間もなく、優子のリハビリが始まった。
そして、僕は、職場に退職覚悟で、長期休暇をもらった。
病院に寝泊りで、優子のリハビリに付き添った。
「よし、時間の穴埋めをするぞ」
優子は、ただ、一点を見つめている事が多く、手も足も不自由で、そして、時々暴れた。そんな時、僕は、優子を思いきり抱きしめた。
すると、優子は、落ち着いた。
何だか、どんな事でも、受け入れることが出来る自分がいた。
リハビリ室に行くのを、優子は、嫌がった。
そんな時は、抱きかかえて、二人で、リハビリ室に向かった。
「こんなに、軽かったんだな。」とからかうと。何だか、優子が笑ったような表情になるのが、たまらなく嬉しかった。
歩行練習も、ゴールは、僕の腕の中。先生達も笑って許してくれていた。
一度だけ、病院を離れた時があった。
優子の暴れ方は、かなりひどかったらしい。ベットを這い出し、車椅子に座れずに、はって、廊下に出たらしい。僕が着いた時には、ひどい状態だった。僕は、ひたすら、あやまった。
リハビリは、2ヶ月を過ぎ、優子の状態もかなり良くなった。
僕の長期休暇も残り少なくなってきた。
窓の外は、ふわふわとした綿雪が、舞っていた。
「優子、今日は、何の日かわかる」
「わからない」
「クリスマス」
「・・・」
「クリスマスだよ。」
「ふうん」
「祥子。ミノル。俺。わかるか」僕は、写真を優子に時々見せた。
「何となく、わかる」
「祥子と、ミノルに手紙書かないか」
「書けない」
「いんだよ。俺が書くから」
「何て」
僕は、レターセットを用意した。
「よし、まず、祥子の手紙から行こう。優子、一年後位だったら、今より、良くなっていると思うんだ、又、4人で会ってみるのも、いんじゃないか。どうだ。」
「うん」
「まず、始めに、意識が回復しました。ご心配おかけしましただな」
「探してもらったんだよ。ずっと迷ってて、ヒロを探してたんだよ」
「・・・そうだったな」
優子は、感情のコントロールがうまく出来ず、すぐに泣き出すようになっていた。
「ゴメン。優子、ゴメンネ」
祥子とミノルに手紙を出した。
「手紙」
優子が、夢から覚めたよ。
まだ、会える状態では、ないけど、今、リハビリを一生懸命頑張っている。そして、ほとんどの記憶が、今、ばらばらの状態で、どこまで、戻るかもわからないとの事です。
でもさ、1年経ったら、優子もだいぶ、良くなっていると思うんだ。
一年後のクリスマスに、4人で会いましょう。再会の日にしましょう。
その時に、それぞれが、手紙を書いて、持ってきてほしいんだ。
手紙のテーマは、「自分の事を探して欲しい人」
ヒロより
ここまで、書いて、僕は、優子を見た。
「優子。右手だして」
優子は、きょとんとしている。僕は、優子の手をやさしくひっぱりペンを持たせた。
「優子、僕は、ずっと、優子のそばにいてもいいかい」
「うん」といって、また、顔をくしゃくしゃにさせた。
「私は、ヒロがいるから、大丈夫だよ」
「もちろんさ」
僕は、優子の手を手紙にあてた。
わたしは ヒロが いる から だいじょうぶ だよ ゆうこ
「優子、寒くなる前にさ、着込んで、散歩に行かないか。夜はケーキで乾杯」
「うれしい」
優子に、セーターを着せた。小さな胸に手が触れた。優子を見ると、目を閉じて微笑んでいた。やさしい気持ちになれた。
車椅子に乗せ、ひざ掛けをして、表に出た。
ホワイトクリスマス。
車椅子をゆっくりと押す僕。
優子の白い息が綿雪にまじってゆく。
「淋しい」優子が、そうささやいた。
「どうした」
「ヒロが見えないと淋しいよ」
優子は、僕の首にしがみついてきた。
僕は、優子を抱き上げた。
笑顔になった。
「ヒロ、ありがとう」
「どうした。」
「あの、海の中での約束。果たしてくれた」
「思い出したのか」
「探してくれたんだね」
「キスして」
「今度は、消えるなよ」
「あれは、夢の中だったから」
「泣いて、目をさましたんだぞ」
優子の、唇が僕に届いた。触れる瞬間に、綿雪が迷い込んだ。天使のいたずら。
僕たちへのクリスマスプレゼント
僕たちは、ずっと、ずっと、はげしくキスを続けた。
「あとがき」
一年後のクリスマス。4人で再会を果たします。それぞれの手紙の中で祥子とミノルがお互いの気持ちを確かめ合う事が出来ました。
優子の記憶がどこまで、戻ったのかは、ヒロも、確認は、していません。確認する必要もなかったからです。
読んでくださったみなさん。この場を借りて、ありがとうを伝えます。
そして、僕は、職場に退職覚悟で、長期休暇をもらった。
病院に寝泊りで、優子のリハビリに付き添った。
「よし、時間の穴埋めをするぞ」
優子は、ただ、一点を見つめている事が多く、手も足も不自由で、そして、時々暴れた。そんな時、僕は、優子を思いきり抱きしめた。
すると、優子は、落ち着いた。
何だか、どんな事でも、受け入れることが出来る自分がいた。
リハビリ室に行くのを、優子は、嫌がった。
そんな時は、抱きかかえて、二人で、リハビリ室に向かった。
「こんなに、軽かったんだな。」とからかうと。何だか、優子が笑ったような表情になるのが、たまらなく嬉しかった。
歩行練習も、ゴールは、僕の腕の中。先生達も笑って許してくれていた。
一度だけ、病院を離れた時があった。
優子の暴れ方は、かなりひどかったらしい。ベットを這い出し、車椅子に座れずに、はって、廊下に出たらしい。僕が着いた時には、ひどい状態だった。僕は、ひたすら、あやまった。
リハビリは、2ヶ月を過ぎ、優子の状態もかなり良くなった。
僕の長期休暇も残り少なくなってきた。
窓の外は、ふわふわとした綿雪が、舞っていた。
「優子、今日は、何の日かわかる」
「わからない」
「クリスマス」
「・・・」
「クリスマスだよ。」
「ふうん」
「祥子。ミノル。俺。わかるか」僕は、写真を優子に時々見せた。
「何となく、わかる」
「祥子と、ミノルに手紙書かないか」
「書けない」
「いんだよ。俺が書くから」
「何て」
僕は、レターセットを用意した。
「よし、まず、祥子の手紙から行こう。優子、一年後位だったら、今より、良くなっていると思うんだ、又、4人で会ってみるのも、いんじゃないか。どうだ。」
「うん」
「まず、始めに、意識が回復しました。ご心配おかけしましただな」
「探してもらったんだよ。ずっと迷ってて、ヒロを探してたんだよ」
「・・・そうだったな」
優子は、感情のコントロールがうまく出来ず、すぐに泣き出すようになっていた。
「ゴメン。優子、ゴメンネ」
祥子とミノルに手紙を出した。
「手紙」
優子が、夢から覚めたよ。
まだ、会える状態では、ないけど、今、リハビリを一生懸命頑張っている。そして、ほとんどの記憶が、今、ばらばらの状態で、どこまで、戻るかもわからないとの事です。
でもさ、1年経ったら、優子もだいぶ、良くなっていると思うんだ。
一年後のクリスマスに、4人で会いましょう。再会の日にしましょう。
その時に、それぞれが、手紙を書いて、持ってきてほしいんだ。
手紙のテーマは、「自分の事を探して欲しい人」
ヒロより
ここまで、書いて、僕は、優子を見た。
「優子。右手だして」
優子は、きょとんとしている。僕は、優子の手をやさしくひっぱりペンを持たせた。
「優子、僕は、ずっと、優子のそばにいてもいいかい」
「うん」といって、また、顔をくしゃくしゃにさせた。
「私は、ヒロがいるから、大丈夫だよ」
「もちろんさ」
僕は、優子の手を手紙にあてた。
わたしは ヒロが いる から だいじょうぶ だよ ゆうこ
「優子、寒くなる前にさ、着込んで、散歩に行かないか。夜はケーキで乾杯」
「うれしい」
優子に、セーターを着せた。小さな胸に手が触れた。優子を見ると、目を閉じて微笑んでいた。やさしい気持ちになれた。
車椅子に乗せ、ひざ掛けをして、表に出た。
ホワイトクリスマス。
車椅子をゆっくりと押す僕。
優子の白い息が綿雪にまじってゆく。
「淋しい」優子が、そうささやいた。
「どうした」
「ヒロが見えないと淋しいよ」
優子は、僕の首にしがみついてきた。
僕は、優子を抱き上げた。
笑顔になった。
「ヒロ、ありがとう」
「どうした。」
「あの、海の中での約束。果たしてくれた」
「思い出したのか」
「探してくれたんだね」
「キスして」
「今度は、消えるなよ」
「あれは、夢の中だったから」
「泣いて、目をさましたんだぞ」
優子の、唇が僕に届いた。触れる瞬間に、綿雪が迷い込んだ。天使のいたずら。
僕たちへのクリスマスプレゼント
僕たちは、ずっと、ずっと、はげしくキスを続けた。
「あとがき」
一年後のクリスマス。4人で再会を果たします。それぞれの手紙の中で祥子とミノルがお互いの気持ちを確かめ合う事が出来ました。
優子の記憶がどこまで、戻ったのかは、ヒロも、確認は、していません。確認する必要もなかったからです。
読んでくださったみなさん。この場を借りて、ありがとうを伝えます。