(有)妄想心霊屋敷

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欲たすご縁は女の子11 風呂で着替えて水たらす

2006-12-13 21:56:30 | 欲たすご縁は女の子   一日目
「金はこの中だ」
机の上にある貯金箱を手に取る。
「え、それが貯金箱なんですか? ただの空き缶かと思いました」
そりゃあ確かに見た目はジュースの缶だがな、
空き缶を机の上に放置するほどだらけてはいないつもりだ。
「机の上とかにこういうのがあったら入れ物の類だと思わんか?」
普通は見たまんま空き缶とは思わんだろ。
「そういうものなんですか?
 センの情報源はほぼ食べた欲だけなんでそういうことには疎いんですよ」
「そりゃ難儀だな。で、全部食うのか?」
貯金箱を振ってみる。結構な額が入ってる筈だ。なんで財布に入れ忘れるんだろうか。
「あ、いえ。小銭一個でいいです」
指を一本立てながら、意外な返事を返してくる。
「それだけでいいのか?」
「はい。食事は春菜さんに頂いたので充分ですから。
 それはお風呂に入るときの着替え用です。もう二時間過ぎちゃいましたからね」
そうか、脱いだら消えちまうんだったな。
「えっと、何円玉だ?」
「何円でもいいですよ。金額は別に関係ないですから」
「そうなのか? ……あれ、じゃあリボンの五円玉でいいんじゃないのか?」
「あ、この五円玉は空っぽです。貰った時に食べちゃいましたから」
「ふーん。そんじゃ」
貯金箱の蓋を外し、適当に掴んだ十円玉を渡す。
「では早速……うわ」
どうやら食べ終わったようだが、なにやら苦い顔をしている。
「どうした?」
「……貝類は、苦手なんですよね……」
食事の好みが合わなかったらしい。
「でも、服はばっちりですぅぇ……」
食べるまで解らんというのも中々辛いもんだな。
「はい……ご馳走様でした」
そう言って十円玉を返す。どうみてもご馳走を食った様には見えないが。
気分が悪そうなセンを尻目にテレビを見ていると、お馴染みのメロディが聞こえてきた。
「ん? 何か今鳴ってましたよ?」
「風呂が沸いたんだよ。さて、先か後かどっちがいい? 俺はどっちでも構わんぞ」
「おっ、お風呂ですか!? じゃあお先に入らせてもらいます!」
一気に表情が晴れ、走って部屋を出て行く。
ドタドタと足音が遠ざかり…………近づいてきた。
「お風呂何処ですか!?」
訊いてから行けよ。
寝転がっていたベッドから立ち上がり、センを風呂まで案内する。

「風呂場ここな。体拭くのはそこの棚のタオル使ってくれ。
 使ったらその籠に放り込んどいて」
「はい!」
「それじゃごゆっくり」
風呂場のドアを閉め、自分の部屋に戻る。
その後暫らくテレビを見てふと思いつく。
そういえばあいつシャワーの使い方とか
「冷たーーーー!」
……解らなかったか。
子供の頃に水のシャワー浴びて『修行』とかやってたなぁ。

三十分程して、センが風呂から上がってきた。
「いやー気持ちよかったです! いいですねぇお風呂!」
ジーパンにシャツ一枚という格好で感想を述べる。
「湯加減はあんなもんでよかったか?」
「はい、あれくらいでちょうどいいです」
「で、シャワーの使い方だが」
「あ、ああ。聞こえてました? いろいろいじってたら解りました。大丈夫です」
そう、恥ずかしそうに答える。
火傷したりとか風邪引いたりとかする前に解ってくれてよかったよ。
「じゃあ俺入ってくるな」
と言って部屋を出ると、廊下に点々と水がたれている。
辿っていくと、それの出所はセンのリボンだった。
「お前、リボンつけたまま入ってたのか?」
「え? ……わ。たれちゃってる。
 ごめんなさい。ちゃんと拭いたつもりだったんですけど」
「いや、別にこのくらい構わんけどさ。五円玉も付けっぱなしだったのか?」
「はい。記念ですからね」
そんな大層なもんなのかね。


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