○函館駅(午後2時)
モニュメントの前に幸一とご両親が待っている
貴之「こんにちは」
幸一ペコリと頭を下げる。
母親「どうも、先日は本当にありがとうございました」
父親「今日は、これから、どうされます」
貴之「近くに、私の職場があるのですが、そこで、話しをしたいと思っていました」
父親「大丈夫だと思うのですが、何かありましたら、携帯持たせているので、いつでも連絡下さい。知らない場所は、方向がつかめないので、迷います。左側が見えないので、ぶつかって行きます。話も噛み合わないところも出てくるかも、わかりません。色々と気にかけてやって下さい」
幸一「子供じゃないんだから」
母親「迷惑かけます」
幸一「もう、行っていいよ。終わったら電話するから」
父親「母さん。行くよ」
母親「よろしくお願いします」
貴之と幸一、車に乗り込む
金森倉庫前を抜ける
幸一「親不孝でさ、10年以上も、函館に帰ってきてなかったんだ。こんな体で、函館に戻ってくるなんて、罰があたったんだな。きっと」
間
貴之「バンドでは何をやっていたの」
幸一「ギター。ボーカルもやっていた」
貴之「オリジナルやってたの」
幸一「一応ね。・・・聴いてみて」
奥田幸一、カバンから札幌時代の自分のCDを取り出し高井貴之に渡す
貴之「ありがとう」
幸一「過去の栄光。戻らない過去。失った思い出の欠片。・・・です」
貴之「到着しました」
幸一「海に近いんだね」
車は職場に到着。
○貴之の職場
椅子に幸一を座らせる。貴之、珈琲メーカーをセット。ギターの準備をする。遠くを眺めている幸一
貴之「改めて、自己紹介を。高井貴之です」
名刺を渡す。
幸一「奥田幸一。・・・と書きます。通称コウで通ってます」
貴之「私は、タカで。では、コウさん。歌、聴いて下さい。
曲名「さようならの虹」
太陽の周りに 虹が円を描くのを
見た事 あるかい それは
さようならの 虹
最後の贈り物だね
まるで夢見たいな景色で
間抜けな僕は何度も
何度も眺めるんだ
知らないうちに胸が
締めつけられて ゆくよ
夢のような 悲しみ
空に映し出された
空に映ってしまった
まぼろしの悲しみは
目をくらませるほどの色
まるで夏の花の色
僕等互いにひとりぼっちだったものね
太陽のまわりに 虹が円を描くのを
見た事あるかいそれは
さようならの 虹」
幸一、うつむいて泣いている
幸一「ありがとう」
沈黙。
幸一、バックを開けて、手紙を取り出す。中の写真を出してテーブルの上に置く
幸一「何か、二人で音楽をやらないか。左手が不自由でギターを弾くことは出来ないけれど、あなたの、さようならの虹にハーモニカをつけてみたい。ハーモニカなら何とか吹けるような気がするんだ」
貴之「いいですね。嬉しいです。是非やりましょう。コウさん」
幸一「書き溜めた詩が、あるんだ。曲をつけてみてほしい」
幸一は、紙袋の中からノートを6冊出して、貴之に差し出した。そして、テーブルの写真を裏返して、文字を書いた。り。ぼ。ん。
貴之「りぼん」
幸一「僕らのユニット名にどうだろう」
貴之「意味は」
幸一「プレゼントに結ぶリボンのように人と人を結んだり、心と心を結ぶような音楽活動を願う。そして、もうひとつ、意味があるんだ。英語でRe BORNとも読めるんだ。再び、生まれる。僕は、ここから、生まれ変わる。何かを始めるんだ。この写真には、さようならの虹と書いてあるんだけど、でも、この写真をきっかけにして、タカと出会った。僕は生まれ変わる、始めたいんだ。タカと出会って、今、曲を聴いて、心の欠けている部分が、何だか、少し埋まった感じがする」
貴之「はい。やりましょう。詩ありがとうございます。曲つけてみます」
二人とも笑顔になっていた
貴之「曲も聴いてもらったし、ユニット名も決まったし、近くに、まちづくりセンターというところがあるんですけど、その中にオタジィラという珈琲のおいしいお店があるんですけど、そこで乾杯しませんか」
幸一「行きますか。その前に、もう一度、さようならの虹を歌ってもらいたいのだけど、MDに録音をしていきたい。ハーモニカの練習をするのにね」
貴之「何だか、急に緊張するな」
幸一、MDの録音ボタンを押す。
曲と共に、景色が、まちづくりセンターのオタジィラに変わる。
○まちづくりセンター「オタジーラ」
幸一「どうして、さようならの虹ができたの」
貴之「うん、彼女と別れた日の朝、コウさんの写真と同じような景色が見えたんです。太陽の周りがうっすらと虹色に滲んでいるのが見えたんです。それが、彼女の別れ際にくれた、あまりにも、やさしい笑顔とダブって見えたんです。さようならの虹と口ずさんでた」
店員「珈琲お待たせしました」
間
珈琲をゆっくりと楽しむ
幸一「僕、札幌で、地元の小さなFM局のパーソナリティをやっていた事があるんだ。函館にも、FMいるかがあるんだよね。いるか、いつも聴いているんだ。りぼんでさ、FMいるかの番組が持てたらいいね。函館中のリボンを探すんだ。街に広がるリボンをね。番組のタイトルは、ポケットの中の虹。僕達が作った、曲を番組で放送するんだ。勝手に想像していたよ。どうだい」
貴之「いいね。そんな事、今まで、考えもした事ない。でも、楽しそうだね。実現させようよ。色々あたってみるよ。色々な事をしようよ。この出会いは、何だか不思議すぎるもの」
間
幸一「こんな、素敵な出会いをしたのに、僕の障害のせいで、旨く、事が運ばない事がたくさん出てくると思う。こんな状態になってしまって、親には、何から何まで、世話になるしかないんだ。親の、人生まで狂わせてしまったんだよ。頭が上がらないんだ。でも、なんとか、元に戻れるように頑張るから」
貴之「変な、話だけど、コウさんは、交通事故を起こしてしまった。生死を彷徨うような大きな事故をね。でも、コウさんの命は、僅かな灯でも、この地上に命を結びつける事が出来た。もし、命をつなぎ止める事が出来なかったら、この出会いもなかったのだよね。それに僕等は、さようならの虹でもつながっている。そして、背中合わせの現実ともね」
幸一「背中あわせ・・・」
貴之「いや、何でもないんです」
モニュメントの前に幸一とご両親が待っている
貴之「こんにちは」
幸一ペコリと頭を下げる。
母親「どうも、先日は本当にありがとうございました」
父親「今日は、これから、どうされます」
貴之「近くに、私の職場があるのですが、そこで、話しをしたいと思っていました」
父親「大丈夫だと思うのですが、何かありましたら、携帯持たせているので、いつでも連絡下さい。知らない場所は、方向がつかめないので、迷います。左側が見えないので、ぶつかって行きます。話も噛み合わないところも出てくるかも、わかりません。色々と気にかけてやって下さい」
幸一「子供じゃないんだから」
母親「迷惑かけます」
幸一「もう、行っていいよ。終わったら電話するから」
父親「母さん。行くよ」
母親「よろしくお願いします」
貴之と幸一、車に乗り込む
金森倉庫前を抜ける
幸一「親不孝でさ、10年以上も、函館に帰ってきてなかったんだ。こんな体で、函館に戻ってくるなんて、罰があたったんだな。きっと」
間
貴之「バンドでは何をやっていたの」
幸一「ギター。ボーカルもやっていた」
貴之「オリジナルやってたの」
幸一「一応ね。・・・聴いてみて」
奥田幸一、カバンから札幌時代の自分のCDを取り出し高井貴之に渡す
貴之「ありがとう」
幸一「過去の栄光。戻らない過去。失った思い出の欠片。・・・です」
貴之「到着しました」
幸一「海に近いんだね」
車は職場に到着。
○貴之の職場
椅子に幸一を座らせる。貴之、珈琲メーカーをセット。ギターの準備をする。遠くを眺めている幸一
貴之「改めて、自己紹介を。高井貴之です」
名刺を渡す。
幸一「奥田幸一。・・・と書きます。通称コウで通ってます」
貴之「私は、タカで。では、コウさん。歌、聴いて下さい。
曲名「さようならの虹」
太陽の周りに 虹が円を描くのを
見た事 あるかい それは
さようならの 虹
最後の贈り物だね
まるで夢見たいな景色で
間抜けな僕は何度も
何度も眺めるんだ
知らないうちに胸が
締めつけられて ゆくよ
夢のような 悲しみ
空に映し出された
空に映ってしまった
まぼろしの悲しみは
目をくらませるほどの色
まるで夏の花の色
僕等互いにひとりぼっちだったものね
太陽のまわりに 虹が円を描くのを
見た事あるかいそれは
さようならの 虹」
幸一、うつむいて泣いている
幸一「ありがとう」
沈黙。
幸一、バックを開けて、手紙を取り出す。中の写真を出してテーブルの上に置く
幸一「何か、二人で音楽をやらないか。左手が不自由でギターを弾くことは出来ないけれど、あなたの、さようならの虹にハーモニカをつけてみたい。ハーモニカなら何とか吹けるような気がするんだ」
貴之「いいですね。嬉しいです。是非やりましょう。コウさん」
幸一「書き溜めた詩が、あるんだ。曲をつけてみてほしい」
幸一は、紙袋の中からノートを6冊出して、貴之に差し出した。そして、テーブルの写真を裏返して、文字を書いた。り。ぼ。ん。
貴之「りぼん」
幸一「僕らのユニット名にどうだろう」
貴之「意味は」
幸一「プレゼントに結ぶリボンのように人と人を結んだり、心と心を結ぶような音楽活動を願う。そして、もうひとつ、意味があるんだ。英語でRe BORNとも読めるんだ。再び、生まれる。僕は、ここから、生まれ変わる。何かを始めるんだ。この写真には、さようならの虹と書いてあるんだけど、でも、この写真をきっかけにして、タカと出会った。僕は生まれ変わる、始めたいんだ。タカと出会って、今、曲を聴いて、心の欠けている部分が、何だか、少し埋まった感じがする」
貴之「はい。やりましょう。詩ありがとうございます。曲つけてみます」
二人とも笑顔になっていた
貴之「曲も聴いてもらったし、ユニット名も決まったし、近くに、まちづくりセンターというところがあるんですけど、その中にオタジィラという珈琲のおいしいお店があるんですけど、そこで乾杯しませんか」
幸一「行きますか。その前に、もう一度、さようならの虹を歌ってもらいたいのだけど、MDに録音をしていきたい。ハーモニカの練習をするのにね」
貴之「何だか、急に緊張するな」
幸一、MDの録音ボタンを押す。
曲と共に、景色が、まちづくりセンターのオタジィラに変わる。
○まちづくりセンター「オタジーラ」
幸一「どうして、さようならの虹ができたの」
貴之「うん、彼女と別れた日の朝、コウさんの写真と同じような景色が見えたんです。太陽の周りがうっすらと虹色に滲んでいるのが見えたんです。それが、彼女の別れ際にくれた、あまりにも、やさしい笑顔とダブって見えたんです。さようならの虹と口ずさんでた」
店員「珈琲お待たせしました」
間
珈琲をゆっくりと楽しむ
幸一「僕、札幌で、地元の小さなFM局のパーソナリティをやっていた事があるんだ。函館にも、FMいるかがあるんだよね。いるか、いつも聴いているんだ。りぼんでさ、FMいるかの番組が持てたらいいね。函館中のリボンを探すんだ。街に広がるリボンをね。番組のタイトルは、ポケットの中の虹。僕達が作った、曲を番組で放送するんだ。勝手に想像していたよ。どうだい」
貴之「いいね。そんな事、今まで、考えもした事ない。でも、楽しそうだね。実現させようよ。色々あたってみるよ。色々な事をしようよ。この出会いは、何だか不思議すぎるもの」
間
幸一「こんな、素敵な出会いをしたのに、僕の障害のせいで、旨く、事が運ばない事がたくさん出てくると思う。こんな状態になってしまって、親には、何から何まで、世話になるしかないんだ。親の、人生まで狂わせてしまったんだよ。頭が上がらないんだ。でも、なんとか、元に戻れるように頑張るから」
貴之「変な、話だけど、コウさんは、交通事故を起こしてしまった。生死を彷徨うような大きな事故をね。でも、コウさんの命は、僅かな灯でも、この地上に命を結びつける事が出来た。もし、命をつなぎ止める事が出来なかったら、この出会いもなかったのだよね。それに僕等は、さようならの虹でもつながっている。そして、背中合わせの現実ともね」
幸一「背中あわせ・・・」
貴之「いや、何でもないんです」