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観たい映画だけしか観てません。今忙しいんでいろいろ放置

『ジャージー・ボーイズ』 (2014) / アメリカ

2014-09-11 | 洋画(さ行)


原題: Jersey Boys
監督: クリント・イーストウッド
出演: ジョン・ロイド・ヤング 、エリック・バーゲン 、マイケル・ロメンダ 、ビンセント・ピアッツァ 、クリストファー・ウォーケン
試写会場: 一ツ橋ホール (2014年9月27日公開)

公式サイトはこちら。


「ミリオンダラー・ベイビー」「グラン・トリノ」の名匠クリント・イーストウッド監督が、1960年代に世界的な人気を誇った伝説の米ポップスグループ「ザ・フォー・シーズンズ」と、その代表曲として知られる「君の瞳に恋してる(Can't Take My Eyes Off You)」の誕生秘話を描いたドラマ。2006年トニー賞でミュージカル作品賞を含む4部門を受賞した、人気ブロードウェイミュージカルを映画化した。アメリカ東部ニュージャージー州の貧しい町に生まれた4人の若者たち。金もコネもない者が町から逃げ出すには、軍隊に入るかギャングになるしかなかったが、彼らには類まれな美声と曲作りの才能があった。4人は息の合った完璧なハーモニーを武器に、スターダムを駆けあがっていく。(映画.comより)


噂のイーストウッド作品、試写も倍率が高くて行けたのが本当にラッキー!としか言いようのない内容でした。
ぜひとも再見したいものです・・・

フォー・シーズンズの成り立ちをベースにしていますが、私はもちろんこの世代じゃないです。世代じゃないし、予備知識も一切ないまま観てますがそれは全く問題なし。

フォー・シーズンズ Wiki


音楽映画は元々好きで大体観るようにしてるけど、ほぼドキュメンタリーに近い内容を扱うだけに、音楽をテーマとしてよい映画にするにはまるまるドキュメンタリーにしていくか、あるいは思い切ってドラマ部分を増やしていくか、どちらかだと思っている。中途半端に歌を入れてみたり、ミュージカル仕立てにしてみても、結構凝ったのになあ・・・ と思うくらい入れてみても実は観終わってから印象が薄いのもある。
本作はもちろん後者で、フォー・シーズンズの結成からスターダムにのし上がり、そして時代の流れと共にグループが変化していく様を描きながら、メンバー間に起こる葛藤を折り込んでいる。

音楽ユニットを大成させるためにはそこに様々な困難が待ち受ける。商業的に成功を収めなければやっていけない訳で、そこにたどり着くまでには当然売れなければならず、良い楽曲に恵まれメンバー自身も人気が出なければならない。この条件を書き出すとさらっとしているけどここに達するまでの何と途方もない苦労が待っているか、それはミュージシャン自身がよくわかっているとは思うけど、観る側としてはそこまで思い及ばないのが実感である。作り出す側がどれほどの苦労を重ねてきたものであっても、観る側はそんなことは関係なく優劣をつけたりする。しかし観客はいいものはいいと評価するものでもあって、ここがショービジネスの魑魅魍魎とした部分でもあるのだろう。多くの困難や批評に必ず傷つくとわかっていても、その極みを目指す人が後を絶たないのも、音楽の世界の魔力でもある。

本作ではフランキー・ヴァリ、ボブ・ゴーディオ、ニック・マッシ、トミー・デヴィートの4人の相関関係にポイントを置いている。名実ともにフォー・シーズンズの顔であるヴァリ、威勢はよく仕切り屋だが同時に問題も抱えたトミー、キーポイントとなる楽曲担当となることで実質的にグループの中心だったボブ、そしてそんな3人の陰に霞みがちなニック。グループを維持させるためにはメンバーのバランスが取れてなくてはいけないが、長年活動しているとどこかでひずみは生じてくる。そしてその根本的な問題は個人の性格や資質にあることが殆どだ。トミーはフォー・シーズンズのデビューの貢献者なだけに、他のメンバーにも恩を着てもらいたかったのだろうし虚勢も張りたかったのだろうけど、結果それがグループの足枷となっていく。こういう経過を見ていると、組織が崩れていく様子はどれも同じなのだなと考えさせられる。

普通ならば、というか常識的には、組織に迷惑をかけた人間は去ってもらうのが常だけど、ここが彼らのドラマたる所以で、トミーの持ち込んだ問題に関して、ヴァリは通常ではまず考えられない方法を提案していく。何故そんなことを言い出すのか、トミーを支えることに何の意味があるのか。見ている側もそう思うはずだし、もし自分なら絶対そんなリスクは負わないはずなのに、敢えて引き受けるヴァリ。そこに彼らが培ってきた「ジャージー・ボーイズ」としての絆があるからだろう。まだ売れていない時代、街灯の下で懸命に練習したあの日、共に分かち合ってきたあの苦労を忘れないと。成果至上主義、利益が絶対である現在の風潮に、敢然と反旗を翻していくイーストウッド監督ならではの筋書きである。

表ではメンバーの苦悩の道のりを描くが、ヴァリのそんな行動を裏付けるものもまたあって、娘に対しての助言を通じてここに監督の本音が見えているような気がする。やさぐれていても仕方ない、お前がするべきことは何なのか。表面的には華やかなスターであっても家族のために身を粉にして働いてきたヴァリに対して、家族は万全に理解していた訳ではなかった。常に不在のヴァリへの不満やら寂しさやら、長年に渡る鬱積した想いを抱えながら過ごしていれば話も聞きたくなくなるのが当然だろうけど、それでも厳しくも温かな目を向けるヴァリの姿。
物事は一面的な方向からの判断はできない、その裏側までも見て行かないと、真意というものは伝わらない。1人の人間が何を考え、どんな判断をしていくか、精一杯生ききっている姿を万人に見てもらう訳にはいかないけど、人となりというものを誰かに伝えることができたならばその人の生きる目的というものは達成できるのではないか。もう84歳にもなる監督の言葉かと思うと少しさびしい気もするけど、これほどまでにパーフェクトな作品を生み出してくれているのだから何としてでも長生きしていただきたい。

フォー・シーズンズのキャストは当然ですが全員歌える人たちで、中でもヴァリ役のジョン・ロイド・ヤングはブロードウェイ版でも主役を務めた俳優。安心して観ていられる。その他のキャストではやはりクリストファー・ウォーケンがいいですね。
そしてどこを取っても完璧な配分で作られていて、どうかすると淡々となりがちな音楽映画につけていくアクセントが上手い。他を寄せ付けない完成度の高さ。エンドロールにも劇中の、とあるセリフのワンシーンをそのまま再現した粋な映像がありますねー。こんなところなんて涙が出るほど素晴らしい。もっとずっと観ていたいような、そんな感慨深さすらあります。


★★★★★ 5/5点







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24 Comments

コメント日が  古い順  |   新しい順
今週 (まっつぁんこ)
2014-09-27 10:19:40
今週はこれだ!と思うけど
劇場版 零 ゼロ
とかのほうが入るんでしょうか?(笑)
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まっつぁん (rose_chocolat)
2014-09-27 10:21:22
そう思うとなんか虚しいわな。。
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シェリー (ituka)
2014-09-27 22:10:58
この歌はワタシも好きな曲でしたが、他はまったく知りません(笑)
本作、フランキーの人間性に尽きますね。
こんな仕事じゃなかったら幸せな家庭生活を築いていたことでしょう^^;
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満点ですね (maru♪)
2014-09-28 01:55:33
TB&コメントありがとうございました!

roseさん満点ですね~♪
さすがクリント・イーストウッド監督ですよね!

ジョン・ロイド・ヤングの声を最初に聴いた時はビックリしましたけど、
あの声でこそ!なんですよね★
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itukaさん (rose_chocolat)
2014-09-28 16:22:20
シェリーと、君の瞳しかしらないけど、
よかったわーこれ。
フランキーも悩みながらも貫いたものがありましたね。
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maru♪ちゃん (rose_chocolat)
2014-09-28 16:23:16
ジョン・ロイド・ヤングの起用は大正解でしたね。
本作、彼しかありえないです。
さすがのイーストウッドとしか言いようがなかったですね。
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こんばんは♪ (yukarin)
2014-09-30 23:03:36
おー満点ですね!
私も音楽映画は好きです。
それにイーストウッド監督作品は好きなのですが、今回もハズレなし!とても良かったです。

ブロードウェイ版のキャストを起用したのがいいですね。
こういう作品はちゃんと歌える方でないと!!

個人的にはクリストファー・ウォーケンを久々に見られて嬉しかったです。お元気そうで 笑
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yukarinちゃん (rose_chocolat)
2014-09-30 23:41:30
クリストファー・ウォーケンは、直近だと『25年目の弦楽四重奏』って作品がとってもよかった。
ぜひご覧くださいね。
これも音楽映画だけど。

歌えるってすごい大事な要素ですよね。
音楽映画なんだから。
これは大成功でした。
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Unknown (mig)
2014-10-01 11:38:41
今回評判いいですよねー
前3作のイーストウッドのダメだったんだけど
今回は良さそうだけど
風邪で沢山観れないからDVDにまわそうかなと。笑
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おおっ満点! (とらねこ)
2014-10-01 12:55:40
大満足印の満点がついてますね◎素晴らしい!
バンドや音楽グループの人間関係って、元々地元の仲の良い友達同士で組んだものでも、空中分解してしまうのは良くあることなんですよね。そのパターンかと思ったら、最後まで諦めない。さすがイーストウッドならではの温かみがあって、心を動かされました。

『ドリームガールズ』のような作品とはひと味も二味も違いました。
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