次の瞬間、「バチーン」と激しい音がした。この男が店員を殴ったのである。店員は慌てて男の手を押さえて「あ 暴力です、暴力はだめです、警察呼びます」といったところ、その男は店員の手を振り払って逃げていったのである。当たり前であるが店員は憤まんやるかたない。しかし次に自分が順番をまっているので仕事を中断できるわけはない。自分のカットの順番は運が悪いことにこの殴られた店員であった。こんなに興奮して血圧のあがっている店員がカットしたのでは乱れてしまうのではないだろうかと少々不安になった。案の定、カットしながらのこの店員の呼吸状態というか鼻息は「ふーっ、ふー」と荒いのである。こちらも何も触れに訳にはいかないだろうと思って「世の中、おかしい人がいますね」と声をかけるにとどまった。店員は「髪の毛なんて背中に1本も入ってないんですよ」と答えるのに精いっぱいだった。その後は何事も会話もなく10分が過ぎたが、自分の場合、クリニックでの診療内容にクレームをつけようと思えばいくらでもつけられるので、世の中本当に厳しいことを実感した次第である。それにしても¥1000単価で、ビンタまでされたこの店員は「割が合わない、理不尽である」と思ったろう。同情する。<o:p></o:p>
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