吉田クリニック 院長のドタバタ日記

日頃の診療にまつわることや、お知らせ、そして世の中の出来事について思うところ書いています。診療日には毎日更新しています。

妊婦死亡7千万円賠償命令 医師の過失認定、東京高裁 その1

2016年06月13日 06時36分54秒 | 日記
2016/05/27 共同通信社

 2008年に静岡厚生病院(静岡市)で帝王切開手術を受け死亡した妊婦=当時(24)=の遺族が、病院を運営する「JA静岡厚生連」(同)と医師らに損害賠償を求めた訴訟の控訴審判決で、東京高裁は26日、請求を退けた一審静岡地裁判決を変更し、約7490万円の支払いを命じた。富田善範(とみた・よしのり)裁判長は医師の過失を認めた上で「妊婦の死亡との因果関係があった」と判断した。

 控訴審判決によると、妊婦は08年4月、陣痛を訴え来院。医師の診察で、胎盤が子宮壁から剥がれ、胎児は死亡していると分かった。帝王切開手術をしたが、妊婦は大量に出血し死亡した。判決は「医師らは正確な出血量を把握しておらず、実際に輸血した量は極端に少なかった」と認定。その上で「妊婦は死亡率が高いと当時考えられていた羊水塞栓(そくせん)症を発症していた可能性があるが、適切に治療すれば救命できた」と判断した。
また産科関係の訴訟である。

いいかげんなコメント

2016年06月11日 06時04分09秒 | 日記
 過日、市川海老蔵の妻の乳がん報道がなされた。
 そして翌日のTVバラエティ番組で、進行がんとはという解説がどこかの医者によりなされたのを観た。

 ボードにはいろいろな種類の癌が張り出されていたが、たまたまスキルス胃がんの説明ボードに「特徴:粘膜をはうように進行する」とかいてあった。

 おいおい、間違ってるよこれと思い、そのうち解説で訂正するだろうなと思っていた。
 ところがこのDr.は「スキルスは粘膜をはうように横に広がっていきます」と説明を始めたのである。

 あちゃ~またいい加減な事いっているな~と思ったのである。スキルスは原発局面は、確かに粘膜の癌なのであるが、そこから粘膜をはって進展するのではなく、「粘膜の下」をはって横にひろがっていくのである。なので粘膜の性状は変わりがほとんどないので見つけにくいのである。

 いかにこの初期原発巣(小さいことが多い)を発見できるかがポイントである。胃カメラでみて粘膜面での異常を確認できるのはこの部分だけなのである。

 Dr.のいう「粘膜を這うよう」広がれば、カメラでは胃の粘膜を観察しているのだから発見しやすい。しかし「粘膜の下」を広がっていくのだから、粘膜の上しか観察できない胃カメラでは発見しにくいのである。
 そんなの当たり前のことである。

 まあその後、司会者は「はぁ~そんなんですね、粘膜の下を横にひろがっていくんですね~」と気が付かれないように訂正していたのであるが、素人の司会者にフォローされるようじゃこのコメントしている医者もなさけないなーと感じた。

PPK その3

2016年06月10日 06時09分27秒 | 日記
 つまりピンピンコロリとは本人の思いだけでは通用しない。
 きちんと「それ」以後の対応を家族に納得させて指示をしておかなければ意味がないのである。

 ひどい家族であればコロリ後に医療機関にきて「こんな急に逝かれたのは、何か見逃していた重病があったんだろう? え? きちんと診ていたのか?」とクレームをつけてくるのである。
 こちらとしては「あっ、いや、ご本人がピンピンコロリご希望だったもので・・」と言いたいのであるが、それは理由にならないのである。
 そりゃ~ご本人は安楽に逝かれて満足でしょうが、残された者、特に我々医療関係者が「疑われる」こともあるのだ。

 とにかくお願いです。ピンピンコロリが一番いいのは分かっています。
 でもそうなる前にきちんと周囲の人たちに、その時の対応までをきちんと指示しておいてくださいね。
 そして・・・けっして「かかりつけ医に感謝してください」などとはユメユメ申しませんが、少なくともこちらにねじ込むようなことはしないように十分周知徹底をお願いいたします。

 ピンピンコロリなんて世の中でいってますが、なんだか面倒臭そうな予感がするなー。

PPK その2

2016年06月09日 05時58分33秒 | 日記
 実は救急車を呼んだ時点で、「安穏としたコロリ」ではなくなるのである。
 ま ご自分は逝ってしまうのでその後のことは分からないだろうが、残された人達が大変なことになる。

 まず救急隊は「突然の心肺停止です。蘇生処置します」ということになる。そして「持病はなにがあるのですか? え?吉田クリニックおかかり?」といってうちに電話をかけてくる。

 でもこちらから「あ~この方ピンピンコロリをご希望なので、そのまま何もしなくていいですよ」・・・・とも言えないので「いや特に致命的な持病はないのですが」という返事をせざるを得ない。すると救急隊は救命処置を始めてしまうのである。

 もしもご本人の準備がよくて?ご家族がすでにピンピンコロリを納得しており、また「何も延命処置を望まない」のであれば、電話口で「あ~、では午前中の外来が終わったら私が往診して看取るのでそのまま家に寝かせておいてください」ともいえるの。

 でも家族が本人のコロリ希望を知らなかったり納得していなかったりすれば、いまのシステムではその時点で「何かしなければ」ならないのである。

PPK その1

2016年06月08日 06時02分13秒 | 日記
 PPKとは何かとおもいきや、いわゆるピンピンコロリなのだそうだ。
 つまりピンピンと普段は丈夫で元気であり、死ぬときは何の苦痛も闘病生活もなくコロリと逝ってしまうということである。

 人間の健康維持と死に方の、ある意味、究極的理想の状態を表わしたものである。
 これは確かにその通りであるし理想でもある。ところがなのである。

 こんなのは今の日本の医療状況においては難しいし、このような患者のかかりつけ医はたまったもんじゃないと思うのである。普段から患者本人が「俺はピンピンコロリ、だからね、先生いいね」と言われていても、家族がそれを聞いていなかったり、納得していなければ、いきなりコロリと逝かれては残されたものが困るのである。

 まずはいきなり元気な患者が翌朝コロリしていたら、それを発見した家族は驚いて救急車呼ぶだろう。
 家族が本人のPPKの希望を知らなければ、当然それはPPKではなく「急死」か「不審死」となるのは今の世の中ではしようがない。


板挟み その2

2016年06月07日 05時34分47秒 | 日記
 まさか正当な事由を自分で勝手に決めるわけにもいくまい。
 「忙しいから書類はかけない」などというのも時に言いたくなるが言語道断である。
 となるといつも「正当な事由」は一体何かを示してほしいと思い悩むところなのである。

 時々「近々の診察がなく半年間も患者さん来院してないので書類は書けませんよ」というと家族の中には(「なんで書けないのよっ、じゃーどーしたらいいのよ」と今にも言いそうな)憮然とした表情をされることもある。
 こちらの弱い所は1か月前ならかけるが、何故半年以上前だと書けないのかの根拠がないので弱腰になってしまうのである。特に追加条文に「半年」などとの期間の記載はないのである。

 ただ介護保険の医師意見書記載は「半年以内に診療したことがある」ということが何となく記載義務条件になっているようだ(豊島区の場合)。
 しかしこれとて特に明文化されているわけではない。

 ま、といいつつも、寝たきりでほとんどクリニックに連れてこられないような患者さんの場合は半年だろうと1年だろうと「こそっ」と証明書を書いてしまうこともままある。違法と言えば違法である。
 でもなんとなく「ああこれは無診察記載なんだろうなあ」と感じつつも患者さんへ便宜をはかっているという「赤ひげ的自己満足感」に流されている。

 はたしてこれがいいことなのかどうなのか・・?

板挟み その1

2016年06月06日 06時06分58秒 | 日記
 医師法には「診断書など書類の求があったら正当な事由亡くしてこれを拒んではならない」という条文がある。またそれとは別に「患者を診察しないで処方箋や書類を書いてはならない」という条文もあるのである。時にこの板挟みになる。

 過去に数回だけ診察した人や、寝たきりで年に1回ほどしか通院できない患者さんの家族から、種々の証明書やら診断書やらの記載を求められることがあるのだ。これは「記載を拒んではいけない」のか逆に「書類を書いてはいけない」のかで悩むところである。書類記載の条文で「正当な事由なくしは・・・」の正当な事由に「無診察」であることが使えるかどうかが判断のポイントである。

 昔何かの解説本で読んだのだが、医師法のいたるところに出てくる「正当な事由なくして・・」の正当な事由とは実はほとんどないのだと書かれていたのを思い出す。例えば「正当な事由亡くして患者の診療の求を拒んではならない」という条文で、「医師(自分)の家族が危篤だから」というのは理由にならないと大昔に読んだことがある。

 それが現代にまだ通用するのかどうかは知らないが、患者の診療の求が最優先で自分の家族の危篤は後回しなのかと憤慨した記憶がある。

転送患者さん その2

2016年06月04日 05時20分43秒 | 日記
 しばらく横になっていたら血圧は正常に復帰した。しかしあの衣類まで濡れている冷汗はただごとではないと思った。
 患者さんを説得しながら救急車をよんで、連絡を入れていた大学病院循環器内科へ転送した。

 そして数日後、大学病院から手紙が来た。心筋逸脱酵素も正常で、心エコーも正常であり虚血性心疾患は否定的と・・・。う~む、診断ははずれたか~と少し落ち込む(ま 患者さんにとってはいいんだろうけど)。

 その後、手紙を読みすすめてみると肝機能異常があり、腹部CT検査にて「総胆管結石性胆管炎」であったとのことであった。確かにお腹が痛かったはずだ。

 ま これも入院が必要な疾患であったので、まあ大きな病院への転送は間違いではなかった。しかも後日談ではそのまま手術になったとのこと。

 でも自分の思惑と違うところなのでちょっと微妙・・・。
 医師でも素人(不適当な表現であるが)では、「腹痛」ということで腹部疾患をまず考える。
 ところが今までこのような症状で、多くの「下壁心筋梗塞」が見逃されてきたのだ。

 Decision makingとしてまず心筋梗塞を疑ったのは間違いだとは思わない。
 次回同じ症状であってもやはり心筋梗塞の診断を最初にもってくるだろうなあと思った。
 でもなんだか負け惜しみかなぁ?


転送患者さん その1

2016年06月03日 05時58分37秒 | 日記
 前項の救急患者で思い出した。
 以前、出先でめまいが起こり、上腹部痛を訴える患者さんがこられた。

 来た時は、上腹部痛(いわゆる胃痛)があり、冷汗をかいて顔色不良、血圧は88/60mmHgでショック状態である。熱はない。さて救急医療関係者なら、すぐにピンとくるはずである。

 真っ先に考えなくてはならない疾患・・・それは急性心筋梗塞(下壁梗塞)によるショックである。
 これは緊急性は高い。すぐに大きな病院にて精査と集中治療を必要とする。

 まず最初に転送先を考えながら心電図をとった。えっ、あれ? 下壁梗塞の特徴的所見であるⅡ、Ⅲ、aVf のST変化はさほど強くない・・・(ひいき目にみれば少し上昇してるかも?といった程度)。

 一瞬、大きな病院への転送への気持ちが揺らいだ。・・・しかしながらとりあえずはショック状態ではある。開業医レベルの状態ではない。患者さんは少し症状が軽快したのか
「転院するんですか・・・? 救急車に乗るの?・・」とやや怪訝そう。
 さてさてどうしよう・・・。

救急搬送 その3

2016年06月02日 06時07分41秒 | 日記
 まあ、帰宅直後に倒れて救急病院に搬送された場合、既往歴や投薬内容の確認がその病院からあるのでその時点で「ああ、見落とした」ということがわかる。
 今までそのような情報確認が救急病院からなされたことはないので結果的には重大疾患の見落としはないであろうと想像できるのである。
 見落とをしたら生命危機に陥る疾患の来院頻度は決して高くはないが、もし見落としたら言い訳はできない。

 もちろんこちらから紹介する時は確診ではなく疑診なので、もしかしたら実は軽症である可能性もあり、搬送先の病院で
「また吉田クリニックかよ~、いつも重症といいながら軽症でたいしたことないの送ってくるなぁ~」
と言われていることも想像できる。

 はい分かります、その気持ち。自分が大学病院の救命センターに勤務していた時は紹介患者で、ほとんど帰宅させられるような軽症患者が時に「重症」と称し紹介搬送されてきて、いつも「そう」思ったものですから。
 いやはや開業して大きな検査機器がないと自分の勘だけがたより・・・。
 Over triage(軽症を重症の状態と過大に評価してしまうこと)になっても勘弁ねー。

救急搬送 その2

2016年06月01日 05時29分21秒 | 日記
 救急車で他の病院へ転送し緊急治療を必要とするような患者さんが当院に年に3~4人は来院する。
 この頻度は近隣のクリニックと比べ低いのか高いのか近隣の先生とこの件について話したことがないのでよくわからない。

 でも開業して9年目であるが、見逃したらかなり危険であるような緊急性の高い疾患もなんとか時期を逸せず転送している(冷や汗ものであるが)。
 うちから搬送した急性重症疾患は、くも膜下出血、急性心筋梗塞、胸部大動脈解離、結腸穿孔性腹膜炎、腸閉塞、急性呼吸不全、ヘルペス脳炎などである。
 これらはそのまま帰宅させていたら危なかったであろう。

 いつも感じるのであるがなんだか毎日が綱渡りのようである。特に今まで急性な重大疾患の見逃しは「たぶん」ないと思うがこれはきっとたまたま運がいいのであろう。「たぶん」というのは帰宅した直後に急変してそのまま救急病院に搬送されたならうちには情報がこないので知らないままでいる可能性も否定できない。