(有)妄想心霊屋敷

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普通な非日常17 母登場、そして退場

2006-11-29 18:52:25 | 普通な非日常
里美さんとお袋さんが俺等の居る居間に入ってきた。
……お袋さん若いな。うちとは大違いだ。
「あら今日は。いつもうちの二人がお世話になってるみたいで……」
やけにニコニコしてるが、何かいいことがあったのか、常にこんな感じの人なのか?
多分後者のような気がする。いや、なんとなくだけど。
「「「いえいえ、こちらこそ」」」
三人ともに返事が被る。まあ決まり文句みたいなものだからな。
「あらあら本当に一志とおんなじね。霧原さんでしたっけ?」
霧原さんの声を聞いて、そう尋ねる。そこら辺の話も既に伝わっているようだ。
「は、はい」
「うちの二人はいつも一緒に居たからすぐ気付けたんだけど……
 良かったわね。気付いてくれる人が二人も見つかって」
「はい」
大きく頷く。
以前も聞いたが、やはり相当嬉しい事だったんだろうな。
一志と違って、独りで居た期間が少なからず有った訳だし。
……だったらもう少し優しくしてくれてもいいような気もするが。
「で、あなた達が深道君と森口君ね? どっちが見える人?」
ニコニコ顔がこちらに向けられる。
「俺です」
「て事はあなたが深道君ね? ふーん」
何故か見詰められる。見える人ってのがそんなに珍しいのだろうか?
里美さんだってそうなのだが。
「ちょ、ちょっとお母さん……!」
何やら慌てる里美さん。何なんだ? ああ、頭に馬鹿という単語が浮かぶ。
もう身体に染み付いちゃってんだな。……情け無い。
「あらやだ。年食うとおせっかいになっちゃうわね。うふふ」
そんなに年食ってるようには見えんのですが。この人一体幾つなんだろか。
「今更だが母さん! 里美が泣いてたのはだな!」
ホントに今更だが、一志が説明しようとする。
「あー、言わなくても解ってるわ。
 泣かしたのがこの人達だったら一志が大人しくしてる筈無いしね」
「ぬっ! 確かに!」
おお、怖いな。いやそれでいいんだぞ兄よ。
「それに……里美、袖のボタン」
「へっ? ……わぁっ!」
閉めるのを忘れてたのだろう。
慌てて閉めようとするが、慌て過ぎてなかなか上手くいかない。
その様子を見たお袋さんから今までの笑みが消え、
それとはまた違った優しさを含む顔になった。
そして俺と森口と、見えてはいないだろうが霧原さんの方を向き、
「本当にありがとう。あなた達」
とだけ言うと、背を向けて部屋から出ようとする。
「あれ、お母さん何処行くの?」
まだボタンを閉め切れない里美さんが尋ねる。
「買い物。オバチャンは退散させてもらいます」
「でも帰ってきたとこだし……いいよ、私が行くから」
ここでやっとボタンを閉め終える。
「お友達が居る時ぐらいは気を使わなくてもいいの」
ということは、普段は里美さんが行ってるんだな。兄妹揃っていい奴等だ。
まあ里美さんがいい人なのは前から解ってた事だが。
「え、あのでも……」
「じゃー行ってきまーす」
「お母さん、ちょっと!」
里美さんの静止を無視する形で、お袋さんは行ってしまった。
「……ごめんなさい。もう少し待つことになっちゃいました。時間大丈夫ですか?」
三人揃って頷く。
「ところで里美さん、大丈夫? その、さっき泣いてたみたいだけど」
森口が遠慮がちに尋ねる。
「ああ、大丈夫です。……って、さっきも大丈夫って言ったのに泣いちゃったんですよね。
 すいません。心配してもらっちゃって。今度こそ、本当に大丈夫ですから」
今度こそ? ってことは――
「いい機会だし、さっきの続き、お話します。聞いてもらえますか?」
また三人揃って頷く。
「ありがとうございます。……あ、兄さんが続き話したんでしたっけ」
「いや! 大した話はしてないから気にすんな!」
充分大した話だったと思うのだが……
「そう? それじゃあ……えっと、どこまで話したんでしたっけ?」
「『兄さんが……』までだ!」

それじゃ解らんな。うん。


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