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タッカの夢 ~VOICE~ 2013

シンガーソングライター タッカ の夢路日記
ユメこえショップ オーナーの日記
ユメこえ農園 オーナーの日記

笑顔の見える景色 シナリオ 最終回

2009-04-13 23:12:54 | 笑顔の見える景色 シナリオ
○函館空港


幸一「もう少しで、ここに、真美が来る」

下のロビーに移動する幸一。行き来する、人の流れを見ている。ウインドーに映る自分の顔、笑顔を作る。

真美、駐車場からかけてくる

幸一。真美の姿を見つける。

真美。横断歩道で止まる。ウィンドー越の幸一を見つける

真美「コウイチ」
幸一「マミ」

ウインドー越に二人の指が触れる。ゆっくりと回転扉の入口の方に歩く。真美が回転扉に入る。手を出す真美。手を取る幸一。


○大森浜(啄木公園)


貴之、波打ち際に立っている。小豆、車で到着。車を降り、波打ち際の貴之に近づく

小豆「お疲れ様」
貴之「今日は、ありがとう」
小豆「本当です。自分の思いを、電波に乗せ過ぎです。冷や冷やもんです。リボンに書いてあるメッセージの事、何も言ってなかったじゃない。しかも、あなたのメッセージだなんて、どうかしてるんじゃない。公共の電波なのよ。あなたのものじゃないの。正直、どうなるかわからないからね、覚悟していて下さい。」
貴之「ごめんな」
小豆「ところで、二人は、会えたのかしら」
貴之「会えたって。さっき連絡が来たよ。コウさんは、もう、飛び立った」
小豆「人の為には、随分と一生懸命な人なんですね。幸一さんへの思い。その分の愛情を美紀さんに、使ってあげるべきだったんじゃないの」
貴之「もう、美紀の事は話すなよ。君と出会う前に、もう終わった事なんだよ。もう、ここには、いなくなる人なんだよ」
小豆「ヒドイな。そんな言い方」
貴之「何だよ、人の気も知らないで」
小豆「知らないよ。知る気もないけど」

浪打際を、歩く小豆、後ろから言葉をかける貴之

貴之「出会いをどう思う」
小豆「・・・」
貴之「コウさんの存在をどう思う」
小豆「・・・」
幸一「美紀の存在をどう考えるんだよ」
小豆「・・・」
幸一「この、存在が、ひとつでも欠けていたら、出会う事なんて、あり得なかったと思っている。出会う事は出来なかったと思う・・・小豆さんと」
小豆「・・・」
貴之「小豆さんにとっても・・・この出会いが・・・意味のある出会いだと信じている」
小豆「・・・」

振り返る、小豆

貴之、小豆を抱きしめる

貴之「小豆さんにとって、僕という存在が特別なものになりますように。そう感じさせるよ」

波の音が二人に響き渡る

照れくさそうに、駐車場の方へ走り去る貴之。
小豆、海の方に向いて思い切り叫ぶ。

小豆「ありがとう」

貴之、立ち止まる。
振り返り、小豆の方を見る。
小豆も振り返る
貴之、手を伸ばす
小豆も手を伸ばす、ゆっくりと歩き始める。

貴之がつぶやく

貴之「みんなの顔が笑顔に変わったよ。笑顔の見える景色」

貴之の手と、小豆の手が・・・つながった。

笑顔の見える景色 シナリオ17話

2009-04-13 08:33:48 | 笑顔の見える景色 シナリオ
○小豆の部屋


電話を切る。小豆、苛立ちベットに携帯を投げる。

小豆「何で、私って、いつもこうなんだろう。ああ、もうやだ」


○美紀のマンション(午後)


貴之、車の中から、マンションの玄関を見つめている。しばらくすると、来客の見送りに美紀が出てくる、来客を見送る。
貴之、車から降りて、入口に向かう。美紀が気付く。

美紀「頑張りました」

貴之の胸に顔を埋める。

貴之「これから、どうするんだ。二人きりでスタートしょう」
美紀「ばかだな。この前言ったでしょう。私は、東京で、一から歩き出すの。お互いに、それぞれの時間を歩くの」
貴之「そうだったね」
美紀「うん。りぼん。いい放送だったよ」
貴之「ありがとう。東京には、いつ発つんだ」
美紀「来週には発ちたいな」
貴之「ずいぶん、早いな」
美紀「早く、切り替えたいの」
貴之「美紀。何だか、強がっているの伝わってくるぞ」
美紀「あたりまえじゃない。40過ぎの女が、切り替えるのには、勇気がいるのよ」
貴之「落ち着くようだったら、夜、行ってもいいかい」
美紀「幸一、そういうのって、逆に、もっと傷つけるんだぞ。苦しくなる。止めましょう、そういうの。友達として、あなたの活躍いつも祈っているから。」
貴之「さようならは、この前したから、言わないぞ」
美紀「君は、若いなあ」
貴之「ばかにするなよ」
美紀「ここで、最後まで見送るから、帰ろう」
貴之「わかった。じゃね。又」
美紀「うん。またね。来てくれてありがとう」

貴之、歩き出す

美紀「貴之。私も、ここを去る前にリボン役になれたかな。小豆。素直じゃないけど、いい子だから。ははっ。ごめん、ごめん。大きなお世話か」
貴之「大きなお世話」

手をふり、姿が見えなくなるまで、貴之、時々、振り返る。


○FMいるか「ポケットの中の虹」


貴之「こんにちは、りぼんです。今週も始まりました。ポケットの中の虹。皆さん。昨日の函館の夜の月、見ましたか。まるで、夜に浮かぶ太陽のような、眩しすぎる、まんまるのお月様でした。思わず、僕は、そんな光に誘われて、海岸線を走り空港まで、走って来ました。途中、海が、明るく照らされて、これも又、素敵な景色を感じて来ました。今日の、街のリボンですが、そんな、素敵な景色を、もう一つ見つけたのでご紹介します。その前に、1曲お聴き下さい・・・」

コウさん聴いていますか・・・


○函館空港


幸一空港待合ロビーでイヤホンを耳にあて、FMいるかを聴いている。

曲「碧い月のワルツ」が流れる。

叔母「コウちゃん、珈琲飲みにいかない」
幸一「いや、少し、ここにいます」

   タカ。いい曲だよ。


○FMいるか「ポケットの中の虹」


幸一「聴いていただいた曲は、碧い月のワルツでした。それでは、街のリボンをお送りします。今日は、立待岬で見つけた、不思議なリボン街道をお伝えします。いるか号が中継に行っています、小豆さんを呼んでみましょう。いるか号中継の小豆さん」


○立待岬


小豆「はい。いるか号です。今日、私は、スタジオを飛び出して、立待岬にいます」
貴之「今日は、天気も良く、立待岬からの景色も、とても、眺めがいいのではありませんか。早速、立待岬で見つけた、街のリボンをお伝えして下さい。小豆さんお願いします」
小豆「はい、それでは、立待岬で見つけたリボンの景色をお伝えします。まるで、誰かが迷わないように、結びつけたリボンなのでしょうか、私には、そう感じられました。実は、この展望台に辿り着くまでの道の両脇にですね、赤や、黄色のリボンが、大体5m間隔ぐらいにでしょうか、結ばれているのです」


○函館空港


幸一のラジオ

小豆「目線ぐらいの高さで、統一されています、規則的に結ばれているのです。風になびく、リボンを見ていると、自分と、現実を結びつけている、悲しげな音が、ゆれるリボンから聴こえてくるようなのです。何故、そんな事を、思ったかといいますと。実は、私が、今立っている場所なのですが、遊歩道の一番奥と言えばわかるでしょうか、ベンチが置いてあるのですが、その前の手摺だけに、リボンが何本も結ばれているんですね」


○立待岬


貴之「メッセージが書いてあったと思うのですが、読んでいただけますか」

   貴之、進行表にない質問をする。

小豆「はい。その中の一本のリボンにありがとうと書かれているリボンが風にそよいでいます。そして・・・」

小豆、リハーサルの打ち合わせとの違いに戸惑う。

貴之「そして、もう一つのメッセージ」
小豆「はい、そのリボンには返事が、書かれてあります」


○函館空港


   幸一のラジオ

幸一「返事?」

幸一のラジオ

小豆「コウさんが、つくり出したリボン街道に涙が止まりませんでした。貴之。スタジオの高井さんのメッセージなんですね」

幸一、涙が溢れる

幸一「どうして・・・」

幸一のラジオ

貴之「はい。そうなんです。彼は、交通事故で生死を彷徨いました。彼は、わずかな命の灯火を、この地上に結びつけました。しかし、多くの障害も背負う事となった。彼は、途切れ途切れの、言葉のかけら達を貯め続けた。そして、ぼくは、彼と出会い、そして、りぼんが生まれたんです」
幸一「ありがとう」


○FMいるか


貴之「彼は、道に迷う。障害から、場所の認識や、方向も、上手に覚えることができない。彼は、道に、リボンを結ぶ事で、自分の欠けているものを埋めたのだと思います。コウさん、私にも打ち明けず、たった一人で、一生懸命に努力していたんですね。彼の詩を曲に乗せ1曲聴いて下さい。すてっぷ

見渡す限り 何にもない
何処かで地図を
無くしちゃった
吹きすさぶ 風を受け
曲の間、小豆のいる立待岬、幸一のいる空港、スタジオの貴之、車で走っている真美、荷造りの美紀の映像が回る
歯をくいしばり もう一段
すてっぷをあがると
目の前に広がる
素晴らしい ランドスケープ
遠くで手を 振るあなたが
見えたなら
もう 地図はいらない
もう 地図はいらない」


○FMいるか


貴之「メッセージが届いていますので、ご紹介します。札幌の真美さんからです」


○国道5号線「七飯赤松街道」


真美が運転する車内。カーラジオから流れるFMいるか

貴之「私は、車で函館に向かっています。大切な人を見送る為に、函館空港に向かっています。会えるかななんて心配もあるのですが、信じています。真美さんからのメッセージでした。ありがとうございます。真美さん、今どのあたりを走っていますでしょうか。安全運転でね、向かってほしいと思います。そして、どうか大切な彼と会えますように。そんな、今、まさに会おうとしている、お二人に、りぼんの曲をお送りします。また会うその日まで、さようならの虹」

曲が流れる。真美の思いは曲と共に、車を追い越し、幸一の待つ、函館空港へと、向かう。

笑顔の見える景色 シナリオ16話

2009-04-12 11:21:50 | 笑顔の見える景色 シナリオ
○立待岬(朝)


貴之、車で立待岬を目指す。谷地頭の電停を過ぎた、電柱のところに結ばれたリボンを見つける。貴之は、商店街に車を停め、歩いて立待岬の方へ歩き、リボンを探す。5m間隔位で、リボンが、目の高さ辺りで結ばれている。

貴之「コウさんが結んだんだ」

立待岬の公園まで、リボンは続く。

貴之「コウさん、何処にいるのですか」

ベンチのところの手摺には、リボンが集中していた。貴之はベンチに腰を下ろす。

貴之「ここに、いたんですね。」

コウさんは、ここで、海を眺め、何を考えていたんだろう。この先の、深い海を眺めると、少し不安にもなった。

貴之「この先には行っていないですよね」
貴之、リボンを一本一本確かめる。一つのリボンにだけ文字が書かれてあった。
貴之「タカ。ありがとう」

幸一、ポケットから、携帯を取り出す。真美に電話をかける。

真美「もしもし。おはよう」
貴之「ごめんなさい。こんな朝早く、どうしても、真美さんに伝えなければならないことがあって」
真美「うん、いいの。ちょうど目覚ましが鳴ったところだから。おはよう。どうしたの」

貴之リボンの景色を伝える。

曲「真赤なリボン」が流れる。

寂しさに 涙がこぼれたら
世界の果てまで 歩きます
きっと風は強く
吹きつけます そこで僕は 
涙を乾かし
風に向かい 人差し指に
真赤なリボンを結びます 
リボンはまるで 血のように 
風になびくことでしょう
 
貴之「今にも笑って、姿を現しそうな感じなのだけど」
真美「私、行くわね」
貴之「はい、是非、真美さんに見てほしいです。今、目の前にある、リボンの一つにだけなのだけど、ありがとう。と書かれているんです。・・・真美さん。ちょっと、待って下さい」

貴之、手摺の柱の少し向こうの雪から手紙のようなものが顔を出しているのを見つけた。

貴之「真美さん、一度、電話を切ります。後で、すぐにもう一度電話しますから」

貴之、手を伸ばし、取り出す。

貴之「手紙だ」

貴之、中を開ける。さようならの虹の写真と手紙が出て来た。手紙を読む。

貴之「変わらず、元気でしょうか。この手紙をかきながら、出すことをためらっています。あなたの元に届けようかどうしようか。それでも、こうやって、書いています。気持ちに整理をつけるためにも。始まりも、こんな雪の日だったよね。いつものようにバンドの練習帰りに君から突然のメールが来て。僕は、君の部屋でワインを囲んでいたよね。ベットに腰掛けていた僕を見上げるようにして、君が恥ずかしそうに告白してくれたっけ。そして、初めてのキス。僕達は、ただ、抱き合って眠ったっけ。まだ、何の約束もなかったけど、心はこの上なく満たされていたんだよ。
あれから、何年か過ぎて、もう、僕はひとりで僕の道を歩き出してしまった。別れをつげなくてはならないものが沢山あったよ。今はもう住んでいるところも、思い出せない。君とこれで、最後のさようなら、さようなら、一番大切だった、あなたにさようなら。
僕は、22日に東京へ旅たつ。どこまで、この失われた機能が戻るかわからない。それでも、僕は、もう少し、頑張ってみるよ。りぼんの実現の日を夢見てね、タカは、僕の願いを形に変えてくれた。だから、かならず、戻ってくる。その時は、真美と友達として、握手を交わせたらいいね。もう一度会いたかった。抱きしめてほしかったよ。この写真は、もういらなくなったよ。曲に変えて、返したつもりです。   幸一」

貴之、真美へ電話をかける。

貴之「もしもし、真美さん。コウさんの手紙を見つけました。今から読むね」

曲「さようならの虹」流れる

真美の涙。

手紙の中の真美と幸一の楽しかった頃の思い出のシーン。

真美「金曜日。飛行機かしら」
貴之「だと思います。この日はFMいるかの放送日なんです。コウさん、やっぱり、放送聴いていたんです。だから、ありがとうと書いたんです」
真美「わかった。行くわ。また、あとで連絡する」

貴之、リボンを確認しながら、来た道を戻る。携帯が鳴る。小豆からだ。

貴之「もしもし」
小豆「昨日はありがとう。どうだった。リボン」
貴之「すごいよ。コウさんの仕業だよ。次の放送に使いたいのだけど、相談にのってくれるかい」
小豆「わかった。あのね・・・」

ため息をつく小豆。

貴之「どうしたの」
小豆「美紀さんのお世話していた人、昨夜亡くなったって」
貴之「そうか」
小豆「行ってあげなさい。マンションで親族が集まり、密やかにやるって言ってた」
貴之「そうか」
小豆「行ってやりなよ」
貴之「命令するな」
小豆「相談にのるのやめた」
貴之「それと、これは別でしょ」
小豆「とりあえず、伝えましたからね。放送の打ち合わせは、また、その後で」

小豆、ぶつりと電話を切る

貴之「何だよ。いったい」


笑顔の見える景色 シナリオ15話

2009-04-11 19:17:58 | 笑顔の見える景色 シナリオ
○まちづくりセンター(夜)


貴之、センター内のオタジーラで珈琲を飲み柄にもなく絵本の原案を描いている。背後から、小豆が忍び寄る。

小豆「柄にもなく、絵本なんて描くんだ」
貴之「えっ。なんで。何っ。どうしたの」
小豆「飲み会の帰りだったんだけど、窓から、あなたを見かけたから。手を振ったのにぜんぜん、気付かないのね」
貴之「ははっ」
小豆「私も、珈琲飲んで、酔い覚まし、しようかな」
貴之「お好きなように。小豆さん、この前の放送の意見を聞きたいのですけど、小豆さん全然、メール返事くれないんですもん」
小豆「ゴメン。うん、とても、やさしい印象で、ほっとさせる雰囲気だねって、スタッフとも話していた」

貴之、窓に写っている小豆と目があってドキッとする。

小豆「美紀さんのことなんだけど」
貴之「えっ。何。友達」
小豆「函館は狭いんだから。実はね、あなたの紹介を受けて以来、美紀さんの連絡が取れないの、以前から、あなたの事、聴いていたんだ。支えになってくれる人がいるって。どうして、あの日、引き止めて上げなかったの。大きなお世話か。まあ、社長を看取ったら、次のステップを行きたいと言っていたけど、あなたといたら、強くなれないとも言っていたけど・・・。連絡が取れないのは、気になるな。変な事になっていなければいいのだけど。大きなお世話か。ゴメンなさい。お絵かきの、お邪魔をして、それでは」

貴之、気になり、携帯のアドレスを開く。小豆、又しても、唐突に

小豆「いいところ、あるんでしょう」
貴之「ふざけないで下さい。何ですか」
小豆「ゴメンなさい。ちょっと、からみたくて。そう、そう。バンド名、りぼん。あなた、リボン結ぶ趣味なんてある」
貴之「ありません。何ですか」
小豆「そうよね。よかった。美紀さんのことよろしくね」

何かが、引っ掛かった。リボンだ。窓の外を、小豆がアッカンベーをして、過ぎ去ろうとしていた。貴之は、待ってのジェスチャーをし、席を立つ。

小豆「何っ」
貴之「リボン結ぶ趣味って。何」
小豆「やっぱり、あなたなんだ」
貴之「そうでなくて。わかるでしょう」
小豆「いるか号の中継で立待岬にハルヒちゃんが行った時の話なの。かなりの数のリボンが通りに結んであったらしい」
貴之「ありがとう」
小豆「ちょっと待って」
走り出す、貴之。先回りの道を見つけ走る小豆、一足先に、車の前にいる。
小豆「送ろうかなんて。言ってくれるのかなと、期待したのですけど」
貴之「では、ちょっと付き合っていただけますか」

助手席でくつろぐ、小豆。
立待岬に向かう。いつの間にか、眠りについてしまう小豆。
シートを倒してあげようとすると、抱き寄せられる貴之。
貴之、あわてて離れる

小豆「いじわる」

半分寝ぼけているのか、そうでないのか。手を握ってあげる貴之、握り返す小豆。

貴之「もう、外は暗いよな。リボンは明日の朝にしよう」

笑顔の見える景色 シナリオ14話

2009-04-09 07:59:52 | 笑顔の見える景色 シナリオ
○立待岬


幸一、リボンを人差し指に結んで、風になびかせている。血のように風になびく

幸一「僕の冒険も、残り少なくなってきたな。真美は、タカのところに、手紙を出したかな。さようならの虹は、僕に現実と希望をくれた。この障害を少しでも克服して、タカと音楽を再会させる。りぼん。そして、Re Bornだ。」

リボンを手摺に結ぶ。幸一、心の中でつぶやく

幸一「僕は交通事故で全てを失った。自分までも大きく、欠けてしまった。真美の所には、戻れない。でも、完全に失ってしまうのも恐い。僕は、真美とタカを結びつけた。僕の悪戯。いや、そうではない、僕が、僕であるためには、必要だったんだ、僕は、さようならの虹で心を乱し、さようならの虹で救われた。そして、希望をもらった。真美は、まだ、今の僕の状態をイメージできないと思う、逆に、タカは、交通事故前の僕を知らない。僕は、さようならの虹を抱えた真美とタカを結びつけた、それで、僕自身の隙間を埋める事ができる、そして、希望を持って何とか歩き出す事ができそうだよ」

ベンチから立ち上がる幸一、耳にイヤホンをあて、ダイヤルをFMいるかに合わせる。帰りの道を歩き始める。リボンを結びながら。


○FMいるか


小豆「暮らし綴れおり、続いては、お天気の情報をお伝えします。気象協会の佐藤さん。こんにちは」


○立待岬


目印のように、幸一、リボンを結びつけていく。


○FMいるか


小豆「佐藤さんありがとうございました。今週から、新コーナがはじまります。音楽と福祉をテーマにした10分間の短いコーナです。パーソナリティーは、函館で活動する、音楽ユニットりぼんの高井貴之さん。コーナータイトルは。ポケットの中の虹です。この後CMを挟みまして、お送りいたしましょう、皆さんお楽しみに」


○立待岬


足が止まる、幸一。

幸一「もう一人の僕が、一つ一つ、想いを形にしていってくれている」


○FMいるか


   高井貴之、スタジオに入る。
   笹本小豆、キューを送る。


貴之「こんにちは、始めまして。今日から始まりました。新しいコーナー。ポケットの中の虹、私は、りぼんの、高井と申します。まず、りぼんの説明からしなくてはいけませんね。りぼんは、私、高井貴之と、奥田コウさんの二人で結成された音楽ユニットです。相方のコウさんは、実は、2005年の6月に大きな交通事故を起こしました。居眠り運転でコンクリート柱に激突、生死を彷徨い、それでも、命をつなぎ止めた、しかし、多くの障害を抱えての命でした。全てを失い、この函館で希望の持てない生活を送っていた。そんな中、私と出会い、結成された音楽ユニットりぼんです。りぼんという名前の意味ですが、りぼんは、プレゼントに結んであるリボンのように、僕達の音楽が人と人を結びつけたり心と心を結びつけていくような音楽を作っていきたいという思いと、もう一つ、英語でRE BORNとも読めます。再び生まれるという意味があります。障害を抱えている、コウさんが、音楽を通して、又、ここから、生まれ変わるんだという願いを込めています。しばらくは、私が一人で放送をお伝えします。コウさん聴いていますか。頑張って放送していますよ。それでは、早速、りぼんのメッセージソングをお聴き下さい。番組タイトルにもなっています。ポケットの中の虹という曲です。

   曲「ポケットの中の虹」

ポケットの中は いつも
虹の欠片を 詰め込んでいた
誰にも わからない
宝物で いっぱい
心配だから
いつも手をつないでいたんだ
何のあてもなく
ただ 明日ばかりを 信じていた
二人で 寄り添うことで
全てのもの 見ようとしていた
見える気がした」


○立待岬


目の前の大森浜の景色を見つめ、イヤホンから流れる、放送に涙が、溢れ出す。

幸一「ありがとう」


○FMいるか


曲の続き

貴之「二人で寄り添う事で
全てのもの見ようとしていた
見える気がした」

笑顔の見える景色 シナリオ13話

2009-04-07 22:27:48 | 笑顔の見える景色 シナリオ
○札幌(夜)


貴之、札幌の街、車を走らせライブ会場へと向かう。

○ライブハウス


貴之は、ライブ会場の一番後ろの片隅に座りライブの音を聴いている。最後のバンド。加納真美(34)がいるバンド。演奏が始まり、そしていよいよ最後の曲。
何故か、何も言わず、バンドのメンバーが楽器を脇におき、ステージを下がってゆく。何故かステージの上は加納真美一人だけになる。

真美「コウがいなくなって、初めてのライブです。交通事故に遭ったコウは、もう、札幌にはいません。今は、函館の実家にいます。私も、バンドのメンバーもコウが病院のベッドの上で、何本ものチューブにつながれ、包帯でぐるぐる巻きの体と、変わり果てた顔の記憶が最後です。ため息をつこうものなら、命の灯火も消えそうな感じの状態しか、記憶に残っていません。彼のギターが鳴っていないのも、違和感を感じてたまりません。でも、私達は、彼の為にも、今日のこのライブを実現させたかったのです。実はね。先日、彼から手紙が来ました。中には、MDが入っていました。また、音楽を始めるよと。曲が録音されていました。聴いて。下さい。さようならの虹。・・・私が。送った。し、ゃ、し、ん」

真美、言葉に詰まる。声を出さず、泣いている。やがて、落ち着きを取り戻し、顔を上げ、鍵盤に両手を上げる。演奏が始まる。

曲「さようならの虹」

真美「太陽のまわりに
 虹が円を描くのを
見た事あるかい
それは さようならの虹
最後の贈り物だね
まるで夢見たいな景色で
間抜けな僕は 何度も
何度も眺めるんだ
知らないうちに胸が
締めつけられていくよ


  幸一、交通事故で病院へ運ばれる回想の映像。チューブでつながれた幸一。声をかける、真美。


夢のような 悲しみ
空に 映しだされた
空に映ってしまった
まぼろしの 悲しみは
目をくらませるほどの色
まるで夏の花の色
ぼくら お互いに
独りぼっちだったものね


  真美は、幸一の母親から「もう、元の体に戻れないから、幸一の事、忘れて」と、別れを求められていた。


太陽の まわりに
虹が円を描くのを
見た事あるかい
それは さようならの虹」


○ライブ会場外


貴之、他のお客と共に、一度、会場を出た。そして、タバコを吸う。

貴之「コウさんは、僕がつくった曲を、彼女に渡した。そこには、どんな思いが結ばれているのだろう。ほんのわずかでも、つながりを切りたくない想いから、だけなんだろうか」


○ライブ会場


幸一、会場へと戻る。会場を片付ける真美に近づく。

貴之「今晩は、初めまして。チケット送って下さり、ありがとうございました。函館から来ました。何故か、手紙とチケットの入った小包は、僕の職場の住所に届きました」

状況を察した真美は、奥のテーブルに貴之を案内。

貴之「りぼんという名前でユニットを組もうと誘ってくれたんです。でも、その直後に連絡が取れなくなってしまった。でも、あなたから、手紙とチケットが届いた。そして、僕は、今ここにいる。あなたは、さようならの虹を演奏してくれた。あなたの、さようならの虹と僕の、さようならの虹が結ばれた。なんだか、不思議な感覚です」
真美「あなたの事は、コウの手紙に、書いてありました。私の写真を見つけてくれて、助けてくれたって、そして、何より、偶然にも、もう一つのさようならの虹と出会ったよと。生きる希望を見つける事が出来たよと」

   真美、涙ぐむ。

会場がクローズになるので、彼女の誘いで、近くのバーに移動する事になった。


○バーのボックス


真美の行きつけの店

真美「飲んでいいかしら」

貴之にもアルコールを勧める

貴之「僕は、このままとんぼ返りなので、珈琲にします」
真美「コウ、どこに行ってしまったのかしら、色々なものにさようならをしていくよ一つ一つ。と手紙に書いてあったの。もちろん、私の存在にもさようならをするよと。コウはどんな生活をしているのかしら。体はどうなの」
貴之「障害は、見た目より重たい。記憶はひっくり返ったパズルのようだと言っていた。そして、左側の麻痺でギターは以前のようには弾くことができない。道や、場所の位置が認識できないので、道に迷います」
真美「ギターボーイだったのに」
貴之「これ・・・」

貴之、幸一のノートを、見せる

真美「痛いな」

貴之、窓に写る、あまりにも綺麗な真美の表情に複雑な感情を抱く

真美「ありがとう」
貴之「来週から、地元のFM局のFMいるかの番組を週一回、持てる事になったんです。実は、これも、コウさんの希望だったんです。実現したのですが、コウさんは、姿を消したまま。でもね、たぶんなんですけど、聴いてくれると思うんです」
真美「私も、そんな気がする。何だか、一生懸命頑張っている姿が感じるのよ」
貴之「まだ、沢山お話をしたいのですが、これで、帰ります。コウさんの詩に、曲がついたら、随時送ります。携帯番号とメールアドレス、これに書いてあるので、いつでも連絡下さい」
真美「会えてよかった。手紙をもらってから、ずっと、会いたいと思っていたんです。今日会えると信じてたんだ。会場で、曲を聴いてくれていると感じてたんだ」

真美、握手を求める

真美「あったかい」

貴之、ドキドキを押さえ、席を立つ。

貴之「真美さん。コウさん、僕と真美さんをつなげたのは何故だと思います」

首をかしげ、首を横に振る。貴之、手を振り店を出る。

真美「何だか、コウに会えたみたい」

   真美、握手の温もりの残った手を胸に当てる。

笑顔の見える景色 シナリオ12話

2009-04-06 23:03:05 | 笑顔の見える景色 シナリオ
○FMいるか「カフェペルラ」


パーソナリティー笹本小豆(32)と番組の打ち合わせ。

小豆「早速、今月の第三金曜日から、番組やる方向で考えてみませんか」
貴之「本当ですか。はい。是非やらせて下さい。がんばります」
小豆「番組のタイトルどうしましょうか」
貴之「考えているのがあるのですが」
小豆「何です」
貴之「ポケットの中の虹」
小豆「えっ」

とても、驚いた様子に、貴之も言葉に詰まる

貴之「ごめんなさい。説明しなければならないですね。実は、このタイトルには意味がありまして」

貴之は、カバンから幸一のノートを取り出しテーブルの上に置いた。

小豆「見てもいいかしら・・・ポケットの中の虹」
貴之「この、ノートの持ち主なんですけど、彼は、交通事故から障害を抱えていて、それで、何もかも失い、何も無い、函館に帰ってきた。僕は、偶然、函館公園で彼と出会ったんです。噴水の前で倒れた彼と。彼は、さようならの虹という題のついた、写真を持っていた。僕にも、偶然、本当に偶然に、さようならの虹というタイトルの曲を持っていたんです。そこからが、始まりであり、でもまだ、そこからは何も動いてもいません。実は、出会ってすぐに、彼の居場所がわからないのです。FMいるかの番組を持ちたいというのは、彼の願いなんです」
小豆「この方だったんだ」
貴之「えっ」
小豆「ポケットの中の虹というラジオネームで、メッセージを送ってくる人がいたの。最近は届いていないけど、それまでは、一ヶ月位かな、毎日のように、メッセージが届いた。絶望や、死をも連想させるので、番組では使う事は、なかったけど、少し、心配してしまう内容だったわ」
貴之「どんな、内容でした」
小豆「この、ノートに書かれているような文章よ。行き場を失った子猫のそばで、僕は永遠の眠りにつくよ。最後に届いたメッセージは、この部分と一緒だな。僕は、もう少しで、ここからいなくなる。それが、いいことなのかどうか、わからない。しかし、後ろを向いても、何もないのだから。・・・その後、メッセージは届いていないの。死すら感じてしまった。ごめんなさい。こんな事言ってしまって」


○立待岬


とぼとぼ、歩く幸一。道の脇の手摺にリボンを結んでいる。


○FMいるか、カフェペルラ


   番組の打ち合わせが終わる。

貴之「ありがとうございます。来週から、頑張ります。よろしくお願いします。
小豆「あなた、美紀さんの言うとおりの方ですね。来週から、一緒に頑張りましょう」

握手を求める小豆。応える貴之



○函館山山頂


打ち合わせを終え、貴之、ロープウェー乗り場へと向かい、そして、山頂へ。展望台から、函館の景色を眺める。

貴之「コウさん。きっと、このどこかにいるのですよね。待っていて下さい。必ず、会えると確信しています。ポケットの中の虹いよいよ始まります。その前に、札幌へ行ってきます。真美さんのライブに行って会って来ます。それが、コウさんの希望のような気がするので」

笑顔の見える景色 シナリオ11話

2009-04-05 20:53:15 | 笑顔の見える景色 シナリオ
○職場


貴之、職場に到着。職場の裏玄関のカギをあけようとすると、携帯が鳴る。
FMいるか、笹本小豆(32)から。

貴之「もしもし」
小豆「もしもし、FMいるかの笹本小豆と申します。先日、美紀さんからお話がありまして、電話しました」
貴之「あっ。はい。ありがとうございます」
小豆「大体の、お話はお聴きました。街に広がるリボンを探すをテーマにしていきたいとか」
貴之「何だか、お恥ずかしいです」

電話の向こう、舌を出す小豆

貴之「一度、会って、是非、お話を聴いて頂きたいと思うのですが」
小豆「はい、是非。実はですね。週に一度だけ、短い時間のコーナ枠がありまして、もしかしたら、組み込めると思います。いずれにしても、お話ししたい内容もお聴きしないといけませんので、近い内にお会いしましょう。いつお会いしましょうか」

コウさん早く姿を見せて下さい。FMいるかの番組、実現出来るかもしれません。番組タイトルは。ポケットの中の虹ですね。


○職場の中


貴之、正面に回り、中からシャッターを上げる。
玄関に誰かが立っている足が見える。

配達員「すいません。シャッターのカギの解除するのが聴こえたものですから」
貴之「あっ、はい。すいません。ありがとうございます・・・奥田幸一」
コウさん宛ての封筒小包。宛先は加納真美。幸一の札幌の彼女からだった。
貴之「何故。ここに」
貴之、荷物を開ける。中からは、手紙とライブのチケット。思い切って、手紙を開く


○手紙


幸一へ

手紙、そしてMDありがとう。とても、嬉しかった。幸一がまだ、音楽を諦めていない。続けている事に、よかったって思った。MDに入っている曲、さようならの虹も歌になったのですね。メンバーの方の歌声も、いい感じで、曲とあっているなと思いました。とにかく、嬉しいです。なんて、言葉で現すと。簡単に聴こえてしまうけど、本当に、手紙嬉しかったんだからね。あなたが、いなくなって正直、抜け殻の時間を過ごしていました。あなたが抜けてしまったバンドだけど、音楽活動が私のたった一つの、あなたとつながっていると思える現実にあるものだったの。たった一つの救いだった。本当は、今すぐにでも、会いに行きたいのだけど、我慢します。幸一の今は、まだ、遠くから見守っていてほしいという気持ちもわかるので。幸一のりぼんが、本格的な活動になるのを待っています。楽しみにしています。一応、ライブのチケット入れておきます。幸一がくれた曲、演奏します。あの日、あなたが、いなくなって、空に現れた、不思議な虹が曲になって戻ってくるなんて。
それでは、また。真美より。

貴之「コウさん、何故ここの住所で彼女に手紙を書いたのですか。僕に何を、知らせたかったのでしょうか。僕に、何をしてほしいのでしょうか。音さんは、僕がつくった、さようならの虹を彼女に送った。しかも、彼女は、曲を、ライブで演奏すると言っている。僕に、札幌へ、彼女に会ってほしいと思っていますか」


○立待岬


幸一、遠く広がる景色を眺めている。涙が出てくる。

幸一「あきらめの一歩を行こう。落ちた涙は、僕に帰ってこないのだから。何も変わらないだろう明日に備えて、今日の涙を流してしまうよ」

目の前の手摺にリボンを結ぶ

笑顔の見える景色 シナリオ10話

2009-04-05 16:08:23 | 笑顔の見える景色 シナリオ
○まちづくりセンター前


寺田美紀、車を運転。まちセンのウインドーを見ると、高井貴之が、物思いにふけっている。美紀、駐車場へ向かう。


○まちづくりセンターの裏玄関


貴之、センターを出るのに自動ドアの前に立つと、外に美紀が立っていた

美紀「こんにちは、お久しぶり」
貴之「どうしたの」
美紀「そんな、驚いた顔しない。幽霊だとでも思った・・・。店、開いてるかな」
貴之「行って見ようか」

二人は、「ボルドー」に向かう。


○「ボルドー」


店は、お昼時の客で混んでいたが、入れ替わりで、席が開く。
マスター笑顔で、注文を取りに来る

マスター「いらっしゃいませ」
美紀「キャンティクラシコある」
マスター「ありますよ」
美紀「白身魚のカルパッチョ。カニみそグラタン。トマトクリームソースのスパゲッティ。ローストビーフ。以上かな」

ローストガーリックの香り、ワインが届く

美紀「乾杯」
貴之「乾杯」
美紀「元気なの」
貴之「全く持って、逆だね」
美紀「そんな感じ・・・。おいしい、ワイン」
貴之「久しぶりだな。こうして、二人で飲んでると落ち着くよ」
美紀「月に何回も来てたものね。やめたのは、あなたの方なんだけどね」
貴之「・・・美紀。突然どうしたんだ」

料理が運ばれる。ローストビーフ

美紀「いよいよ。社長が長くないの」
貴之「そうなんだ。どうするんだ」
美紀「もちろん最後まで、そばにいる。色々と大変なことも残るけど、私のやらなければならない事だし、恩返し。責任」
貴之「その後は、どうするんだ」
美紀「姉のところに行く事に決めているの。東京に行くのは抵抗あるけど、ここにいる意味もなくなるしね」
貴之「さようなら。か」
美紀「せいせいしているくせに」
貴之「そんな事あるかよ。また、いっ・・」
美紀「やっぱり、美味しいよ。マスターの料理・・・。貴之。何だか、オタジーラで物思いにふけって珈琲飲んでたけど、何かあったの」
貴之「実は、奥田さんという人と出会ったんだ。不思議な出会いだったんだ」

ワインをグラスに注ぐ

貴之「俺、実は、あの日、美紀の部屋を出て、海岸線を走っていたら、太陽の周りを、うっすらと虹が円を描いてる景色に、心奪われてさ、思わず君とダブらせて見ていたんだ。そして、本当は美紀にも聴かせたいんだけど、その情景を曲にかいだんだよ」

美紀、話に聞き入る
貴之、鼻歌交じりで、「さようならの虹」を歌う。


○幸一の叔母さん自宅周辺


MDで「さようならの虹」を聴く幸一。聴き終わりMDを取り出し、手紙と共に、封筒にしまう。
とぼとぼと歩き、郵便局に封筒を出す。


○「ボルドー」


美紀「ふうん。不思議ね。その出会い。その人とは、それ以降、連絡が取れないのね」
貴之「そうなんだ」

グラスに、最後のワインが注がれる。さようならの空気が支配する。
無言の乾杯

貴之「・・・・・」
美紀「・・・・・」

ワインを飲み干す

貴之「落ち着いたら、又、会ってくれないか」

貴之、美紀の手を握る

美紀「ありがとう。何も後悔していないからね。もちろん、恨んでもいないわよ。あなたが、そばにいてくれたから、社長を、支える事も出来たのだから。感謝してるんだぞ。今まで、本当にありがとう。最後まで、頑張る力を、今日も、もらう事が出来たよ。貴之、この店を出たら、本当のさようならをしませんか」

二人店を出る


○十字街交差点


   二人、腕組みをして歩く。

美紀「そうそう、その奥田さん。の話だけどFMいるかの番組、話しておいてあげる。可愛い後輩がいるの。もし、大丈夫なようであれば、あなたの連絡先教えるから。その時は、頑張ってね」

二人握手

美紀「さようなら」
貴之「・・・」
美紀「言ってよ。ずるいよ」
貴之「・・・」
美紀「お願い。ちゃんと、さようならしてよ」
貴之「さようなら」
美紀「さようなら」
美紀、貴之の頬をなで、笑顔で向きを変え、去っていく。振り返る事はなく消えて行く。


○啄木公園(朝)

貴之、公園の手摺に座り、幸一のノートを読んでいる。

貴之「僕の旅は、続く。つらい季節でも、花の時でも、僕は、独り、僕の道を行く。たった独りぼっちで、歩いてくる君にいつか、その道で出会う為に。その時は、あなたは微笑んでくれるかい。また、あの深い瞳で僕を捕まえてくれるかい」


貴之、車に乗り込む、ドアを閉める


○谷地頭電停付近(朝)

ドアが開く。車を降りる幸一。

幸一「おばさんありがとう。この辺から、歩いてみるよ。やってみる。道に迷ったら電話します。すいません」

笑顔の見える景色 シナリオ9話

2009-04-04 22:46:26 | 笑顔の見える景色 シナリオ
○雪の海岸線(朝)


貴之、運転中
幸一と連絡が取れなくなり1週間が過ぎる。落ち着かない気持ちで、会社へと向かう

貴之「ポケットの中はいつも、虹の欠片をつめこんでいた、誰にもわからない宝物でいっぱい」

   貴之、車の中で歌う。

幸一からもらったノートの詩に曲をつけたが、幸一の電話は、現在使われていないのアナウンス。

貴之「コウさん、あなたは、いったい、どこに消えたのですか、何も、始まってもいないのに、自分の願いと、このノートを置き去りにして、どうやって僕に、りぼんを結べというのですか」
貴之、大森浜を横切り、職場へと車を走らせる。


○立待岬


幸一、指に真赤なリボンを結び、海を眺めている。

幸一「タカ、連絡出来ずゴメン。僕は、もうすぐここからいなくなるんだ。僕の起こした交通事故、そして、抱えた障害が両親の生活まで狂わせる事となった。本当に、すみません。もう、元の自分には戻れないのだ。神奈川でリハビリの訓練を行う、ほんの少しでも、自分の機能が、回復出来るよう、親が力を貸してくれている。」

幸一、リボンを空にかざして眺める。

幸一「でもね、僕は両親に、後3ヶ月の間だけ、函館にいらせて下さいと、頼み込んだんだ、母の妹の所にお世話になる事になった。何故って、タカと出会ったからだ、出会いは愉快なものだな、こんな、僕にも出会いがあった。それも、とっても不思議な出会い。もう一人の僕との出会い。僕の、ちょっとした悪戯な願いが、残り少ない函館での生活を意味のあるものに出来そうな気がする。貴之に想いを託したい。僕の、企てた悪戯でね。又、函館に戻ってくる希望を持っていきたい。リボンの役も果たしてみたい。」

幸一、指のリボンを外し、手摺に結びつける。
叔母の車が、来る。
幸一、立ち上がる。

幸一「これから、待ち受ける、もう一つの出会いを見届けて、僕は、虹となる。ぼくの、ポケットの中の虹は、輝きを増しているようだ」