィットした感覚と、無理なく過ごせる場所、そして心地よいと感じられる人たち。 エンターテインメント性を含みつつも、生きる原動力の方向性を示唆した、心豊かな作品。


一言:カーラ・ブルーニってもうファースト・レディーじゃないもんね。。。


★★★★★ 5/5点






最新の画像もっと見る

18 Comments

コメント日が  古い順  |   新しい順
roseさんおはよう☆ (mig)
2012-06-03 11:15:09
まさにアレン爺の魔法。
いつも理屈っぽいのを
爽やかで屈託ないオーウェンに言わせて自分は出なかったのが正解!
雰囲気のいい素敵なパリのおとぎ話に仕上っててお気に入り♪
返信する
いい映画でした ()
2012-06-03 13:37:08
ほんとに「幸福感」「生きる原動力」に満ちた映画でした。ウッディ自身がやれば神経症的になってしまう役(年齢的に無理ですけど)をオーウェン・ウィルソンにキャスティングしたのがよかったですね。

ところでマリオン・コティヤールの役のモデルは、マン・レイやフジタが愛したキキ・ド・モンパルナスかもしれませんね(ピカソの愛人ではありませんが)。雰囲気がよく似てます。

それにしてもroseさんがウッディ作品苦手なんて信じられません。初期の「アニー・ホール」とか「マンハッタン」とか、roseさん好みと思いますが。
返信する
migちゃん (rose_chocolat)
2012-06-03 14:04:10
>アレン爺の魔法
笑えるー!
でもほんとにそんな感じだったんですよね~。
こんなにシアワセいっぱいで劇場を後にしたのは本当に久しぶり。

アレンが出ない方が好きなんだよね(苦笑)
でもオーウェンがアレンっぽく見えてきたのにはビックリ。語り役しているとそういう風に見えてくるのが不思議です。
返信する
雄さん (rose_chocolat)
2012-06-03 14:10:04
>ウッディ自身がやれば神経症的になってしまう
まさに。 それじゃ映画の意味ないので、若手に演じさせて正解でした。

>マン・レイやフジタが愛したキキ・ド・モンパルナス
ああ確かに。 たぶんその辺りの頽廃的な雰囲気を狙って来たと思います。マリオンなら器用なんで何でもできると思うし。

>roseさんがウッディ作品苦手なんて
最近のばかり6本見てました。 どれも彼の恋愛観が濃かったり、彼自身が出てたりで結構ドン引きしてしまった作品もあるんですよね。
今回もハズレ覚悟で観ましたが大当たりでした(笑)
初期のですか。挙げて下さった作品は70年代ものですから、その辺りはまだ子ども過ぎて鑑賞には早かったですね。
機会がありましたら観たいです。
返信する
わっ! (ひろちゃん)
2012-06-05 11:35:58
rose_chocolatさんの満点評価って久々に観たような気がします(驚)

配役良かったですよね。オーエンもレイチェルも生粋?のアメリカ人(しかも西海岸っぽい?笑)
フィッツ・J夫妻、ヘミングウェイもあんな感じだろうなあと思えました。でも、1番はダリですよね。彼以外考えられない(笑)

rose_chocolatさんが、アレンが苦手って意外でした。

>エンターテインメント性を含みつつも、生きる原動力の方向性を示唆した、心豊かな作品。

まさに、その通りですね。私も大好きな作品でした!
返信する
ひろちゃん (rose_chocolat)
2012-06-05 20:18:03
アレン好きじゃなかったんだけどこれはいい!満点ですよー。
だって面白いんだもん。
ダリ、ウケたよね。そっくりで。ご本人も楽しかったんじゃない?
返信する
こんばんは (悠雅)
2012-06-05 23:51:46
すっかりお邪魔が遅くなってしまいました。

設定とキャストの顔ぶれで楽しみに待ってましたが、
期待以上に滅茶苦茶楽しませてもらいました。
登場人物の多彩さも嬉しかったけど、時代を表現する美術が素晴らしかったですね。
ドレスや光の色なども含め、その時代をそれらしく表現するツボを押さえてあって、
だからこそ、みんな気持ちよく夢を見られた気がします。

100年前っていうと日本では大正。
「え?何で明治じゃないの?」と思ったら、
100年前は明治時代だと知ったのは、うんと若い頃だったんですねぇ^_^;
それだけ、自分が年とってること、うっかりしてました(笑)
返信する
悠雅さん (rose_chocolat)
2012-06-06 05:59:48
めちゃくちゃ楽しかったですよね~。これ。
ベル・エポックのドレスとか見てみたいなあ。

明治はもう150年前になりつつありますね。100年前じゃない(苦笑)
私も向田邦子さんにはお目にかかってみたいです!
返信する
いいなぁ、劇場で観たい! (☆オレンジピール☆)
2012-06-13 21:52:42
こちらでは公開がない作品!
アレンは苦手なようですが(爆)一癖ある?監督さんが好きなので
自分は気になる監督さんです。
見たいなぁ・・DVD・・or遅れて公開して欲しい!

『カイロの紫の薔薇』映画好きにはツボに嵌るファンタジーで好きです♪
(感動だけしか残ってませんが・・・(^^:)
返信する
☆オレンジピール☆さん (rose_chocolat)
2012-06-15 15:05:53
これはアレン苦手な私でも好きになりましたから、たぶんオレンジさんも大丈夫だと思いますよ。
『カイロ・・』がお好きな人はこれを好きになる確率が高いそうですね。
返信する

post a comment