「向田邦子展」開催中 かごしま近代文学館
作家・向田邦子さん(1929~81年)のシナリオ作品に光を当てた企画展「脚本家 向田邦子の顔」が,鹿児島市のかごしま近代文学館で来年1月30日まで開催されています。没後30年に合わせて開き,約50作品の台本や自筆の原稿,写真パネルなどが並びます。
向田さんは29歳でテレビドラマの世界に入り,飛行機事故で51歳で亡くなるまで約80作品に携わってきました。会場ではデビュー作となった刑事ドラマ「ダイヤル110番」の台本を県内初公開しているほか,「だいこんの花」「時間ですよ」などの人気作を年代ごとに展示しています。
春霞に包まれてぼんやりと眠っていた女の子が,目を覚まし始めた時期なのだろう。(略)
うれしい,かなしい,の本当の意味が,うすぼんやりと見え始めたのだろう。
この十歳から十三歳の,さまざまな思い出に,薩摩揚の匂いが,あの味がダブってくるのである。
~『父の詫び状』(薩摩揚)の一節
⇒⇒向田邦子さんの肉声テープを公開
かごしま近代文学館では,向田邦子さんが草稿段階の作品を自ら朗読した肉声テープを公開しています。推敲(すいこう)時に耳で聞いた感じを確かめたものとみられ,創作法を知る上で貴重な資料です。
向田さんはテレビドラマ「時間ですよ」などの脚本を手掛け,55年に直木賞を受賞。56年,台湾旅行中に航空機事故で51歳で死去した。エッセーの中で,9歳から約2年間過ごした鹿児島を「故郷もどき」と表現するなど愛着を示していたことから,遺品約8500点が同館に寄贈され,その整理中にテープが発見された。
▼向田 邦子(むこうだ くにこ)1929(昭和4)年~1981(昭和56)年
向田邦子はさん,1929(昭和4)年,東京都世田谷区に生まれました。10歳のとき,保険会社につとめる父の転勤により一家で鹿児島に移り住み,思い出深い2年余りを過ごしました。
実践女子専門学校(現・実践女子大)を卒業後,広告会社の社長秘書から映画雑誌の編集者を経てシナリオライターに。「時間ですよ」「だいこんの花」「寺内貫太郎一家」などの連続ヒットを飛ばす人気シナリオライターとなりました。
1975(昭和50)年,雑誌「銀座百点」にエッセイを連載。これをまとめた『父の詫び状』が,鮮やかな名文として話題を呼びました。1980(昭和50)年,「小説新潮」に連作短編小説「思い出トランプ」を連載。この中の「花の名前」「かわうそ」「犬小屋」の3編により直木賞を受賞。
⇒⇒鹿児島を愛した 向田邦子
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◆かごしま近代文学館・メルヘン館
海音寺潮五郎,林芙美子,椋鳩十,梅崎春生,島尾敏雄,向田邦子など,鹿児島にゆかりのある28人の作家を多角的に紹介する近代文学館に童話の主人公の人形を展示するメルヘン館が併設されています。
〒892-0853 鹿児島市城山町5-1 TEL.099-226-7771 FAX.099-227-2653
◆開館時間 9:30~18:00(入館は17:30まで) ◆休館日:火曜日(祝日の場合は翌日),12月29日~翌年1月1日
◆入館料 2館共通券 大人500円,小・中学生250円/単独券 大人300円
◆アクセス-JR鹿児島中央駅から
・市電:2系統鹿児島駅行き(約7分)→「朝日通」下車,徒歩7分
・東口バス乗り場 東4~6番より天文館,市役所方面行き(約9分)
→「金生町」下車,徒歩7分
・東口乗り場 東9番よりカゴシマシティビュー(約11分)
→「西郷銅像前」下車,徒歩3分
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