里美さんとお袋さんが俺等の居る居間に入ってきた。
……お袋さん若いな。うちとは大違いだ。
「あら今日は。いつもうちの二人がお世話になってるみたいで……」
やけにニコニコしてるが、何かいいことがあったのか、常にこんな感じの人なのか?
多分後者のような気がする。いや、なんとなくだけど。
「「「いえいえ、こちらこそ」」」
三人ともに返事が被る。まあ決まり文句みたいなものだからな。
「あらあら本当に一志とおんなじね。霧原さんでしたっけ?」
霧原さんの声を聞いて、そう尋ねる。そこら辺の話も既に伝わっているようだ。
「は、はい」
「うちの二人はいつも一緒に居たからすぐ気付けたんだけど……
良かったわね。気付いてくれる人が二人も見つかって」
「はい」
大きく頷く。
以前も聞いたが、やはり相当嬉しい事だったんだろうな。
一志と違って、独りで居た期間が少なからず有った訳だし。
……だったらもう少し優しくしてくれてもいいような気もするが。
「で、あなた達が深道君と森口君ね? どっちが見える人?」
ニコニコ顔がこちらに向けられる。
「俺です」
「て事はあなたが深道君ね? ふーん」
何故か見詰められる。見える人ってのがそんなに珍しいのだろうか?
里美さんだってそうなのだが。
「ちょ、ちょっとお母さん……!」
何やら慌てる里美さん。何なんだ? ああ、頭に馬鹿という単語が浮かぶ。
もう身体に染み付いちゃってんだな。……情け無い。
「あらやだ。年食うとおせっかいになっちゃうわね。うふふ」
そんなに年食ってるようには見えんのですが。この人一体幾つなんだろか。
「今更だが母さん! 里美が泣いてたのはだな!」
ホントに今更だが、一志が説明しようとする。
「あー、言わなくても解ってるわ。
泣かしたのがこの人達だったら一志が大人しくしてる筈無いしね」
「ぬっ! 確かに!」
おお、怖いな。いやそれでいいんだぞ兄よ。
「それに……里美、袖のボタン」
「へっ? ……わぁっ!」
閉めるのを忘れてたのだろう。
慌てて閉めようとするが、慌て過ぎてなかなか上手くいかない。
その様子を見たお袋さんから今までの笑みが消え、
それとはまた違った優しさを含む顔になった。
そして俺と森口と、見えてはいないだろうが霧原さんの方を向き、
「本当にありがとう。あなた達」
とだけ言うと、背を向けて部屋から出ようとする。
「あれ、お母さん何処行くの?」
まだボタンを閉め切れない里美さんが尋ねる。
「買い物。オバチャンは退散させてもらいます」
「でも帰ってきたとこだし……いいよ、私が行くから」
ここでやっとボタンを閉め終える。
「お友達が居る時ぐらいは気を使わなくてもいいの」
ということは、普段は里美さんが行ってるんだな。兄妹揃っていい奴等だ。
まあ里美さんがいい人なのは前から解ってた事だが。
「え、あのでも……」
「じゃー行ってきまーす」
「お母さん、ちょっと!」
里美さんの静止を無視する形で、お袋さんは行ってしまった。
「……ごめんなさい。もう少し待つことになっちゃいました。時間大丈夫ですか?」
三人揃って頷く。
「ところで里美さん、大丈夫? その、さっき泣いてたみたいだけど」
森口が遠慮がちに尋ねる。
「ああ、大丈夫です。……って、さっきも大丈夫って言ったのに泣いちゃったんですよね。
すいません。心配してもらっちゃって。今度こそ、本当に大丈夫ですから」
今度こそ? ってことは――
「いい機会だし、さっきの続き、お話します。聞いてもらえますか?」
また三人揃って頷く。
「ありがとうございます。……あ、兄さんが続き話したんでしたっけ」
「いや! 大した話はしてないから気にすんな!」
充分大した話だったと思うのだが……
「そう? それじゃあ……えっと、どこまで話したんでしたっけ?」
「『兄さんが……』までだ!」
それじゃ解らんな。うん。
……お袋さん若いな。うちとは大違いだ。
「あら今日は。いつもうちの二人がお世話になってるみたいで……」
やけにニコニコしてるが、何かいいことがあったのか、常にこんな感じの人なのか?
多分後者のような気がする。いや、なんとなくだけど。
「「「いえいえ、こちらこそ」」」
三人ともに返事が被る。まあ決まり文句みたいなものだからな。
「あらあら本当に一志とおんなじね。霧原さんでしたっけ?」
霧原さんの声を聞いて、そう尋ねる。そこら辺の話も既に伝わっているようだ。
「は、はい」
「うちの二人はいつも一緒に居たからすぐ気付けたんだけど……
良かったわね。気付いてくれる人が二人も見つかって」
「はい」
大きく頷く。
以前も聞いたが、やはり相当嬉しい事だったんだろうな。
一志と違って、独りで居た期間が少なからず有った訳だし。
……だったらもう少し優しくしてくれてもいいような気もするが。
「で、あなた達が深道君と森口君ね? どっちが見える人?」
ニコニコ顔がこちらに向けられる。
「俺です」
「て事はあなたが深道君ね? ふーん」
何故か見詰められる。見える人ってのがそんなに珍しいのだろうか?
里美さんだってそうなのだが。
「ちょ、ちょっとお母さん……!」
何やら慌てる里美さん。何なんだ? ああ、頭に馬鹿という単語が浮かぶ。
もう身体に染み付いちゃってんだな。……情け無い。
「あらやだ。年食うとおせっかいになっちゃうわね。うふふ」
そんなに年食ってるようには見えんのですが。この人一体幾つなんだろか。
「今更だが母さん! 里美が泣いてたのはだな!」
ホントに今更だが、一志が説明しようとする。
「あー、言わなくても解ってるわ。
泣かしたのがこの人達だったら一志が大人しくしてる筈無いしね」
「ぬっ! 確かに!」
おお、怖いな。いやそれでいいんだぞ兄よ。
「それに……里美、袖のボタン」
「へっ? ……わぁっ!」
閉めるのを忘れてたのだろう。
慌てて閉めようとするが、慌て過ぎてなかなか上手くいかない。
その様子を見たお袋さんから今までの笑みが消え、
それとはまた違った優しさを含む顔になった。
そして俺と森口と、見えてはいないだろうが霧原さんの方を向き、
「本当にありがとう。あなた達」
とだけ言うと、背を向けて部屋から出ようとする。
「あれ、お母さん何処行くの?」
まだボタンを閉め切れない里美さんが尋ねる。
「買い物。オバチャンは退散させてもらいます」
「でも帰ってきたとこだし……いいよ、私が行くから」
ここでやっとボタンを閉め終える。
「お友達が居る時ぐらいは気を使わなくてもいいの」
ということは、普段は里美さんが行ってるんだな。兄妹揃っていい奴等だ。
まあ里美さんがいい人なのは前から解ってた事だが。
「え、あのでも……」
「じゃー行ってきまーす」
「お母さん、ちょっと!」
里美さんの静止を無視する形で、お袋さんは行ってしまった。
「……ごめんなさい。もう少し待つことになっちゃいました。時間大丈夫ですか?」
三人揃って頷く。
「ところで里美さん、大丈夫? その、さっき泣いてたみたいだけど」
森口が遠慮がちに尋ねる。
「ああ、大丈夫です。……って、さっきも大丈夫って言ったのに泣いちゃったんですよね。
すいません。心配してもらっちゃって。今度こそ、本当に大丈夫ですから」
今度こそ? ってことは――
「いい機会だし、さっきの続き、お話します。聞いてもらえますか?」
また三人揃って頷く。
「ありがとうございます。……あ、兄さんが続き話したんでしたっけ」
「いや! 大した話はしてないから気にすんな!」
充分大した話だったと思うのだが……
「そう? それじゃあ……えっと、どこまで話したんでしたっけ?」
「『兄さんが……』までだ!」
それじゃ解らんな。うん。
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