Nice One!! @goo

観たい映画だけしか観てません。今忙しいんでいろいろ放置

『ジミー、野を駆ける伝説』 (2014) / イギリス

2015-01-21 | 洋画(さ行)


原題: Jimmy's Hall
監督: ケン・ローチ
出演: バリー・ウォード 、シモーヌ・カービー 、ジム・ノートン 、フランシス・マギー 、アシュリン・フランシオーシ 、アンドリュー・スコット 、ブライアン・F・オバーン
鑑賞劇場: 横浜ブルク13

公式サイトはこちら。

1932年、内戦が終結してから10年がたったアイルランドに、アメリカで暮らしていた元活動家のジミーが戻ってくる。故郷のリートリム州で年老いた母と穏やかに暮らそうとしていたジミーだったが、村の若者たちは、かつて地域のリーダーとして絶大な信頼を得ていたジミーを頼り、さまざまな訴えを投げかけてくる。その声に突き動かされたジミーは、人々が芸術やスポーツ、歌やダンスを楽しみ、人生を語らうことのできるホール(集会所)の建設を決意する。しかし、それを快く思わない勢力と諍いが起こり……。(映画.comより)


ケン・ローチ作品って、割とあっさりめというのが個人的な感想なんですね。社会的なテーマ、しかも結構重ためなのにサラっとしている。
そして本作もその通りの作風でした。

そもそも内戦状態にある国ほどいがみ合いが深刻化する訳で、この映画を読み解くにはアイルランド内戦のことは避けては通れない。

アイルランド内戦 wiki

ジミーはIRAの側なので、人々の全てを統制していく当時のカトリックのやり方には当然として反発しただろう。国自体が貧しくて何もなく、若者たちはエネルギーを持て余し、なすべきことも見つからない毎日。そこに帰国してきたジミーはまぶしかったに違いない。自分が手掛けた集会所(ホール)を巡る争いに巻き込まれ、全てを残してアメリカに行ったジミー。そこから10年経って母と静かに暮らしたいと願う故の帰国だったが、10年くらいではジミーに対して快く思わない勢力の思考や思想などそんなに変わらないような気もする。
人々に推されたからだけではなく、積極的に自分が10年間で習得した文化や、地域の人々がそれぞれに培っていた技術を伝えたいと奔走するジミー。ひたすら善意であり、地域の発展や経済面での豊かさをもたらしたい、そして人間として幅広い世界を見てもらえればという気持ちで始めたそれらの行為は、相対する保守派からしたら厄介そのものであった。

今だったら教養を身につけて技術で生活を豊かにすることに何のためらいもないし、むしろ進んで人々はそれを望む。押さえつける行為などもってのほかと思うけど、その頃だったら危険思想になってしまう虚しさ。ジミーがあと50年くらい後に生まれていればとも思うけど、その時代には早すぎたヒーローとして、どうにかしないではいられなかったと思う。
ジミーがもたらした豊かさは確実に人々に喜びや潤いをもたらしていたけど、でも公権力、数や量を駆使した暴力にはかなわなくなってしまう。ジミーたちはあくまでも平和裏に対話を進めて行きたかっただろうし、またそうもしてきたけど、規制する側は自分たちが不利になると見るや、全く相手は悪くはないのにどうにかして台頭勢力を押さえつける大義名分を作り出す。

例え不本意ながら志が断たれてしまったとしても、ジミーの残したもの、文化や技術を伝える術はしっかりと受け継がれていて、そう簡単に崩すことのできない強固なものとなっていた。心がつながっていれば自分が渡されたバトンを次世代につなげていける。ジミーのように歴史に名を残した訳ではないけど、名もなき勇者たちは時代を超えて存在しているはずで、現代でもそれはあるはずだ。
自分では成し遂げられないかもしれないけど次代への種だけは蒔ければ、そこからまた多くの人へと伝えられていくものもあるはずで、本作はそこを力強くシンプルに伝えられている。時代を超えた「ジミーたち」への応援歌なのだろうか。組織をなくせたとしても、人の心に芽生えた自立心までは絶対に消せない。


★★★★ 4/5点







最新の画像もっと見る

2 Comments

コメント日が  古い順  |   新しい順
Unknown (margot2005)
2015-02-09 23:46:09
こんばんは。TBありがとう。
さてケン・ローチはお気に入り監督の一人です。
彼の描くアイルランドの世界は少々悲しみもありますが、惹き付けられますね。どの作品も素晴らしいです。

ラスト、ジミーを追いかける若者たちに、わずかながらも未来が開けるような気がしました。
margot2005さん (rose_chocolat)
2015-02-10 07:46:06
>彼の描くアイルランドの世界
史実や、そこから派生したドラマも含んでますから、
自然と厳しく、時に哀しいものになってしまいますが、
これが「描く」ってことなのかなと、毎度彼の作品を観て思いますね。

>ジミーを追いかける若者たちに、わずかながらも未来が
未来もちゃんと描いてくれるとほっとしますよね。

post a comment