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タッカの夢 ~VOICE~ 2013

シンガーソングライター タッカ の夢路日記
ユメこえショップ オーナーの日記
ユメこえ農園 オーナーの日記

笑顔の見える景色 シナリオ8話

2009-04-04 08:24:12 | 笑顔の見える景色 シナリオ
○函館駅(午後2時)


モニュメントの前に幸一とご両親が待っている

貴之「こんにちは」

幸一ペコリと頭を下げる。

母親「どうも、先日は本当にありがとうございました」
父親「今日は、これから、どうされます」
貴之「近くに、私の職場があるのですが、そこで、話しをしたいと思っていました」
父親「大丈夫だと思うのですが、何かありましたら、携帯持たせているので、いつでも連絡下さい。知らない場所は、方向がつかめないので、迷います。左側が見えないので、ぶつかって行きます。話も噛み合わないところも出てくるかも、わかりません。色々と気にかけてやって下さい」
幸一「子供じゃないんだから」
母親「迷惑かけます」
幸一「もう、行っていいよ。終わったら電話するから」
父親「母さん。行くよ」
母親「よろしくお願いします」

貴之と幸一、車に乗り込む
金森倉庫前を抜ける

幸一「親不孝でさ、10年以上も、函館に帰ってきてなかったんだ。こんな体で、函館に戻ってくるなんて、罰があたったんだな。きっと」



貴之「バンドでは何をやっていたの」
幸一「ギター。ボーカルもやっていた」
貴之「オリジナルやってたの」
幸一「一応ね。・・・聴いてみて」

奥田幸一、カバンから札幌時代の自分のCDを取り出し高井貴之に渡す

貴之「ありがとう」
幸一「過去の栄光。戻らない過去。失った思い出の欠片。・・・です」
貴之「到着しました」
幸一「海に近いんだね」

車は職場に到着。

○貴之の職場


椅子に幸一を座らせる。貴之、珈琲メーカーをセット。ギターの準備をする。遠くを眺めている幸一

貴之「改めて、自己紹介を。高井貴之です」

名刺を渡す。

幸一「奥田幸一。・・・と書きます。通称コウで通ってます」
貴之「私は、タカで。では、コウさん。歌、聴いて下さい。
    曲名「さようならの虹」
太陽の周りに 虹が円を描くのを
見た事 あるかい それは
さようならの 虹
最後の贈り物だね
まるで夢見たいな景色で
間抜けな僕は何度も
何度も眺めるんだ
知らないうちに胸が
締めつけられて ゆくよ
夢のような 悲しみ
空に映し出された
空に映ってしまった
まぼろしの悲しみは
目をくらませるほどの色
まるで夏の花の色
僕等互いにひとりぼっちだったものね
太陽のまわりに 虹が円を描くのを
見た事あるかいそれは
さようならの 虹」

幸一、うつむいて泣いている

幸一「ありがとう」

沈黙。
幸一、バックを開けて、手紙を取り出す。中の写真を出してテーブルの上に置く

幸一「何か、二人で音楽をやらないか。左手が不自由でギターを弾くことは出来ないけれど、あなたの、さようならの虹にハーモニカをつけてみたい。ハーモニカなら何とか吹けるような気がするんだ」
貴之「いいですね。嬉しいです。是非やりましょう。コウさん」
幸一「書き溜めた詩が、あるんだ。曲をつけてみてほしい」

幸一は、紙袋の中からノートを6冊出して、貴之に差し出した。そして、テーブルの写真を裏返して、文字を書いた。り。ぼ。ん。

貴之「りぼん」
幸一「僕らのユニット名にどうだろう」
貴之「意味は」
幸一「プレゼントに結ぶリボンのように人と人を結んだり、心と心を結ぶような音楽活動を願う。そして、もうひとつ、意味があるんだ。英語でRe BORNとも読めるんだ。再び、生まれる。僕は、ここから、生まれ変わる。何かを始めるんだ。この写真には、さようならの虹と書いてあるんだけど、でも、この写真をきっかけにして、タカと出会った。僕は生まれ変わる、始めたいんだ。タカと出会って、今、曲を聴いて、心の欠けている部分が、何だか、少し埋まった感じがする」
貴之「はい。やりましょう。詩ありがとうございます。曲つけてみます」

二人とも笑顔になっていた

貴之「曲も聴いてもらったし、ユニット名も決まったし、近くに、まちづくりセンターというところがあるんですけど、その中にオタジィラという珈琲のおいしいお店があるんですけど、そこで乾杯しませんか」
幸一「行きますか。その前に、もう一度、さようならの虹を歌ってもらいたいのだけど、MDに録音をしていきたい。ハーモニカの練習をするのにね」
貴之「何だか、急に緊張するな」

幸一、MDの録音ボタンを押す。
曲と共に、景色が、まちづくりセンターのオタジィラに変わる。


○まちづくりセンター「オタジーラ」

幸一「どうして、さようならの虹ができたの」
貴之「うん、彼女と別れた日の朝、コウさんの写真と同じような景色が見えたんです。太陽の周りがうっすらと虹色に滲んでいるのが見えたんです。それが、彼女の別れ際にくれた、あまりにも、やさしい笑顔とダブって見えたんです。さようならの虹と口ずさんでた」
店員「珈琲お待たせしました」

   間

珈琲をゆっくりと楽しむ

幸一「僕、札幌で、地元の小さなFM局のパーソナリティをやっていた事があるんだ。函館にも、FMいるかがあるんだよね。いるか、いつも聴いているんだ。りぼんでさ、FMいるかの番組が持てたらいいね。函館中のリボンを探すんだ。街に広がるリボンをね。番組のタイトルは、ポケットの中の虹。僕達が作った、曲を番組で放送するんだ。勝手に想像していたよ。どうだい」
貴之「いいね。そんな事、今まで、考えもした事ない。でも、楽しそうだね。実現させようよ。色々あたってみるよ。色々な事をしようよ。この出会いは、何だか不思議すぎるもの」

   間

幸一「こんな、素敵な出会いをしたのに、僕の障害のせいで、旨く、事が運ばない事がたくさん出てくると思う。こんな状態になってしまって、親には、何から何まで、世話になるしかないんだ。親の、人生まで狂わせてしまったんだよ。頭が上がらないんだ。でも、なんとか、元に戻れるように頑張るから」
貴之「変な、話だけど、コウさんは、交通事故を起こしてしまった。生死を彷徨うような大きな事故をね。でも、コウさんの命は、僅かな灯でも、この地上に命を結びつける事が出来た。もし、命をつなぎ止める事が出来なかったら、この出会いもなかったのだよね。それに僕等は、さようならの虹でもつながっている。そして、背中合わせの現実ともね」
幸一「背中あわせ・・・」
貴之「いや、何でもないんです」

笑顔の見える景色 シナリオ7話

2009-04-03 21:36:55 | 笑顔の見える景色 シナリオ
○啄木公園(午前)


貴之、大森浜を眺めていると電話が鳴る。幸一からである。

貴之「もしもし」
幸一「この間は、助けていただき、ありがとうございます」
貴之「気にしないで下さい。でもよかった。元気になったのですね」

間があく。

幸一「手紙を・・・落として」
貴之「あっ。はい。そうだったんですね。そうみたいですね」
幸一「ありがとう。カバンを見たら・・・中に、入っていたので、あなただと思って」
貴之「よかったです。持ち主がわかって」
幸一「本当に、ありがとう。感謝してます」
貴之「でも、謝らなくてはいけません。ごめんなさい。封筒の中を見てしまいました」
幸一「・・・」

ぎこちない沈黙。

貴之「もしもし」
幸一「はい」
貴之「一度、お会いしませんか」

   間

貴之「お母様から、音楽をやっていたって聴いて、私も、恥ずかしながら、今は、一人淋しく、弾き語りの活動をしていて・・・活動なんてものは、ないですね。ライブも出ている訳でもないし。ただ、自己満足の世界で、曲をつくっているというか」
幸一「あなたの、曲を、是非、聴いてみたい」
貴之「本当」
幸一「会った時にでも、是非、聴いてみたい。僕も、詩を書いています。僕の詩も見てほしいです」
貴之「嬉しいな。実は、聴いてほしい曲があるんです。不思議な気分なんです」
幸一「どんな、曲か楽しみです。」
貴之「こうして、あなたと出会う前に、出来たばかりの曲があるんです」
幸一「・・・」
貴之「不思議でしょうがないのです。その曲なんですが・・・曲名は、さようならの虹。っていうんです」
幸一「・・・」

つながっているのか心配になり

貴之「もしもし」
幸一「はい」
貴之「明後日の、土曜日は開いてますか」
幸一「いつでも、暇です」
貴之「わかりやすい場所で、函館駅なんてどうですか」
幸一「親に、送ってもらうので、どこでも大丈夫だと思います」
貴之「では、函館駅の前に、赤い、人間を
かたどった、モニュメントがあるのですが、そこで、午後2時に待ち合わせしませんか」

幸一メモをとる

幸一「わかりました」

電話を切る
貴之、深呼吸。周りの景色を眺め、啄木の像に足を運ぶ


笑顔の見える景色 シナリオ6話

2009-04-02 21:38:50 | 笑顔の見える景色 シナリオ
○青柳町電停(夜)


貴之、電車を降りる。函館公園へと向かう。公園のあまりの寂しさに立ち止まり、周りを眺めると、自動販売機前の白い封筒に目が行く。

貴之「何だろう。手紙・・・」
貴之、近づいて拾い上げる、恐る恐る、中を明けてみる。写真だった。裏を返すと、文字があったので、自動販売機の前の明かりのそばまで寄る。
貴之「さようならの虹。えっ・・・」

もう一度、写真を見ると、太陽の周りに虹が円を描いていた。貴之が、あの日見た景色と同じ虹だった。しかも、さようならの虹
次の瞬間、近くで、何かが落ちる音がして、あわてて写真をしまう。
見渡すと、中広場の噴水付近で、誰かが倒れている。
貴之、近づき声をかける

貴之「大丈夫ですか。大丈夫ですか」

脈を確認し、息を確認し、救急車に電話を入れる
バックの中を調べる。障害者手帳・・・緊急連絡先・・・名前を見る。

貴之「奥田幸一。この手紙の持ち主だ。障害者・・・」
貴之、手紙を、奥田幸一のバックにしまう。ご両親に電話を入れる。
貴之「もしもし、息子さんが、函館公園で倒れていまして、今、救急車を呼びました。ハイ。・・・。交通事故・・・。発作。てんかん・・・。いや、大丈夫です。外傷もありません。・・・。はい。息もあります。気を失ったような感じです。救急車がきました」

救急車のサイレンが近づく。
貴之も付き添う。うっすらと開いた目は、動いている。大丈夫と感じた。


○病院(夜)

病院に着くと、ご両親が待っている。

母親「どうも、すみません。何で函館公園になんて行ったのか・・・」
貴之「交通事故に遭われたんですか」
母親「ひどい、交通事故でして、居眠り運転だったようです。本人の記憶は全くありません。コンクリート柱に激突。脳挫傷と肺もつぶして、命は助からないものと思っていました」
貴之「そうなんですか。障害を抱えているんですか」
母親「色々な障害が残りました。疲れや、ストレスから、こうやって、気を失う事が、時々あります。こんな、寒い夜に、あなたに発見されなかったら、どうなっていたか。どうして、あんな所まで行ってしまったのでしょう」
貴之「息子さんが良くなったら、電話下さい、心配ですので。私は、これで失礼します」

貴之、電話番号を書いたメモを母親に渡した。
貴之、病院を出て、空を見上げる。

貴之「背中合わせの、もう一人の自分。そしてもう一つの、さようならの虹。人事ではない」

笑顔の見える景色 シナリオ5話

2009-04-01 16:10:11 | 笑顔の見える景色 シナリオ
○イタリアンレストラン「ボルドー」(夜)

   貴之、店に入る。久しぶりである。

美紀とよく来た店。かなり混んでいる。貴之はカウンターに腰を下ろす。「お久しぶり」という表情を浮かべているマスター。

マスター「いらっしゃい」
貴之「こんにちは」

一人。というジェスチャーをするマスター。苦笑いの貴之。ワイングラスを一つとワインボトルを持って、オーダーを聞きにくる。
貴之「イタリアのワイン、取っておいてくれてたんですね。マグロのガーリックソース。カニみそグラタン。青じそベーコンのパスタ。お願いします」
貴之、居眠り運転での死と背中合わせの夜の出来事から。落ち着かない気持ちを持っていた。

目を閉じる、料理の香りが、モノクロの風も運んできた


○「ボルドー」(思い出のシーン)

貴之と美紀がボルドーに初めて来た時のモノクロの映像。

美紀「何だかイメージと違うんだけど、あの、マスターも、無愛想。入らなきゃよかった。」
貴之「そう言わないで、ワインとパスタもあるようだし、軽く食べて帰ろうよ。すいませんグラスワイン二つ」
美紀「カウンターのはじ見て、漫画がおいてある。気分台無し」

マスター、注文を聞く。

貴之「すみません、カニみそグラタンと、ペペロンチーノお願いします」

すっかり不機嫌の美紀。グラスワインが届く。

貴之「乾杯」
美紀「・・・」
貴之「おいしい。ワインだ」
美紀「・・・。まるで、定食屋だ」

カニみそグラタンの料理が届く
料理のおいしさに驚く二人。

美紀「美味しい。貴之も食べてみて」
貴之「本当美味しい。ワインおかわりしようか」

パスタとおかわりのワインが届く

美紀「おいしい。パスタね。何だか、気に入っちゃった。いい店発見。行きつけにしましょう」
貴之「本当、いい店だね。二人の行き着けにしようよ」

食事を終えて、帰り道。通りに、人の庭に鮮やかなバラが咲いている

貴之「バラ、いただこうか」
美紀「もう、酔っぱらってるんだから。危ないからやめなさい」
貴之、塀に登り、バラの枝をもぎ取る。二人、走って逃げる。
美紀の部屋に飾られたバラ。


○「ボルドー」(現在)

バラとグラスの赤ワインがダブる。
貴之、心の中でのつぶやく

貴之「何故、今更になって、美紀の事を責めてしまったのだろうか、美紀と社長の関係を初めから分かっていて、僕は美紀のそばにいたいって・・・。それを、今更になって。自分か、社長かはっきりさせて、なんて。心変わりもいいとこだよ。でも・・・分かっていて、自分のわがままを、抑えることは出来なかった」


○美紀の部屋(思い出のシーン)

美紀が泣いて、貴之に想いをぶつける

美紀「何よ、今更。結局心変わりなのよ。この状態を理解してくれて、それでも、好きでいてくれてたんだと思っていたわ。社長か貴之を選べだなんて、そんな酷な事どうして言えるのよ、今更、そんな事、言わないでよ。」
貴之「僕は、充分、美紀を支えたよ。僕も、君と次のステップにいきたいんだよ」
美紀「そんなの無理じゃないの。もう、いいわ。話すだけ無駄よ・・・。こんな、年上の私となんて、最初からつりあわないのよ。貴之。あなた、まだ若いんだし。あなたの言うように、私は、もう大丈夫よ。充分、支えていただいたわ。ありがとう。元に戻ればいいだけの話し」


○「ボルドー」(現在)

居眠り運転のシーンが交差する。

貴之、心の中のつぶやき

貴之「死と背中合わせ。僕は今、血まみれの状態でもある。死んでもおかしくない状態でもあったんだ。理解の足りなさや、先を急ぐ私欲が先走った発言。もっと、もっと広い心で美紀を包んであげるべきだったんだ。もう、終わってしまったのだけど、あの居眠り運転から、心が大きく欠けてしまっていた。今更だけど、今なら、本当に、心から、美紀を包んであげる事ができるかもしれない」

貴之、店を出る。とぼとぼと歩く。
   雪がちらついている。


○十字街(夜)

   貴之、とぼとぼ電停まで歩く

貴之「青柳町の電停まで行くか、荘苑に寄ってジャズを聴いて、酔いをもう少し楽しむのもいいかもしれない」
貴之、十字街の電停で谷地頭行き電車に乗る。

曲「さようならの虹」のメロディーが頭を巡る、あの日に見た太陽のまわりに虹が描く景色。
電車に揺られ、あの日の事を思い出す。

貴之「美紀。あの日、君の部屋を出た後、僕は、あの不思議な虹を見たんだ。あの日は、とても、静かな波で、あくびのような波音が心に届いていた。僕は、啄木公園に車を停めて、ぼんやりと海を眺めていた、やさしく瞳に入り込む太陽の光に。思わず心を奪われた。薄い雲が覆っていたから、目にやさしかった。太陽の周りに薄い虹色が円を描いていたんだ。君が別れ際にくれた、やさしい笑顔とだぶって見えた。美紀の涙が、作り出した虹のようにさえ感じた、さようならの虹・・・と僕は、つぶやいていたんだ」

笑顔の見える景色 シナリオ4話 

2009-03-31 16:19:11 | 笑顔の見える景色 シナリオ
○幸一の家

 幸一、近くの本屋に買物に行く、そこまでの、道は迷わずに行ける。家を出て、郵便受けに目が行く。扉を開けると、封筒があった。
札幌の彼女、加納真美からの手紙。

幸一「真美・・・」

 おどおどする幸一。手紙を開ける。中から、写真が出てきた。
太陽を写した写真。太陽の周りに虹が円を描いている写真。写真を裏返すと、文字が書かれていた。

幸一「さようならの虹」

 幸一、気持ちが混乱していた。ただ宛てもなく歩き始める。引きずる左足。いつの間にか、何処を歩いているのか、わからなくなっていた。完全に道に迷ってしまっていた。

幸一「完全に一人ぼっちになったな。行けるところまで・・・。よし。行って見よう」

 バスの停留所に函館駅行きバスが停まる。
幸一、当てもなく乗り込んだ。


笑顔の見える景色 シナリオ3話

2009-03-31 08:28:01 | 笑顔の見える景色 シナリオ
○海岸線(深夜)

高井貴之は残業続きで、疲れた体で、家路に向かっていた。眠気が襲う。居眠り運転をしてしまう。対向車線をはみ出す。そして、完全に対向車線へ。迫る対向車。貴之、はっと気付く。もう、何も出来ない。しかし、対向車は、かわして通り過ぎて行ってくれた。そして、たまたまその部分だけ、切り下がっていた歩道の縁石を突っ込む、砂利の空き地で車が停まる。
何事もなかった。しかし、バックミラーをのぞくと、血まみれでうなだれた僕が映って、僕を見ていた。背中合わせの現実が存在していた。気を取り直そうとするが、震える手は収まらない。車を出て、泣き崩れる。

貴之「美紀」

笑顔の見える景色 シナリオ2話

2009-03-30 23:55:25 | 笑顔の見える景色 シナリオ
○八幡坂

   ちらつく雪
   奥田幸一(36)家族に見守られ、石畳の坂を歩く、遠い港を、眺める。

母親「幸一。階段、足元に気をつけて」
   幸一、立ち止まり、カトリック教会の方を眺める。
母親「お父さん、幸一はもう少し、よくなるのかしら、左が見えないから、ああや って、ぶつかって行きそうになる」
父親「本人で、意識していくしかないよ。俺達も、アイツよりは、確実に年をとっ ていってしまうのだから」
母親「方向もつかめないから、迷ってしまう、感情のコントロールもつかないか  ら、話していると、すぐに、涙してしまう」
父親「もう少し、よくなるよ。3月には、神奈川のリハビリセンターにも行くし、親として、もう少し、やれるだけ、やってみよう」

  幸一、両親の方を振り返る

幸一「いい景色だね。何年振りだろうか」
母親「学校卒業して、札幌に行ってからは一度も、こっちに帰って来てなかったものね」
幸一「皮肉だよな。交通事故おこして、障害者になって、生まれ故郷に帰って来るなんて、哀れだな。この街には、何にもないよ。僕の過ごしてきた時間は、ここには、何一つ存在していない」
父親「なってしまった以上、しょうがない。受け入れるしかない」

  西高の恋人同士が、幸一の横を駆け下りていく。彼氏の方が、彼女に向かって、「待てよ」と声をかける。

幸一「待てよ。なんて、真美へ言えないな。こんな僕、僕自身が耐えられない」


笑顔の見える景色 シナリオ1話

2009-03-30 16:44:09 | 笑顔の見える景色 シナリオ
○高井貴之の部屋

  高井貴之(33)、部屋でギターを手に出来たばかりの曲を演奏する

  曲「さようならの虹」

貴之「太陽の周りに虹が円を描くのを
 見たことあるかい それは
 さようならの 虹
 最後の贈り物だね
 まるで夢見たいな景色で
 間抜けな僕は何度も
 何度も眺めるんだ
 知らないうちに胸が
 締めつけられて行くよ
 夢のような悲しみ
 空に映し出された
 空に映ってしまった
 まぼろしの悲しみは
 目をくらませるほどの色
 まるで夏の花の色 僕等互いに
 ひとりぼっちだったものね
 太陽の周りに 虹が円を描くのを
 見たことあるかい
 それは さようならの虹」

  ギターを脇に置き、窓際に立ち、別れた寺田美紀(42)の事を考える。

貴之「君は、どうしているだろうか。今すぐにでも、この曲を君に聞かせたいよ」


○寺田美紀のいる部屋

  寺田美紀(42)、仕えている社長の看病をしている場面。貴之と同じように窓の外を眺めて。

美紀「貴之。何しているだろう」