(有)妄想心霊屋敷

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欲たすご縁は女の子86 回想、暴走、逃走

2007-03-01 21:48:45 | 欲たすご縁は女の子   五日目
頑張るって、え? 本気で頑張るの? これ、冗談ぽい話じゃなかったっけ?
明日香があんたと寛で遊ぼうとしてるだけの話じゃなかったっけ?
しかし今日香は大真面目な顔。そして明日香に抱きつき、
「うち頑張るから! 絶対頑張るからな!」
……まるで何かスイッチが入ったような変わりっぷりだった。
さっきまで物凄い落ち込みようだったのが明日香の冷やかし? で急に前向きになった上、
その明日香に抱きつくというオーバーなリアクションまで披露するとは。
明日香の冷やかしにに何か深い意味でもあったんだろうか?
「きょ、今日香!? なんやの急に! ちょっ、あ、あれ~?」
しかし一番驚いているのはその明日香本人だったりするわけで。
「ありがとう。ごめんな、明日香」
抱きついたまま何かに感謝し、何かに謝罪した。
「何がありがとうで何がごめんなんかさっぱりやねんけど」
同じく。
「……あほ」
最後に文句を一つ付けて、今日香は明日香から離れた。
これまた何があほなのかさっぱりである。
「あのー、今日香さん? 今の話なんだけど……」
岩白が質問しようとしている。さあ何から訊く? 疑問点はいくつかあるが。
「なに? 春菜ちゃん」
明日香に言いたいことを言ったからか、すっきりとした穏やかな顔だった。
「私達が聞いてもいい話だったのかなー……なんて」
あ。
「え。え? えーっと。え?」
穏やかな顔で俺達三人を見渡し……今日香の顔から軽い爆発音がした。
「う、う、う、うち、うち、うち……」
穏やかな顔は、残念なことにその短い生を終えてしまった。真っ赤に茹でられて。
「あ、ああああぁぁぁぁ……」
今日香は多分、この状況で自分が何を口走ったか思い出しているのであろう。
そこから導きだされる結論は……
「……き、きゃあああああああああああああ!
 ちょちょちょっと明日香どないしようちうちうち
 これちょっと全部自分でばらしてもうていやあああああああああ!」
合唱。
「悪かった!」
「ごめん! 本当ごめん!」
「ごめんなさい!」
恐らく俺たちは全く悪くないが、とりあえず謝っておくしかなかった。
「きょ、今日香。ほら、あんた先帰り。クロが帰っとるかどうか心配やろ?」
「わ、わわわ解った! ほほな皆、ままままた明日!」
明日香の助け舟を助け舟だと理解する余裕もなさそうだが、
言われるまま、まるで弾丸のように走って行ってしまった。
「速ぇ……」
猛烈な勢いで遠ざかる今日香の後姿に、目頭を熱くする俺。
「あーびっくりした~」
胸を撫で下ろす明日香。いや、原因はあんただろ。
とにかく、今日香が明日香に抱きついたことで止まっていた足を再び歩かせだす。
「いやしかし、我が姉ながら可愛らしいやっちゃ」
「あ、今日香さんのほうがお姉さんなんですか」
「まあ大した差やあらへんけどなー。双子やし」
明日香はもう笑っていた。こりゃ大変だな姉は。
「さすがにちょっと今日香がかわいそうに思うぞ。俺は」
ちょろっとだけ、ホントにちょろっとだけ抱いた不快感を口にしてみた。
まさか明日香もあんな展開になるとは思ってなかっただろうが。
「こうでもせな今日香のやつ動こうとせんしな。
 実際、高校入って今日で初めて寛と会うたんやで?
 まあこんなとこで暴露するとまでは思わんかったけどやな……」
一応、悪いとは思っているらしい。暴露するまでもなくバレバレなのが辛いところだが。
「じゃあ明日香さんは、今日香さんのためにあの話をしたんですね?」
「どうやろな。うちは嫌なやつやからな~。
 もしかしたら自分が楽しむためかもしれんでぇ?」
「結局どっちなんだよ?」
俺の問いに明日香は、
「……答えなあかん?」
明日香らしからぬ恥ずかしそうな動きを見せた。多分演技ではなく、本心からの。
……それも数秒のことだったが。

「っしゃあ! 一回しか言わんからな! 全員耳の穴かっぽじってよー聞きや!」


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