顔を伏せ、上目使いに岩白を見るセン。
その目を見返す岩白。
目を伏せるセン。
それを見て嫌な笑みを浮かべる岩白。
観念する俺。
外ではやりたい放題なくせになんだよその反応。バレバレだろが。
「で、どうなのよ」
見るのはセンでも、訊くのは俺。なんでだよ。
「どうって言われるとだな……」
センの方を見る。
「あうぅ~……」
ヒント得られず。どうする? って言っても岩白はもう気付いてそうだしな……
他人ならまだしも、家族だし……言っておいても変ではないよな?
「昨日……」
「うんうん」
「昨日俺、こいつに……」
意を決して打ち明けようとしたその時、センが動いた。
「わっ、わたしっ! 昨日、明さんに……キッキキキキスしました!」
「…………」
「…………」
固まる他二人。もうちょっと言い方ってもんがあんだろ!
「そ、それ、で? 」
岩白はもう見るからに笑いを堪えている。
しかし今のセンにそんなことを気にする余裕はなさそうだった。
「そっ、それでですね! そそっ、そのあと明さんがっ!」
「ストーップ!」
口を塞ぐ。思い出すのも恥ずかしいのにそのまま伝えられてたまるか。
「はぁー……ゴメン、続けて」
息を整える岩白。
「……つまりだな、今俺達は付き合っている」
言い切った俺。
「むぐむぐ」
頷くセン。
「そう。……よかった……」
「よかった?」
そりゃ悪いことじゃないだろうけどさ。もっとなんかこう、冷やかされるかと思ったが。
「ええ。……五年間閉じこもってた分まで、幸せになってね。セン」
「へ? あ、は、はい」
「……うちの妹をお願いね、日永君」
「あ、ああ……なんだ急に?」
「いやいや姉として、ね。……ちょっとゴメン。出るわ」
そう言って、岩白は部屋から出て行った。……なんだったんだ?
――部屋を出た私は、泣いていた。声は出せない。二人に聞こえてしまう。
泣くのを誤魔化すために部屋を出たけど……予想外だった。私が泣くなんて。
いつものように冷やかしたり、普通にできると思っていた。でも今はちょっと無理そう。
私達は今、十五歳。あいつはその内五年も……
どうして無理にでもあそこから引っ張り出さなかったんだろう。
私は知っているのに。あいつ自身も知らない、あのことを。
あいつが自分からあそこに閉じこもるのを望んだから?
……そんな筈がないじゃない。
あいつのことだから私に気を使って、そのまま私が何もしなかったから……!
だから何も変わらないまま五年間も……
私は、変わるのが怖かっただけだ。
変えなきゃいけなかったのに。私があいつに嫌われてでも。
でも、一緒に居たかったから……
五日前に、やっと変わった状況。当事者二人には不安なんかなしで一緒に居て欲しい。
私はいつも辛かったから……同じようにはならないで欲しい。
暫らくすると、岩白が戻ってきた。
「どこ行ってたんだ?」
「トイレ」
「あ、ああそう……」
訊くんじゃなかったか。
「さて、そろそろ行きましょうか」
その目を見返す岩白。
目を伏せるセン。
それを見て嫌な笑みを浮かべる岩白。
観念する俺。
外ではやりたい放題なくせになんだよその反応。バレバレだろが。
「で、どうなのよ」
見るのはセンでも、訊くのは俺。なんでだよ。
「どうって言われるとだな……」
センの方を見る。
「あうぅ~……」
ヒント得られず。どうする? って言っても岩白はもう気付いてそうだしな……
他人ならまだしも、家族だし……言っておいても変ではないよな?
「昨日……」
「うんうん」
「昨日俺、こいつに……」
意を決して打ち明けようとしたその時、センが動いた。
「わっ、わたしっ! 昨日、明さんに……キッキキキキスしました!」
「…………」
「…………」
固まる他二人。もうちょっと言い方ってもんがあんだろ!
「そ、それ、で? 」
岩白はもう見るからに笑いを堪えている。
しかし今のセンにそんなことを気にする余裕はなさそうだった。
「そっ、それでですね! そそっ、そのあと明さんがっ!」
「ストーップ!」
口を塞ぐ。思い出すのも恥ずかしいのにそのまま伝えられてたまるか。
「はぁー……ゴメン、続けて」
息を整える岩白。
「……つまりだな、今俺達は付き合っている」
言い切った俺。
「むぐむぐ」
頷くセン。
「そう。……よかった……」
「よかった?」
そりゃ悪いことじゃないだろうけどさ。もっとなんかこう、冷やかされるかと思ったが。
「ええ。……五年間閉じこもってた分まで、幸せになってね。セン」
「へ? あ、は、はい」
「……うちの妹をお願いね、日永君」
「あ、ああ……なんだ急に?」
「いやいや姉として、ね。……ちょっとゴメン。出るわ」
そう言って、岩白は部屋から出て行った。……なんだったんだ?
――部屋を出た私は、泣いていた。声は出せない。二人に聞こえてしまう。
泣くのを誤魔化すために部屋を出たけど……予想外だった。私が泣くなんて。
いつものように冷やかしたり、普通にできると思っていた。でも今はちょっと無理そう。
私達は今、十五歳。あいつはその内五年も……
どうして無理にでもあそこから引っ張り出さなかったんだろう。
私は知っているのに。あいつ自身も知らない、あのことを。
あいつが自分からあそこに閉じこもるのを望んだから?
……そんな筈がないじゃない。
あいつのことだから私に気を使って、そのまま私が何もしなかったから……!
だから何も変わらないまま五年間も……
私は、変わるのが怖かっただけだ。
変えなきゃいけなかったのに。私があいつに嫌われてでも。
でも、一緒に居たかったから……
五日前に、やっと変わった状況。当事者二人には不安なんかなしで一緒に居て欲しい。
私はいつも辛かったから……同じようにはならないで欲しい。
暫らくすると、岩白が戻ってきた。
「どこ行ってたんだ?」
「トイレ」
「あ、ああそう……」
訊くんじゃなかったか。
「さて、そろそろ行きましょうか」
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