「ほら、開いたわよ」
やっぱり怖い。人を襲わないって言われても怖いもんは怖い。
ほら、恐怖映画とかだって映画って解ってても怖いじゃん。仕方ないじゃん。
なんて自分に言い訳してるうちに、そいつのシルエットが飛び出し……
あれ? シルエットじゃなくてホントに黒いの?
「っぷはーーーーー!」
「ぬわーーーーー!」
く………黒ムッ○ですぞ~~~~~!
「あぐっ! あ、あ痛たたたた……やっぱ実体化したままこの中に居るのは辛いです……」
黒い塊から生えた腕が伸び、人間で言うならそう、ストレッチをし始めた。
凄いボキボキ鳴ってる。
「ななななななにな何?」
声が上手く出せない。
そんな俺の反応を当たり前とでも言うように眼鏡女……岩白は無視した。
「うわー。あんた、髪伸びすぎ」
髪? ああ、髪なのね。
「もうずいぶん外出てなかったですからねぇ……爪も凄い伸びちゃってます」
「よし、うちで爪切って散髪しようか。ついといで」
「あ、その前に」
「何?」
「外に出れた記念にあの五円玉貰えませんか?」
地面に落ちた五円玉を指差す。恐らく俺が放り込んだやつだ。
たぶんこいつが出て来た時に飛んでったんだな。
「別にいいわよ五円くらい」
「やったあ! ……あ」
髪の塊がこっちを向いた。……多分こっちを向いたんだと思う。真っ黒すぎて解らん。
伸びた爪をカチカチぶつけながら、髪を指で掻き分ける。そして、髪の間から体が現れる。
……どう見ても人間だった。俺と同じか、少し年下ぐらいの人間の女の子。
これが化物? 服までちゃんと着てるのに?
むしろその、可愛いんですけど。
「初めまして! 欲望の化身です!」
でも化物なんだな。ああ、なんて強そうなお名前。
「あなたのおかげで外に出れました! ありがとうございます!
本当に飢え死にしちゃうかと思いましたよ……」
「飢え死にするならとっくにしてるでしょ。あんたはそんなんじゃ死なないの」
「程度の問題です! 人間だったら死んじゃってますよ!?」
「よかったわね化物で」
「また化物ってぇ!」
「いいからほら、とっととやることやっちゃいましょ」
そう言うと、さっさと歩いて行ってしまった。
俺も行くかと歩き出そうとした時、
手を下ろして黒い塊に戻った自称・欲望の化身様からお声が掛かった。
「あの、出来ればおんぶしてもらえませんか?」
「……何故でしょうか」
「足の爪が伸びすぎて、歩くと折れちゃいそうで怖いんですよ~」
視線を自称・(略)の足に向ける。ぎりぎり地面と髪の間から足先が見える。
裸足で……かかと立ちだった。名前のわりに何とも情けない奴だな。
従っといた方がいいのか?機嫌悪くしたら何されるか解りゃしないし。
おっと、カバンを忘れずに。
「……どうぞ」
姿勢を低くし、乗ってくるのを待つ。今の気分はボスの手下Aだ。
「ありがとうございます。あ、傘持ちますよ」
傘を渡し、背中に乗って戴く。二、三歩歩くと、ある単語が脳裏をかすめた。
「……洗濯板」
「え? お洗濯ですか? 雨降ってますけど」
「いえ、なんでもないです」
「ところでこの傘……少々可愛くないですか?」
「借り物です」
やっぱり怖い。人を襲わないって言われても怖いもんは怖い。
ほら、恐怖映画とかだって映画って解ってても怖いじゃん。仕方ないじゃん。
なんて自分に言い訳してるうちに、そいつのシルエットが飛び出し……
あれ? シルエットじゃなくてホントに黒いの?
「っぷはーーーーー!」
「ぬわーーーーー!」
く………黒ムッ○ですぞ~~~~~!
「あぐっ! あ、あ痛たたたた……やっぱ実体化したままこの中に居るのは辛いです……」
黒い塊から生えた腕が伸び、人間で言うならそう、ストレッチをし始めた。
凄いボキボキ鳴ってる。
「ななななななにな何?」
声が上手く出せない。
そんな俺の反応を当たり前とでも言うように眼鏡女……岩白は無視した。
「うわー。あんた、髪伸びすぎ」
髪? ああ、髪なのね。
「もうずいぶん外出てなかったですからねぇ……爪も凄い伸びちゃってます」
「よし、うちで爪切って散髪しようか。ついといで」
「あ、その前に」
「何?」
「外に出れた記念にあの五円玉貰えませんか?」
地面に落ちた五円玉を指差す。恐らく俺が放り込んだやつだ。
たぶんこいつが出て来た時に飛んでったんだな。
「別にいいわよ五円くらい」
「やったあ! ……あ」
髪の塊がこっちを向いた。……多分こっちを向いたんだと思う。真っ黒すぎて解らん。
伸びた爪をカチカチぶつけながら、髪を指で掻き分ける。そして、髪の間から体が現れる。
……どう見ても人間だった。俺と同じか、少し年下ぐらいの人間の女の子。
これが化物? 服までちゃんと着てるのに?
むしろその、可愛いんですけど。
「初めまして! 欲望の化身です!」
でも化物なんだな。ああ、なんて強そうなお名前。
「あなたのおかげで外に出れました! ありがとうございます!
本当に飢え死にしちゃうかと思いましたよ……」
「飢え死にするならとっくにしてるでしょ。あんたはそんなんじゃ死なないの」
「程度の問題です! 人間だったら死んじゃってますよ!?」
「よかったわね化物で」
「また化物ってぇ!」
「いいからほら、とっととやることやっちゃいましょ」
そう言うと、さっさと歩いて行ってしまった。
俺も行くかと歩き出そうとした時、
手を下ろして黒い塊に戻った自称・欲望の化身様からお声が掛かった。
「あの、出来ればおんぶしてもらえませんか?」
「……何故でしょうか」
「足の爪が伸びすぎて、歩くと折れちゃいそうで怖いんですよ~」
視線を自称・(略)の足に向ける。ぎりぎり地面と髪の間から足先が見える。
裸足で……かかと立ちだった。名前のわりに何とも情けない奴だな。
従っといた方がいいのか?機嫌悪くしたら何されるか解りゃしないし。
おっと、カバンを忘れずに。
「……どうぞ」
姿勢を低くし、乗ってくるのを待つ。今の気分はボスの手下Aだ。
「ありがとうございます。あ、傘持ちますよ」
傘を渡し、背中に乗って戴く。二、三歩歩くと、ある単語が脳裏をかすめた。
「……洗濯板」
「え? お洗濯ですか? 雨降ってますけど」
「いえ、なんでもないです」
「ところでこの傘……少々可愛くないですか?」
「借り物です」
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