『ロバみみ』

言いたい!でも言えない…。ならば、穴を掘ってでも叫びたい! そんな想いから綴り始めた独り言のようなブログです。 

・『ヒメアノ~ル』作品感想編

2016年05月28日 | ・ロバみみシネマ
もし、剛くん付きじゃなかったら、「ヒメアノ~ル」は観ないかもしれない。
映画、単独初主演なのに、剛くんのファンなのに、そんなんでいいのか!?

テレビでは連日、森田剛祭りの真っ最中。(←まだ見れていないので、感想はまたあらためて)

フグは食いたし、命は惜ししの状態で悶々としていましたが、
無事に舞台挨拶のチケットが手に入ったので、毒を食らって死す覚悟で
金曜の夜が吐き出した喧噪の残り香が漂う新宿に、朝っぱらから行って参りました。

まずは映画の感想から。

*****今更ですがネタバレ注意です*****アップしてからなんですがネタバレ注意です************

観終わった感想を一言で言うなら、

悲しかった。

です。

最初の方は、ムロさんと濱田くんと佐津川さんの三角関係ラブコメ的な。

そして、森田剛くんが「森田」を演じ、濱田くんが「岡田」を演じるという、
この狭い人間関係の中に、カミセンの3分の2の苗字が登場するという妙を感じながらのオープニング。

剛くんが登場すると、そこだけ空気の色が変わるように見えたのは、
「殺人鬼」というキーワードがロバみみの中で先走っていた先入観からかもしれない。

なーんにも知らずに見たら、カフェの店員に恋する内気な男の子に見えていたりしたかも。

悲しいかな、原作モノと情報量の多い今の世の中では、
まっさらな気持ちで作品と対峙することは、不可能ですね。
(「ヒメアノ~ル」は原作、読んでないですけど……)

とにかく、剛くんが出てくると、まだ何もしてないのに、

「こいつ、いつ、やらかすんだ……」

と、ひやひやしながら、観ていました。

そして、壁ドンもない冴えない男たちのラブコメが、「森田」の闇に引きずられて落ちて行くその時、
太陽が沈む昼と夜との境界線のように、スクリーンにMorita GOのクレジットが……。

ここで、か。

そうか、ここから「始まる」んだ、と、もう既に、淀みかけていた心に警報が鳴り響きました。

苦手なんです。本当に。
時代劇で刀で斬りあったり、鈍器で殴ったり、包丁で刺したりという手段は
まだ我慢できるんですが、ピストルが苦手です。

すごくいい顔してるのに、剛くん。
見ちゃいられないよ……。

断腸の思いで、残虐シーンは目を閉じました……。

そういえば、健ちゃんの「親指さがし」の時も、同じ現象だったなぁ……。
舞台挨拶付じゃなかったら見なかったし、観てても怖いシーンは目を閉じてた。

でも、なんだろう。

高校時代に「森田」が遭っていたイジメとかが、少しずつ、見えてきて、
最初は「理由なき殺人」だと、本当に消耗しちゃうんだよなって思ってたけど、
どこか人としての感情のねじれがわかると、少しホッとする。

イジメの主犯を殺したことで、彼の中ではずれた「たが」。
何かあるごとに、その決壊した部分から狂気が鉄砲水のように吹き出す感じ。

でもそれは、腕にとまった蚊をパチンと叩いて殺す感覚に近くて、
罪悪感もなく、特別に気にとめることでもなく、彼の日常の中の自然な行動の一部だったりする。

1人殺すのも、100人殺すのも同じ。

だからどんどん殺していく。そこに特別な感情なんてものもなく。

だけど、ふと思う。

佐津川さん演じるゆかちゃんへの執着は、「恋」だったのだろうか。と。

欲求のはけ口としての対象なら、それこそ誰でもいいわけだし、
もっと早く、犯すなり殺すなりしてもいいところ、
彼女が岡田くんと付き合ったことをきっかけに、殺意も暴走していくわけで、
そこは、どんな気持ちだったのかなぁと考えながら観ていました。

ラストでは、少しだけ救われました。

瞬時の判断は、眠っていた彼の本性の仕業。

そこでやっと見えてくる母親の存在や、
平凡でちょっと冴えない、教室のすみっこにいるような学生時代の姿。

普通の男の子でいさせてあげられなかった悲しさが心の中にポツンと生まれた瞬間でした。

夏の暑い昼下がりに、アスファルトに溶け落ちたアイスクリームのかけらが、
消えて行くような、そんなスピードで。

もう一回書きますが、剛くんが出てなかったら、きっと観てない。
苦手なの。本当に。

だから、

「学生服姿なんて、学校へ行こうを思い出すなぁ」

とか、

「人殺しでも、なんてオトコマエなんだ」

とか、

映画鑑賞にはあるまじき、現実逃避ならぬフィクション逃避(笑)

どっぷり入り込んで観るとしんどいので、
現実とつながったまま、スクリーンを見つめていました。

ごめんよ。剛くん。

でも、自分にナイスファイトと、声をかけたいです。

そして、こういう作品を観るチャンスをくれた剛くんに、ありがとう、かな。

そうだ。最後にひとつだけ。

ポスターのキャッチコピー。

「めんどくさいから、殺していい?」

って、どうなんだろうという疑問。

「殺す方がよっぽどめんどくさい」

って思いました。私は。

だって、映画の中の森田くん。
殺した後に、ちゃんと穴を掘って埋めたりしてるんですよ。

穴を掘ること。
運んで埋めること。

雑だけど意外と後処理も手間かかってる。
めんどくさがりの私には、連続殺人は無理だな(笑)
無視して離れた方がずっと楽。
人間としての熱量は「森田」の方が、ひょっとしたら上かもしれません。

漠然とした感じになりましたが、とりあえず、「映画感想編」を終わります。

さて、次は「舞台挨拶編」です。

※アップして2日程たってから、「あれ? 書きすぎちゃった?」と思いました。
 ネタバレ注意補足と一部削除しました。
 冷静さを失うほどの、ヘビーな作品だったということで……(汗)


・『ヒメアノ~ル』初日舞台挨拶編

2016年05月28日 | ・ロバみみシネマ
映画本編を観終わって、先日観た「ルーム」で涙した心が、
無残にもトカゲに喰いちぎられたロバみみへのブレミアムなご褒美。

舞台挨拶、森田剛くんの登壇。

「帰りにおもちゃ買ってあげるから」と言われて、予防注射に耐えた子供のような自分。
いいのか、それで? いや、いいのだ、これで。

だって、見てごらんなさいよ。

この映画のトーンに似つかわしくない客層を。
ほぼ女性って(汗)

まあ、配給会社的には、それ込みのそろばん勘定なんだろうが。

おそるべし、森田剛の集客力。

ってことで、ロバみみは朝イチの舞台挨拶に参加して参りました。

取材とか入って、準備があるのかと余裕をかましていたら、
いきなりムロさん登場。

そして、唐突に始まりました。
緊張のあまり写真撮影、録音、録画不可のアナウンスをし忘れたムロさん司会による舞台挨拶(笑)

剛くんは黒のインナー、黒のスーツ、黒の靴でご登場。
そして本人自体も黒い……。

「やっと、皆さんの目に触れてもらえることができて嬉しいです」

と、一言。

毎度のことながら、コンサートMCは結構覚えてますが、
何故か舞台挨拶の内容は忘れて帰ってくるロバみみ(笑)

メンバー同士の会話じゃないこと、映画の内容を反芻しながら帰ってくること、
これが要因だと思われますが、今回もたいしたこと覚えてません(汗)

20~30分弱くらいあったのに(汗)

ム「こういう映画なんで、何か裏話とかほっこりエピソードとか。
  僕が剛くんの撮影まで残ってたとか」
剛「自分で言っちゃだめでしょ。それ(笑)
ム「剛くんの撮影の初日、公園のタバコのシーンでね、待ってたんだよね。よろしくって」
剛「先輩風ふかしちゃってて(笑)」
ム「だって、俺の方が年上なんだからさ。
  そういうことしとけば、こういう時に言ってもらえると思って計算してんの。
  あさイチとかで俺のことキライとか言わないで。オレ、ネットとかも全部見てるから!」
剛「(笑)」
ム「一緒にスキー行くんだからさ」
剛「(笑)」

ムロさんの言葉に笑ってる剛くん。
いいぞ、ムロさん。って私は思ってました(笑)

そうそう、客席からの質問コーナーまであって、ティーチインみたいなのりでしたが、
剛くんは、その質問をうけて、

剛「最後のセリフを言いたいなぁと思って、出演依頼を受けました。
  あの年頃の男の子にとって、やっぱりお母さんの存在って大きいじゃないですか」

と。

あとは殺すシーンは「何も考えないでやった」と言ってました。

本当に剛くんはお芝居の仕事を始めてから、いったいどれくらいの殺戮を繰り返してきたのだろう?(笑)
何回刑務所に入ってもたりないな。
バイオレンスな男だ(笑)

そして、おもしろかったのは剛くんのM発言。

監督「教室のイジメのシーン、あれ、まあ(下半身が)見えないようにはやってるんですが、
   いつも、女の子にキャーって言われてる森田くんが、
   いつもとは違う女子のキャーを受けるって、どういう気持ちだったの?」
剛「……おなじ、ですね。気持ちよかったです(笑)」
客「(笑)」
ム「何? Mなの?」
剛「M……、ですね」
ム「Sっぽいけどね」
剛「気持ちいいって、役を通してですよ?(笑) 
 「森田」を通して、イジメから気持ちよくなっていく感じで(笑)」
ム「じゃないと変態だもんねぇ」
剛「(笑)」

いつも私たちがキャーって言ってるのと、
変態行為的なものに「キャー」って言ってるのと、同じなのかい(笑)

でもまあ、いつもの「キャー」も気分よく受け取って頂いてるようなので、
ますますチヤホヤしなければ、と思いました。

最後に

「今こうやって、お客さんの顔を見ても、色々な表情をしてくれているので、
 それぞれに感じてくれたものがあったのかと思いました」

って、言っていました。

結構グロッキー気味なロバみみでしたが、
笑顔の剛くんに救われました。

そして、色々な話を聞いて、
今度は冷静に、確認しながらもう一回観たいかもとも思いました。

監督がおっしゃっていましたが、あの途中でクレジットが入ったシーンを境に、
映像の中の色をなくしていったそうです。

通行人のエキストラさんも、モノトーンの衣装になっているそうです。

そして、原作とは変えたことについては、
「原作は森田と岡田は出会うことがないし、森田のモノローグで進んでいくので、
 もっと主人公の心情が刻々とわかる作りなんだけど、
 それは漫画なら効果的ではあるけど、映画でモノローグだけで創っていくのはあまり成立しないので、
 こういう作り、ラストにしました」
と、おっしゃっていました。

確かに、モノローグがないからこそ、役者の雰囲気や表情も生きてくるってものです。
セリフがないところにこそ、心の奥底にある気持ちがある。

今度は目をつぶらなくても済む作品に、出てくれたら嬉しいけど、
どんな役でも、ロバみみは森田剛にくらいついていく所存です!




・『8月の家族たち』

2016年05月15日 | ・ロバみみの芝居小屋
「8月の家族たち」を観にシアターコクーンに行ってきました。

もうこの劇場で、蜷川さんをお見かけすることもないのだなぁ……と思ったら、
すごく淋しかったです。

お加減がよくないと伺っていたのですが、
夏を待たずに逝ってしまわれましたね。
また日本の宝が……。

でも、55歳以上の方を団員として集めた、さいたまゴールド・シアターを手がけた蜷川さん。
きっと、きっと「天の国・芸術劇場」の芸術監督に就任して、
また豊富な人材を発掘しながら素敵な作品を作っていくのだろうと思います。

心からのご冥福をお祈り致します。

そして、夏に蜷川作品として世に出るはずであった「ビニールの城」。

このようなお知らせがありました。

蜷川さん監修として追悼上演。

剛くん、魂こめて、天国まで届けて欲しいです。

さて、ケラさんの「8月の家族たち」です。

二回の15分休憩を挟む、三幕3時間15分の作品。

「ながっ」

と、タイムテーブル見て思ったのですが、面白くてあっという間でした。

ケラさんの群像劇は、ブラックだけど笑えて、笑えるけどシビアで好き。

物悲しさを感じても、後味の悪さは私個人は感じないので、
いつも不思議な演出家さんだなぁと思いながら劇場を後にします。

お話は、父親の失踪をきっかけに、薬中毒の母親(麻美れいさん)の住む実家に
三人の娘(秋山奈津子さん、常盤貴子さん、音月桂さん)が帰ってきて巻き起こる家族のゴタゴタです。

それぞれが秘密と問題をかかえていて、それが少しずつ明るみに出ていく。

この母と娘を軸に、木場勝己さん、犬山イヌ子さん夫妻と、
長女のムコ・生瀬さん、次女の秘密の彼氏・中村さん、三女の胡散臭い婚約者・橋本さとしさんが
からみに絡んで、こじれていくんだけど、秘密はどんどん暴露されていく。

久々に、休憩早く終わらないかな。続きが観たい。

って、思いました。

私的には、やっぱり秋山奈津子さんが本領発揮ですごいよかったです。

「鉈切り丸」の時には、もっと弾けた秋山さんが観たいなぁって思っていたのですが、
今回は弾けています。

長女らしさ爆発してました。

ギャーギャーわめいているようでも、セリフが聞き取れるし、
ヒステリックなすごみが笑いを誘います。

「アタシが仕切ってんのよっ!」

の、一言には爆笑しました。

生瀬さんとワインのコルクを抜く時の細かい演出まで笑えました。

麻美さんも色っぽくて素敵でした。
犬山さんは、なんであんなに面白いんだろう。

すっとぼけた感じの木場さんとは夫婦漫才みたいでした。
秋山さんと生瀬さんのカップルもどつき漫才みたいでおもしろかったし。

でも、それぞれの登場人物にもドラマや葛藤があって、
ホント、おもしろかったです。

それぞれの自分の人生を歩いている娘たちが、
ちょっとイカれた老いた母の面倒はどうするかとか、
結婚だの離婚だの、思うようにいかない子供の心配だのって、
客席の年齢層を見たら、他人事ではないと思う方も多かったはず。

笑いながらも、

笑えねぇな、こりゃ。

という、現代人の心の闇をかすめつつの3時間15分。

冒頭シーンでちょっと落ちそうになりましたが、
最終的には、食い入るように観ている自分がいました。

井上ひさしさんも亡くなり、そして蜷川さんも亡くなり、
本当に淋しくなってしまいましたが、
偉大なる作家・演出家なきあとの演劇界。

素敵な舞台人の方々のお力で、是非、盛り上げていって頂きたいと思いました。